【獣医師監修】愛犬のくしゃみと鼻水が止まらない…原因と対策
愛犬のくしゃみや鼻水が止まらないと、「風邪がひどくなったのかな…」「自宅で様子をみたらいいのか、動物病院を受診したらいいのか、わからない…」と心配になる飼い主様が多いのではないでしょうか。当院でも、こういったお悩みでご相談いただくことが増えています。
こうした症状が長引く場合、単なる風邪だけでなくさまざまな病気が背後に隠れていることがあります。そのため、しっかりと検査を行なって原因を特定し、適切な治療を行うことがとても重要です。
今回は、犬のくしゃみや鼻水が続く際に考えられる原因や、気をつけるべき症状、動物病院を受診するタイミングなどについてお話します。
犬のくしゃみと鼻水が続く主な原因
愛犬のくしゃみや鼻水には、以下のような原因が考えられます。
<感染症>
・歯周病が原因で鼻腔に細菌が入り込む場合
・犬伝染性気管気管支炎(ケンネルコフ)
・犬ジステンパーウイルス感染症
特に口腔内の健康と呼吸器の症状は密接に関係しています。歯周病菌が鼻腔に入り込むことで、鼻水やくしゃみを引き起こすことがあります。特に口臭が強く、歯肉が腫れているような場合には、歯周病が原因となっている可能性があります。
<アレルギー>
・花粉
・ハウスダスト
・ダニ
<異物混入>
・鼻腔内の寄生虫
・植物の葉や種
<腫瘍>
・鼻腔内にできる腫瘍(良性または悪性)
気をつけるべき症状
一時的なくしゃみや鼻水は問題にならないこともありますが、1日に何度もくしゃみや鼻水を繰り返したり、症状が1週間程度続く場合には注意が必要です。早めに動物病院を受診することをお勧めします。
<注意が必要な鼻水の特徴>
・透明でさらさら:大量に出る場合は、アレルギーが関わっている疑いがあります。
・血が混じる:腫瘍や異物混入の疑いがあります。鼻水が泡状で呼吸が苦しそうなケースでは、肺水腫の場合もあります。
・黄色や緑色でどろどろ:感染症が関わっている疑いがあります。鼻水とともに口臭が強い場合には、歯周病との関連が疑われます。
<くしゃみの頻度からみる重症度>
・軽症:1日に数回。1〜2日のうちに改善し、元気・食欲があり他に症状がみられない。
・重症:1日に何度も繰り返す。1週間ほど改善がみられず、元気・食欲がない。体重が減ったり、息苦しそうにしている。体重の変化は特に重要なサインです。食事量に変化がなくても体重が減少している場合は、病気が進行している可能性があります。
また、くしゃみには通常のものと「逆くしゃみ」と呼ばれる症状があります。逆くしゃみは鼻の奥や喉の刺激により起こる反応で、普通のくしゃみとは異なる音がします。多くの場合は心配ありませんが、頻繁に起こる場合は受診をお勧めします。
加えて、くしゃみと咳は見分けにくい場合があります。飼い主様が「くしゃみ」だと思っていても、実は「咳」が出ていることもあります。そのため、当院では以下のような動画撮影をお勧めしています。
・くしゃみや咳が出ている様子
・普段の呼吸の様子
・運動後の様子
このような動画があることで、より正確な診断が可能になります。
ご自宅でできるケアと対策方法
日常生活で次のようなポイントを意識して、愛犬が快適に過ごせる環境を整えましょう。
・毎日の掃除や毛布・寝床の洗濯を徹底する
・定期的な換気
・部屋の温度(22℃前後)と湿度(50~60%)を保つ
・芳香剤やタバコなど刺激物を避ける
あわせて、鼻や口の周りが汚れている場合には、コットンでやさしく拭き取るケアも重要です。その際、鼻水の色や粘性を観察しておくと、動物病院での診察に役立ちます。
また、こうしたご自宅でのケアとあわせて、定期的なワクチン接種も欠かせません。特にケンネルコフや犬ジステンパーウイルス感染症は混合ワクチンによって重症化を防ぐことができるので、適切なスケジュールで接種しましょう。
慢性化のリスクと早期受診の重要性
くしゃみや鼻水の症状を放置してしまうと、気管支炎などの重篤な呼吸器疾患に進行してしまう可能性があります。
特に注意すべきなのは、症状が慢性化してしまうと、治療への反応が鈍くなり、改善が難しくなるというリスクです。
当院でも最近、わずか5歳という若さで命を落としてしまった猫ちゃんの症例がありました。最初は軽いくしゃみと鼻水の症状でしたが、気管支炎が慢性化してしまい、その後どのような治療を行っても症状が改善せず、最終的に亡くなってしまいました。
このように、一見軽症に見える症状であっても、放置することで取り返しのつかない事態に発展する可能性があります。
早期発見・早期治療により、多くの場合は適切な治療で改善が期待できます。愛犬の健康のため、気になる症状があれば、すぐにご相談ください。
受診のタイミング
鼻水やくしゃみは、寒さなどによって一時的に現れることもあります。しかし、症状が長引く場合や、以下のような状態がみられる場合は、早めの受診をおすすめします。
・透明でさらさらした鼻水が大量に出る
・黄色あるいは緑色の鼻水が詰まる
・鼻水とともに鼻血が出る
・泡状の鼻水で呼吸が苦しそう
・1日に何度もくしゃみ・鼻水が出る
・呼吸が苦しそう、または普段より努力して呼吸している
・食欲はあるのに体重が減少している
・くしゃみ・鼻水とともに口臭が強くなっている
・くしゃみ・鼻水以外にも症状がある(元気・食欲がない、目やにが出る、など)
まとめ
犬のくしゃみや鼻水は、風邪のような一時的な症状である場合もありますが、歯周病やアレルギー、腫瘍といった病気が関わっていることもあります。軽い症状なら自然に治ることもありますが、深刻な病気が隠れている場合には、健康状態が徐々に悪化し、治療が難しくなる恐れがあります。特に、症状が長引いたり他の異常が見られる場合には、早めに動物病院を受診することが重要です。
愛犬が健康で快適な生活を送れるよう、少しでも気になる症状があれば、かかりつけの動物病院にご相談ください。
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