
犬・猫がごはんを食べない…様子見でいい?食欲不振の原因とエコー検査で分かること
「急にごはんを食べなくなった」
「食欲は落ちているけれど、どこまで様子を見ていいのか分からない」
このような変化に不安を感じてご相談に来られる飼い主様は少なくありません。
犬や猫の食欲不振は比較的よく見られる症状ですが、その背景にはさまざまな病気が隠れていることがあります。また、血液検査だけでは分からない異常が、エコー検査(超音波検査)によって見つかることもあります。そのため「食べない」という症状に対しては、原因を丁寧に見極めていくことが大切です。
今回は、犬・猫の食欲不振で注意したいサインや考えられる原因、エコー検査で分かること、動物病院での検査や治療の考え方について詳しく解説します。
■目次
1.【結論】食欲不振は「元気があるか」だけで判断しないことが大切
2.犬・猫の食欲不振で考えられる主な原因
3.エコー検査(超音波検査)で分かること|食欲不振の原因特定につながるケース
4.ナガワ動物病院での検査と治療の考え方|「なぜ食べられないのか」を丁寧に見極める
5.よくある質問
6.まとめ|「少し様子を見る」前に
【結論】食欲不振は「元気があるか」だけで判断しないことが大切
いつもより食欲がなくても、少しは食べていたり、食欲以外は普段どおりに見える場合は、様子を見たくなることもあるかもしれません。しかし、元気があるように見えても、体の中では病気が進行しているケースがあります。
特に、次のような場合は早めの受診をおすすめします。
・水も飲まない
・嘔吐を伴う
・数日単位で続いている
・子犬・子猫、高齢
・持病がある
・短期間で体重が5%以上減少している
・必要なエネルギー量(RER)の60%程度しか食べられていない状態が3日以上続いている
特に猫では、食べない状態が続くことで「脂肪肝」などの深刻な状態につながることもあります。そのため、場合によっては無理にでも栄養を入れる必要があるケースもあります。
食欲不振は「病名」ではなく「症状」です。背景にどのような原因があるのかを早めに確認することで、体への負担を抑えた治療につながることも少なくありません。
犬・猫の食欲不振で考えられる主な原因
犬や猫の食欲不振には、さまざまな原因があります。
例えば、比較的多いのは消化器のトラブルです。胃腸炎や異物誤食、膵炎、腸閉塞などでは、吐き気や腹痛によって食欲が落ちることがあります。猫では毛球症(毛玉による消化管トラブル)が関係しているケースもあります。
異物誤食について詳しくはこちらをご覧ください
膵炎について詳しくはこちらをご覧ください
また、肝臓・腎臓・胆のう・膵臓などの内臓疾患や、アジソン病、甲状腺機能低下症のようなホルモンの病気、糖尿病などでも食欲不振が見られます。
アジソン病について詳しくはこちらをご覧ください
甲状腺機能低下症について詳しくはこちらをご覧ください
糖尿病について詳しくはこちらをご覧ください
そのほかにも、
・腫瘍性疾患
・感染症
・歯周病や口内炎などの口腔内トラブル
・ストレスや環境変化
・加齢による変化
・関節炎やヘルニアなどの痛み
など、原因は多岐にわたります。
このように「食べない=胃腸炎」と単純に決めつけられるものではありません。見た目だけでは分からない病気も多いため、必要に応じて検査を組み合わせながら原因を見極めていくことが大切です。
エコー検査(超音波検査)で分かること|食欲不振の原因特定につながるケース
エコー検査(超音波検査)は、お腹に超音波を当てて、体の中の状態を確認する検査です。比較的苦痛が少なく、基本的には麻酔をかけずに行えることが多いため、犬・猫への負担を抑えながら検査を進めやすいという特徴があります。
また、レントゲンやCT、MRIと異なり「動いている状態」をリアルタイムで確認できることも大きな特徴です。腸の動きや胆のうの状態、血流の変化なども観察することができます。
食欲不振では、次のようなケースでエコー検査が役立つことがあります。
・異物誤食
・膵炎
・胆のう疾患
・腫瘍
・腸の動きの異常
・腹水の有無 など
例えば、血液検査では大きな異常が見られなくても、エコー検査で腸閉塞や胆のうの異常が見つかることもあります。
もちろん、エコー検査だけですべてが分かるわけではありません。実際には、血液検査やレントゲン検査などを組み合わせることで、より精度の高い判断につながります。
エコー検査について詳しくはこちらをご覧ください
ナガワ動物病院での検査と治療の考え方|「なぜ食べられないのか」を丁寧に見極める
当院では、まず問診や身体検査を行い、全身状態を確認します。
・いつから食べないのか
・何なら食べるのか
・嘔吐や下痢はあるか
・体重は減っていないか
などを丁寧に確認したうえで、必要に応じて血液検査・レントゲン検査・エコー検査を組み合わせながら原因を探っていきます。
食欲不振の原因によって、必要な治療は異なります。
例えば、
・点滴による脱水改善
・吐き気止めの使用
・消化に配慮した食事管理
・内科治療
・外科治療
など、その子の状態に合わせて対応を行います。
当院では「とりあえず食欲を出す」という対症療法だけではなく、なぜ食べられないのかを見極めることを重視しています。
そのため、症状だけで判断するのではなく、エコー検査を含めた画像診断を組み合わせながら、原因を丁寧に確認していきます。また、検査結果と全身状態を踏まえ、その子に合った治療方針を飼い主様と一緒に考えていくことを大切にしています。
よくある質問
Q.…

猫が口を開けて呼吸している…病院に行くべき?口呼吸の原因と受診の目安
愛猫が急に口を開けて「ハァハァ」と呼吸している様子を見て「これって大丈夫なの?」「すぐ病院へ行った方がいい?」と不安になった経験はありませんか?
