シニア期の犬・猫に多い病気は、飼い主様が変化に気づいた時点で、すでに進行していることが少なくありません。

健康診断は「異常がないことを確かめる検査」と受け取られがちですが、当院では症状が出る前に不調を見つけるための手段と位置づけています。

人間でも30歳を過ぎると自治体から定期健診の案内が届きます。犬や猫は人間より速く年を取るため、7歳頃から年に2回、定期健診を受けることをおすすめしています。

検査を嫌がらないか、負担が大きくないかを心配される方もいらっしゃるでしょう。強く抵抗したり、噛もうとしたりする場合には鎮静を使うことはありますが、当院の検査の9割以上は麻酔をかけずに短時間で完了します。

動物病院では、健康診断も体調不良の相談も、基本的には同じかかりつけ医にて行います。これまでの診療記録や検査結果、普段の健康状態を把握しているため、わずかな変化にも気づいてもらいやすく、安心感につながります。
今回は、健康診断で見つかることが多い病気や当院のシニア健康診断の流れについてご紹介します。

 

シニア期は何歳から?健康診断の頻度とは

当院では、7歳を超えたシニア期以降は、年2回の健康診断をご提案しています。
高齢の犬・猫は、数か月で病態が大きく変わったり、新たな病気にかかったりすることがあるためです。

犬のリンパ腫をはじめ、短期間で症状が表れたり、状態が変化したりする病気もあります。
健康診断では大きな異常がみられなかったものの、その数か月後にしこりが見つかったケースがあります。間もなくして「進行の速いがん」と診断された時点では、残された時間が限られていたケースもあります。

このように、直近の健康診断で大きな異常がなくても、その後に新たな病気が表れる可能性があります。そのため、シニア期には定期的に体の状態を確認することが大切です。

犬のリンパ腫についてはこちらをご覧ください

犬や猫は1年で人の4~5歳分ほど年を取るとされるため、実際には3か月に1回ほどの間隔でかかりつけ医に立ち寄り、健康状態を確認できるのが理想的です。
また、犬は体格によっても老化の速さが異なるため、小型犬・中型犬・大型犬でその目安は変わります。
年齢だけで決めるものではなく、その子の経過や状態を見ながら適切な間隔を考えていきましょう。

また、「異常なし」という結果そのものにも意味があります。犬や猫にも「普段から脂質に関する数値がやや高め」といった個体差があります。そのデータが、具合が悪くなったときに「どこがどう変わったのか」を知る基準になるのです。

犬の健康診断で見つかることが多い病気

ここからは、当院の健康診断で見つかることが多い病気を順にご紹介します。飼い主様がご家庭で気づきやすい変化と、健康診断のどの検査が発見のきっかけになるのかもあわせてお伝えします。

<クッシング症候群>

「水を飲む量が増える」「お腹が張ってくる」「背中や体側の毛が左右対称に薄くなる」といった変化が代表的です。

血液検査の変化や副腎の超音波所見が、病気を疑うきっかけになることがあります。当院の健康診断で行う腹部超音波検査では、左右の副腎の大きさや形も基本的な確認項目のひとつとしています。

犬のクッシング症候群についてはこちらをご覧ください

<僧帽弁閉鎖不全症>

心臓の弁がうまく閉じなくなる病気です。進行すると「咳が出る」「散歩を嫌がる」「疲れやすい」といった変化が表れることがあります。

聴診で心雑音の有無を確認し、心臓の超音波検査で病気の進行度を評価します。なお、心雑音がない場合でも、超音波検査で僧帽弁からの逆流が見つかることがあります。

犬の僧帽弁閉鎖不全症についてはこちらをご覧ください

<慢性腎臓病>

飲水量や尿量の変化、体重の減少などがサインです。

血液検査に尿検査を組み合わせると、より早い段階で変化を捉えられる場合があります。

<腫瘍>

体表のしこりはご家庭で気づける場合がありますが、お腹のなかにできたしこりは外見や触って判断しにくいため、超音波検査やレントゲン検査が発見のきっかけになることがあります。

犬・猫のしこりについてはこちらをご覧ください

<膵炎・胆嚢の病気>

膵炎のほか、胆嚢粘液嚢腫をはじめとする胆嚢の病気も当院で多く見つかっています。いずれも、超音波検査によって膵臓や胆嚢の状態を確認します。

犬と猫の膵炎についてはこちらをご覧ください
犬と猫の胆嚢粘液嚢腫についてはこちらをご覧ください

猫の健康診断で見つかることが多い病気

猫には不調を隠す傾向があり、ご家庭での観察だけでは限界があります。

<慢性腎臓病>

当院でも高齢の猫によく見つかる病気のひとつです。飲水量や尿量の増加、体重の減少がご家庭で気づけるサインで、血液検査と尿比重を組み合わせて評価します。

猫の慢性腎臓病についてはこちらをご覧ください

<甲状腺機能亢進症>

食べているのに痩せる、落ち着きがなくなる、よく鳴くようになるといった変化が表れます。加齢による変化と受け取られやすい病気です。

猫の甲状腺機能亢進症についてはこちらをご覧ください

<心筋症>

症状が表れにくく、気づいたときには重い状態になっていることがあります。聴診だけでは分からない場合があるため、超音波検査での確認が必要です。

猫の肥大型心筋症についてはこちらをご覧ください

<好酸球性胃腸炎などの消化器の病気>

好酸球性胃腸炎をはじめとする消化器疾患では、超音波検査によって、血液検査だけでは分からない特徴的な腸壁の変化が見つかることがあります。

このように、犬と猫では、注意したい病気や症状の表れ方が異なります。それぞれの特徴を踏まえて、検査結果を評価することが大切です。

見た目や血液検査だけでは分からないこととは?

採血でもさまざまな情報が得られますが、臓器の形や大きさ、内部構造までは分かりません。

つまり、全身の状態を把握するには、血液検査に加えて次のような情報を組み合わせて総合的に判断する必要があります。

・身体検査(体重・体格・聴診・触診・口腔内の状態など)
・レントゲン検査
・超音波検査
・生活背景
・これまでの既往歴、経過

それぞれの検査で分かることが異なるため、健康診断では複数の検査を組み合わせ、多角的に体の状態を確認します。

身体検査では体型や心音、お腹の触り具合など外から分かる変化を、レントゲン検査では臓器のおおまかな大きさや位置、骨や肺の状態を確認します。ただし、どちらも臓器の「内側で起きている変化」まではとらえきれません。

その内側を、体を切開することなく確認できるのが超音波検査です。当院がシニア期の健康診断で超音波検査を重視しているのは、外見や血液検査だけでは分からない部分を、ここで埋められるためです。

<超音波検査で分かること>

超音波検査(エコー検査)は、体を切開せずに、臓器の形や内部構造、動きをリアルタイムで確認できる検査です。胃腸の動きのように、静止画からは読み取れない情報が得られます。

多くの場合は無麻酔で行えるため、シニア期の犬・猫でも検討しやすい画像検査のひとつです。また、外見や血液検査の数値だけでは分からない病気を見つけるうえでも有用です。

エコー検査についてはこちらをご覧ください

<健康診断は「何を知りたいか?」で考えます>

健康診断において「検査の種類を増やせばよい」「安ければよい」というものではなく、何を確かめたいかを考えることが大切です。

さまざまな動物病院が実施している「健康診断」ですが、各検査で何をどこまで見ているかは同じではありません。
例えば超音波検査でも、気になるところだけを確認するのか、毎回幅広く多角的に臓器を確認してくれるのかでは、得られる情報が異なります。

健康診断を受ける際は、検査項目の数だけでなく、「その検査で体のどこを、どのように確認するのか」にもぜひ目を向けてみてください。

健康診断の流れと当日までの準備

当院で健康診断を受ける際は、事前のご予約をお願いしています。

当日は身体検査から始め、ご希望の項目に応じて血液検査・尿検査・レントゲン検査・超音波検査を行います。

超音波検査は、1件ごとに腹部の臓器を幅広く確認していくため時間を要します。1日に実施できる数にも限りがあることから、予約制で承っています。基本的には「午前中にご来院いただき、夕方にお迎え」という流れです。

<当日までにご準備いただきたいこと>

持病がある場合や投薬中の場合は、絶食や投薬について事前にご相談ください。

・食事:前日の夜21時までに済ませ、12時間以上の絶食をお願いします
・飲水:家を出るまで普段どおりで問題ありません
・便・尿:オプション検査としてご希望の方はご持参ください
・メモ:普段気になっていることがあれば、整理して共有してください

結果説明では、検査数値をお伝えするだけでなく、生活環境も踏まえながら愛犬・愛猫の今後について飼い主様と一緒に考えます。そのため、説明には30分程度のお時間をいただいています。別途、診察としてご予約をお取りください。

まとめ|症状が出る前に見つけるシニア期の健康診断

シニア期の健康診断は、症状が表れる前に病気や不調を見つけ、一日でも長く楽しい時間を一緒に過ごすための大切な機会です。

健康診断では、血液検査に超音波検査を組み合わせることで、お腹のなかにある臓器の状態も確認できます。体への負担を抑えながら、外見からは分からない変化を捉えられるため、シニア期の健康チェックにも役立ちます。

そしてもうひとつ大切なのが、同じ場所で、同じ条件の検査を続けることです。毎年同じように検査を受けていれば、その子自身の「いつもの状態」が分かり、そこからの変化を読み取れるようになります。

実際に当院でも、こうしたことがありました。別の施設で撮影したレントゲンで肺に影があると指摘され、心配されて来院された飼い主様がいらっしゃいました。
当院にはその子が1歳の頃からのレントゲン画像が残っており、並べて見比べたところ、同じ位置に同じ影が以前から写っていることが確認できました。肋骨が重なって見えているもので、悪いものであればこの年月のあいだに変化が表れているはずです。
過去の画像があったことで、その場でご安心いただくことができました。

動物は言葉で不調を伝えられません。だからこそ、一度の数値や一枚の画像だけでなく、時間の流れのなかで変化を追えることに大きな意味があります。かかりつけ医のもとにこうしたデータが積み重なっていれば、専門的な治療のために他施設へご紹介する場合も、これまでの経過をそのまま引き継いだうえで診ていただくことができます。

気になる変化がある場合も、どの検査を受ければよいか迷う場合も、まずはお気軽にご相談ください。

【監修】ナガワ動物病院副院長 名川真ノ介(獣医師)

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更新:2026年9月

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「最近、水を飲む量が増えた気がする」「お腹だけが張ってきた」「背中や体側の毛が左右対称に薄くなってきた」

こうした変化がみられた場合は、一度検査で原因を確かめておくと安心につながります。
クッシング症候群の可能性も含め、血液検査や超音波検査で状態を確認してみませんか?

