犬のチェリーアイ|放置して大丈夫?自然に治る?治療と手術の判断基準

愛犬の目頭に赤いふくらみが見え「これって放っておいても大丈夫?」「自然に治るの?」と不安に感じたことはありませんか?

それは「チェリーアイ」と呼ばれる病気かもしれません。命に関わることはほとんどありませんが、飛び出した組織が炎症を起こしたり、目をこすることで角膜を傷つけたりすることがあります。

一時的に引っ込むことはあっても、自然に治ることは基本的に期待できません。目の健康を守るためにも、早めに状態を確認し、治療が必要か判断することが大切です。

今回は、犬のチェリーアイの原因や放置した場合のリスク、点眼や手術による治療、費用や再発の考え方、ご家庭での注意点について解説します。

 

こんな症状が見られたら「チェリーアイ」かもしれません

チェリーアイは、日常のスキンシップやアイコンタクトを取る中で気づかれることが多い病気です。次のような様子が見られる場合、チェリーアイの可能性があります。

目頭に赤く丸いふくらみが見える
目を気にしてこする
白目が充血している
涙や目やにが増えている
子犬や若い犬で発症している

見た目の変化は目立つものの、初期は痛みが少ないことも多く、「元気そうだから」と様子を見てしまうケースも少なくありません。

チェリーアイとは|犬に多い理由と仕組み

「チェリーアイ」とは、目頭の内側にあるピンク色にふくらんでいる部分「第三眼瞼腺(だいさんがんけんせん)」が、本来の位置から外に飛び出した状態です。正式には「第三眼瞼腺脱出」といいます。

第三眼瞼腺は、涙をつくる大切な組織です。通常、外からはほとんど見えませんが、この腺を支えている組織がゆるむと、赤いふくらみとなって目頭に現れることがあります。

犬に多く見られる理由としては、生まれつきこの腺を支える組織が弱い体質を持っている場合があること、また成長途中の時期は組織のバランスが変化しやすく、子犬〜若い犬で起こりやすいことが挙げられます。

また、犬種によって体質差があり、アメリカン・コッカー・スパニエルビーグルボストン・テリアなどで比較的よく見られる傾向がありますが、どの犬種でも起こる可能性がある病気です。

症状は片目だけに出ることもあれば、両目に出ることもあります。また、片目だけに発症した場合でも、もともとの体質によっては、後から反対側の目にも起こる可能性があります。

放置するとどうなる?

チェリーアイは、見た目に反して初期にはあまり痛みが出ないことも多く、「元気そうだし、しばらく様子を見てもいいかな」と思われることもあるかもしれません。しかし、第三眼瞼腺が外に飛び出したままの状態が続くと、少しずつ目に負担がかかっていきます。

例えば、

外に出た腺が乾燥や刺激を受け、炎症を起こしやすくなる
目をこすることで結膜や角膜を傷つける
結膜炎や角膜炎を併発し、充血や痛みが出てくる
涙の分泌バランスが崩れ、ドライアイにつながる
慢性化や再発を繰り返し、治療が長引く

といったリスクが考えられます。

また、一度引っ込んだとしても、第三眼瞼腺を支える構造が改善したわけではないため、再び飛び出すことがあります。「今は痛そうではないから」「引っ込んだから」と様子を見ている間に、状態が進んでしまうことがある点は、チェリーアイで特に注意したいところです。

自然に治る?点眼だけで治る?

チェリーアイが一時的に引っ込むことはありますが、自然に治ることは基本的に期待できません。また、一時的に引っ込んだ場合も、第三眼瞼腺を支える組織の弱さが残っているため、時間がたつと再び飛び出してしまう可能性があります。

点眼薬には、炎症や赤み、違和感を抑える役割があります。ただし、飛び出した第三眼瞼腺を本来の位置に固定する治療ではありません。

初めての発症で炎症が軽い場合などには、点眼を行いながら経過を見ることもあります。一方で、何度も繰り返す場合や、点眼を続けても安定しない場合には、手術を検討します。

治療の選択肢|ナガワ動物病院の考え方

当院では、症状の程度や炎症の有無、再発の回数、年齢などを踏まえ、その子に合った治療の進め方を選択することを大切にしています。日常生活への影響や生活環境についても伺い、点眼で経過を見る場合と手術を行う場合についてご説明しながら、飼い主様と一緒に治療方針を考えていきます。

一般的に、チェリーアイの手術には、飛び出した第三眼瞼腺を元の位置に戻して固定する方法と、第三眼瞼腺を切除する方法がありますが、当院では第三眼瞼腺をできるだけ温存する方針です。第三眼瞼腺は涙をつくる大切な組織であり、切除すると涙の量が減って、将来的にドライアイにつながる可能性があるためです。