猫は本来、基本的に鼻で呼吸をする動物です。そのため、犬のパンティングとは違い、猫の口呼吸は「何らかの異常のサイン」である可能性が高く、基本的には「すぐ受診するのが正解」といえます。
また「元気そうだから少し様子を見よう」と思っていても、猫は病気がかなり進行するまで症状を隠しているケースも少なくありません。
そこで今回は、
・今すぐ受診すべき危険サイン
・様子見してよいケースとの違い
・猫の正常な呼吸との違い
・考えられる病気
・ご自宅での正しい対処法
・動物病院での検査の流れ
について詳しく解説します。
■目次
1.まずセルフチェック|今すぐ受診を検討したい危険サイン
2.そもそも猫の正常な呼吸とは?口呼吸との違い
3.猫が口呼吸をする主な原因
4.口呼吸を見つけたときの正しい対処
5.動物病院での検査・診断の流れ
6.よくある質問
7.まとめ|迷ったときはまずご相談ください
まずセルフチェック|今すぐ受診を検討したい危険サイン
猫の口呼吸で、特に注意したいのは次のような症状です。
☑…

犬の血便|様子見でいい?受診の目安と危険なサイン
愛犬の便に血が混じっていることに気づくと、とても心配になる一方で、すぐに動物病院に行くべきかどうか迷われる飼い主様も多いのではないでしょうか。
特にいつもどおり…

犬・猫のしこり、手術は必要?良性・悪性の考え方と受診の目安
愛犬や愛猫の体にしこりを見つけたとき「これは危険なものなのか」「すぐに手術が必要なのか」と不安に感じられる飼い主様も多いのではないでしょうか。
しこりは見た目や触った感じからある程度の傾向を推測できることもありますが、それだけで良性・悪性をはっきりと判断することはできません。一方で、早い段階で状態を確認しておくことで、負担の少ない方法で対応できる可能性が広がることもあります。
今回は、しこりの良性・悪性の考え方や受診の目安、動物病院での検査や手術の流れについて解説します。
■目次
1.良性・悪性の考え方|見た目でどこまで分かる?
2.こんなしこりは要注意|受診を検討したいサイン
3.動物病院での検査と見極め
4.手術が必要になるケースと摘出の流れ
5.まとめ|迷ったときこそ早めの相談が選択肢を広げる
良性・悪性の考え方|見た目でどこまで分かる?
しこりには、比較的おとなしい性質の「良性」と、周囲に広がったり転移したりする可能性のある「悪性」があります。
一般的には、次のような傾向があります。
・ゆっくり大きくなるものは良性が多い
・短期間で急に大きくなるものは悪性の可能性がある
・しこりの大きさが3cmを超えると、悪性の可能性が高まる
ただし、これらはあくまで「傾向」であり、見た目や触った印象だけで断定することはできません。「柔らかいから脂肪だろう」「高齢だから様子を見よう」といった判断をされる方もいらっしゃいますが、実際にはそれだけで安全とは言い切れないケースもあります。
また、しこりが見つかったからといって、必ずしもすぐに手術が必要になるわけではありません。しかし一方で、放置してよいとも限らないのが難しいところです。大切なのは、まず検査を行い、そのしこりの性質を見極めることといえます。
こんなしこりは要注意|受診を検討したいサイン
しこりの中には、早めに確認しておきたいものもあります。次のような変化が見られる場合は、一度動物病院での診察を検討しましょう。
・急に大きくなった
・短期間でサイズが変わる
・固くて動かない
・赤みや出血、潰瘍がある
・数が増えている
・触ると嫌がる・痛がる
・乳腺や口の周り、四肢の先端など特定の部位にできている
こうした特徴がある場合、単なる良性のしこりではない可能性も考えられます。
<代表的なしこりの例と特徴>
実際に犬や猫で見られるしこりには、いくつか代表的なものがあり、それぞれ性質や対応が異なります。
・脂肪腫
やわらかく動きやすいことが多く、比較的ゆっくり大きくなる傾向がある良性のしこり
・肥満細胞腫
見た目だけでは判断が難しく、悪性腫瘍に分類されるため、早めの検査が重要なしこり
肥満細胞腫について詳しくはこちらをご覧ください
・乳腺腫瘍
特に未避妊のメスに多く見られ、良性・悪性の割合が半々程度といわれるしこり
乳腺腫瘍ついて詳しくはこちらをご覧ください
それぞれ見た目や触った印象が似ていることもあり、最終的には検査による見極めが欠かせません。
動物病院での検査と見極め
しこりを評価する際には、いくつかの検査を組み合わせて判断していきます。
<問診・触診>
まずは「いつからあるか」や「大きさや変化のスピード」といった問診を行います。
触診では、しこりの大きさや硬さ、動くかどうかなどを確認します。
<細胞診>