この病気は中高齢期の犬に多く、目立った症状がないまま進むことがあり、当院では健康診断のなかで異変が見つかるケースも少なくありません。
また、進行すると糖尿病や膵炎など別の病気を併発するおそれもあります。

今回は、クッシング症候群の特徴や症状、検査・治療について詳しく解説します。

 

見逃されやすいクッシング症候群のサイン

当院の診療でクッシング症候群を疑うきっかけとなるサインを、多くみられるものから順番にご紹介します。

<皮膚・被毛の変化>

獣医師がクッシング症候群に気づくきっかけとして多いのが、皮膚や被毛の変化です。

・左右対称の脱毛
クッシング症候群では、強いかゆみがないにもかかわらず、背中や体の左右で同じように毛が薄くなることがあります。あわせて、皮膚が薄くなる、毛づやが悪くなるといった変化がみられることもあります。

一方、かゆみが原因の脱毛では、犬が舐めたり掻いたりした部分を中心に毛が抜けるため、左右対称にならないことも少なくありません。

・繰り返す皮膚炎
治りきらない皮膚のトラブルの背景に、クッシング症候群が隠れていることがあります。

・アンダーコートが減る
本来アンダーコート(下毛)がある犬種なのに少ない状態になります。そのため、飼い主様からは気づきづらい毛のなくなり方です。

<体型の変化>

お腹の張り(腹囲膨満、ポットベリー)が代表的です。
また、食欲が増すことで食べる量が増え、実際に体重が増えたり、以前より太ってきたりすることもあります。
「よく食べるから健康だろう」「年齢のせいによる肥満かな」と思われやすいため、病気のサインとして気づかれにくいことがあります。

<飲水量の変化>

飲水量はご家庭でも客観的な数字として確かめられる貴重なサインです。

当院では、ご家庭で飲水量を測る際、1日分の水をあらかじめペットボトルなどに用意しておく方法をお伝えしています。24時間、その容器から飲み水を与え、翌日に残った量との差から飲んだ量を確認します。
途中で水を捨てたり交換したりした場合は、その量も含めて計算してください。

多飲を疑う目安のひとつは、飲水量が体重1kgあたり1日100mLを超える状態です。

ただし、1日だけ飲水量が多かったとしても、すぐに異常とは限りません。数日測ってみて、目安の飲水量を繰り返し超える場合は、一度ご相談ください。

クッシング症候群では、尿を濃くする力が弱まり、薄い尿が多く出ることがあります。その分、失った水分を補おうとして飲水量も増え、いわゆる「多飲多尿」がみられます。

<そのほかのサイン>

ほかにも、次のようなサインがみられることがあります。

・食べる量が増える
・息が荒い
・散歩を嫌がる

ここまで挙げた変化が目立たなくても、健康診断をきっかけにクッシング症候群を疑う変化が見つかる場合があります。 大切なのは、当てはまった症状の数ではありません。「以前と少し違う」と感じる変化があれば、その時点で動物病院に相談しておくことが、病気の早期発見につながります。

クッシング症候群とは|なぜさまざまな症状が起こるのか

では、なぜクッシング症候群になると、皮膚や被毛、体型、飲水量など、さまざまな変化が表れるのでしょうか。

クッシング症候群は、コルチゾールの作用が体内で過剰な状態になることで、さまざまな症状が表れる病気です。別名「副腎皮質機能亢進症」とも呼ばれています。

コルチゾールは副腎から分泌される、いわゆる「ストレスホルモン」です。これが過剰な状態になると、常にストレスがかかっているような反応が体の中で続き、さまざまな臓器に負担がかかります。

<クッシング症候群の原因>

クッシング症候群の原因は主に次の3つが考えられます。

・下垂体の腫瘍:下垂体から副腎を刺激するホルモンが過剰に分泌される
・副腎の腫瘍:副腎の腫瘍からコルチゾールが過剰に分泌される
・ステロイド薬の影響:薬の投与によってコルチゾールの作用が過剰になる(医原性クッシング症候群)

下垂体とは脳の近くにあり全身のホルモンをコントロールする器官で、犬の自然発症例ではこの下垂体の腫瘍に起因するものが約8割と多数を占めます。

また、中高齢の犬に多く、どんな犬種でも発症する可能性があります。

併発しやすい病気は命に関わることも

クッシング症候群そのものが、すぐに命に関わるとは限りません。ただし、ホルモンの過剰な状態が続くことで、糖尿病や膵炎など別の病気を併発し、愛犬の体に負担がかかることがあります。

・糖尿病:インスリンの働きが妨げられ、血糖を下げにくくなる
・膵炎:脂質代謝の変化などを背景に、併発することがある
・胆嚢粘液嚢腫:胆嚢内に粘液性の胆汁が蓄積し、胆汁の流れが妨げられることがある
・感染症:免疫の働きが抑えられ、細菌性の膀胱炎や皮膚感染症などを起こしやすくなる
・血栓症:血液が固まりやすい状態になる

糖尿病についてはこちらをご覧ください
膵炎についてはこちらをご覧ください
胆嚢粘液嚢腫についてはこちらをご覧ください

クッシング症候群では血栓症を起こしやすくなるほか、重い膵炎や感染症などを併発して全身状態が悪化すると、まれに播種性血管内凝固(DIC)と呼ばれる重篤な病態に至る可能性があります。DICは、全身の血管内で血液の凝固反応が異常に活性化し、微小な血栓による臓器障害や出血傾向を引き起こす病態です。クッシング症候群では、このような合併症によって全身状態が悪化し、命に関わる可能性もあります。

<早期発見が重要な理由>

クッシング症候群は、長く続くほどほかの病気を併発するリスクが高まります。
治療を始めたあとでも状態が悪化することはあり得ますが、早い段階で見つけて状態を管理できれば、合併症のリスクに注意しながら治療を進められます。

例えば、当院の診療では、以下のようなケースがありました。

【ケース①皮膚病の治療を一生懸命続けていても改善せず、薬やホームケアを継続していた】
→皮膚だけの問題と考えず、一度検査を受けることが大切です。

【ケース②クッシング症候群に気づかないまま経過し、食べられない状態が数日続いてから来院】
→膵炎を併発しており、すでに重篤な状態となっていました。食事がとれない場合は速やかに動物病院へご相談ください。

※病気の経過や治療への反応には個体差があります

また、症状がはっきり表れてから受診するよりも、健康診断の段階で異変に気づければ、より早く対応できます。
当院では健康診断の一環として、超音波検査で副腎の状態も確認しています。症状が目立たない時期から体の変化を確認することで、クッシング症候群を疑うきっかけや、ほかの病気の早期発見につなげています。

シニア犬・猫の健康診断で見つかる病気についてはこちらをご覧ください

検査でどう確かめるか

当院では検査を次のような流れで進めます。

1.身体検査
体重、BCS(体型の評価)、皮膚、被毛の状態などを確認します。当院では、クッシング症候群が疑われていない場合も、診察時に体型や皮膚、被毛の状態を確認しています。

2.血液検査・尿検査
血液検査では、肝臓や血糖、脂質などに異常がないかを確認します。
尿検査では尿比重を測定し、尿が薄くなっていないかなどを確認します。

3.超音波検査(エコー検査)
左右の副腎の大きさや形を確認し、下垂体性と副腎性のどちらが疑われるかを検討する材料にします。基本的に無麻酔で実施できるため、犬への負担を抑えられます。

副腎は小さく、特に右側は位置の関係から確認に技術を要する臓器です。当院では、超音波検査を担当する獣医師が左右両方の副腎を確認できる体制を整えています。

また、クッシング症候群の症状があるかどうかにかかわらず、当院の健康診断では超音波検査で左右の副腎の大きさも確認しています。

そのため当院では、飼い主様が変化に気づいて来院される前に、健康診断の超音波検査で副腎の変化に気づき、獣医師のほうから「一度ホルモン検査で確かめておきませんか」とご提案する流れが少なくありません。症状を訴えてから検査を始めるのではなく、超音波でとらえた変化を起点に次の検査へ進められることが、早期発見につながっています。

超音波検査(エコー検査)についてはこちらをご覧ください

4.ACTH刺激試験
クッシング症候群の疑いが強まった場合に行うホルモン検査です。

ただし、ACTH刺激試験だけで必ず診断が確定するわけではありません。症状やほかの検査結果と一致せず、クッシング症候群かどうか判断が難しいケースもあります。

獣医師より低用量デキサメタゾン抑制試験などの追加検査をご提案することもあれば、飼い主様が経過観察を選択される場合もあります。

クッシング症候群を調べる検査は、身体検査・血液検査・尿検査のみの場合は、その日のうちに終わります。超音波検査が必要な場合は、ご予約ください。また、血液検査の前は絶食をお願いしています。

検査前の絶食が必要かどうかや、当日の流れは、その子の状態や予定している検査によって異なります。持病やご不安な点があれば、ご遠慮なく獣医師にご相談ください。

治療の進め方と経過

クッシング症候群の治療方法は、原因によって異なります。下垂体性や副腎性では、内服薬によって過剰なコルチゾールの産生を抑え、症状を和らげながら合併症のリスクを抑えることを目指します。医原性の場合は、原因となったステロイド薬を獣医師の管理のもとで調整します。

内服薬による治療では、一般的に使用されるトリロスタンはもちろん、当院ではその子の状態に応じてミトタンという選択肢もご提案できます。作用の仕方が異なる薬から選べるため、同じクッシング症候群でも、その子の状態により合った治療を組み立てやすくなります。

なお、お薬は成分名(トリロスタン・ミトタンなど)と製品名のどちらでも呼ばれます。ほかの動物病院で処方を受けている場合は、お手元のお薬の名称をそのままお知らせいただければ、こちらで確認いたします。

いずれの薬でも、始めたあとは定期的に再検査を行い、効き方を確かめながら量を調整していきます。

薬が効きすぎると、コルチゾールが不足する医原性副腎皮質機能低下症になる可能性があります。自己判断で薬の量を変えたり中止したりせず、獣医師と相談しながら調整していくことが大切です。

犬のアジソン病についてはこちらをご覧ください

当院では、基本的に手術は行わず、内服治療を選択します。ただし、副腎腫瘍が原因となるクッシング症候群では、内服治療よりも手術が適している場合があります。腫瘍の大きさや広がり、犬の全身状態などを確認したうえで、飼い主様と治療方針を相談します。

<再検査と経過の観察>

治療を始めて終わりではなく、定期的な再検査を続けながら、その時々の状態に合わせて治療内容を見直していきます。

投薬を開始したら、ご家庭では「飲水量・食欲・元気の変化」に加えて「寒くないのに震えていないか」を観察するようにしてください。
震えは、薬が効きすぎてコルチゾールが不足しているときにみられることがあるため、普段との違いを確認する大切なサインのひとつです。

よくある質問(FAQ)

Q.クッシング症候群を発症したら、あとどのくらい一緒にいられますか?
当院では、どの病気についても「余命」という言い方をしていません。そして、クッシング症候群の経過は、原因となるタイプや年齢、合併症の有無、治療への反応などによって異なるため、一概にお伝えすることは難しいのが実情です。