目に見えるふくらみを取り除くことだけを目的とせず、生まれ持った目の構造をなるべく損なわない形に戻し、その後の目の健康まで考えて治療にあたっています。

手術について|不安な飼い主様に知っておいていただきたいこと

目の手術と聞くと、麻酔や入院について不安を感じる飼い主様も多いかと思います。

チェリーアイの手術は全身麻酔下で行うため、当院では、まず診察や必要な検査で全身状態を確認し、麻酔をかけられる状態かを丁寧に見極めます。また、手術の内容や当日の流れ、入院が必要かどうか、退院までの見通しについて事前にご説明し、ご納得いただいたうえで手術を行います。

手術費用について

手術費用は、片目か両目か、目の状態、必要な検査、入院の有無などによって異なります。一律の金額をご案内することが難しいため、診察で状態を確認したうえで、治療内容とあわせてご説明します。

手術後の再発について

手術後も、第三眼瞼腺が再び飛び出す可能性はあります。再発した場合は、目の状態や手術後の経過を確認し、点眼で炎症を抑えながら経過を見るのか、再手術を行うのかを検討します。

手術前には、治療によって期待できることだけでなく、再発の可能性や術後の見通しについてもお伝えします。気になることがあれば、手術を決める前に遠慮なくご相談ください。

当院の眼科手術について詳しくはこちらをご覧ください

ご家庭での注意点

チェリーアイの治療では、動物病院での処置に加え、ご家庭での過ごし方も回復に関わります。特に、目をこすると症状の悪化や再発につながることがあるため、次の点に注意が必要です。

飛び出した部分を無理に触ったり、押し戻したりしない
処方された点眼薬は、決められた回数と期間を守って使用する
目を前足でこすったり、床や家具にこすりつけたりしないように見守る
獣医師の指示なく、市販の点眼薬を使わない

エリザベスカラーは指定されたものを使用してください

手術後は、エリザベスカラーの装着が必要です。エリザベスカラーは、必ず病院でサイズを確認したものを使用してください。柔らかい素材や長さが足りないタイプでは、装着していても前足や家具が目に届いてしまうことがあります。

当院でも、ご家庭で市販の柔らかいカラーへ変更したことで手術部位を傷つけ、再手術が必要になったケースがあります。術後は、ある程度硬さのあるハードタイプを、獣医師から指示された期間装着することが重要です。

一時的に過ごしづらそうに見えることもありますが、目への刺激を防ぎ、手術した部分を守るための大切な対応です。装着中の食事や睡眠で困ることがあれば、まずは一度ご相談ください。

よくある質問(FAQ)

Q. 自然に治ることはありますか?
自然に治ることは基本的に期待できません。一時的に引っ込むことはありますが、再び飛び出す可能性があります。

Q. 片目だけですが、もう片方にも出る可能性はありますか?
片目だけに発症することもありますが、チェリーアイを起こしやすい体質がある場合、反対側の目にも出る可能性があります。

Q. 子犬でも手術が必要になることはありますか?
症状の出方や経過を見ながら判断します。年齢だけで決めてしまうのではなく、脱出を繰り返す場合や今後も再発が心配される場合には、子犬であっても手術を検討することがあります。

Q. 手術費用はどのくらいかかりますか?
片目か両目か、手術方法、必要な検査や入院の有無などによって異なります。診察で目の状態を確認したうえで、治療内容とあわせてご説明します。

Q. 手術をしても再発することはありますか?
当院では、生まれ持った目の構造をなるべく損なわないよう、第三眼瞼の軟骨を切除せずに手術を行うため、再発のリスクは残ります。再発した場合、状態に応じた治療を行います。

Q. 猫もチェリーアイになりますか?
猫でも発症します。治療の考え方は犬と大きく変わりませんが、状態や性格によって対応が異なる場合があります。

まとめ|早めの判断が目の健康を守ります

チェリーアイは緊急性の高い病気ではありませんが、放置することで将来的な目のトラブルにつながる可能性があります。「自然に治るかも」と様子を見るのではなく、一度状態を確認することが、愛犬の目の健康を守る第一歩です。

ナガワ動物病院では、現在の症状だけでなく、その後の目の健康も考え、その子に合った治療方針をご提案しています。気になる症状があれば、お気軽にご相談ください。

【監修】ナガワ動物病院副院長 名川 真ノ介(獣医師)

(最終更新日:2026年8月21日)

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<参考文献>
Dan G O’Neill, Yahui Yin, Roser Tetas Pont, Dave C Brodbelt, David B Church, Camilla Pegram, Minna Mustikka. “Breed and conformational predispositions for prolapsed nictitating membrane gland (PNMG) in dogs in the UK: A VetCompass study”. National Library of Medicine. 2022-01-26.
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8791520/, (参照:2023/12/5)

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