細い針を使ってしこりの細胞を採取し、顕微鏡で確認する検査です。体への負担が比較的少なく、しこりの性質を判断する大きな手がかりになります。
<各種検査>
必要に応じて、レントゲンやエコー検査を行い、体の内部への影響や広がりを確認します。
これらの検査結果をもとに、しこりの性質や今後の方針を判断していきます。
さらに、摘出が適していると判断された場合には、手術でしこりを取り除き、その組織を詳しく調べる「病理検査」によって、最終的な確定診断を行います。
当院では、こうした検査結果をもとに、全体の状態を総合的に評価したうえで治療方針を決定しています。
手術が必要になるケースと摘出の流れ
しこりの中には、手術を行わずに経過をみるケースや、内服薬で改善が期待できるケースもあります。
例えば、炎症が原因の場合には、抗生物質やステロイドの投与によって改善することもあります。また、診断の一環として薬の反応を見るケースもあるため、その場合はご自身の判断で中断せず、獣医師の指示どおりに継続することが重要です。
一方で、次のような場合には手術を検討することがあります。
・悪性が疑われる場合
・しこりが大きくなり続けている場合
・日常生活に支障が出ている場合
・早期に摘出した方が体への負担が少ないと判断される場合
・良性か悪性か判断が難しく、病理検査が必要な場合
しこりは「すぐに手術」となるわけではありませんが、適切なタイミングでの判断がとても重要です。
<しこり摘出の流れ>
実際に手術が必要と判断された場合には、次のような流れで進めていきます。
①…

犬がくしゃみを繰り返す…病院に行くべき?原因とチェックポイント
愛犬が何度もくしゃみをしていると「ほこりかな」「すぐにおさまるよね」と気になりつつも、受診すべきかどうか判断に迷われることがあるかもしれません。
確かにくしゃみ…

【犬の誤飲で手術が必要になるケースとは】嘔吐が続くときは要注意|腸閉塞の症状と治療の流れ
愛犬が何かを飲み込んでしまったかもしれないとき、あまり深刻な様子が見られないと「少し様子を見てもいいのかな」と迷われる飼い主様も多いのではないでしょうか。
しか…


犬の膝蓋骨脱臼(パテラ)は放置して大丈夫?手術の目安と進行リスク
犬の「膝蓋骨脱臼(パテラ)」は、膝のお皿の骨が本来の位置から外れてしまう整形外科の病気で、足を浮かせる・スキップするように歩くといった様子の原因になることがあります。
そして「手術が必要なのか」「様子を見ても大丈夫なのか」と判断に迷われる飼い主様も多くいらっしゃる疾患です。
今回は、パテラを放置した場合のリスクや手術の目安、そして当院における診療の考え方について詳しく解説します。
■目次
1.【結論】「グレードだけ」で手術は決めない|症状と将来リスクを総合判断
2.グレード1〜4の違い|重症度と当院の考え方
3.放置するとどうなる?進行リスクについて
4.片足だけでも両足手術を検討する理由
5.当院の手術の特徴|複数術式を組み合わせた安定性重視の治療
6.よくある質問(FAQ)
7.まとめ|早期の評価が将来の関節トラブル予防につながります
【結論】「グレードだけ」で手術は決めない|症状と将来リスクを総合判断
パテラには「グレード」と呼ばれる、重症度を4段階で評価する目安があります。そのため、グレードの数値が手術の判断基準になるのではと考えられることもありますが、実際の診療ではグレードの数値だけで治療方針を決めることはありません。
歩き方や痛みの有無、関節の状態、将来的な悪化リスクなどを総合的に見て、その子に合った治療方針を検討していきます。
<今すぐ手術を検討するケース>
☑…

犬の誤飲誤食、切らずに治療できる?内視鏡(胃カメラ)による胃内異物摘出とは
愛犬が異物を飲み込んでしまったと気づいたとき「すぐにおなかを切る手術になるのでは…」と不安に思われる飼い主様も多いのではないでしょうか。
実際、誤飲・誤食は緊急性の高いトラブルですが、すべてのケースで開腹手術が必要になるわけではありません。異物の種類や大きさ、現在の位置、飲み込んでからの時間などによっては、内視鏡(胃カメラ)で切らずに取り除ける場合もあります。
今回は、犬の胃内異物に対する治療の選択肢や、内視鏡による摘出についてご紹介します。
■目次
1.胃内異物とは|どんなものが対象になるの?
2.催吐処置・内視鏡・開腹手術の違い|治療の選択はどう決まる?
3.内視鏡(胃カメラ)での異物摘出とは|体への負担を抑えた治療
4.ナガワ動物病院の診療の考え方|画像診断と適切な判断を重視
5.よくある質問(FAQ)
6.まとめ|「切らずに取り除ける可能性」もあるからこそ、早めの相談を
胃内異物とは|どんなものが対象になるの?