病気そのものだけでなく、糖尿病や膵炎、血栓症などの併発が全身状態に影響することもあります。

そのため、症状が出てから対応するだけでなく、定期的な健康診断で体の変化を確認し、合併症も含めて早めに対処していくことが大切です。

Q.薬は一生続ける必要がありますか?
治療期間は、使用する薬やその子の状態によって異なります。

トリロスタンは、コルチゾールの過剰な産生を抑えるため、継続して服用することが一般的です。一方、ミトタンでは、獣医師の判断で休薬・中止する場合もあります。

Q.ほかの動物病院で経過観察・治療中ですが、相談できますか?
はい。当院では、クッシング症候群に関するセカンドオピニオンのご相談もお受けしています。

「クッシング症候群の可能性を指摘されたものの、まだ詳しい検査をしていない」「治療を続けているが症状が十分に改善しない」といった場合もご相談ください。

これまでの検査結果や治療経過を確認したうえで、追加検査が必要か、現在の治療内容を調整できるかを検討します。当院ではトリロスタンに加えてミトタンも扱っているため、その子の状態によっては異なる治療方法を検討できる場合があります。

Q.健康診断で指摘されましたが、症状は出ていません
症状がない段階で見つかった場合は、体調が大きく崩れる前に今後の対応を考えられます。

クッシング症候群は、症状の有無だけで治療の必要性を判断するものではありません。検査結果や副腎の状態、合併症の有無などを確認しながら、その子に合った治療を一緒に考えていきます。

Q.高齢ですが、検査や治療に耐えられますか
年齢だけで検査や治療をあきらめる必要はありません。

身体検査や超音波検査は、一般的に全身麻酔を必要としません。ACTH刺激試験では、体内で分泌されているホルモンと同様の働きをする薬を注射し、投与前後の採血で副腎の反応を確認します。
体調や持病を確認しながら、無理のない進め方を一緒に考えていきます。

まとめ|気になるサインがあれば、検査で確認しましょう

クッシング症候群では、多飲多尿、左右対称の脱毛、お腹の張りなど、日常生活のなかで気づける変化がみられることがあります。一方で、目立った症状がないまま進み、健康診断などの検査をきっかけに見つかる犬もいます。

「以前より水をよく飲む」「毛が薄くなった」「皮膚病がなかなか治らない」など、少しでも気になる変化があれば、一度ご相談ください。

また、ほかの動物病院でクッシング症候群を指摘された場合や、治療を続けても症状の改善がみられない場合は、セカンドオピニオンとしてもご相談いただけます。当院では超音波検査で副腎の状態を確かめたうえで、トリロスタンとミトタンのどちらが合うかも含めて、治療の進め方を検討します。

その子の状態に合わせて、必要な検査や治療を一緒に考えていきます。

【監修】ナガワ動物病院副院長 名川 真ノ介(獣医師)
(最終更新日:2026年9月30日)

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愛犬や愛猫の姿を眺めながら「少しぽっちゃりしているくらいがかわいい」と感じることもあるかもしれません。しかし、肥満は関節や心臓、呼吸器などに負担をかけ、さまざまな病気に関係します。

犬や猫の体重管理では、単に体重を減らすのではなく、年齢や体格、持病、生活環境に合った適正体重を目指すことが大切です。また、急激に食事を減らすと、かえって体調を崩す可能性があります。

今回は、犬や猫の肥満の見分け方や肥満によって起こりやすくなる病気、無理のない体重管理の進め方について解説します。

 

犬・猫の肥満とは?体重だけで判断しないことが大切

犬や猫の適正体重は、犬種・猫種や体格によって異なります。そのため「何kg以上なら肥満」と、体重の数字だけで一律に判断することはできません。

体型を確認する際には、体重とあわせて「BCS(ボディコンディションスコア)」を用います。BCSとは、肋骨や腰のくびれ、おなかのラインなどから、脂肪のつき方を評価する方法です。

ご家庭では、次のような点を確認してみましょう。

・肋骨が薄い脂肪越しに触れるか
・上から見たときに腰のくびれがあるか
・横から見たときに、おなかが適度に引き締まっているか

肋骨が触りにくい、腰のくびれが分からない、おなかが垂れているといった場合は、脂肪が多くついている可能性があります。

ただし、毛量が多い犬や猫では見た目だけでは分かりにくいため、定期的に動物病院で体重を測り、体型を確認してもらうと安心です。

肥満によって起こりやすくなる病気

肥満はそれ自体が体への負担になるだけでなく、すでにある病気を悪化させる要因にもなります。犬と猫では、特に注意したい病気が異なります。

<犬の肥満で注意したい病気>

犬では、体重が増えることで膝や股関節、背骨などへの負担が大きくなります。膝蓋骨脱臼や関節炎がある場合は、痛みや歩きにくさが悪化することもあります。

膝蓋骨脱臼について詳しくはこちらをご覧ください
関節炎について詳しくはこちらをご覧ください

また、胸やおなかに脂肪がつくと呼吸がしづらくなり、心臓や呼吸器への負担も増えます。短頭種や心臓病のある犬では、肥満によって症状が表れやすくなるため注意が必要です。

短頭種気道症候群について詳しくはこちらをご覧ください

肥満の状態では、麻酔薬の量の調整や手術中の呼吸管理が難しくなることもあり、麻酔や手術時のリスクにも影響します。

<猫の肥満で注意したい病気>

猫では、肥満と糖尿病の関係が深く、体重が増えることでインスリンが効きにくくなり、糖尿病を発症するリスクが高まります。

糖尿病について詳しくはこちらをご覧ください

また、猫にはもともと「肝リピドーシス」という病気のリスクがあります。これは、食事が十分にとれない状態が続いたときに、体が脂肪をエネルギーに変えようとする働きが強まり、その処理の負担が肝臓に集中することで起こります。肝臓の働きが大きく低下し、命に関わることもある病気です。

このとき、体に脂肪を多く蓄えている猫ほど、肝臓にかかる負担が短期間で大きくなります。そのため、普段よく食べていて体重が増えている猫は、少し食欲が落ちただけでも、痩せている猫より肝リピドーシスを起こすリスクが高くなります。

肥満の猫では「太っていること」そのものだけでなく、食欲が落ちたときに受ける影響が大きいという点にも注意が必要です。

このほか、肥満によって毛づくろいが難しくなる、動くことを嫌がる、尿石症などの泌尿器疾患に関係することもあります。

腎臓結石と尿管閉塞について詳しくはこちらをご覧ください
膀胱結石について詳しくはこちらをご覧ください

犬・猫ともに、肥満が続くと動きづらさや痛みにつながり、日常生活にも影響します。適正体重を保つことは、病気の予防だけでなく、体への負担を減らし、健康を維持するためにも重要です。

病気が原因で太ることもあります

食事量が多いわけではないのに太る場合や、急に食欲が強くなった場合は、病気が隠れている可能性があります。

犬では、甲状腺機能低下症やクッシング症候群などの内分泌疾患によって、体重が増えることがあります。特に、食欲が以前より強くなった、水を飲む量や尿の量が増えた、おなかが張ってきたといった変化がある場合は、体重だけの問題と考えず、検査を受けることが大切です。

甲状腺機能低下症について詳しくはこちらをご覧ください
クッシング症候群について詳しくはこちらをご覧ください

診察では、身体検査や血液検査を基本に、必要に応じてエコー検査などを行い、肥満の背景に病気がないかを確認します。

犬・猫が太る主な原因

肥満の多くは、食事からとるカロリーが、日常生活で消費するカロリーを上回ることで起こります。主な原因には、次のようなものがあります。

・フードやおやつの与えすぎ
・家族がそれぞれ食べ物を与えている
・避妊・去勢後の代謝の変化
・加齢による運動量や筋肉量の低下
・室内生活による運動不足

「それほど食べさせていないのに太る」という場合でも、詳しく伺うと、おやつや人の食べ物を含めて必要量を超えていることがあります。

また、犬や猫は人と比べて、運動だけで大きく体重を減らすことが難しい動物です。運動は筋力や関節の健康を保つうえで大切ですが、減量では食事からとるカロリーの調整が中心になります。

正しい体重管理の進め方

体重管理では、現在の体重だけで食事量を決めるのではなく、目標とする体重や年齢、活動量、持病などから、1日に必要なカロリーを考えます。

<食事とおやつの量を確認する>

まずは、フードを計量し、1日に実際どのくらい与えているかを確認します。家族が複数いる場合は、誰が何を与えたかを共有することも大切です。

おやつをすべて禁止する必要はありません。1日に与える量を決め、その分のカロリーを主食から調整することで、無理なく続けやすくなります。

<急激に食事を減らさない>

早く痩せさせようとして、食事量を大きく減らしたり、絶食させたりすることは避ける必要があります。

特に猫では、食事量を大きく減らすと、前述の「肝リピドーシス」を起こす可能性があります。体重が増えている猫ほどこのリスクは高くなるため、減量が必要な猫こそ、急に食事を減らさないことが大切です。短期間で体重を落とそうとせず、計画的に進めていきましょう。

また、極端な食事制限を続けると、体が消費するエネルギーを抑えようとして、かえって体重が落ちにくくなることもあります。体重を定期的に測定し、体調や筋肉量を確認しながら、計画的に減らしていくことが重要です。

ナガワ動物病院の体重管理

ナガワ動物病院では、体重だけでなく、体型や筋肉量、年齢、持病、食事内容、運動量などを含めて総合的に評価します。

「あまり食べさせていないのに太る」という場合には、実際にとっているカロリーを確認するとともに、内分泌疾患などが隠れていないかも調べます。身体検査や血液検査、必要に応じたエコー検査を組み合わせ、体重が増えた原因を見極めることが大切です。

そのうえで、目標体重や1日に必要なカロリーを考え、年齢や生活スタイルに合った減量プランをご提案します。体重や体調の変化を継続して確認しながら、無理なく続けられる方法を飼い主様と一緒に考えていきます。

よくあるご質問

Q. 何kgくらい痩せさせればよいですか?
目標体重は、体格や筋肉量によって異なります。
当院で避妊・去勢手術を行った犬や猫では、その頃の体重を目安にすることがあります。他院で手術を受けた場合は、体が成長した1歳頃の体重も参考になります。

Q. フードを減らせば痩せますか?
単純に量を減らすだけでは、必要な栄養まで不足する可能性があります。
現在与えているフードのカロリーやおやつの量を確認し、目標体重に応じた摂取カロリーを考えることが大切です。

Q. 高齢でもダイエットして大丈夫ですか?
高齢の犬や猫でも、体の状態に合わせて計画的に行えば体重管理は可能です。
ただし、筋肉まで落ちると足腰が弱くなるため、体重だけでなく筋肉量や持病も確認しながら進める必要があります。

まとめ|まずは今の体重と体型を確認しましょう

肥満は、関節や心臓、呼吸器への負担を増やすほか、糖尿病などの病気にも関係します。一方で、体重が増えた背景に内分泌疾患などが隠れていることもあります。

ナガワ動物病院では、身体全体の状態や検査結果、生活背景をもとに、体重が増えた原因と適正体重を見極めます。そのうえで、飼い主様と相談しながら、その子に合った体重管理の方法を考え、経過を継続して確認していきます。

体重や体型が気になる場合や、以前より食欲が増えた、動きにくそうになったといった変化がある場合は、お気軽にご相談ください。

【監修】ナガワ動物病院副院長 名川 真ノ介(獣医師)

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愛犬の目頭に赤いふくらみが見え「これって放っておいても大丈夫?」「自然に治るの?」と不安に感じたことはありませんか?

