繰り返す外耳炎に悩む愛犬・愛猫のために|全耳道切除術という治療選択肢について
「愛犬が耳をしきりにかいている」「愛猫の耳からにおいがする」といった耳のトラブルは珍しいことではなく、その多くは外耳炎によって起こります。実際に外耳炎は犬に非常に多い病気で、ペット保険の請求ランキングでも常に上位に入るほどです。
外耳炎は一度治っても再発を繰り返しやすく、放っておくと炎症が広がって治りにくくなることもあります。通常は点耳薬や内服薬で治療しますが、慢性化してしまった場合には「全耳道切除術」という手術が選択肢になることがあります。
今回は、外耳炎が繰り返される理由やその影響、そして全耳道切除術について詳しく解説します。
1.外耳炎とは?繰り返しやすい理由
2.繰り返す外耳炎がもたらす影響
3.どんな時に手術を検討するべき?
4.手術という選択肢|全耳道切除術(TECA)とは
5.ナガワ動物病院での手術以外のケア・選択肢について
6.まとめ
外耳炎とは?繰り返しやすい理由
犬や猫の耳は、私たち人間と同じようにいくつかの部位でできています。外から見える耳の部分を「耳介」、その奥に続く耳のトンネルを「外耳道」、さらに奥に鼓膜──という構造になっています。
外耳炎とは、この外耳道に炎症が起きてしまう病気のことです。原因はさまざまで、たとえば次のようなものが挙げられます。
・細菌やマラセチア(酵母菌)などの異常な増殖や感染
・耳ダニの寄生
・アレルギー体質(食物アレルギーや皮膚炎など)
・草の種や異物の侵入
といったものが知られています。犬でよくみられる印象がありますが、スコティッシュフォールドなど猫でも発症することがあるので注意が必要です。
さらに外耳炎には「繰り返しやすい」という特徴があります。
・耳が垂れていて蒸れやすい犬種や猫種では、耳の中が常に湿った状態になりやすい
・炎症が続くことで耳道の皮膚が厚くなり、通り道が狭くなってしまう
こうした要素が重なると「治ったと思ったのにまた再発する」という状況になりがちです。慢性化すると、耳のかゆみや痛みだけでなく、聞こえにくさや日常生活の質の低下にもつながるため、早めの対処が大切です。
繰り返す外耳炎がもたらす影響
犬や猫にとっては、外耳炎が続くことで毎日の生活そのものが不快でつらいものになってしまいます。
・強いかゆみや痛みで耳をかいたり頭を振ったりする
・常に違和感があり、落ち着かなくなる
・耳が聞こえにくくなる
・重症化すると鼓膜が破れ、中耳炎に進行することもある
また、飼い主様にとっても負担は小さくありません。「治療を続けてもなかなか良くならない」という不安や、繰り返す通院による時間的な負担、長引く治療費による経済的な負担が積み重なっていきます。
このように、繰り返す外耳炎は犬や猫にも飼い主様にも影響を及ぼす大きな問題です。改善が難しい場合には、次の治療選択肢を検討することが大切になります。
どんな時に手術を検討するべき?
外耳炎の多くは点耳薬や内服薬といった内科的な治療で改善が見込めます。ですが、中には薬だけでは治らないケースもあります。そのようなときには、手術という選択肢を検討することがあります。
たとえば…
・炎症が中耳や内耳にまで広がり、ふらつきやめまいなどの神経症状が出ている場合
・繰り返す炎症で耳道が厚くなり、薬が届かなくなってしまった場合
・耳道内に炎症性ポリープや腫瘍ができて、耳の通り道がふさがってしまっている場合
このようなときに「全耳道切除術(TECA)」という外科的な方法が治療の選択肢のひとつになるのです。
手術という選択肢|全耳道切除術(TECA)とは
全耳道切除術(TECA)は、耳道全体を取り除き、炎症や感染の原因そのものをなくしてしまう手術です。
<全耳道切除術の流れ>
手術の流れを簡単にご紹介します。
1. 耳の付け根の皮膚を切開し、耳道にアプローチできるようにします。
2. 周囲の組織や神経を守りながら、耳道全体を露出させます。
3. 炎症の原因となっている耳道部分を切除し、耳の形(耳介)は残したまま、皮膚ときれいにつなぎ合わせます。
耳の形(耳介)は残るため、見た目が大きく変わることはありません。炎症が中耳に及んでいる場合には、あわせて鼓室の処置を行うこともあります。
<メリット>
・感染や炎症の原因を根本から取り除ける
・薬では改善しなかったケースでも治療が期待できる
・痛みやかゆみから解放され、快適に過ごせるようになる
<リスク>
・顔面神経に影響が及び、一時的にまぶたや口元の動きが変化することがある
・被毛が耳の穴をふさいでしまうことがある
・鼓膜の処置を行うため、聴力に影響が出ることがある(ただし重度の外耳炎では、すでに聴力が低下しているケースも少なくありません)
全耳道切除術は「根治を目指せる治療」のひとつです。薬での改善が難しい場合でも、前向きに検討することで愛犬・愛猫に穏やかな毎日を取り戻してあげられる可能性があります。
ナガワ動物病院での手術以外のケア・選択肢について
「外耳炎=すぐに手術」というわけではありません。多くの場合、まずは点耳薬や内服薬などの内科的な治療で改善を目指していきます。実際、長く続く外耳炎でも、適切な治療を続けることでコントロールできるケースは少なくありません。
さらに必要に応じて、耳道内を詳しく確認できるオトスコープ(耳道内カメラ)を用いた処置を行うため、耳鼻科を専門とする医師をご紹介して治療にあたることもあります。
このように当院では、内科治療から外科手術まで幅広い治療オプションをご用意しています。大切なのは「その子にとってどの方法が一番良いか」を一緒に考えていくことです。状況に合わせた選択肢を丁寧にご提案しますので、安心してご相談ください。
まとめ
「外耳炎が治らない」「何度も繰り返す」というお悩みは決して珍しくありません。
犬や猫にとっても大きな負担となるため、ナガワ動物病院では内科治療から外科手術まで幅広い治療法に対応しています。なかでも、全耳道切除術(TECA)という根治を目指せる選択肢もご提案できるのは当院の強みのひとつです。
症状や状況に合わせて最適な方法を飼い主様と一緒に考え、安心して治療を受けていただけるように努めています。愛犬・愛猫の耳のトラブルでお困りの際は、どうぞお気軽にご相談ください。
<参考文献>
Richard G.Harvey, Gert ter Haar. 犬と猫の耳鼻咽喉疾患. 嶋田照雅 監訳. 2020. 緑書房.
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