胃内異物とは、食べ物以外のものを飲み込んでしまい、それが胃の中にとどまっている状態を指します。
犬は好奇心からさまざまなものを口にしてしまうことがあり、特に次のようなものが多く見られます。
・布やタオル
・おもちゃの破片
・骨やガム
・石や木の枝
・串や紐状のもの など
何を飲み込んだかによって危険性や治療方法は大きく変わります。柔らかいものと鋭利なものでは、体への影響や対応の緊急度も異なるため、個別の判断がとても重要です。
<受診を検討したいサイン>
次のような様子が見られる場合は、胃内異物が疑われる状況です。
・急に嘔吐した
・食欲が落ちた
・えずく・吐きたそうにする
・元気がなく落ち着かない
・何かを飲み込んだ瞬間を目撃した
時間の経過によって、選択できる治療方法が変わってしまうこともあるため、誤飲に気づいた場合は「様子を見て翌日受診」ではなく、できるだけ早めにご相談いただくことが大切です。
<ご来院時のお願い>
診察をより正確に進めるため、次の情報があると大変参考になります。
・飲み込んだものと同じ物(可能であれば実物)
・誤飲したおおよその時間
・いつから症状が出ているか
これらの情報があることで、異物の危険性や適切な治療方法をよりスムーズに判断しやすくなります。もちろんすべての情報が揃っていなくても診察は可能ですので「何を飲み込んだか分からない」という場合でも、まずは早めにご相談いただければと思います。
異物誤飲の初動対応について詳しくはこちらをご覧ください
催吐処置・内視鏡・開腹手術の違い|治療の選択はどう決まる?
誤飲・誤食の治療は一つではなく、状態に応じて複数の選択肢があります。「どの治療になるか」は、時間経過や異物の位置が大きく関わります。
<催吐処置(吐かせる処置)>
誤飲直後であれば、薬を使って吐かせる処置が有効な場合があります。
ただし、
・飲み込んでから時間が経過している
・鋭利なものを飲んでいる
・中毒のリスクがあるもの
などの場合は適応外となることもあり、必ずしも行えるとは限りません。
<内視鏡での摘出(切らずに取り出す方法)>
内視鏡は、口から胃カメラを挿入して異物を直接つかみ、摘出する方法です。
異物が胃の中にとどまっている場合に適応となるため、特に重要なのは「早期受診」です。時間が経つと異物が腸へ移動し、内視鏡での摘出が難しくなることがあります。
<開腹手術>
次のようなケースではおなかを切って異物を取り出す外科手術(開腹手術)が必要になることがあります。
・異物が十二指腸以降へ移動している
・腸閉塞のリスクがある
・穿孔(消化管に穴があく危険)が疑われる
・内視鏡での摘出が困難な形状・大きさ
つまり「誤飲=即手術」ではなく、状態を見極めたうえで最適な方法を選択していくことが大切になります。
内視鏡(胃カメラ)での異物摘出とは|体への負担を抑えた治療
内視鏡による胃内異物摘出は、おなかを切らずに行える治療方法のひとつです。
<内視鏡治療の流れ>
一般的には次のような流れで実施します。
①全身麻酔下で安全に処置を行う
②口から内視鏡を挿入する
③胃内の異物の位置と状態を確認する
④専用の器具で異物を把持し、慎重に摘出する
おなかを切開しないため、体への負担を抑えられる可能性がある点が特徴です。ただし、すべての異物が内視鏡で対応できるわけではなく、状態によっては外科手術が必要になる場合もあります。
処置後の回復の経過は個体差がありますが、状態が安定していれば比較的早期に食事を再開できるケースも見られます。
当院では、高画質で胃や十二指腸まで観察可能な内視鏡機器(フジフィルム…

犬の気管虚脱|ガーガー音の放置は危険?受診の目安と治療法を解説
愛犬が「ガーガー」「ゼーゼー」と苦しそうな音を立てて呼吸しているのを見て「一時的なものかな」「少し落ち着けば大丈夫かな」と迷われたことはありませんか。
こうした呼吸音が続いている場合、気管がうまく開かず、空気の通りが悪くなっている状態が起きている可能性があります。その代表的な病気のひとつが「気管虚脱」です。
気管虚脱は、時間とともに進行していく病気で、音が出たり出なかったりするため、つい様子を見てしまいがちです。しかし、放置している間に呼吸への負担が少しずつ大きくなり、咳や息苦しさが慢性化してしまうこともあります。
今回は、犬の気管虚脱について、気づきやすい症状や放置した場合のリスク、動物病院での診断や当院での治療の考え方についてご紹介します。
■目次
1.こんな症状は要注意|受診の目安
2.気管虚脱とは|どんな病気?
3.放置するとどうなる?進行性という特徴
4.動物病院での診断
5.治療の考え方|ナガワ動物病院のスタンス
6.ご家庭でできる対策
7.よくある質問(FAQ)
8.まとめ|咳や呼吸音を放置しないために
こんな症状は要注意|受診の目安
次のような症状が見られる場合、気管虚脱が関係している可能性があります。
・「ガーガー」「ゼーゼー」といった苦しそうな呼吸音が出る
・興奮したときや運動後に症状が悪化する
・咳が続き、えずくような仕草をする
・呼吸が苦しそうで、動きたがらない
特に注意が必要なのは、次のようなサインが見られる場合です。
・咳と同時に失神する
・舌や歯ぐきの色が紫っぽくなる(チアノーゼ)
・呼吸が明らかに苦しそうな状態が続く
このような場合は、緊急性が高いおそれがあるため、できるだけ早く動物病院にご相談ください。
気管虚脱とは|どんな病気?
