【獣医師監修】愛犬・愛猫の足の痛みは関節炎かも?早期発見と効果的な対処法

「最近、愛犬が散歩を嫌がるようになった」「愛猫が高いところに登らなくなった」と感じたことはありませんか?もしかすると、それは関節炎のサインかもしれません。

関節炎は犬や猫にとって身近な健康問題であり、足の痛みや違和感が生活の質(QOL)に大きく影響します。特に高齢の犬や猫に多く見られますが、若い犬や猫でも発症することがあり、油断は禁物です。愛犬・愛猫がいつまでも快適に過ごせるようにするためには、早期発見と適切な治療、ご家庭でのケアがカギとなります。

今回は犬や猫に起こる関節炎について、早期発見のポイントや効果的な対処法を詳しく解説します。

 

関節炎とはどのような病気?

関節炎とは、関節を動かすための軟骨や靭帯が損傷・炎症を起こし、関節が正常に機能しなくなる病気を指します。特に加齢によって起こる変形性関節症などの関節炎は、シニア期の犬や猫に多くみられますが、若い犬や猫でも発症する場合もあります。

たとえば、大型犬では「股関節形成不全」小型犬では「膝蓋骨脱臼」などが原因で関節炎が発症するケースもあります。「関節炎=年をとってからの病気」という認識は誤りであり、若い犬や猫でも注意が必要です。

関節炎の主な症状と早期発見のポイント

関節炎の初期には、以下のような症状が現れることがあります。もしこれらの症状がみられた場合には、早めに動物病院を受診することをおすすめします。

朝起きたときに動きが硬く、こわばっている
階段の上り下りをためらう
ジャンプをしなくなった
散歩を嫌がるようになった

さらに関節炎が進行すると、次のような症状が現れることもあります。

足を引きずる
足を地面に着けられない
動かなくなる、ぐったりしている
発熱がみられる

また、これらの症状は、特に犬で顕著に現れます。一方、猫は痛みや不調を悟られないようにするため、飼い主様が症状に気づきにくいことも少なくありません。

猫の痛みを把握するための一つの方法として、猫の画像から痛みの程度を判定するAIツール「Cats me」があります。痛みを「なし」「少し」「強い」の3段階で評価できるため、症状を判断する際の参考になるでしょう。

Cats me公式(外部サイトに遷移します)

犬種・猫種別・年齢別の関節炎リスク

関節炎のリスクは、犬や猫の種類や年齢によって異なります。飼い主様が普段から気をつけてあげることで、早期発見につなげることができます。

犬種

バセット・ハウンドやシェパードなどの大型犬種は、変形性関節症のリスクが高いとされています。体重が関節に負担をかけやすく、関節炎を引き起こしやすいためです。

猫種

メインクーンなどの大型猫種でも、同様に変形性関節症のリスクが指摘されています。猫は痛みを隠す傾向が強いため、普段から動きの変化に気を配っておくと安心です。

年齢

一般的には高齢になるほどリスクが高まりますが、若齢でも発症するケースがあるため注意が必要です。特に成長期に関節に負担がかかると、若くても症状が現れることがあります。

愛犬・愛猫が関節炎のリスクを抱えている場合は、日頃から動きや歩き方に注意を払い、異変を感じたら早めに動物病院で相談しましょう。

動物病院での診断方法

関節炎の診断には、以下のような検査が行われます。

・身体検査
特に整形外科的徒手診断法で、関節の動きを確認します。関節を実際に触ったり、曲げたり伸ばしたりすることで、異常の有無を評価します。

・跛行検査
実際に歩かせて、どの足に痛みが出ているかや歩き方の異常をチェックします。

・画像検査
レントゲンやCT検査が、必要に応じて実施されます。画像検査により、関節の状態をより正確に把握できます。

ご家庭では、診断時の参考として「症状が出始めた時期」や「どのような状況で痛がるか」を記録しておくと、スムーズな診察につながります。

また、早期に診断できれば、治療の選択肢が広がり、症状の悪化を防ぐことが期待できます。愛犬・愛猫の健康を守るためにも、気になる症状があれば早めの受診を心がけましょう。

関節炎の治療法

関節炎の治療は、症状や原因、個々の犬や猫の状態によって異なります。

薬物療法

関節炎の治療としてよく用いられるのが、薬物療法です。
代表的な薬剤として、犬には「リブレラ」猫には「ソレンシア」があります。これらは月1回の注射で効果が持続し、飼い主様の負担が軽減されるというメリットがあります。また、炎症を抑えるためにステロイドを使う場合もありますが、副作用が起こることもあるので、定期的に状態をチェックして、薬の量を調整する必要があります。
薬物療法は、症状をコントロールしながら愛犬・愛猫の痛みを和らげ、快適な生活をサポートする目的で使われます。獣医師と相談しながら、適切な治療プランを選ぶことが大切です。

サプリメント療法

薬物療法を補完する形で、サプリメント療法を取り入れるケースもあります。
例えば、オメガ3脂肪酸やコラーゲンを含む「アンチノール」「フレキサディン」などは、関節の健康をサポートするために利用されます。抗炎症作用が期待でき、日常的なケアとしても取り入れやすい点が特徴です。
ただし、サプリメントだけで治療を完結させるのではなく、薬物療法と組み合わせながら活用することがポイントです。

当院では、診察結果をもとに飼い主様と一緒に治療プランを検討し、最適なケアの提供に努めています。

ご家庭でできる関節炎ケア

関節炎の治療と並行して、ご家庭でのケアも非常に重要です。日常生活での工夫が、愛犬・愛猫の痛みを軽減し、快適な暮らしをサポートします。

・適切な体重管理
体重が増えすぎると関節に大きな負担がかかります。
適正体重を維持するために、フードの量の見直しや、適度な運動を心がけましょう。肥満を防ぐことで、関節への負担を軽減できます。

・関節に優しい運動
無理のない範囲で関節に優しい運動を取り入れることが大切です。
短時間の散歩や、バランスボールを使った軽いエクササイズなどが効果的です。過度な運動はかえって関節を痛めることがあるため、適度な運動量を意識しましょう。

・生活環境の工夫
クッション性の高いベッドや、滑りにくい床材を用いたり、滑り止めマットなどを敷いたりすることで、関節への負担を軽減できます。
また、段差がある場所にはスロープを設置するなど、日常的に移動しやすい環境づくりを心がけましょう。

・サポーターの活用
関節をサポートするために、膝用のサポーターやコルセットを活用するのも有効です。
負担がかかりやすい部位を適度に支え、痛みを和らげる効果が期待できます。

まとめ

関節炎は高齢の犬や猫に多い病気ですが、若くても発症することがあります。そのままにしておくと症状が徐々に悪化し、痛みによって日常生活に支障をきたすことも少なくありません。また、飼い主様が気づかないうちに、実は痛みを抱えているケースも多く見受けられます。

しかし、関節炎は早期に発見し、適切な治療やケアを行うことで、症状の進行を遅らせたり、愛犬・愛猫が穏やかな日常を取り戻すことが期待できます。普段と違う様子が見られたときには、早めに動物病院へ相談することをおすすめします。

当院では、正確な診断と適切な治療を通じて、愛犬・愛猫の健康をサポートしています。気になる症状がある場合には、ぜひお気軽にご相談ください。

 

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