犬と猫のチェリーアイについて┃目頭に赤い腫れがみえる

チェリーアイとは、通常目頭の奥に収まっている第三眼瞼腺(だいさんがんけんせん)が、まぶたの外へと飛び出すことで、目頭がさくらんぼのように赤く腫れる病気のことです。命にかかわるようなことはありませんが、放っておくと目の炎症にもつながってしまうため、早めの治療が肝心です。
今回は犬と猫のチェリーアイについて、なぜ起こるのかを詳しく解説するとともに、典型的な症状や当院での治療法をご紹介します。

 

原因

まぶたのことを眼瞼(がんけん)と呼びますが、犬や猫では上下のまぶたの他に、瞬膜(第三眼瞼)という眼瞼をもっています。瞬膜は正常であれば目頭の奥に隠れていてほとんどみえませんが、瞬膜の分泌腺(第三眼瞼腺)がまぶたの外側に飛び出てしまうことでチェリーアイを起こします。また別名、第三眼瞼腺脱出ともいいます。

チェリーアイの原因は分かっていませんが、遺伝やケガ、炎症などによって、第三眼瞼腺と瞬膜をつなぎとめる組織の力が弱まる(あるいは傷つく)ことで発症すると考えられています。

また2歳未満の若い犬での発生が一般的で、特にアメリカン・コッカー・スパニエルやビーグル、ボストン・テリアといった中型犬でよくみられます。特に犬で多いことが知られていますが、猫でも発症します。

症状

チェリーアイの最も明確な症状は、目頭に赤い腫れがみられることです。はじめは違和感や不快感を覚えるだけで、ほとんど痛みを感じませんが、自分で引っかいたり擦りつけたりすると第三眼瞼腺が傷つくおそれもあります。さらに長期化すると角膜炎や結膜炎に発展して痛みを生じ、目が赤くなったり、目に触られることを嫌がったりします
また第三眼瞼腺はいわゆる涙腺の1つで、涙の30~60%ほどを作っているといわれているため、脱出した第三眼瞼腺が外から刺激を受けることで涙が過剰に出てしまう状態が続きます。

診断

目頭から赤色のものが飛び出していれば、視診だけでもチェリーアイと推測できます
ただし、目の腫瘍の可能性もあるため、特に中~高齢の犬や猫では手術で瞬膜線の一部を取り、組織検査を実施する必要があります。

治療

治療にはいくつか選択肢がありますが、当院ではまずステロイドの点眼薬をお試しいただき、すぐに治るようであれば様子をみて治療を終了とします

点眼で治らなければステロイドの全身投与を試み、それでも再発する場合には手術を実施します。ただし、好発犬種であったり、エリザベスカラーがつけられなかったりする場合には、最初から手術をご提案するケースもあります。手術には様々な術式がありますが、いずれも第三眼瞼腺を正常な位置に戻して固定するものです。なお、第三眼瞼腺を切除すると涙の量が減少してドライアイを招くため、最近では推奨されていません。

当院の外科手術についてはこちらのページをご覧ください

また重度角膜潰瘍の記事でもお伝えしたとおり、目の病気はエリザベスカラーの素材や装着の可否も重要です。適切なエリザベスカラーを装着することで治療しやすくなり、治療期間も短縮できます。

ご家庭での注意点や予防法

遺伝が発症にかかわっているといわれているため、具体的な予防手段はありません。しかし、定期的な眼科検査を受けることで病気を早期に発見し、早期に適切な治療を開始することができます

発症してから時間がたつと、角膜炎や結膜炎に発展するため、目の赤みや腫れなど、いつもと異なる症状を発見した場合は、早急に獣医師の診断を受けることが重要です。

まとめ

チェリーアイだけでなく、目の病気は早めの対処が大切です。普段から愛犬・愛猫の様子をよく観察して、少しでも異常がみられたらすぐに動物病院を受診しましょう。

◼️目の病気に関してはこちらのページでも解説しています
犬と猫の重度角膜潰瘍について
犬の白内障について

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<参考文献>
Breed and conformational predispositions for prolapsed nictitating membrane gland (PNMG) in dogs in the UK: A VetCompass study – PMC (nih.gov)

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