犬と猫のアレルギー性皮膚炎について┃その子に合った治療法を選ぶことが大切

アレルギー性皮膚炎とは、犬や猫の免疫機能の異常によって起きる皮膚の病気で、強いかゆみがみられます。その原因は多岐にわたるため、しっかりと検査を行い原因を特定して治療を進めることが大切です。また、その治療は薬によるものが中心となりますが、最近ではいろいろな治療の手法が考案されているため、飼い主様とご相談したうえで、その子に合った治療法を選ぶことが大切です。
今回は犬や猫のアレルギー性皮膚炎について、診断・治療法を中心に詳しく解説します。

 

原因

アレルギー性皮膚炎が発症するメカニズムは複雑で、詳しいことはわかっていませんが、さまざまなアレルゲンに対するⅠ型あるいはⅣ型過敏症による免疫異常と考えられています。

主なアレルゲン

・節足動物:ダニ、ノミなど
カビ
・植物:キク科、イネ科など
・樹木:スギ、シラカンバ、ハンノキなど
・食物:牛肉、卵白、小麦など

季節によるリスク

これからの季節はアレルギー性皮膚炎が発症しやすくなります。これは、アレルゲンごとに飛散する季節が異なるためです。ダニやノミなどの節足動物やカビ、植物は6~10月に多く飛散し、曝露される機会が増加します。また、梅雨や夏のジメジメした時期は湿度が高くなり、蒸れることで皮膚環境が悪化することも一因として考えられます。

症状

皮膚の炎症によって強いかゆみを伴います。目の周り、口の周り、お尻の周りなどが赤くカサカサしていたら、食物アレルギーの可能性があります。

その他のアレルギーでは、猫の場合はあごの下の挫創(ニキビ)、犬の場合は鼠径部(股の間)によく症状が現れます。

診断

アレルギー性皮膚炎が疑われる場合は、除去食試験を行うか、もしくは外部検査機関にアレルギー検査(IgE検査とリンパ球検査)を依頼して、どのアレルゲンが原因になっているのかを調査します。

アレルギー除去食試験
アレルギーの原因となる食品成分を特定するための検査です。
既知のアレルゲンを含まない特別な食事(除去食)を一定期間(通常は8~12週間)与え、
除去食を与えている間、皮膚の状態や痒みなどのアレルギー症状の改善が見られるかを確認します。

症状が改善された後、元の食事に戻し、アレルギー症状が再発すれば、除去食で除外されていた食品成分がアレルギーの原因である可能性が高いと判断できます。最後に、症状再発の原因となった食品成分を突き止めるため、除去食に一つずつ元の食品を加えていきます。症状が再発した時点で加えた食品がアレルゲンであると特定できます

IgE検査
アレルゲンに特異的な免疫グロブリンE(IgE)を測定することで、Ⅰ型過敏症の原因を推測します。

リンパ球検査
食物アレルゲンに反応するリンパ球を検出し、Ⅳ型過敏症の原因を推測します。

ただし、これらの検査で陽性になったアレルゲンだけが原因とは限らず、交差反応が起こる場合もあります。これは、アレルゲンのタンパク質構造が似ているために、陽性となったアレルゲンと別のものにも反応が表れる現象です。


ハンノキという樹木のIgEが高い場合、アーモンド、リンゴ、セロリ、さくらんぼ、ヘーゼルナッツでもアレルギー反応が起こることがあります。

さらに、ダニのアレルゲンであるDerf2がいろいろな物質と交差反応を起こし、ほかのアレルギーを増幅させることがあります。その一例として、ダニと牛肉のアレルギーを両方もっている場合、ダニアレルギーが発現していない状態でも、ダニのDerf2によって牛肉のアレルギー反応がより強く出てしまうことがあります。

治療

アレルギー性皮膚炎の治療は、減感作治療 、薬やサプリメント、保湿、腸活の4つに分けられます。

1. 減感作療法
WHOで唯一、アレルギー性疾患の根治療法として認められている治療法です。当院でも取り扱っており、特にダニのアレルゲン(Derf2)が陽性の場合におすすめです。根治は難しい場合もありますが、症状を大幅に改善できる可能性があります。

2. 薬物療法
減感作治療は治療効果が表れるまでに時間がかかることが多いため、短期間で効果をもたらす治療薬としては、アポキルをおすすめしています。

アポキル
比較的新しい治療薬ですが、アジア獣医皮膚科学会での推奨レベルが高く、信頼性の高い治療法です。ステロイドよりも副作用が少なく、短期間で効果が現れます

アポキルの製品概要書はこちら

ステロイド
症状が強い場合に選択します。

3.アレルゲンの除去
特定されたアレルゲンを含む食品を犬の食事から完全に除去します。

4.サプリメント投与

アンチノール
サプリメントで体質改善を行います。

5. 保湿
皮膚の潤いを保つセラミドを補給することで、アレルゲンの侵入を防ぎます

6. 腸活
皮膚のバリア機能は腸内細菌のバランスと関係しているため、乳酸菌製剤を投与することで犬アトピー性皮膚炎のかゆみが改善されたという研究結果もあります。

ここまでご説明したとおり、アレルギー性皮膚炎の治療には多種多様なアプローチ方法があります。それぞれの犬にあった治療法を、飼い主様とご相談しながら提案します。

予防法やご家庭での注意点

アレルギー性皮膚炎を完全に予防する方法はありませんが、前述した原因物質を生活から遠ざけ、皮膚を清潔に保つことが大切です。

当院では皮膚病の犬に対するシャンプーにも力を入れているので、トリミング後に皮膚病になってしまった場合は一度、当院でのシャンプーもご検討ください。

当院のシャンプーについては、こちらのページでも詳しく解説しています

まとめ

アレルギー性皮膚炎は、環境や食事中のアレルゲンに反応して強いかゆみを生じる病気です。QOL(生活の質)を低下させないためにも、愛犬に合った治療法を提案できる動物病院を受診しましょう。

当院の診療予約はこちら
当院の診療案内詳細はこちら

ペットクリニックを練馬区でお探しならナガワ動物病院
03-3926-9911

<参考文献>
A Double-Blind, Placebo Controlled-Trial of a Probiotic Strain Lactobacillus sakei Probio-65 for the Prevention of Canine Atopic Dermatitis (jmb.or.kr)
Complementary effect of oral administration of Lactobacillus paracasei K71 on canine atopic dermatitis – Ohshima‐Terada – 2015 – Veterinary Dermatology – Wiley Online Library
A double‐blind, placebo‐controlled evaluation of orally administered heat‐killed Enterococcus faecalis FK‐23 preparation in atopic dogs – Osumi – 2019 – Veterinary Dermatology – Wiley Online Library

 

Copyright (C)NAGAWA ANIMAL CLINIC All rights reserved.