猫の腎臓結石と尿管閉塞|見逃しやすい症状と最新の治療アプローチ

「なんとなく元気がない」「最近、いつもより食欲が落ちている気がする」
愛猫のそんな小さな変化の裏に「腎臓結石」や「尿管閉塞」といった深刻な泌尿器疾患が隠れていることがあります。

猫の上部尿路(腎臓〜尿管)に起こるトラブルは、尿の出口で起きる膀胱炎や尿道閉塞と違い、症状が非常にわかりにくいことが特徴です。気づかないうちに進行し、腎臓が急激にダメージを受けてしまうと、命に関わるケースもあります。

今回は、腎臓結石と尿管閉塞の特徴、注意すべき症状、診断・治療、再発予防について詳しく解説します。

 

腎臓結石・尿管閉塞とは?膀胱結石との違い

尿路のトラブルと聞くと、膀胱炎や膀胱結石を思い浮かべる方が多いかと思います。しかし腎臓結石・尿管閉塞は、それより上流で起こる病気です。

腎臓結石
腎臓の中に石(結石)ができる病気です。
水分摂取量の不足やミネラルバランスの乱れ、体質などが複雑に関わると考えられています。

尿管閉塞
腎臓から膀胱へ尿を運ぶ細い管(尿管)に結石が詰まり、尿が流れなくなる状態です。
猫は尿管が特に細いため、ごく小さな結石でも閉塞を起こしやすいことが知られています。

気づきにくい理由

膀胱炎や尿道閉塞では「トイレに頻繁に行く」「尿が出ない」など分かりやすい変化が出ますが、腎臓結石・尿管閉塞では尿意の変化が少なく、初期はほとんど症状が見られません
そのため、進行してから気付くケースが非常に多いのが問題点です。

また、腎臓は左右で2つあるため、片側の尿管が詰まっても表面上は普通に過ごしてしまうことがあります。しかし、残っている腎臓に負担がかかり続けると、将来的に慢性腎臓病を悪化させるリスクがあります。腎臓を守るうえでは、早期に正確な診断を受けることがとても大切です。

猫の慢性腎臓病について詳しく知りたい方はこちら

見逃せない症状|猫が見せる“危険のサイン”

腎臓結石・尿管閉塞でみられる症状には、次のようなものがあります。

血尿(薄いピンク色程度でも注意が必要)
嘔吐
食欲が落ちる
元気がない
背中やお腹を触られるのを嫌がる
排尿量が減っている

これらは比較的わかりやすいサインですが、実際にはもっと曖昧な変化しか出ないことの方が多い病気です。症状が軽そうに見える場合でも、内部では進行していることがあります。「いつもと違うかも…」という小さな変化は、受診の大切なサインになります。気になる点があれば早めにご相談ください。

また、腎臓や尿路のトラブルは症状が表れにくいこともあるため、定期的な健康診断(血液検査・エコー検査)で状態を確認しておくことが、予防や早期発見に役立ちます。

健康診断について詳しく知りたい方はこちら

こんな症状が出ていたら緊急サイン

以下に当てはまる場合は、体の内部で深刻なトラブルが起きているおそれがあります。
一刻を争う場合もあるため、少しでも当てはまる点があれば、すぐに動物病院にご相談ください。

嘔吐を何度も繰り返す
ぐったりして動かない
尿がほとんど出ていない

気づいたときの早期受診と、症状が出る前からの定期的な健康チェックが、愛猫を守るいちばんの近道です。

診断と治療の考え方|早期判断で腎臓を守る

腎臓結石や尿管閉塞は、進行すると短時間で腎臓に大きな負担をかけてしまう病気です。そのため「どこで」「どの程度」問題が起きているかを正確に見きわめることが、治療の第一歩になります。

