犬が発作を起こしたら|受診のサインと発作後にふらつく・歩けないときの対応
愛犬が突然倒れ、手足をばたつかせたり、発作後にふらついたりすると、どう対応すべきか戸惑うものです。
また、発作が治まっても歩けなかったり、落ち着かずに歩き回ったりすると、体に何が起きているのか心配になるかもしれません。
今回は、発作が起きたときに家庭でできること、受診の目安、てんかんの検査や治療について解説します。
1.発作が起きたときにまずすること
2.発作のあとにふらつく・歩けないとき
3.すぐに病院へ行くべきサイン
4.発作の前兆
5.てんかん発作に似た症状や発作を引き起こす病気
6.てんかんの原因と、なりやすい犬種・年齢
7.病院で行う検査
8.治療と薬とのつきあい方
9.発作のある犬との暮らし
10.まとめ|発作の記録をもとに、一緒に判断していきます
発作が起きたときにまずすること
愛犬に発作が起きたら、次の点に気をつけて対応しましょう。
・無理に押さえつけたり、抱き上げたりしない
・家具などの危険物を除き、階段からの転落を防ぐ
・口に手や物を入れない
・発作の開始時刻と続いた時間を測る
安全を確保できたら、スマートフォンで動画を撮影してください。発作は診察室で再現されにくいため、動画は発作のタイプを確認したり、失神などと見分けたりする手がかりになります。ただし、原因を詳しく調べるには検査も必要です。
初めての発作では撮影が難しくても、次に発作が起きた際には可能な範囲で記録できるようにしましょう。
発作のあとにふらつく・歩けないとき
発作が治まったあとも意識が完全には戻らず、次のような様子がみられることがあります。
・ふらつく、うまく歩けない
・目的なく歩き回る
・呼吸が荒い
・水を多く飲む
・鳴く
数分から数時間で回復することがありますが、個体差があります。滑りやすいフローリングを避け、マットやタオルを敷いた静かな場所で見守りましょう。
数時間たっても普段の様子に戻らない場合は、動物病院を受診してください。
また、高齢の犬で発作のあとに手足の麻痺が残る場合は、てんかん以外の脳の病気が隠れている可能性もあります。
すぐに病院へ行くべきサイン
次のような状態は緊急性が高いため、時間帯を問わず速やかに動物病院を受診してください。
・発作が5分以上続く、または5分に近づいても止まらない(てんかん重積状態)
・発作後に意識が戻らないまま、次の発作が起きる(てんかん重積状態)
・24時間以内に2回以上の発作が起きる(群発発作の可能性)
・発作が治まっても意識が戻らない、呼吸が苦しい
初めての発作や、心臓病・糖尿病などの持病がある場合も、その日のうちに病院へ相談しましょう。
一方、すでにてんかんと診断されている犬で、短い発作が1回で治まり、その後は普段どおりに戻った場合は、必ずしも救急で受診する必要はありません。発作の様子や続いた時間を記録し、かかりつけ病院の診察の予約を取ってください。
当院は日曜・祝日を除いて夜20時まで診療しています。夕方に発作が起きた場合も、当日中の診察をご案内できることがありますので、まずはお電話ください。
発作の前兆
発作の前には前兆がない犬もいますが、表れる場合は毎回似た行動を示すことがあります。
次のような変化は、発作前のサインの一例です。
・そわそわする
・隠れる
・過度に甘える
・よだれが増える
前兆のパターンを記録しておくと、発作が始まる前に段差から離したり、周りの物を片付けたりするなど、安全を確保しやすくなるでしょう。
てんかん発作に似た症状や発作を引き起こす病気
倒れたり、体が震えたりする症状は、必ずしもてんかんによるものとは限りません。
次のようなほかの病気や異常が原因で起こることもあります。
・心臓病(失神、突然倒れる)
・低血糖(震え、ふらつき、意識障害)
・電解質異常(震え、筋肉のけいれん)
・アジソン病(脱力、ふらつき、虚脱)
・中毒(震え、けいれん、意識障害)
・熱中症(ふらつき、けいれん、意識障害)
・脳腫瘍(けいれん発作、意識や行動の変化)
・水頭症(けいれん発作、ふらつき、異常行動)
・前庭疾患(ふらつき、転倒、首の傾き)
・椎間板ヘルニア(ふらつき、歩行障害、起立困難)
・認知機能不全症候群(夜間の徘徊、異常行動) など
見分けるポイントは、意識の状態、症状が続いた時間、症状の左右差、症状が治まった後の様子です。 ただし、ご家庭で原因を判断することは難しいため、気になる症状があれば、そのときの様子を記録して動物病院へご相談ください。
僧帽弁閉鎖不全症についてはこちらをご覧ください
糖尿病(低血糖)について詳しくはこちらをご覧ください
