【獣医師監修】犬の口臭が気になるときの原因と対処法
ふと愛犬とスキンシップをとったとき、「なんだか口のニオイが気になる」と思った経験をお持ちの飼い主様もいらっしゃるのではないでしょうか。
こうしたニオイは、単なる不快な症状ではなく、愛犬の健康状態を示すサインである場合もあります。
・急に口臭が強くなった
・いつもと違う種類の口臭がする
・口臭に加えて食欲不振や元気がない
このような変化は、重大な病気のサインである可能性があります。
そのため、放置せずに早めに原因を特定し、それぞれの病気にあった治療を進めることが大切です。
今回は、犬の口臭が強く感じられるときに考えられる原因と、予防や治療の方法について詳しく詳しくご説明します。
犬の口臭が強くなる主な原因とは
犬の口臭が強くなる原因には、以下のようなものがあります。
<歯周病>
歯に歯垢(プラーク)や歯石がたまり、歯周病菌が増加することで発症します。
犬は歯周病になりやすいことが知られていて、口臭の原因としても一般的です。魚が腐ったような腐敗臭がみられ、病気が進むにつれて、歯茎からの出血や、歯のぐらつきなどがみられます。また、菌が口から鼻腔に抜けると鼻水やくしゃみの原因になることもあります。
<口腔内の腫瘍>
犬の口の中には、悪性黒色腫(メラノーマ)という腫瘍ができることがあります。
口臭の他にも、よだれが多く出る、ごはんがうまく食べられない、口の中に出血がみられる、といった症状も現れます。進行すると他の臓器やリンパ節に転移し、全身の症状が現れる場合もあります。
<内臓の病気>
消化器の病気(胃炎など)や、腎臓・肝臓の病気、ホルモンの病気などによっても口臭が変化します。例えば高齢犬がかかりやすい慢性腎臓病では、尿のようなニオイがすることがあります。また糖尿病になると、口から甘酸っぱいニオイがするケースもあります。
口臭の程度でわかる病気のサイン
基本的には、口臭が強いほど病気が進行して、重症化していると考えられます。特に以下のような特徴的なニオイがした場合には、注意が必要です。
ニオイの種類 | 関連が疑われる病気 |
甘い・甘酸っぱい | 糖尿病 |
腐敗臭 | 歯周病、口腔内の腫瘍 |
尿臭 | 腎臓や肝臓の病気 |
こうしたニオイの変化が少しでもみられたら、ご家庭で様子をみるのではなく、すぐに動物病院を受診しましょう。これらの病気は進行すると治療が難しくなってしまったり、愛犬の体に負担をかけてしまったりするケースがあるため、早期発見・早期治療がとても大切になります。
自宅でできる予防と対策方法
今回ご紹介した病気の中で、特に歯周病はご家庭での予防と対策が必要不可欠です。以下のようなケアを日常生活に取り入れてみましょう。
<歯磨きの習慣化>
さまざまな歯磨き用の製品が販売されていますが、基本的には歯ブラシによるケアをお勧めします。しかし、歯に物を入れることに抵抗がある犬は多く、最初から歯ブラシを使うのは難しいかもしれません。最初は指サックや歯磨きシートなどで歯に触れたり、歯磨きペーストを塗ったりして、少しずつ慣らしていきましょう。子犬の頃から習慣づけることで、歯磨きへの抵抗を減らすことができます。
犬の歯垢は数日のうちに歯石となり、ご家庭のケアでは取れなくなってしまうので、毎日のケアを心がけましょう。
<食事の見直し>
いろいろなメーカーから、歯石の形成を抑えるなどの歯のケアを重視したフードが販売されています。こうしたものを活用することもひとつの手段です。ただし、日ごろの歯磨きが予防に一番効果的ですので、あくまでも補助程度にお考え下さい。
<デンタルケアグッズの活用>
ガムやおもちゃ、水に溶かすタイプなど、多種多様なデンタルケアグッズが販売されています。当院では、愛犬の性格や飼い主様のライフスタイルにあわせて、最適なものをご提案させていただいております。
動物病院での検査と治療
愛犬の口臭のお悩みで来院された場合の、一般的な検査や治療の手順は以下のとおりです。
①口臭の確認と口腔内の視診
口臭の特徴を確認するとともに、口の中を観察し、歯石や歯垢の状態、歯茎の炎症、腫瘍の有無などを確認します。特に口腔内の悪性黒色腫(メラノーマ)の場合は特徴的な強い口臭を伴うため、入念な確認が必要です。
②歯周病の評価
歯肉炎の程度や歯周病菌の数を調べるための検査などを実施します。この検査により、歯周病の進行度を正確に把握することができます。
③治療計画の策定
検査結果に基づき、治療方針を決定します。
・軽度の場合:セルアップオーラルなどのサプリメントの使用や、デンタルケアグッズの活用をご提案します。これにより口腔内環境の改善を図ります。
・重度の場合:専門的な歯周病治療が必要となります。
④手術対応(必要に応じて)
重度の歯周病や腫瘍が見つかった場合には、外科手術を検討します。
口の中のトラブルは、口だけでなく全身の健康状態にも影響します。また、早期に治療を始められれば、治療の選択肢が広がるだけでなく、愛犬への負担も最小限に抑えられます。そのため、少しでもニオイに違和感があれば、早めに動物病院を受診することをお勧めします。
まとめ
犬の口臭でお悩みの飼い主様は多くいらっしゃいます。その原因は多岐にわたりますが、ほとんどが歯周病によるものです。歯周病はご家庭でのケアが重要になるので、今回ご紹介した対策をぜひ試してみてください。
また、歯周病をはじめとする口腔内の病気や内臓疾患は、早期発見・早期治療が鍵となります。少しでも口からのニオイが強くなったり、普段と違うニオイを感じたら早めに動物病院を受診しましょう。
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