気管虚脱とは、空気の通り道である「気管」がつぶれ、空気が通りにくくなる病気です。
気管は本来、しっかりとした形を保っていますが、何らかの理由で支えが弱くなると、呼吸のたびに内側へつぶれてしまうようになります。その結果、息をするたびに気管が刺激され、咳や独特の呼吸音が出やすくなります。
特に、
・チワワ
・ヨークシャー・テリア
・ポメラニアン
・シー・ズー
といった小型犬や短頭種で多く見られることが知られています。ただし、犬種に関わらず発症する可能性があるため「うちの子は違う」と決めつけないことも大切です。
放置するとどうなる?進行性という特徴
気管虚脱は、時間の経過とともに少しずつ進行していく病気です。初めは「たまに咳をする」「音が出ることがある」程度でも、放置していると次のような変化が見られることがあります。
・咳や呼吸音が慢性的に続く
・呼吸が苦しくなり、失神を起こすことがある
・散歩や遊びなど、日常の動きがつらくなる
こうした変化は、少しずつ現れるため気づきにくいという点も、この病気の難しさです。
また、気管虚脱は心臓病(僧帽弁閉鎖不全症など)と影響し合うことがあります。どちらか一方の悪化が、もう一方の症状を強めてしまうケースもあり、咳や呼吸の変化を総合的に見ていくことが重要になります。
犬の僧帽弁閉鎖不全症について詳しく知りたい方はこちら
動物病院での診断
呼吸の異常は、見た目だけでは原因を判断することが難しい症状です。そのため、気管虚脱が疑われる場合には、症状の経過を丁寧に確認し、状態を客観的に評価することが重要になります。
▼問診・聴診
まず、これまでの症状について詳しくお話を伺います。咳が出始めた時期や頻度、悪化しやすい場面(興奮時・運動後など)を確認することで、症状の背景や進行の程度を整理します。あわせて、聴診によって呼吸音や異常音を丁寧に確認します。
▼レントゲン検査
気管虚脱の診断では、レントゲン検査が中心となります。息を吸ったときと吐いたときの両方を撮影し、呼吸にあわせて気管がどのようにつぶれているかを確認します。
さらに、状態に応じて「内視鏡検査」を検討することもあります。内視鏡検査は気管の内側を詳しく観察できる一方で、麻酔が必要になります。そのため当院では、まずはレントゲン検査で全体像を把握したうえで、必要性を判断することを大切にしています。
治療の考え方|ナガワ動物病院のスタンス
気管虚脱の治療は、基本的に内科療法が中心となります。気管への負担を減らし、症状が悪化する流れを断つことが治療のゴールです。
当院では、次のような考え方で治療を進めています。
・咳を抑えることで、気管への刺激を減らす
・呼吸を楽にすることで、症状の悪循環を断つ
投薬治療では、気管支拡張剤や去痰薬、鎮痛剤、吐き気止め(セレニア)を処方します。この中で、鎮痛剤と吐き気止めは鎮咳作用(咳を抑える作用)があることがわかっています。
というのも、そもそも咳は、喉や気管から受けた刺激が延髄の咳中枢と呼ばれる部分に伝わり、「異物を吐き出せ!」という命令が出されることで引き起こされています。鎮痛剤は咳中枢に、吐き気止めは刺激を伝達する経路にも作用することで、本来の働きとは異なりますが、咳を鎮める効果があるといわれています。
当院では、獣医師法の裁量権の範囲内でこうした適応外使用を試みています。あるいは、カルトロフェンという注射薬を週1回投与して気管軟骨のつぶれを改善する方法もあります。
状態に応じて、ネブライザー治療(薬を霧状にして気管や気道の粘膜に直接届ける治療)などを組み合わせることもあります。また、外科手術は、内科治療で十分な改善が得られない重症例に限って検討し、必要に応じて専門病院をご紹介します。
また、他院で治療がうまくいかなかった方のご相談にも対応しています。当院では画像診断に力を入れており、現在の気管の状態や呼吸の様子をあらためて整理したうえで、正確な診断に基づいた治療方針をご提案しています。
ご家庭でできる対策
気管虚脱の症状は、日常生活の過ごし方によっても大きく左右されます。ご家庭でのちょっとした工夫が、症状の安定につながることも少なくありません。
たとえば、
・適正体重を維持し、気管への負担を減らす
・散歩の際は、首輪ではなくハーネスを使用する
・興奮しすぎないよう、生活環境を整える
といった点が挙げられます。
こうした小さな積み重ねが、症状の悪化を防ぎ、日常生活を楽に過ごす助けになります。
よくある質問(FAQ)
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犬のチェリーアイ|放置して大丈夫?自然に治る?治療と手術の判断基準
愛犬の目頭に赤いふくらみが見え「これって放っておいても大丈夫?」「自然に治るの?」と不安に感じたことはありませんか?