アジソン病について詳しくはこちらをご覧ください
熱中症について詳しくはこちらをご覧ください
水頭症について詳しくはこちらをご覧ください
胸腰部椎間板ヘルニアについて詳しくはこちらをご覧ください
頸部椎間板ヘルニアについて詳しくはこちらをご覧ください
認知機能不全症候群について詳しくはこちらをご覧ください
てんかんの原因と、なりやすい犬種・年齢
犬のてんかんは、検査で脳に構造的な異常が見つからない「特発性てんかん」と、脳の病気が原因となる「症候性てんかん」に大きく分けられます。
特発性てんかんは若齢から中年齢での発症が多く、柴犬、フレンチ・ブルドッグ、トイ・プードル、ビーグル、チワワなどの犬種でよくみられる傾向があります。
ストレスがてんかんそのものの原因とは限りませんが、興奮や睡眠不足、環境の変化が発作の誘因になることがあります。来客や雷、花火など、発作前の出来事を記録しておくと、誘因を把握する手がかりになります。
病院で行う検査
てんかんの診断では、発作に似た症状や、発作を引き起こす病気を除外していきます。
当院では身体検査、神経学的検査、血糖・電解質を含む血液検査、必要に応じて超音波検査などを組み合わせて全身の状態を確認していきます。
受診の際は、次の物をお持ちください。
・発作の動画
・発作日誌(日時、続いた時間、様子、回数などを記録したもの)
治療と薬とのつきあい方
治療を始めるかどうかは、発作の頻度や重さをもとに、獣医神経病学会が公開している国際的な診療指針などを参考に判断します。
治療方針を考える際には、検査結果や症状の経過を踏まえて、特発性てんかんとして治療を始めるケースと、精密検査で原因をさらに詳しく調べるケースがあります。
精密検査では、必要に応じてMRI検査や脳波検査、脳脊髄液検査などを検討します。こうした検査には時間や費用がかかるため、飼い主様のご希望や愛犬の状態を踏まえて、検査・治療の進め方を一緒に考えていきます。精密検査を希望される場合は、近隣の大学病院をご紹介します。
てんかんの治療では、主に抗てんかん薬を使用し、持病や発作のタイプなどに応じて薬を選び、調整をしていきます。
服用を始めた頃には眠気やふらつきが出ることもありますが、時間とともに軽くなる場合があります。症状が強い場合や長く続く場合は、獣医師にご相談ください。
治療開始後は、血液検査にて血中濃度や肝臓の数値などを確認することがあります。血中濃度が高すぎると副作用が表れやすくなり、低すぎると十分な発作抑制効果が得られない可能性があるため、検査結果や発作の経過をもとに薬の量を調整していきます。
さらに、治療中に新たな病気を発症すると、それまで使用していた薬の変更や調整が必要になる場合があります。そのため、発作の管理だけでなく、定期的な健康診断で全身の状態を確認することも大切です。
<薬を飲み忘れたら>
飲み忘れた場合は、薬によって対応が異なります。あらかじめ処方した獣医師に対応方法を確認しておくとよいでしょう。
飲み忘れに気づいた際は、次の服用時刻も確認し、対応に迷う場合は処方した動物病院へ連絡してください。
2回分をまとめて与えることや、自己判断で中止することは避けましょう。
発作のある犬との暮らし
日常的に行っている散歩に関して、発作が落ち着いている時期には、体調をみながら普段の散歩を続けられることもあります。
留守番は、発作の頻度や重さを踏まえて判断が変わるため、獣医師にご相談ください。
環境づくりとして、家の中では床に滑り止めを敷き、階段や段差にはゲートを付けましょう。
浴槽に水を貯めたままにしないことや、ケージの内側をクッション性のある素材で覆うことも、発作時のけがを防ぐのに役立ちます。
発作に備えながら、その子らしい日常生活を送れるよう、ご家庭での過ごし方についてもアドバイスしています。気になることがあれば、遠慮なくお尋ねください。
まとめ|発作の記録をもとに、一緒に判断していきます
ナガワ動物病院では、初めての発作のご相談から、検査、薬の開始、その後の血中濃度や肝臓の数値の確認まで、同じ獣医師が継続して診察いたします。
必要な検査を行ったうえで薬を選び、飲み始めたあとも発作の記録と検査結果をもとに量や種類を継続的に見直していくことが、てんかんの治療では大切です。
ほかの動物病院にて治療中で発作が治まらない場合や、薬の量に不安がある場合のご相談もお受けしています。 オンライン予約やお電話にて、お気軽にご相談ください。
監修:ナガワ動物病院 副院長 名川真ノ介(獣医師)
投稿日:2026年11月2日
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