それは「チェリーアイ」と呼ばれる病気かもしれません。命に関わることはほとんどありませんが、飛び出した組織が炎症を起こしたり、目をこすることで角膜を傷つけたりすることがあります。

一時的に引っ込むことはあっても、自然に治ることは基本的に期待できません。目の健康を守るためにも、早めに状態を確認し、治療が必要か判断することが大切です。

今回は、犬のチェリーアイの原因や放置した場合のリスク、点眼や手術による治療、費用や再発の考え方、ご家庭での注意点について解説します。

 

こんな症状が見られたら「チェリーアイ」かもしれません

チェリーアイは、日常のスキンシップやアイコンタクトを取る中で気づかれることが多い病気です。次のような様子が見られる場合、チェリーアイの可能性があります。

・目頭に赤く丸いふくらみが見える
・目を気にしてこする
・白目が充血している
・涙や目やにが増えている
・子犬や若い犬で発症している

見た目の変化は目立つものの、初期は痛みが少ないことも多く、「元気そうだから」と様子を見てしまうケースも少なくありません。

チェリーアイとは|犬に多い理由と仕組み

「チェリーアイ」とは、目頭の内側にあるピンク色にふくらんでいる部分「第三眼瞼腺(だいさんがんけんせん)」が、本来の位置から外に飛び出した状態です。正式には「第三眼瞼腺脱出」といいます。

第三眼瞼腺は、涙をつくる大切な組織です。通常、外からはほとんど見えませんが、この腺を支えている組織がゆるむと、赤いふくらみとなって目頭に現れることがあります。

犬に多く見られる理由としては、生まれつきこの腺を支える組織が弱い体質を持っている場合があること、また成長途中の時期は組織のバランスが変化しやすく、子犬〜若い犬で起こりやすいことが挙げられます。

また、犬種によって体質差があり、アメリカン・コッカー・スパニエル、ビーグル、ボストン・テリアなどで比較的よく見られる傾向がありますが、どの犬種でも起こる可能性がある病気です。

症状は片目だけに出ることもあれば、両目に出ることもあります。また、片目だけに発症した場合でも、もともとの体質によっては、後から反対側の目にも起こる可能性があります。

放置するとどうなる?

チェリーアイは、見た目に反して初期にはあまり痛みが出ないことも多く、「元気そうだし、しばらく様子を見てもいいかな」と思われることもあるかもしれません。しかし、第三眼瞼腺が外に飛び出したままの状態が続くと、少しずつ目に負担がかかっていきます。

例えば、

・外に出た腺が乾燥や刺激を受け、炎症を起こしやすくなる
・目をこすることで結膜や角膜を傷つける
・結膜炎や角膜炎を併発し、充血や痛みが出てくる
・涙の分泌バランスが崩れ、ドライアイにつながる
・慢性化や再発を繰り返し、治療が長引く

といったリスクが考えられます。

また、一度引っ込んだとしても、第三眼瞼腺を支える構造が改善したわけではないため、再び飛び出すことがあります。「今は痛そうではないから」「引っ込んだから」と様子を見ている間に、状態が進んでしまうことがある点は、チェリーアイで特に注意したいところです。

自然に治る?点眼だけで治る?

チェリーアイが一時的に引っ込むことはありますが、自然に治ることは基本的に期待できません。また、一時的に引っ込んだ場合も、第三眼瞼腺を支える組織の弱さが残っているため、時間がたつと再び飛び出してしまう可能性があります。

点眼薬には、炎症や赤み、違和感を抑える役割があります。ただし、飛び出した第三眼瞼腺を本来の位置に固定する治療ではありません。

初めての発症で炎症が軽い場合などには、点眼を行いながら経過を見ることもあります。一方で、何度も繰り返す場合や、点眼を続けても安定しない場合には、手術を検討します。

治療の選択肢|ナガワ動物病院の考え方

当院では、症状の程度や炎症の有無、再発の回数、年齢などを踏まえ、その子に合った治療の進め方を選択することを大切にしています。日常生活への影響や生活環境についても伺い、点眼で経過を見る場合と手術を行う場合についてご説明しながら、飼い主様と一緒に治療方針を考えていきます。

一般的に、チェリーアイの手術には、飛び出した第三眼瞼腺を元の位置に戻して固定する方法と、第三眼瞼腺を切除する方法がありますが、当院では第三眼瞼腺をできるだけ温存する方針です。第三眼瞼腺は涙をつくる大切な組織であり、切除すると涙の量が減って、将来的にドライアイにつながる可能性があるためです。

目に見えるふくらみを取り除くことだけを目的とせず、生まれ持った目の構造をなるべく損なわない形に戻し、その後の目の健康まで考えて治療にあたっています。

手術について|不安な飼い主様に知っておいていただきたいこと

目の手術と聞くと、麻酔や入院について不安を感じる飼い主様も多いかと思います。

チェリーアイの手術は全身麻酔下で行うため、当院では、まず診察や必要な検査で全身状態を確認し、麻酔をかけられる状態かを丁寧に見極めます。また、手術の内容や当日の流れ、入院が必要かどうか、退院までの見通しについて事前にご説明し、ご納得いただいたうえで手術を行います。

<手術費用について>

手術費用は、片目か両目か、目の状態、必要な検査、入院の有無などによって異なります。一律の金額をご案内することが難しいため、診察で状態を確認したうえで、治療内容とあわせてご説明します。

<手術後の再発について>

手術後も、第三眼瞼腺が再び飛び出す可能性はあります。再発した場合は、目の状態や手術後の経過を確認し、点眼で炎症を抑えながら経過を見るのか、再手術を行うのかを検討します。

手術前には、治療によって期待できることだけでなく、再発の可能性や術後の見通しについてもお伝えします。気になることがあれば、手術を決める前に遠慮なくご相談ください。

当院の眼科手術について詳しくはこちらをご覧ください

ご家庭での注意点

チェリーアイの治療では、動物病院での処置に加え、ご家庭での過ごし方も回復に関わります。特に、目をこすると症状の悪化や再発につながることがあるため、次の点に注意が必要です。

・飛び出した部分を無理に触ったり、押し戻したりしない
・処方された点眼薬は、決められた回数と期間を守って使用する
・目を前足でこすったり、床や家具にこすりつけたりしないように見守る
・獣医師の指示なく、市販の点眼薬を使わない

<エリザベスカラーは指定されたものを使用してください>

手術後は、エリザベスカラーの装着が必要です。エリザベスカラーは、必ず病院でサイズを確認したものを使用してください。柔らかい素材や長さが足りないタイプでは、装着していても前足や家具が目に届いてしまうことがあります。

当院でも、ご家庭で市販の柔らかいカラーへ変更したことで手術部位を傷つけ、再手術が必要になったケースがあります。術後は、ある程度硬さのあるハードタイプを、獣医師から指示された期間装着することが重要です。

一時的に過ごしづらそうに見えることもありますが、目への刺激を防ぎ、手術した部分を守るための大切な対応です。装着中の食事や睡眠で困ることがあれば、まずは一度ご相談ください。

よくある質問(FAQ)

Q. 自然に治ることはありますか?
自然に治ることは基本的に期待できません。一時的に引っ込むことはありますが、再び飛び出す可能性があります。

Q. 片目だけですが、もう片方にも出る可能性はありますか?
片目だけに発症することもありますが、チェリーアイを起こしやすい体質がある場合、反対側の目にも出る可能性があります。

Q. 子犬でも手術が必要になることはありますか?
症状の出方や経過を見ながら判断します。年齢だけで決めてしまうのではなく、脱出を繰り返す場合や今後も再発が心配される場合には、子犬であっても手術を検討することがあります。

Q. 手術費用はどのくらいかかりますか?
片目か両目か、手術方法、必要な検査や入院の有無などによって異なります。診察で目の状態を確認したうえで、治療内容とあわせてご説明します。

Q. 手術をしても再発することはありますか?
当院では、生まれ持った目の構造をなるべく損なわないよう、第三眼瞼の軟骨を切除せずに手術を行うため、再発のリスクは残ります。再発した場合、状態に応じた治療を行います。

Q. 猫もチェリーアイになりますか?
猫でも発症します。治療の考え方は犬と大きく変わりませんが、状態や性格によって対応が異なる場合があります。

まとめ|早めの判断が目の健康を守ります

チェリーアイは緊急性の高い病気ではありませんが、放置することで将来的な目のトラブルにつながる可能性があります。「自然に治るかも」と様子を見るのではなく、一度状態を確認することが、愛犬の目の健康を守る第一歩です。

ナガワ動物病院では、現在の症状だけでなく、その後の目の健康も考え、その子に合った治療方針をご提案しています。気になる症状があれば、お気軽にご相談ください。

【監修】ナガワ動物病院副院長 名川 真ノ介(獣医師)

(最終更新日:2026年8月21日)

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<参考文献>
Dan G O’Neill, Yahui Yin, Roser Tetas Pont, Dave C Brodbelt, David B Church, Camilla Pegram, Minna Mustikka. “Breed and conformational predispositions for prolapsed nictitating membrane gland (PNMG) in dogs in the UK: A VetCompass study”. National Library of Medicine. 2022-01-26.
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8791520/, (参照:2023/12/5)

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交通事故や高い場所からの落下後に、犬や猫が突然後ろ足を着かなくなったり、足を引きずったりしている場合は、股関節脱臼を起こしている可能性があります。

股関節脱臼は、時間が経つほど元の位置に戻しにくくなることがあります。外傷後に足を使わない、強く痛がるといった様子が見られた場合は、できるだけ早い段階で状態を確認することが重要です。

今回は、犬や猫の股関節脱臼で見られる症状や検査、外れた関節を元に戻す「整復」、手術が必要になるケースについて解説します。

 

股関節脱臼とは

股関節は、骨盤にあるお椀状のくぼみに、大腿骨(太ももの骨)の丸い先端部分「大腿骨頭」がはまり込むことで形成されています。

股関節脱臼とは、この大腿骨頭が骨盤のくぼみから外れた状態です。犬や猫では、交通事故や高所からの落下、転倒などによって股関節に強い力が加わることで起こるケースが多く見られます。

また、まれに股関節形成不全など、もともと関節が不安定になりやすい状態が関係していることもあります。

股関節脱臼で見られる症状

股関節脱臼を起こすと、次のような変化が見られることがあります。

・後ろ足を挙げたまま、地面に着かない
・足を引きずる、歩けない
・左右の後ろ足の長さが違って見える
・足先が内側または外側を向いている
・股関節の周辺を触ると痛がる
・立ち上がることや動くことを嫌がる

ただし、骨折や靱帯の損傷などでも、同じように足を着かなくなることがあります。ご家庭で脱臼かどうかを見分けることは難しいため、外傷後に足を使わない場合は、早めに動物病院で状態を確認することが大切です。

