犬と猫のフィラリア症予防について┃通年で予防しよう

動物の感染症で気をつけなければならないものの1つに、フィラリア症(犬糸状虫症)が挙げられます。フィラリア症とは、フィラリア(犬糸状虫)という寄生虫が感染することで引き起こされ、ひとたび感染・発症してしまうと治療は難しいため、予防がとても重要になります。フィラリア症は犬の病気としてよく知られていますが、猫にも感染して症状を示すことがあるので、注意が必要です。
今回は犬と猫のフィラリア症について、その予防を中心にお伝えします。

 

フィラリア症とは

フィラリア症は、蚊によって媒介される寄生虫の病気です。

犬では、フィラリアの幼虫(ミクロフィラリア)が吸血を介して血液中に移動し、成虫へと成長するとともに、肺の血管や心臓に寄生することで発症します。寄生によって血流に影響を及ぼすことで、呼吸器や循環器に関わる様々な症状が現れます。初期には無症状のこともありますが、一般的には咳や運動を嫌がるといった症状がみられます。

猫もフィラリアに感染しますが、犬と違い成虫がたくさん寄生することはまれです。とはいえ、猫では少し成虫がいただけでも重篤な状態に至ることがあり、3隻(せき:フィラリアの成虫は1隻、2隻と数えます)ほど心臓に詰まると亡くなってしまうともいわれています。また、猫の体内で幼虫や成虫が死滅すると、犬糸状虫随伴呼吸器疾患(HARD)という病気に発展し、咳や嘔吐といった症状を示すだけでなく、突然死することもあります。

フィラリア症予防が必要なわけ

フィラリア症は治療がとても難しい病気です。なぜなら、フィラリア症は成虫の寄生によって症状が現れるため、こうした状態の動物を治療するには、心臓や血管内にいるフィラリア成虫そのものを手術によって摘出する必要があるからです。
しかし、この手術は非常に難易度が高く、経験豊富な獣医師がいて適切な器具が揃っていても、必ずしも安全というわけではありません。

また、フィラリア成虫の寄生によって三尖弁がうまく閉じなくなると、大静脈症候群という状態に陥ってしまい、2日ほどで死に至ってしまう危険性もあります

一方で、フィラリアが幼虫の状態であれば、予防薬によって成虫になる前の段階で駆虫し、発症を防ぐことができます

これらのことから、フィラリア感染を未然に防ぐためには、フィラリア予防が非常に重要であると言えます。

フィラリア症の予防法

予防薬は、予防注射のように年1回の投与で通年予防できるものや、定期的に投薬が必要なものなどがあります。
当院の場合、犬では投与し忘れを防止でき、フィラリアが成虫化するリスクを少なくするためにも、年1回の注射による予防をお勧めしています。一方で、猫では通院と投薬がストレスになってしまうこともあるため、3カ月に1回の投薬をお勧めしています。

また、地域によっても異なりますが、当院がある地域では2023年の秋ごろも暑かったため、11月後半まで蚊が発生していましたそのため投与方法にかかわらず、通年での予防が望ましいと考えています

なお、予防薬にはノミ・ダニ予防を兼ねたものが一般的になりつつありますが、あえてフィラリアとノミマダニの予防薬を分けることで、何が原因で体調を崩しているのか判断しやすくなるというメリットもあるため、当院では別々に分けて予防する方法をご案内することも可能です。

「ノミ・マダニ対策」については、こちらのページをご覧ください

投薬時の注意点

「マンションの高層階は蚊が侵入しにくいからフィラリア予防は行わなくても大丈夫」と仰る飼い主様もいらっしゃいますが、蚊は人や動物、衣服、荷物に紛れ込んでいたり、エレベーターで地上から上ってきてしまう可能性もあります。そのため、マンションの高層階にお住まいで完全室内飼育だとしても、しっかりと予防することをお勧めします。

また、フィラリア症の予防薬は感染から約1カ月後の幼虫をターゲットにしていますが、それとは別にリーチバック効果があるともいわれています。これは投薬の遅れや忘れを取り返す効果のことで、仮に投薬を1、2回忘れてしまい感染の心配がある場合でも、その後投薬し続けることで未成熟虫(通常の予防薬が駆虫できるよりも大きな虫体)を駆除できることがわかっています。投薬の忘れによる感染・発症を防ぐためにも、間をあけずに通年投薬し続けることはメリットがあるといえます。

まとめ

フィラリア症は治療が難しいため、しっかりと予防して発症させないことがとても大切です。また動物は人間よりも圧倒的に早く年をとるため、その他の病気にも注意が必要です。特に猫では3カ月に一度、フィラリア治療薬を投薬するタイミングで、健康チェックをすることをお勧めします。

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<参考文献>
2018-AHS-Canine-Guidelines.pdf (heartwormsociety.org)

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