これは「チェリーアイ」と呼ばれるもので、命に関わる病気ではありませんが、放置することで炎症や再発を繰り返し、将来的な目のトラブルにつながることがある病気です。一時的に引っ込むことはあっても、自然に完全に治るケースは多くありません。そのため、早めに状態を確認し、治療の必要性を判断することが大切になります。
今回は、チェリーアイの症状や放置した場合のリスク、治療の考え方について詳しく解説します。
■目次
1.こんな症状が見られたら「チェリーアイ」かもしれません
2.チェリーアイとは|犬に多い理由と仕組み
3.放置するとどうなる?
4.自然に治る?点眼だけで治る?
5.治療の選択肢|ナガワ動物病院の考え方
6.手術について|不安な飼い主様に知っておいていただきたいこと
7.ご家庭での注意点
8.よくある質問(FAQ)
9.まとめ|早めの判断が目の健康を守ります
こんな症状が見られたら「チェリーアイ」かもしれません
チェリーアイは、日常のスキンシップや何気ない視線の中で気づかれることが多い病気です。次のような様子が見られる場合、チェリーアイの可能性があります。
・目頭に赤く丸いふくらみが見える
・痛みは強くなさそうだが、目を気にしてこする
・片目だけに症状が出ている
・子犬や若い犬で発症している
見た目のインパクトは強いものの、初期は痛みが少ないことも多く「様子見してしまう」ケースが少なくありません。
チェリーアイとは|犬に多い理由と仕組み
「チェリーアイ」とは、目頭の内側にある“ピンク色のふくらみ”が、外に出て見えてしまう状態のことです。
このふくらみの正体は「第三眼瞼腺(だいさんがんけんせん)」という、涙をつくる大切な組織です。第三眼瞼腺は、目の内側にある「瞬膜(第三眼瞼)」と呼ばれる、目を守るための“もうひとつのまぶた”のような膜の奥に付いています。
普段、この第三眼瞼腺は瞬膜と一緒に目頭の奥に収まっているため、外からはほとんど見えません。しかし、第三眼瞼腺を支えている組織がゆるむと、腺だけが本来の位置から外に飛び出してしまうことがあり、この状態がチェリーアイです。正式には「第三眼瞼腺脱出」と呼ばれます。
犬に多く見られる理由としては、生まれつきこの腺を支える組織が弱い体質を持っている場合があること、また成長途中の時期は組織のバランスが変化しやすく、子犬〜若い犬で起こりやすいことが挙げられます。
また、犬種によって体質差があり、アメリカン・コッカー・スパニエル、ビーグル、ボストン・テリアなどで比較的よく見られる傾向がありますが、どの犬種でも起こる可能性がある病気です。
放置するとどうなる?
チェリーアイは、見た目に反して初期にはあまり痛みが出ないことも多く「元気そうだし、しばらく様子を見てもいいかな」と感じられることがあります。ただし、飛び出したままの状態が続くと、目には少しずつ負担がかかっていきます。
たとえば、
・外に出た腺が乾燥や刺激を受け、炎症を起こしやすくなる
・結膜炎や角膜炎を併発し、充血や痛みが出てくる
・涙の分泌バランスが崩れ、将来的にドライアイにつながる
・慢性化や再発を繰り返し、治療が長引いてしまう
といったリスクが考えられます。
「今は痛そうじゃないから」と様子を見ている間に、状態が進んでしまうことがある――この点が、チェリーアイで特に注意したいポイントです。
自然に治る?点眼だけで治る?
チェリーアイを見ると「この赤いふくらみ、自然に引っ込まないかな」「点眼だけで様子を見られたらいいのに」と思われる方も多いかと思います。実際に、一時的に腫れが引っ込むこともあります。
ただし、その場合でも、時間がたつと再び飛び出してしまうケースが少なくありません。これは、腺を支える構造そのものが元に戻ったわけではないためです。
点眼治療には、炎症を抑えたり、赤みや違和感をやわらげたりする役割がありますが、第三眼瞼腺を本来の位置に固定する治療ではありません。そのため「点眼=根本的に治す治療」と考えると、期待とのギャップが生じやすくなります。
一時的に落ち着いても再発を繰り返す場合は、今後どう向き合っていくかを一度整理するタイミングといえるでしょう。
治療の選択肢|ナガワ動物病院の考え方
チェリーアイの治療は「すぐに手術が必要」というケースばかりではありません。症状の程度や、日常生活への影響、再発の有無などを踏まえ、その子に合った治療の進め方を選択していくことを大切にしています。
たとえば、初めての発症で腫れが軽度な場合には、点眼治療を行いながら経過を観察することもあります。炎症が落ち着き、再発がなければ、そのまま様子を見ることも可能です。
一方で、何度も繰り返す場合や、好発犬種で再発のリスクが高い場合には、手術を検討する選択肢が出てきます。点眼で一時的に落ち着いても、再発を繰り返すことで、目にかかる負担が少しずつ大きくなってしまうことがあるためです。
なお、第三眼瞼腺を切除する方法もありますが、涙の分泌量が減り、将来的にドライアイを引き起こす可能性があるため、当院では推奨していません。
治療のゴールは「今の症状を抑えること」だけでなく、将来の目の健康を守ること。そのために、無理のないタイミングと方法を、飼い主様と一緒に考えていきます。
手術について|不安な飼い主様に知っておいていただきたいこと
チェリーアイの治療で「手術」という言葉を聞くと「目の手術なんて大丈夫だろうか」と不安に感じられる方も多いかと思います。