また、無理に歩かせたり、足を引っ張って戻そうとしたりすると、骨や関節周辺の組織を更に傷める可能性があります。受診までの間は、できるだけ動かさずに過ごせるようにし、そのままの状態でご相談ください。

股関節脱臼の検査

股関節脱臼が疑われる場合は、次のような検査を組み合わせて状態を確認します。

・触診・歩様評価
足の向きや左右の長さ、痛みがある場所、関節の動きなどを触診で確かめます。歩ける状態であれば、立ち方や歩き方も確認し、どの動きで足に負担がかかっているかを見ていきます。

・レントゲン検査
大腿骨頭がどの方向へ外れているか、股関節や骨盤に骨折がないか、もともとの関節の形に異常がないかを確認します。骨折を伴っている場合や、股関節が不安定な場合には適した治療方法が変わるため、治療を行う前の重要な検査です。

・エコー検査
当院では、必要に応じてエコー検査も行います。レントゲンには写りにくい筋肉や腱などの軟らかい組織を確認できるほか、関節周辺の動きをリアルタイムで見ることができます。
基本的に麻酔を必要とせず、痛みを伴わない検査です。骨だけでなく、その周囲の組織も含めて状態を把握し、治療方針を検討します。

整形外科のエコー検査について詳しくはこちらをご覧ください

股関節脱臼の治療

股関節脱臼では、外れた関節を元の位置へ戻す「整復」を行います。整復の方法には、手術をせずに戻す方法と、外科手術があります。

<手術をせずに関節を元に戻す方法>

麻酔をかけた状態で、外れた大腿骨頭を手で元の位置へ戻す方法を「非観血的整復」といいます。

骨折がなく、脱臼してからあまり時間が経っていない場合に検討します。時間が経つと、周囲の筋肉が縮んで関節を元に戻しにくくなることがあるため、早めに処置できるかどうかが重要です。

また、関節を元に戻しても、周囲の組織が安定するまでは再び外れる可能性があります。そのため、整復後は一定期間、足の動きを制限します。

<整復後の固定>

当院では、整復後の固定に多くのケースで「ホブル包帯」を採用しています。両後ろ足が開きすぎないように動く範囲を調整する方法で、足全体を巻き上げる従来の包帯法よりも体への負担やストレスを抑えながら、再脱臼を防ぐ効果が期待できます。

特に、大腿骨頭がおなか側へ外れた脱臼に適していますが、小型犬では、状態によって背中側への脱臼にも使用できる場合があります。適しているかどうかは、脱臼の方向や体格だけでなく、整復後の関節の安定性や足の動きも確認して判断します。

<外科手術>

手術をせずに関節を元へ戻せない場合や、戻しても再び外れてしまう場合、骨折を伴っている場合には、外科手術を検討します。

手術には、股関節を元の位置へ戻して固定する方法のほか、大腿骨頭とその付け根を切除する「大腿骨頭切除術」があります。

大腿骨頭切除術では、骨同士が直接ぶつからない状態をつくり、周囲の筋肉や組織によって足を動かせるようにします。一般的には、体重が軽い犬や猫ほど、治療後に歩行機能を取り戻しやすい傾向があります。

当院では、体重が15kgを超える子には、大腿骨頭切除術を積極的におすすめしないことがあります。体重が重いほど手術後の股関節に負担がかかり、歩きにくさが残る可能性があるためです。

大型犬では人工股関節置換術が選択肢になることもあり、その場合は専門病院をご紹介します。ただし、体重だけで治療方法が決まるわけではありません。痛みや歩行状態、年齢、全身状態なども踏まえて、適した治療方法を検討します。

ナガワ動物病院の股関節脱臼に対する取り組み

ナガワ動物病院では整形外科診療に力を入れ、レントゲン検査に加えて、触診や歩き方の確認、必要に応じたエコー検査を組み合わせて診断しています。

股関節脱臼では、関節が外れていることだけでなく、脱臼した方向や骨折の有無、周囲の組織、整復後の安定性まで確認することが、治療方法を選ぶうえで重要です。

手術をせずに整復できるのか、どの固定方法が適しているのか、手術が必要なのかを見極め、体格や生活環境も踏まえて治療方針をご提案します。

また、診断や整復を担当した獣医師が、治療後の歩き方や関節の回復まで継続して確認します。経過に合わせて安静期間やリハビリの進め方を調整できることも、かかりつけの動物病院で治療を行う利点です。

ご家庭での注意点と予防

治療後は、関節周辺の組織が安定するまで安静に過ごす必要があります。ご家庭では、次のような点に注意しましょう。

・滑りやすい床にはマットを敷く
・段差の上り下りを避ける
・ソファやベッドから飛び降りないようにする
・必要に応じてケージやサークルで動きを制限する

その後は、関節の状態を確認しながら、筋力を戻すための運動やリハビリを少しずつ始めます。

特に大腿骨頭切除術の後は、周囲の組織が関節の代わりとなって安定するまで、数か月かかることがあります。高齢の犬や猫では回復に時間がかかる場合もあるため、状態に合わせて進めていきます。

また、体重が増えると股関節や後ろ足への負担も大きくなります。治療後の回復を支えるためにも、適正体重を保つことが大切です。

<交通事故や落下を防ぐ環境づくり>

股関節脱臼の予防には、交通事故や高い場所からの落下を防ぐことも重要です。
散歩中の飛び出しや、高い家具、窓、ベランダからの転落が起こらないよう、日頃から生活環境を見直しておきましょう。

よくあるご質問

Q. 股関節脱臼は自然に戻りますか?
自然に元の位置へ戻ることは、基本的に期待できません。そのままにすると痛みが続き、関節炎や歩きにくさにつながる可能性があります。

Q. 必ず手術が必要ですか?
必ずしも手術が必要とは限りません。脱臼してからあまり時間が経っておらず、骨折がない場合は、手術をせずに整復できることがあります。

Q. 高齢でも治療できますか?
高齢という理由だけで、治療ができないわけではありません。ただし、若い犬や猫に比べると、筋力の回復や、手術後に関節周辺の組織が安定するまでに時間がかかることがあります。全身状態や麻酔の負担、痛み、歩行への影響などを確認したうえで、治療方法を検討します。

まとめ|外傷後に足を着かないときは早めに受診を

股関節脱臼は、早い段階で状態を確認し、脱臼の方向や骨折の有無に応じた治療を行うことが重要です。事故や転落の後に、歩き方や足の様子に気になる変化が見られた場合は、なるべく早く動物病院にご相談ください。

ナガワ動物病院では、状態に応じて必要な検査を組み合わせ、整復や手術の適応を見極めたうえで、飼い主様と相談しながらその子に合った治療方針を決めることを大切にしています。また、治療後も歩き方や関節の状態を継続して確認し、経過に合わせてリハビリや日常生活についてご案内しながら、無理のない回復を支えていきます。

【監修】ナガワ動物病院副院長 名川 真ノ介(獣医師)

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「健康診断で心雑音を指摘された」
「最近、咳が増えて呼吸も速くなった気がする」
「突然ふらついたり、意識を失ったりすることがある」

このような変化が見られる場合、犬に多い心臓病のひとつである「僧帽弁閉鎖不全症」が関係していることがあります。

僧帽弁閉鎖不全症は進行性の病気です。一方で、早期に発見し、その時期に適した治療を行うことで、その後の経過を大きく変えられる可能性があるため、気になる症状がある場合は、早めに受診することが大切です。

今回は、犬の僧帽弁閉鎖不全症について、初期から末期までの症状やステージ別の見通し、手術をしない場合の考え方や、当院の心エコー検査による評価について解説します。

 

犬の僧帽弁閉鎖不全症とは?

僧帽弁は、心臓の中で血液が逆流しないように開閉する弁です。僧帽弁閉鎖不全症では、この弁が厚くなったり形が崩れたりして十分に閉じなくなり、血液の一部が本来とは反対の方向へ流れます。

逆流が続くと、心臓は多くの血液を処理しようとして徐々に拡大し、正常な働きを保ちにくくなります。さらに病気が進むと、その影響が肺の血管にも及び、肺に水分がたまる「肺水腫」を起こして呼吸が苦しくなることがあります。

中高齢の小型犬に多く、キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル、チワワ、マルチーズ、トイ・プードル、シー・ズー、ポメラニアンなどでは特に注意が必要です。

初期には目立った症状がなく、健康診断の聴診で心雑音を指摘されて初めて気づくケースも少なくありません。

一方で、聴診で心雑音が確認されなかった場合でも、心エコー検査を行うと僧帽弁からの逆流が見つかることがあります。心雑音として聞こえるかどうかは、逆流の程度や心臓の状態、体格などにも影響されるためです。

つまり、「心雑音がない」ことは「心臓に変化がない」ことを意味するわけではありません。好発犬種や中高齢の場合は、聴診の結果にかかわらず、一度心臓の状態を画像で確認しておくと安心です。

僧帽弁閉鎖不全症の症状|初期から末期まで

僧帽弁閉鎖不全症は、進行するにつれて呼吸や活動量などに変化が表れます。ただし、症状の種類や進行の速さには個体差があります。

<初期に見られる変化>

初期にはほとんど症状がなく、犬によっては、以前より散歩や運動を嫌がる、運動後に軽い咳が出るといった変化が見られることがあります。

<進行したときに見られる症状>

心臓への負担が大きくなると、次のような症状が表れます。

・咳が増える
・安静にしていても呼吸が速い
・散歩中に立ち止まる、疲れやすい
・食欲や元気が低下する
・ふらつく、失神する

また、僧帽弁を支える「腱索(けんさく)」が切れると、血液の逆流が急激に増えることがあります。短時間で肺水腫を起こし、突然死につながる可能性もあるため注意が必要です。

<重度に進行したときに見られる症状>

病気が末期まで進行すると、肺水腫による強い呼吸困難が見られることがあります。呼吸が速く浅い、横になれず座ったまま呼吸する、舌や粘膜が青紫色になるといった症状のほか、失神や腹水を伴うこともあります。

ステージ別に見る治療と見通し

犬の僧帽弁閉鎖不全症は、心臓の変化や心不全の有無に応じて、A・B1・B2・C・Dの5段階に分けて評価します。これは、米国獣医内科学会(ACVIM)が示す診療指針に基づく分類で、治療を始める時期や、その後の経過を考えるうえで重要な目安になります。

<ステージA|発症リスクがある段階>

好発犬種など、将来的に僧帽弁閉鎖不全症を発症する可能性はあるものの、心雑音や心臓の異常はまだ認められていない段階です。

通常は投薬を行わず、健康診断で心音や全身状態を定期的に確認します。

<ステージB1|逆流はあるが心臓の拡大がない段階>

心雑音や僧帽弁からの血液の逆流は確認されるものの、心臓の大きさには明らかな変化がない段階です。

一般的にはすぐに投薬を始めず、レントゲン検査や心エコー検査で経過を観察します。症状がなくても、心臓の拡大が始まる時期を見逃さないことが大切です。

<ステージB2|心臓の拡大が認められる段階>

咳や呼吸困難などの心不全症状はまだ見られないものの、レントゲン検査や心エコー検査で一定以上の心臓の拡大が確認される段階です。

この時期から、心臓の働きを助ける薬のひとつである「ピモベンダン」による治療が検討されます。大規模な臨床研究であるEPIC Studyでは、所定の基準を満たすステージB2の犬にピモベンダンを投与することで、心不全を発症するまでの期間を延ばせることが示されています。