ナガワ動物病院では、症状が軽く見える場合でも、腎臓にダメージを残さないために必要な検査を組み合わせて早期判断につなげています。

当院で行う主な検査

原因を立体的に把握するために、次のような検査を組み合わせて実施します。

血液検査:腎臓の働き・電解質のバランスを確認
エコー(超音波)検査:結石の位置や尿管の閉塞状況をリアルタイムで評価
レントゲン検査:結石の大きさ・数・位置を確認
尿検査:尿の状態や結晶(結石のもと)を調べる

なかでもエコー検査は最も重要といっても良い検査です。猫の尿管は非常に細いため、数ミリの変化を正確に読み取る高度な観察技術が必要になります。

当院では高性能エコー機器経験豊富な獣医師による読影技術により、早期発見・早期判断につながる精度の高い診断を行っています。

エコー検査について詳しく知りたい方はこちら

治療の基本方針

腎臓結石・尿管閉塞は「時間との勝負」という点が最大の特徴です。状態に応じて、次のような治療法から最適なものを選択します。

▼内科治療
結石が小さい、尿の通り道がまだ残っている、といった場合に実施します。

・点滴によるサポート
・痛みを抑える処置
・利尿剤で尿の流れを助ける

内科治療で改善する子もいますが、結石の位置・大きさ・閉塞の強さによっては、改善が難しい場合もあります。

なお、当院では人間の尿管結石の治療に用いる薬を用いて、治療を行っています。

▼外科治療(SUBシステム)
完全閉塞や重度の閉塞では緊急性が高く、外科的な処置が必要になる場合があります。

当院では腎臓と膀胱を細いチューブでつなぎ、尿管を迂回させて尿を流す 「SUBシステム(サブシステム)」 を採用することもあります。

・再閉塞しにくい
・腎臓の働きを守りやすい
・猫の尿管閉塞治療として近年広く用いられている

といった特徴があり、状態に応じて適切に選択する術式です。

ご家庭でできる再発予防|“今日から始められる”ケア

腎臓結石や尿管閉塞は、一度良くなっても再発しやすい病気として知られています。だからこそ、ご家庭でのちょっとした工夫が大きな助けになります。

水分摂取の工夫

猫はもともと水をあまり飲まない動物のため、水分量を確保することが非常に重要です。

家の中に複数の水飲み場をつくる
流れる水が好きな子には、循環式給水器を活用
ウェットフードを取り入れて自然に水分アップ

「飲みそうな場所に置く」「器を素材違いで試す」など、小さな工夫でも違いが出ることがあります。

泌尿器ケア用フードの活用

泌尿器に配慮したフードには、結石の種類に応じてミネラルバランスを整える工夫がされています。ただし、結石の種類によって適したフードは異なるため、選ぶ際は獣医師に相談していただくのが安心です。

ストレス管理(環境・多頭飼育の工夫)

ストレスは飲水量や排尿習慣に影響し、再発リスクを高めることがあります。

一人で落ち着けるスペースを用意
トイレや寝床はいつも清潔に保つ
多頭飼育の場合は、生活スペースを区切って安心できる環境づくり

「その子が無理なく過ごせる環境かどうか」を見直すだけでも、負担を軽くできることがあります。

肥満防止も大切なポイント

特にシュウ酸カルシウム結石が原因だった場合は、肥満が再発の引き金になることがあります。体型に合った食事量を保ったり、キャットタワーやおもちゃで自然に運動できる工夫をするなど、無理のない範囲で少しずつ生活に取り入れてみましょう。

定期健診でのフォローアップ

腎臓は「静かに悪化する臓器」といわれ、見た目や行動の変化が出にくいため「変化が出る前の受診」がとても重要です。エコー検査や血液検査で定期的に状態を確認することで、再発の早期発見や、将来的な腎臓病の予防にもつながります。

まとめ

猫の腎臓結石や尿管閉塞は症状がわかりにくく、気づいたときには進行していることも少なくありません。小さな違和感でも、腎臓では深刻なトラブルが進んでいることがあります。

ナガワ動物病院では、高性能エコーによる精密検査から、SUBシステムを含む外科治療、再発予防まで幅広く対応しています。気になることがあれば、どうぞお早めにご相談ください。

 

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