ただし、この手術で行うことは、飛び出してしまった第三眼瞼腺を切り取ることではありません。目的はあくまで、第三眼瞼腺を元の位置に戻し、安定させることです。
当院で行う手術の考え方は、次のとおりです。
・涙をつくる大切な第三眼瞼腺は、できるだけ残す
・将来的なドライアイのリスクを下げることを重視する
・再発をできるだけ防ぐ方法を選択する
再発の可能性が完全にゼロになるわけではありませんが、繰り返す負担を減らすための有効な選択肢であることも事実です。不安な点があれば、手術の前に一つずつご説明し、ご納得いただいたうえで進めていきます。
当院の眼科手術について詳しく知りたい方はこちら
ご家庭での注意点
チェリーアイの治療では、動物病院での処置だけでなく、ご家庭での過ごし方も回復に大きく関わります。特に、目をこすってしまうことが、悪化や再発の原因になることがあります。
ご自宅では、次の点に気をつけてあげてください。
・無理に触ったり、押し戻そうとしない
・目をこすったり、床や家具に擦りつけたりしないように見守る
・獣医師の指示なく、市販の点眼薬を使わない
治療中や手術後は、点眼によるケアやエリザベスカラーの装着が必要になることがあります。一時的に不便に感じられるかもしれませんが、目への刺激を防ぎ、治りをよくするための大切な対応です。
「この対応で合っているのかな」「嫌がっていてかわいそう」と感じたときは、遠慮なくご相談ください。その子の性格や生活環境に合わせて、無理のない方法を一緒に考えていきます。
よくある質問(FAQ)
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犬の白内障|目薬で治る?進行を止める?手術が必要な症状と治療を解説
犬の白内障について調べると「目薬で治るの?」「進行を止められる?」といった情報を目にすることが多いかもしれません。結論からお伝えすると、白内障を目薬だけで元の状態に戻すことは、基本的に難しいと考えられています。
点眼治療の主な目的は、白内障そのものを治すことではなく、進行をゆるやかにしたり、炎症などの合併症を抑えたりすることです。一方で、白内障の進行度や原因、全身状態によっては、手術を検討するケースもあります。大切なのは「目薬か手術か」を先に決めることではなく、今どの段階にあるのかを正しく知り、その子に合った治療方針を選ぶことです。
今回は、犬の白内障について、症状の見分け方から検査、治療の考え方について詳しく解説します。
■目次
1.すぐ受診したいサイン|こんな変化は見逃さないで
2.犬の白内障とは|水晶体が濁ることで起こる変化
3.核硬化症との違い|「白っぽい=白内障」ではありません
4.犬の白内障の原因|特に注意が必要なのは糖尿病性
5.動物病院での検査・診断の流れ
6.治療方法|点眼(目薬)と手術、それぞれでできること・できないこと
7.ご家庭でできること|日常生活での配慮
8.よくある質問(FAQ)
9.まとめ
すぐ受診したいサイン|こんな変化は見逃さないで
白内障はゆっくり進行することも多い一方で、状態によっては短期間で悪化するケースもあります。次のような変化がみられる場合は、早めの受診をおすすめします。
・目の中(水晶体)が急に白っぽくなった
・物や壁にぶつかる、段差を怖がるようになった
・目が充血している、痛そうにしている
・目やにが増えた
特に糖尿病を持っている犬では、白内障が急速に進行することがあるため、見た目の変化が少ないように感じても注意が必要です。
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犬の白内障とは|水晶体が濁ることで起こる変化
犬の目は、外側から角膜・水晶体・網膜という構造でできています。このうち水晶体は、カメラのレンズのように光を集め、網膜に像を結ぶ重要な役割を担っています。
白内障とは、この水晶体が濁ってしまう病気です。濁りが進むにつれて光がうまく届かなくなり、視力が低下します。
白内障は進行の程度によって、一般的に以下の段階に分けられます。
・初発白内障
・未熟白内障
・成熟白内障
・過熟白内障
初期の段階では視力低下に気づきにくいこともありますが、進行すると日常生活に支障が出るだけでなく、目の中で炎症(ぶどう膜炎)を起こすリスクも高まります。
核硬化症との違い|「白っぽい=白内障」ではありません
高齢の犬で目が白っぽく見える場合、白内障ではなく「核硬化症」という変化の可能性もあります。
核硬化症は、水晶体が加齢によって硬くなる現象で、見た目は白内障に似ていても、視力への影響はほとんどないとされています。治療が不要なケースも多く、白内障とは対応が異なります。
見た目だけでの判断は難しいため「白く見える=白内障」と決めつけず、必ず検査で見極めることが大切です。
犬の白内障の原因|特に注意が必要なのは糖尿病性
犬の白内障には、さまざまな原因があります。代表的なものとして、次のような要因が挙げられます。
・遺伝的要因
・加齢
・糖尿病
・ぶどう膜炎
・外傷
なかでも糖尿病性白内障は進行が非常に速いことが知られており、数日〜数週間で急激に悪化するケースもあります。糖尿病を持つ犬では、目の色の変化や見え方の変化に早めに気づき、できるだけ早く受診することが大切です。