ただし、心雑音の大きさだけでB1とB2を区別することはできません。必要のない段階から投薬したり、反対に治療開始の時期を逃したりしないためにも、画像検査で心臓の大きさや血液の逆流を詳しく評価する必要があります。

<ステージC|心不全を起こした段階>

肺水腫などの心不全を現在起こしている、または過去に起こしたことがある段階です。

心臓の働きを助ける薬や、体にたまった余分な水分を排出する利尿薬などを組み合わせ、心臓と肺への負担を抑えます。肺水腫によって呼吸が苦しい場合には、入院や酸素吸入が必要になることもあります。

<ステージD|一般的な治療では管理が難しい段階>

標準的な内科治療を続けても肺水腫を繰り返すなど、心不全を安定して管理することが難しくなった段階です。

薬の種類や量を細かく調整しながら治療を続け、状態に応じて在宅酸素や食事、生活環境を含めたケアを検討します。

<ステージだけでは余命は決まらない>

僧帽弁閉鎖不全症の経過や余命は、診断時のステージだけでなく、病気の進行速度、肺水腫の有無、治療への反応、ほかの病気の有無などによって異なります。

同じステージでも経過には差があるため、研究で示された平均値や中央値を、そのまま余命に当てはめることはできません。定期的な検査で変化を追いながら、その時点の状態に合った治療へ調整していくことが重要です。

末期の過ごし方|在宅ケアと看取りについて

病気が進行すると、治療を続けながら、ご自宅でできるだけ穏やかに過ごすためのケアも大切になります。心臓への負担を抑えるため、次のような点を意識しましょう。

・興奮や激しい運動を避ける
・暑さや寒さを避け、室温と湿度を快適に保つ
・食事や水、寝床を無理なく移動できる場所に置く
・食欲が低下した場合は、食事内容や与え方を獣医師と相談する

肺水腫の再発に早く気づくため、眠っているときなどの安静時呼吸数を日頃から確認しておくことも大切です。状態によっては、ご自宅で呼吸を支える方法として在宅酸素を検討することもあります。

呼吸が明らかに速い、おなかを大きく動かして呼吸する、横になれないといった様子がある場合は、在宅酸素だけで対応しようとせず、速やかな受診が必要です。

<看取りについて考えるとき>

看取りの時期には、どこまで治療を行うかだけでなく、その子が苦痛なく過ごせているか、ご家族が無理なくケアを続けられるかも含めて考えることが大切です。食事や睡眠、呼吸の様子などを確認しながら、その子とご家族に合った過ごし方を獣医師と相談していきましょう。

「手術しない」選択もある?内科治療との考え方

僧帽弁閉鎖不全症には、傷んだ僧帽弁を修復する「僧帽弁形成術」という外科治療があります。一方で、手術を行わず、投薬や定期検査によって経過を管理する犬も少なくありません。

・内科治療で経過を管理する場合
手術をしないことは、治療を諦めることではありません。適切な時期に治療を始め、状態に合わせて薬を調整することで、心不全の発症を遅らせたり、症状を抑えたりしながら生活を支えていきます。

・手術を検討する場合
比較的若い時期から心臓の拡大が進んでいる場合や、病気の進行が速い場合などには、手術が選択肢となることがあります。ただし、手術が適しているかどうかは、心臓の状態だけでなく、年齢や全身状態、ほかの病気の有無なども含めて判断します。

<その子に合った治療を選ぶために>

内科治療と手術のどちらが適しているかは、一律に決められるものではありません。病気の進行状況や今後の見通し、ご家族の希望などを踏まえ、かかりつけ医と相談しながら治療方針を考えていくことが大切です。

当院での診断|心エコーで治療開始の時期を見極めます

当院では、丁寧な聴診によって心雑音の有無を確認し、必要に応じて心エコー検査を行います。わずかな心雑音も可能な限り聞き取れるよう努めるとともに、超音波診断装置「Canon Aplio me V」を用いて、僧帽弁からの逆流の程度や心臓の大きさ、現在のステージを評価します。

<心エコーの結果を治療判断に>

心エコー検査は、心臓の動きや血液の流れをリアルタイムで確認できる検査です。基本的に麻酔を必要とせず、体への負担も比較的少ないため、診断だけでなく定期的な経過観察にも適しています。

僧帽弁閉鎖不全症では、症状がなくても心臓の拡大が進み、治療を始める段階に移行することがあります。そのため当院では、心エコー検査を十分に行わないまま投薬を始めるのではなく、定期的に変化を追いながら、治療開始のタイミングを見極めることを大切にしています。

エコー検査について詳しくはこちらをご覧ください

<同じ獣医師が継続して変化を確認>

聴診や心エコー検査の評価には、検査を行う獣医師によって差が生じることがあります。また、僧帽弁閉鎖不全症は一度の検査だけでなく、以前と比べてどのように変化しているかを見ることが重要です。

当院では、同じ獣医師が継続して診療を担当し、症状や検査結果の変化を確認しています。かかりつけ医として経過を追いながら、わずかな変化も捉え、その時点の状態に合った治療につなげていきます。

よくある質問

Q. 心雑音があると言われましたが、元気なら様子を見てもよいですか?
元気であっても、心雑音を指摘された場合は、一度心臓の状態を詳しく調べることをおすすめします。聴診だけでは病気の進行度や治療の必要性までは分からないため、心エコー検査などによる評価が必要です。

Q. 僧帽弁閉鎖不全症の余命はどのくらいですか?
余命は、病気の進行度や肺水腫の有無、治療への反応などによって異なります。同じ段階でも経過には個体差があるため、検査結果やその後の変化を踏まえて見通しを判断する必要があります。

Q. 手術をしなくても大丈夫ですか?
手術を行わず、投薬や定期検査によって経過を管理する犬も少なくありません。一方、年齢や病気の進み方によっては手術が選択肢となるため、その子の状態に合わせて治療方針を検討することが大切です。

Q. 咳が増えて呼吸も苦しそうです。すぐに受診すべきですか?
呼吸が苦しそうな場合は、様子を見ず速やかに受診してください。特に、安静にしていても呼吸が速い、横になれない、舌が青紫色に見える、失神するといった場合は、緊急性の高い状態が疑われます。

まとめ

僧帽弁閉鎖不全症は進行性の心臓病ですが、早い段階から状態を把握し、ステージに応じて適切に管理することで、進行を抑えながら生活できる可能性があります。

心雑音は病気に気づく手がかりのひとつですが、聴診だけでは心臓の大きさや治療開始の時期までは判断できません。心エコー検査やレントゲン検査によって、現在の状態を詳しく確認することが大切です。

当院では、わずかな心雑音も可能な限り聞き取れるよう丁寧に聴診し、心エコー検査で心臓の状態を詳しく確認しています。また、同じ獣医師が継続して診察することで、前回の検査結果と比較しながら病気の進行を見守ります。健康診断で心雑音を指摘された場合や、咳、呼吸の速さ、疲れやすさなどが気になる場合は、お早めにご相談ください。

【監修】ナガワ動物病院副院長 名川 真ノ介(獣医師)

(最終更新日:2026年8月21日)

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<参考文献>
Boswood A, et al. Effect of Pimobendan in Dogs with Preclinical Myxomatous Mitral Valve Disease and Cardiomegaly: The EPIC Study—A Randomized Clinical Trial. Journal of Veterinary Internal Medicine. 2016;30(6):1765-1779. doi:10.1111/jvim.14586.

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「ソファや階段から飛び降りたあと、急に足をつかなくなった」
「遊んでいたあとから足を痛がるようになった」

普段は元気いっぱいの子犬がそのような様子を見せても、「少しひねっただけかな」「明日には普通に歩いているかも」と様子を見たくなることもあるかもしれません。

しかし、成長期の子犬では「成長板(せいちょうばん)」と呼ばれる骨の成長に重要な部分を骨折していることがあります。成長板骨折は、適切な治療が遅れると骨の成長に影響し、将来的な骨の変形や歩行異常につながる可能性もあるため、早めの診断と適切な治療が大切です。

今回は、成長板骨折とはどのような骨折なのか、受診の目安や診断・治療について詳しくご紹介します。

 

成長板骨折とは?子犬に多い骨折の特徴

成長板とは、骨の端にある骨の成長を担う組織です。この部分は成長期にのみ存在し、成犬になると閉じて骨になります。

<なぜ成長板は骨折しやすいの?>

成長板は、周囲の骨よりもやわらかく衝撃に弱いため、成長期の犬では骨ではなく成長板が損傷してしまうことがあります。そのため、一見それほど強い衝撃ではないように思えても、成長板骨折が起こることがあります。

<日常生活で起こることも>

成長板骨折は、交通事故のような大きな外傷だけではありません。例えば、次のような場面でも起こることがあります。

・ソファから飛び降りた
・抱っこ中に落下してしまった
・階段を踏み外した
・遊んでいる最中に転倒した

成長期の子犬では、こうした日常生活の中の思いがけない事故でも注意が必要です。

こんな症状は要注意|早めの受診をおすすめするサイン

骨折をしたからといって、必ず骨が大きく変形するとは限りません。一見軽そうに思えても成長板を傷めていることがあるため、次のような症状が見られる場合は、できるだけ早めの受診をおすすめします。

・足を全くつかない
・足を浮かせて歩いている
・足を触られるのを嫌がる
・患部が腫れている
・足の向きがいつもと違う
・元気がなく動きたがらない

<放置するとどうなる?>

成長板は骨の成長を担う重要な組織であるため、損傷したまま治癒すると、その後の成長に次のような影響を及ぼすことがあります。

・骨が変形する
・左右の足の長さに差が出る
・関節の動きに異常が生じる
・慢性的な歩き方の異常につながる

見た目だけでは重症度を判断することは難しいため、様子を見る前に早めに診察を受けることが大切です。

動物病院ではどのように診断する?

