犬の肛門周囲瘻について┃肛門部を床や地面にすりつけような様子がみられる

肛門周囲瘻(こうもんしゅういろう)とは、お尻の周りに瘻管(ろうかん)と呼ばれる穴ができる病気です。この病気自体が死に直結することはありませんが、再発を繰り返すことで潰瘍や出血が生じ、生活の質(QOL)が低下する原因になってしまいます。また、お尻の周りにできる腫瘍(肛門周囲腺腫や肛門嚢アポクリン腺癌など)によって症状が現れている可能性もあるため、検査をしてみなければ楽観視はできない病気です。
今回は犬の肛門周囲瘻について、原因やよくみられる症状とともに、当院での治療法をご紹介します。

 

原因

詳しい原因はわかっていませんが、現在では遺伝や免疫が関わっていると考えられています。
特にジャーマン・シェパードで発症しやすいことがよく知られています。それ以外の犬種でも、中高齢の雄に多いといわれています。

また、食物アレルギーが発症に関係するともいわれているため、特定の食品を摂取するとかゆみなどの症状が現れる犬では注意が必要です。

症状

お尻の周りにいくつかの瘻管ができ、炎症が生じることで、かゆみや不快感を覚えます。そのため、お尻を床などに擦りつけたり、舐めたり、かじったりといった様子がみられます

炎症が長期にわたると出血や潰瘍が生じ、次第に便が出にくくなったり、傷口から二次感染を起こしたりするケースもあります。

診断

お尻の状態を目視で確認することで、ある程度の推測は可能です。
ただし、肛門周囲腺腫や肛門嚢アポクリン腺癌といったお尻の周りにできる腫瘍でも同じような症状がみられるため、皮膚の組織を一部採り、顕微鏡で調べる必要があります

さらに、食物アレルギーが関わるとされているため、アレルギーの検査をする場合もあります。

治療

治療は内科療法外科療法に分かれます。
まずは免疫抑制剤で炎症反応を抑え、食物アレルギーがある場合は食事内容を変更して様子をみます。二次感染がある場合は、抗菌薬をあわせて投与します。

こうした内科療法を実施しても再発を繰り返す場合は、手術によって病変部分を取り除く必要があります。またその際には、会陰筋群(お尻の周りの筋肉)を極力傷つけないように注意が必要です。

術後は傷口から感染が広がらないよう、肛門に便がついたらすぐにきれいにすることが肝心です。特に下痢の場合は汚染が広がりやすいので、念入りにお尻を拭くように心がけましょう。

ご家庭での注意点や予防法

ジャーマン・シェパードは遺伝的に肛門周囲瘻を発症しやすいため、お尻の様子に注意しましょう。

また、肛門に限らず擦る・舐めるなどの行動がみられる場合には、アレルギーの検査を実施したり、検査結果に応じて食事内容を切り替えたりするなどの対策が有効です。

まとめ

肛門周囲瘻はジャーマン・シェパードに多い病気で、自然に治ることはないため、早期発見・早期治療が重要です。かゆみを覚えている場合は食物アレルギーが隠れている可能性もあるので、思い当たる節があればアレルギーの検査をしてみることをお勧めします。

当院の診療予約はこちら
当院の診療案内詳細はこちら

ペットクリニックを練馬区でお探しならナガワ動物病院
03-3926-9911

<参考文献>
Canine Perianal Fistulas: Clinical Presentation, Pathogenesis, and Management – ScienceDirect

Copyright (C)NAGAWA ANIMAL CLINIC All rights reserved.