【獣医師監修】愛犬・愛猫の咳が気になったら┃危険な症状と対処法
犬や猫も私たち人間と同じように咳をすることがあります。突然、「ガッガッ」「ケッケッ」と音を立てていると、苦しそうな様子で心配になりますよね。こうした症状は呼吸器の異常だけでなく、さまざまな病気が関係している場合があり、動物の種類によってその性質や原因が異なります。そのため、早めに検査を受けて原因を特定し、適切な対処をすることが大切です。
今回は、犬と猫それぞれの咳について、その原因とともに、特に緊急性が高い症状やご家庭でできるケアの方法を詳しくお伝えします。
1.犬と猫の咳の違いとは
2.犬の咳が出る主な原因と症状
3.猫の咳が出る主な原因と症状
4.すぐに病院へ行くべき危険な症状
5.自宅でできる観察と応急ケア
6.検査と治療
7.咳を予防するための日常的な注意点
8.まとめ
犬と猫の咳の違いとは
犬と猫の咳は、音や頻度、原因となる病気に特徴的な違いがあります。
〈犬の咳の特徴〉
犬の咳は比較的大きな音で、乾いた咳や湿った咳などバリエーションが豊富です。心臓病や気管支炎が原因となることが多く、慢性的に症状が続くケースが一般的です。
また、短頭種(パグやフレンチ・ブルドッグなど)では、顔の構造が影響して気管虚脱が起こりやすいことが知られています。
〈猫の咳の特徴〉
猫の咳は犬に比べると静かで、ヘアボールを吐き出す仕草に似ているため見分けが難しい場合があります。鼻や喉の感染症や猫喘息によるものが多く、急激に症状が現れることが特徴です。
犬の咳が出る主な原因と症状
犬で咳を引き起こす主な原因は以下の通りです。
1.気管虚脱
短頭種で多く見られ、気管がつぶれることで「ガーガー」というガチョウの鳴き声のような咳をします。重症化すると呼吸困難になるため注意が必要です。
気管虚脱について詳しくはこちらをご覧ください
2.心臓病
高齢犬で特に多いのが僧帽弁閉鎖不全症です。最初は「ケッケッ」と乾いた音ですが、徐々に「ガッガッ」「ゲーゲー」と湿った音に変わります。
僧帽弁閉鎖不全症について詳しくはこちらをご覧ください
3.感染症
ケンネルコフなど、細菌やウイルスの感染症が原因です。乾いた音のこともあれば、湿った音がすることもあります。
4.異物誤飲
喉や気管に異物が詰まると、「ガッガッ」と咳をし、吐き出そうとします。完全に詰まった場合は命に関わるため、早急な対応が必要です。
異物誤飲について詳しくはこちらをご覧ください
猫の咳が出る主な原因と症状
猫で咳を引き起こす主な原因は以下の通りです。
1.喘息
環境中のアレルゲン(ホコリや花粉など)に反応し、突然首を伸ばして「ゼーゼー」と苦しそうに息をします。
2.心臓病
高齢猫で特に多いのが肥大型心筋症です。息苦しくなり、口を開けて呼吸することもあります。
肥大型心筋症について詳しくはこちらをご覧ください
3.感染症
ウイルス性鼻気管炎などで、鼻水やくしゃみを伴うこともあります。
なお、猫では舐めとった毛が胃の中で球状に固まり(ヘアボール)、嘔吐するように身体の外へ出すことがあります。これは病的な咳ではなく、生理的な現象ですので心配はいりません。
すぐに病院へ行くべき危険な症状
次のようなケースでは緊急性が高いので、速やかに動物病院を受診することをお勧めします。
・呼吸が苦しそう
重度の咳によって酸素をうまく取り込めないと、とても危険です。歯茎などの粘膜の色が青白くなることもあります。特に高齢の犬・猫や短頭犬種では容態が急変しやすいので、注意が必要です。
・食欲や元気がない
呼吸器だけでなく、全身に何らかの不調がある可能性があります。若い動物ほど容態が急変しやすいので、注意が必要です。
夜間や休日にこのような症状がみられた場合に備え、あらかじめ夜間や休日診療に対応している動物病院を調べておくことが大切です。
一方で、咳以外の症状がない、一時的な咳で治まっている、異物誤飲の可能性がない場合には、次の項目でご紹介する応急ケアを行いながら、ご自宅で様子を観察してみてください。
自宅でできる観察と応急ケア
咳が出る場合には、ご家庭でその様子をよく観察していただくことが重要になります。具体的には、以下のポイントを押さえておくとよいでしょう。
・咳の頻度:1日に何回程度か
・咳のタイミング:運動後や食後、突然発生するのか
・咳の性状:乾いた音か、湿った音か
自宅でこうした症状がみられても、動物病院では緊張して咳が出なくなることもあります。そのため、受診の際には、咳をしている様子を動画で撮影しておくと診断の参考になり、とても役立ちます。また、体重の定期的な確認も重要です。咳が続く場合、食欲があって普段通り食べていても体重が減少していることがあります。1kg以上の体重減少が見られる場合は、重大な病気が隠れている可能性があるため、獣医師への相談をお勧めします。
あわせて、次のようなケアが応急処置につながるので、ぜひお試しください。
・加湿器を使い、適切な湿度を保つ
・生活スペースの掃除や寝床の洗濯など環境を清潔にする
・運動を控えさせ、安静にさせる
検査と治療
動物病院では、飼い主様に撮っていただいた動画をもとに、身体検査、カフテスト(気管支の刺激による反応を確認)、レントゲン検査、その他必要な検査(エコーなど)を順に実施して、診断を下します。
咳の原因が特定された後、抗生物質や抗炎症薬の投与、アレルギー対策、手術などの治療が行われます。
咳を予防するための日常的な注意点
咳を予防するには、以下のような日常的なケアが大切になります。
・適切な室温管理(25℃程度)
・適切な湿度管理(50~60%)
・清潔な環境維持
・十分な運動や遊び時間を確保し、ストレスを溜めない
犬のケンネルコフや猫のウイルス性上気道炎などの感染症は、ワクチン接種によって予防できるため、スケジュール通りに接種を済ませておくことが大切です。一方、心臓病などワクチンで予防できない病気については、定期的な健康診断を受けることで早期発見・早期治療につなげることができます。
咳の症状は慢性化すると治療が難しくなる場合があるため、気になる症状があれば早めにご相談ください。
まとめ
咳は、いろいろな病気によって起こる呼吸器症状の1つです。中には重大な病気が隠れていることもあるので、緊急性が高いようであればすぐに動物病院を受診しましょう。また、日常的なケアや定期的な健康診断を行うことで、愛犬・愛猫の健康を守ることができます。不安な点がある場合は、ぜひお気軽にご相談ください。
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