成長板骨折が疑われる場合には、問診や整形外科検査、レントゲン検査などを組み合わせながら状態を詳しく確認していきます。

・問診・整形外科検査
まずは「いつから症状があるか」「どのような状況でケガをしたか」などをお伺いし、歩き方や患部の痛み、関節の状態などを確認します。

・レントゲン検査
レントゲン検査では、骨折している場所や骨のずれの程度、成長板への影響などを確認します。成長板骨折では、一般的にソルター・ハリス分類という分類を参考に損傷の状態を評価し、その結果をもとに治療方針を検討します。

<成長板骨折で特に重要なこと>

成長板骨折では、骨折だけでなく成長板そのものの状態を評価することが重要です。また、治療方針を決める際には、何か月齢なのかという点も大切な判断材料になります。今後どの程度成長が残っているかによって、治療の考え方が変わることがあるためです。

さらに、受傷直後は目立った変化が少なく見えても、その後の成長過程で変形が現れることもあります。そのため、気になる様子がある場合はできるだけ早めに受診し、適切な整復を行うことが良好な経過につながります。

成長板骨折の治療|整復術が必要になるケース

成長板骨折の治療は、骨折の状態や年齢、成長板への影響などを総合的に判断して決定します。

<保存療法で対応できるケース>

骨折のずれがほとんどなく、骨折部が安定している場合には、ギプスなどによる固定で経過をみられることがあります。

<手術を検討するケース>

一方で、次のような場合には手術を検討します。

・骨折部のずれが大きい
・関節近くを骨折している
・成長板への影響が大きい
・将来的な変形が懸念される

また、良好な整復が難しい場合や、より専門的な治療が望ましいと判断した場合には、専門施設をご紹介することもあります。

<成長板骨折整復術とは>

成長板骨折整復術では、骨折した部分をできるだけ正しい位置へ戻し、ピンやプレートなどのインプラントを用いて固定します。特に成長板そのものが割れているケースでは、将来的な成長停止のリスクについて十分にご説明したうえで治療を進めます。

<手術のタイミングが重要な理由>

骨折してから時間が経つと、骨折部を正しい位置へ戻すことが難しくなる場合があります。また、適切な整復が遅れることで、将来的な変形リスクが高まる可能性もあります。

<ナガワ動物病院の考え方>

当院では、単に骨を元の位置へ戻すことだけを目的とはしていません。「できるだけ正確に整復すること」と「成長障害のリスクをできるだけ少なくすること」の両方を考慮し、その子にとって最適な治療方法を飼い主さまと一緒に考えていくことを大切にしています。

そのため、骨折の位置やずれの程度、月齢や今後の成長などを総合的に評価したうえで、保存療法と手術のどちらが適しているかを慎重に判断します。手術を行う場合も、成長板への負担をできるだけ抑えられる方法を第一に考え、細いキルシュナーワイヤーや小型犬用プレートなどを症例に応じて使い分けながら、将来の成長への影響にも配慮した治療を行っています。

まとめ

成長板骨折は、成長期の子犬に特有の骨折です。一見軽いケガに見えても、成長板が損傷している場合には、将来的な骨の成長や歩き方に影響を及ぼすことがあります。そのため、見た目だけで軽症と判断せず、早めに診断を受けることが、その後の治療の選択肢を広げることにもつながります。

当院では、レントゲン検査による詳細な評価から外科手術、術後管理まで一貫して対応し、その子の将来の成長も見据えた治療をご提案しています。「足がつかない」「骨折かもしれない」と感じた場合は、まずはお気軽にご相談ください。

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「最近、愛犬・愛猫が足を浮かせて歩くようになった」
「歩き方がおかしいけれど、レントゲン検査では異常がないと言われた」
「痛そうなのに原因が分からず、このまま様子を見ていいのか不安」

当院でもこのようなご相談をいただくことがあります。

歩き方の異常や足の痛みというと骨のトラブルを思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし実際には、靱帯や腱、筋肉、神経など、レントゲンでは評価が難しい軟部組織に原因が隠れていることもあります。

そうしたケースで原因を探る手がかりとなるのが、整形外科領域のエコー検査(超音波検査)です。そこで今回は、整形外科のエコー検査で分かることや、どのような症状で役立つのか、当院の取り組みとあわせてご紹介します。

 

レントゲンだけでは分からないことも|整形外科のエコー検査とは?

歩き方がおかしい、足を痛がるといった症状がある場合、多くの動物病院ではまずレントゲン検査を行います。

レントゲン検査は、骨折や脱臼、関節の変形、骨腫瘍など、骨の異常を確認することを得意とする検査です。しかしその一方で、靱帯や腱、筋肉、神経といった軟部組織については、レントゲンだけでは詳しく評価できないことがあります。

<エコー検査ならではの特徴>

そのような場合に役立つのがエコー検査です。整形外科領域のエコー検査には、次のような特徴があります。

・靱帯や腱、筋肉、神経などの状態を詳しく確認できる
・関節や筋肉の動きをリアルタイムで観察できる
・比較的体への負担が少ない
・多くの場合、麻酔を使わずに実施できる
・痛みのある部位を確認しながら検査を進められる

<検査を組み合わせることが大切>

レントゲンとエコーは、それぞれ得意とする領域が異なります。どちらか一方が優れているということではなく、必要に応じて組み合わせることで、より正確な診断につながることがあります。

こんな症状はご相談ください|整形外科でエコーが役立つケース

整形外科でのエコー検査は、次のような症状が見られる場合に役立つことがあります。

・足をかばって歩いている
・歩き方に違和感がある
・散歩を嫌がるようになった
・階段の上り下りを嫌がる
・ジャンプしなくなった
・運動後だけ足を浮かせる
・レントゲン検査では異常が見つからなかった

こうした症状の背景には、骨ではなく軟部組織の異常が隠れていることがあります。

<エコー検査で確認できる異常の例>

エコー検査では、例えば次のような異常を確認できることがあります。

・靱帯損傷
・腱の炎症
・筋肉の損傷
・神経周囲の異常
・関節周囲の炎症

骨に異常が見られなくても、靱帯や筋肉などに問題があることで痛みや歩き方の異常が生じているケースもあります。そのため「異常なしと言われたけれど、まだ痛そう」「原因が分からないまま症状が続いている」という場合にも、エコー検査が診断の手がかりになることがあります。

ナガワ動物病院の整形外科エコーへの取り組み

当院では、人の整形外科領域の知見も取り入れながら、整形外科領域のエコー検査に力を入れています。

当院の副院長は約5年前から人の整形外科領域におけるエコー診断について継続的に学び、その知見を獣医療へ応用してきました。人の医療分野では、靱帯や神経、筋肉の評価などにエコー検査が広く活用されています。当院でも、その考え方を取り入れながら診断精度の向上に努めています。

さらに人の整形外科領域では、エコーの活用は診断だけにとどまりません。例えば、エコーで神経の位置を確認しながら生理食塩水を注入して神経周囲の癒着を剥離し、可動域の改善や疼痛の緩和を目指す治療なども行われています。当院でも、このような知見を参考にしながら、将来的に獣医療へ応用できる可能性について継続的に検討しています。

<靱帯や神経まで評価できるという特徴>

動物病院で行われるエコー検査は、心臓や腹部の検査が中心となることが一般的です。一方で、整形外科領域までエコーを活用している施設は限られており、当院では靱帯や神経を含めた軟部組織の状態まで評価することを目指しています。

<当院が大切にしていること>

当院では、エコー検査だけで診断を行うことはありません。まずは歩き方や姿勢、触診などで症状を丁寧に確認し、そのうえでレントゲン検査やエコー検査を組み合わせながら総合的に判断しています。

例えば、膝蓋骨脱臼(パテラ)のご相談をいただいた際にも、関節だけを見るのではなく、靱帯の伸展や部分断裂がないかを確認するため、必要に応じてエコー検査を実施しています。

膝蓋骨脱臼(パテラ)について詳しくはこちらをご覧ください

「症状から原因を考える」という姿勢を大切にし、その子にとって必要な検査を選択しています。

よくある質問

Q. レントゲンで異常がなければ安心ですか?
必ずしもそうとは限りません。骨に異常がなくても、靱帯や腱、筋肉などの軟部組織に原因が隠れていることがあります。症状が続く場合は、別の検査が必要になることもあります。

Q. エコー検査は麻酔が必要ですか?
多くの場合、麻酔を使わずに実施できます。比較的体への負担が少ない検査のため、症状に応じて実施しやすいことも特徴の一つです。

Q. 高齢でも受けられますか?
体への負担が比較的少ない検査のため、高齢の犬・猫でも実施できるケースがほとんどです。ただし、全身状態によって適した検査方法は異なるため、診察のうえでご提案させていただきます。

まとめ

歩き方の異常や足の痛みの原因は、骨だけではありません。靱帯や筋肉、神経などの軟部組織に問題が隠れていることもあり、そのようなケースでは整形外科のエコー検査が原因の特定につながることがあります。

当院では、歩き方の様子の確認や触診、レントゲン検査に加え、必要に応じてエコー検査を組み合わせながら、一つひとつの症状を総合的に評価しています。

「レントゲンでは異常がないと言われた」「原因が分からず困っている」という場合も、原因を探る選択肢の一つとしてエコー検査をご提案できることがあります。気になる症状がありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。

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「急にごはんを食べなくなった」
「食欲は落ちているけれど、どこまで様子を見ていいのか分からない」

このような変化に不安を感じてご相談に来られる飼い主様は少なくありません。

犬や猫の食欲不振は比較的よく見られる症状ですが、その背景にはさまざまな病気が隠れていることがあります。また、血液検査だけでは分からない異常が、エコー検査(超音波検査)によって見つかることもあります。そのため「食べない」という症状に対しては、原因を丁寧に見極めていくことが大切です。

今回は、犬・猫の食欲不振で注意したいサインや考えられる原因、エコー検査で分かること、動物病院での検査や治療の考え方について詳しく解説します。

 

【結論】食欲不振は「元気があるか」だけで判断しないことが大切

いつもより食欲がなくても、少しは食べていたり、食欲以外は普段どおりに見える場合は、様子を見たくなることもあるかもしれません。しかし、元気があるように見えても、体の中では病気が進行しているケースがあります。

特に、次のような場合は早めの受診をおすすめします。

・水も飲まない
・嘔吐を伴う
・数日単位で続いている
・子犬・子猫、高齢
・持病がある
・短期間で体重が5%以上減少している
・必要なエネルギー量(RER)の60%程度しか食べられていない状態が3日以上続いている

特に猫では、食べない状態が続くことで「脂肪肝」などの深刻な状態につながることもあります。そのため、場合によっては無理にでも栄養を入れる必要があるケースもあります。

食欲不振は「病名」ではなく「症状」です。背景にどのような原因があるのかを早めに確認することで、体への負担を抑えた治療につながることも少なくありません。

犬・猫の食欲不振で考えられる主な原因

犬や猫の食欲不振には、さまざまな原因があります。

例えば、比較的多いのは消化器のトラブルです。胃腸炎や異物誤食、膵炎、腸閉塞などでは、吐き気や腹痛によって食欲が落ちることがあります。猫では毛球症(毛玉による消化管トラブル)が関係しているケースもあります。

異物誤食について詳しくはこちらをご覧ください
膵炎について詳しくはこちらをご覧ください

また、肝臓・腎臓・胆のう・膵臓などの内臓疾患や、アジソン病、甲状腺機能低下症のようなホルモンの病気、糖尿病などでも食欲不振が見られます。

アジソン病について詳しくはこちらをご覧ください
甲状腺機能低下症について詳しくはこちらをご覧ください
糖尿病について詳しくはこちらをご覧ください

そのほかにも、

・腫瘍性疾患
・感染症
・歯周病や口内炎などの口腔内トラブル
・ストレスや環境変化
・加齢による変化
・関節炎やヘルニアなどの痛み

など、原因は多岐にわたります。

このように「食べない=胃腸炎」と単純に決めつけられるものではありません。見た目だけでは分からない病気も多いため、必要に応じて検査を組み合わせながら原因を見極めていくことが大切です。