また、ヨークシャー・テリアやボストン・テリアなどのテリア種は、遺伝的に白内障を発症しやすい傾向があるとされています。ただし、どの犬種でも白内障を発症する可能性があるため、犬種に関わらず、日頃から目の様子を観察しておくことが重要です。
動物病院での検査・診断の流れ
白内障が疑われる場合、動物病院では目の状態と全身の健康状態をあわせて確認しながら、段階的に検査を進めます。
▼目の状態を詳しく確認
専用の器具を使って、目の表面や内部の様子を観察し、白内障の進行度や炎症の有無を確認します。あわせて眼圧を測定し、緑内障などの合併症が起きていないかもチェックします。
▼必要に応じて全身チェック
糖尿病などの全身疾患が疑われる場合には、血液検査などを行い、体の状態を確認します。目だけでなく全身の情報を把握することで、治療方針をより安全に判断できます。
▼手術を検討する場合の追加評価
手術が選択肢に入る場合は、麻酔の安全性や網膜の状態などを評価し、その子にとって手術が適切かどうかを慎重に判断します。
検査内容は、白内障の進行度や体調によって異なります。気になる変化があれば、まずはお気軽にご相談ください。
治療方法|点眼(目薬)と手術、それぞれでできること・できないこと
犬の白内障治療には、大きく分けて「点眼(目薬)による治療」と「手術」の2つの選択肢があります。ただし、どちらが適しているかは、白内障の進行段階や原因、愛犬の年齢や持病などによって大きく異なります。
ここでは、それぞれの治療で期待できること・注意点を整理してご紹介します。
<点眼(目薬)治療でできること・限界>
白内障に対する点眼治療の主な目的は、白内障そのものを元に戻すことではなく、進行をゆるやかにしたり、炎症などの合併症を抑えたりすることです。
初期〜比較的早い段階の白内障では、進行抑制が期待できるケースもあります。一方で、すでに濁りが強く進行している場合には、点眼だけでは十分な効果が得られないことも少なくありません。そのため点眼治療は、効果の出方や進行の様子を定期的に確認しながら、治療方針を調整していくことが大切になります。
一般的には、加齢性白内障の進行抑制が期待される成分や、抗酸化作用が報告されている成分などが使用されます。当院でも、こうした考え方を踏まえ、状態に応じてライトクリーンやD-Smileなどの点眼薬を使用することがあります。ただし、いずれの点眼薬も「白内障を治す薬」ではなく、効果には個体差や限界がある点を理解しておくことが大切です。
<手術(白内障手術)を検討するケース>
白内障手術は、白く濁った水晶体を取り除き、人工レンズを挿入する外科治療です。犬の場合、人の白内障手術のように「視力を大きく回復させる」ことを目的とするのではなく、炎症や緑内障などの合併症を防ぐ意味合いが大きい点が特徴です。
例えば、次のような場合には、手術が選択肢として検討されることがあります。
・視力低下が進み、物にぶつかる、怖がって歩かなくなるなど、生活に支障が出ている
・白内障に伴う炎症や緑内障のリスクが高い
・水晶体脱臼が起こっている、または起こる可能性が高い
一方で、糖尿病性白内障、高齢(おおよそ15〜16歳以上)、重い心臓病などの持病がある場合、両目とも重度に進行している場合などでは、手術が適さないケースもあります。
手術には麻酔リスクや術後のケア、通院管理も必要になるため、必ずメリットとデメリットを比較しながら、慎重に判断していきます。
眼科手術について詳しく知りたい方はこちら
ご家庭でできること|日常生活での配慮
白内障が進行すると、これまで当たり前にできていた動きが少しずつ難しくなり、愛犬が不安を感じやすくなります。安心して過ごせるよう、日常生活の工夫や、治療の継続、小さな変化への気づきが大切です。
<生活環境の工夫>
視力が低下してくると、段差や物の位置が分かりづらくなり、思わぬケガにつながることがあります。次のような工夫を取り入れることで、日常の負担を減らすことにつながります。
・家具の配置をできるだけ変えない
・床の小物やコードを整理する
・段差には滑り止めマットを敷く
・夜間は足元灯などで明るさを補う
<点眼治療を続ける際の注意点>
点眼治療は、自己判断で中止したり回数や種類を変えたりせず、獣医師の指示に沿って続けることが重要です。
また、症状が落ち着いて見えても、目の中では変化が進んでいることもあります。充血や目やにが増える、痛がる様子が見られるなど、いつもと違う変化があれば早めにご相談ください。点眼が難しい場合も、方法や対応を一緒に考えていきましょう。
<日々の変化を見逃さない>
歩くスピードが遅くなった、段差を怖がる、物を見失うことが増えたなどの変化は、治療方針を見直すサインになることがあります。ご家庭での見守りと定期的なチェックを組み合わせながら、愛犬が安心して過ごせる環境を整えていきましょう。
よくある質問(FAQ)
白内障について、飼い主様から特に多く寄せられるご質問をまとめました。
Q:白内障は目薬だけで治りますか?
白内障を元に戻すことは、目薬だけでは難しいと考えられています。主な目的は進行をゆるやかにすることや、炎症などのトラブルを抑えることです。状態によって効果の出方は異なります。
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