エコー検査(超音波検査)で分かること|食欲不振の原因特定につながるケース

エコー検査(超音波検査)は、お腹に超音波を当てて、体の中の状態を確認する検査です。比較的苦痛が少なく、基本的には麻酔をかけずに行えることが多いため、犬・猫への負担を抑えながら検査を進めやすいという特徴があります。

また、レントゲンやCT、MRIと異なり「動いている状態」をリアルタイムで確認できることも大きな特徴です。腸の動きや胆のうの状態、血流の変化なども観察することができます。

食欲不振では、次のようなケースでエコー検査が役立つことがあります。

・異物誤食
・膵炎
・胆のう疾患
・腫瘍
・腸の動きの異常
・腹水の有無 など

例えば、血液検査では大きな異常が見られなくても、エコー検査で腸閉塞や胆のうの異常が見つかることもあります。

もちろん、エコー検査だけですべてが分かるわけではありません。実際には、血液検査やレントゲン検査などを組み合わせることで、より精度の高い判断につながります。

エコー検査について詳しくはこちらをご覧ください

ナガワ動物病院での検査と治療の考え方|「なぜ食べられないのか」を丁寧に見極める

当院では、まず問診や身体検査を行い、全身状態を確認します。

・いつから食べないのか
・何なら食べるのか
・嘔吐や下痢はあるか
・体重は減っていないか

などを丁寧に確認したうえで、必要に応じて血液検査・レントゲン検査・エコー検査を組み合わせながら原因を探っていきます。

食欲不振の原因によって、必要な治療は異なります。

例えば、

・点滴による脱水改善
・吐き気止めの使用
・消化に配慮した食事管理
・内科治療
・外科治療

など、その子の状態に合わせて対応を行います。

当院では「とりあえず食欲を出す」という対症療法だけではなく、なぜ食べられないのかを見極めることを重視しています。

そのため、症状だけで判断するのではなく、エコー検査を含めた画像診断を組み合わせながら、原因を丁寧に確認していきます。また、検査結果と全身状態を踏まえ、その子に合った治療方針を飼い主様と一緒に考えていくことを大切にしています。

よくある質問

Q. 少しでも食べていれば様子見で大丈夫ですか?
好きなものだけ食べる場合でも、体調不良が隠れていることがあります。特に、体重減少がある場合や、必要なエネルギー量を十分に摂取できていない場合には、早めの対応が必要になることもあります。

Q. 血液検査で異常がなければ安心ですか?
血液検査はとても重要な検査ですが、病気によっては初期段階では数値に異常が出にくいこともあります。肝臓や腎臓、炎症の有無などは血液検査で分かることがありますが、それだけでは判断できないケースもあるため、必要に応じてエコー検査などを組み合わせて確認していきます。

Q. エコー検査は痛くありませんか?
エコー検査は比較的負担の少ない検査で、基本的には麻酔なしで実施できます。状態を見ながら進めていくため、検査が初めての子でも受けやすい検査のひとつです。

まとめ|「少し様子を見る」前に

犬・猫の食欲不振は比較的よく見られる症状ですが、その背景にはさまざまな病気が隠れていることがあります。特に、嘔吐や元気低下を伴う場合や、子犬・子猫、高齢の犬・猫では、早めの受診が重要になることも少なくありません。

また、血液検査だけでは分からないケースでも、エコー検査によって原因が見えてくることがあります。

当院では、エコー検査を含めた画像診断を組み合わせながら、原因を丁寧に見極め、その子に合った対応をご提案しています。「何となく食欲がない」「どこまで様子を見てよいか分からない」と感じたときは、どうぞお気軽にご相談ください。

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愛猫が急に口を開けて「ハァハァ」と呼吸している様子を見て「これって大丈夫なの?」「すぐ病院へ行った方がいい?」と不安になった経験はありませんか?

猫は本来、基本的に鼻で呼吸をする動物です。そのため、犬のパンティングとは違い、猫の口呼吸は「何らかの異常のサイン」である可能性が高く、基本的には「すぐ受診するのが正解」といえます。

また「元気そうだから少し様子を見よう」と思っていても、猫は病気がかなり進行するまで症状を隠しているケースも少なくありません。

そこで今回は、

・今すぐ受診すべき危険サイン
・様子見してよいケースとの違い
・猫の正常な呼吸との違い
・考えられる病気
・ご自宅での正しい対処法
・動物病院での検査の流れ

について詳しく解説します。

 

まずセルフチェック|今すぐ受診を検討したい危険サイン

猫の口呼吸で、特に注意したいのは次のような症状です。

☑ ぐったりしている
☑ 舌や歯ぐきが青白い、紫っぽい
☑ 安静時でも呼吸が速い(1分間に40回以上が目安)
☑ 「ゼーゼー」「ヒューヒュー」と音がする
☑ お腹を大きく動かして呼吸している
☑ 咳を伴う
☑ 横になれず座り込むような姿勢を取っている
☑ 食欲や元気が低下している

このような場合は、呼吸が十分にできていない可能性もあるため、早めの受診をおすすめします。

一方で、興奮した直後や激しく遊んだ後、暑い場所にいた後などは一時的に口呼吸をすることもあります。ただし、数分で落ち着いて鼻呼吸に戻る場合でも、口呼吸を何度も繰り返したり、以前より頻度が増えているように感じる場合には、一度動物病院へ相談しておくと安心です。

そもそも猫の正常な呼吸とは?口呼吸との違い

健康な猫は、基本的に鼻で呼吸しています。そのため、安静時に口を開けて呼吸している場合は、うまく呼吸ができていない可能性があります。

また、犬では体温調節のために「パンティング」と呼ばれる浅く速い呼吸をよく行いますが、猫では犬ほど一般的ではありません。そのため、犬と同じ感覚で「暑いだけかな」と判断しないことが大切です。

<安静時の呼吸数の確認方法>

ご自宅では、寝ているときやリラックスしているときに呼吸数を確認してみましょう。

① 胸やお腹の上下を観察する
② 15秒間の呼吸回数を数える
③ 4倍して1分間の呼吸数を計算する

一般的には、安静時で1分間20〜30回程度が目安とされています。40回を超える場合には注意が必要です。

猫が口呼吸をする主な原因

猫の口呼吸には、さまざまな原因があります。

<呼吸器の病気>

猫風邪などの上気道感染症や猫喘息では、鼻や気道の炎症によって呼吸がしづらくなることがあります。
特に喘息では、咳やゼーゼー音、呼吸のしづらさなどが続くことがあります。

<心臓病>

中高齢の猫では、肥大型心筋症が問題になることがあります。
心臓病が進行すると、肺や胸に水がたまり、呼吸が苦しくなることがあります。

肥大型心筋症について詳しくはこちらをご覧ください

<胸水・腹水>

胸やお腹に水がたまることで、肺が十分に広がらず、呼吸が苦しくなるケースがあります。

<熱中症>

高温環境では、猫も熱中症を起こします。特に夏場の室温管理には注意が必要です。

熱中症について詳しくはこちらをご覧ください

<痛み・ストレス>

強い痛みや不安、緊張によって、一時的に呼吸が速くなることがあります。

<貧血>

酸素を運ぶ力が低下すると、酸素不足を補うために呼吸が速くなることがあります。

<異物>

鼻や喉に異物が詰まることで、正常な呼吸ができなくなることがあります。

異物誤食について詳しくはこちらをご覧ください

<肺がん・がんの肺転移>

肺にできた腫瘍(肺がん)や、他の臓器にできたがんが肺に転移すると、呼吸が苦しくなることがあります。

見た目には元気そうに見えても、実際には病気が進行しているケースもあります。特に猫は不調を隠しやすいため「少し変だな」と感じた段階で相談することが大切です。

口呼吸を見つけたときの正しい対処

猫が口呼吸をしている場合は、まず落ち着いて安静にさせましょう。

<ご家庭で行いたいこと>

・静かで涼しい場所へ移動する
・興奮させない
・呼吸の様子を動画で撮影する
・早めに動物病院へ連絡する

呼吸の動画は、診察時の大きな手がかりになります。

<やってはいけないこと>

・無理に抱っこして移動する
・口を開けて確認しようとする
・長時間様子見を続ける

特に、苦しそうな状態で無理に動かすと、さらに呼吸状態が悪化することもあります。

動物病院での検査・診断の流れ

動物病院では、まず問診や視診、聴診を行い、呼吸状態や全身状態を確認します。その後、必要に応じて次のような検査を組み合わせながら原因を探っていきます。

・レントゲン検査:肺や心臓の状態、胸水の有無などを確認
・血液検査:炎症や貧血、内臓の状態を確認
・エコー検査(超音波検査):心臓の動きや胸腹水の有無を確認

特に心臓病では、エコー検査が重要になるケースも少なくありません。当院では、猫への負担にも配慮しながら、その子の状態に応じて必要な検査を組み合わせ、原因を丁寧に見極めていきます。

エコー検査について詳しくはこちらをご覧ください

よくある質問

Q. 猫が口呼吸しているけれど元気です。様子を見ても大丈夫?
元気そうに見えても、病気が隠れているケースがあります。口呼吸が見られる場合には、早めの受診をおすすめします。

Q. 寝ているときだけ口呼吸するのは大丈夫?
一時的な姿勢の影響などで見られることもありますが、繰り返す場合や呼吸数が多い場合には注意が必要です。

Q. 興奮や運動の後だけ口を開けて呼吸します。受診した方がいいですか?
短時間で落ち着き、普段通りに戻る場合もあります。ただし、頻繁に見られる場合や以前より増えている場合には、一度相談することをおすすめします。

Q. 症状が出た後すぐに治まりました。それでも病院に行くべき?
症状が一時的に見えても、背景に病気が隠れているケースがあります。不安がある場合には、できれば呼吸の動画をお持ちのうえご相談ください。

まとめ|迷ったときはまずご相談ください

猫の口呼吸は、犬とは違い、基本的には異常のサインと考えます。中には一時的な興奮や暑さによるものもありますが、呼吸器疾患や心臓病など、早めの対応が必要な病気が隠れていることも少なくありません。

当院では、レントゲン検査やエコー検査などを組み合わせながら、猫への負担にも配慮して原因を丁寧に見極めています。

「今は普通に戻っているから受診しても分からないかも…」と迷われる場合でも、症状が出ているときの動画があると、診察時の大切な手がかりになります。もちろん、動画が撮れなかった場合でも、そのままご相談いただいて大丈夫です。

お電話でのご相談のほか、オンライン予約・LINE予約にも対応しております。気になる様子があれば、まずはお気軽にご相談ください。

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(最終更新日:2026年6月26日)

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