糖尿病は、中高齢の犬や猫に見られる内分泌疾患です。生活習慣や肥満が原因となることも多いので、飼い主さんは日々ペットの生活をしっかりと管理してあげなければなりません。

本記事では、犬と猫の糖尿病の原因、症状、診断方法、治療方法について解説していきます。

犬の糖尿病の原因と症状

犬の糖尿病は、肥満によるインスリン抵抗性が原因となる場合や、膵臓から血糖値を下げるインスリンの分泌量が低下することが原因として考えられ、以下のような症状が見られます。

・脱水を原因とした多飲多尿

・体重減少

・白内障

・皮膚や皮毛の乾燥

インスリンの分泌量が低下すると、脳や各臓器が糖をエネルギーとして取り込めなくなります。そのため、行き場を失った糖は大量の水分とともに尿から排出されるしかなくなることで、水を大量に飲み、おしっこを大量にするなど多飲多尿の症状が見られます。

進行するとケトアシドーシスと呼ばれる疾患を誘発するため、早めの対処が必要になります。

糖尿病の犬では、血糖値が高い状態が長く続くと、体内で脂肪を分解してエネルギーにするようになることがあり、このとき、ケトン体が生成されます。ケトン体は酸性の化学物質で、血液中に蓄積されることで、引き起こされるのがケトアシドーシスです。

ケトアシドーシスは、嘔吐、下痢、脱水、衰弱、さらには昏睡などの症状を引き起こし、生命を脅かす可能性のある深刻な状態であり、すぐに動物病院での治療が必要です。

糖尿病は中〜高齢(8歳以上)の雌犬に多い病気であるので、愛犬が該当する場合には、上記の症状がないかどうかこまめにチェックするようにしましょう

猫の糖尿病の症状と原因

猫の糖尿病は、肥満や膵炎などの炎症により、インスリンがうまく作用しなくなること(インスリン抵抗性)が主な原因考えられています。

猫の糖尿病の症状としては、以下の通りです。

・脱水を原因とした多飲多尿

・体重減少

・食欲不振

・抹消神経障害

犬と同じく脱水を原因とした多飲多尿が症状として見られ、進行するとケトアシドーシスを誘発するため、飼い主さんは日頃からチェックするようにしてください。

また猫は、糖尿病により食欲不振が続くと肝リピドーシスと言われる肝臓の疾患になったり、神経障害により踵をつけて歩いたりする症状が見られます
こうした特徴的な症状が見られた場合には、動物病院を受診するようにしてください

糖尿病の診断方法

犬と猫の糖尿病は、以下の3つの条件を満たすことで診断できます。

・多飲多尿や体重減少などの症状がある

・数日にわたって空腹時に高血糖が続いている

・空腹時に尿検査で尿糖が検出される

そのほか、高血糖を引き起こすホルモン疾患や膵炎の有無を判断するために血液検査やエコー、レントゲンなどの画像検査を行う必要があります。

糖尿病の治療方法

犬と猫の糖尿病の治療方法としては、以下の通りです。

・インスリン療法

・脱水の改善

・食事管理

・規則正しい運動習慣

犬猫の糖尿病では、上がりすぎた血糖値をコントロールするために、まずは入院してインスリン接種による血糖値コントロールと脱水症状の改善を目指します。

脱水症状が改善されないと、インスリンを接種しても血糖値が十分に下がらない可能性もあるため、脱水症状改善のため、輸液を投与することで体内の水分や電解質バランスの改善を図ります。

当院では飼い主様の経済的負担や愛犬愛猫の健康面、精神面での負担を最小限に抑えるため、症状に応じた最適なインスリン投与による血糖値コントロールと脱水症状の改善を図り、入院日数を可能な限り短縮できるよう努めております。

また、持続時間が異なる複数の種類のインスリンを用意しており、愛犬愛猫のインスリンへの反応と飼い主さんのライフスタイルに合わせて最適なものをご提案させていただきます。

加えて、普段の食事でも高血糖にならないような高タンパク・低炭水化物の食事を与えることが大切です

犬の場合には、規則正しく運動させることにより、インスリンの感受性を保ち血糖値を下げられます。毎日の散歩を適度に続けてあげるようにしましょう

糖尿病は入院後に血糖値が安定してすぐに安心できる病気ではなく、退院後の飼い主さんのご協力が重要です。前述した食事療法と規則正しい運動に加え、退院後のインスリン接種は飼い主さんご自身で行っていただく必要があります。退院後にご協力いただきたいことについて詳しく知りたい方は当院までご相談ください。

まとめ

犬や猫の糖尿病は、中高齢の年齢から見られることが多い病気であり、肥満や不適切な食事が原因となっているケースが多く見られます。また、ケトアシドーシスと呼ばれる合併症を併発すると、命の危険もあるような状態に陥ることもあります。

飼い主さんは、若い時からしっかりと愛犬、愛猫の生活習慣や食事を整えて、糖尿病にならないように管理していくことが大切になるでしょう。

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犬の僧帽弁閉鎖不全症は、中〜高齢の小型犬によく見られる心臓病です。

進行すると肺水腫と呼ばれる疾患を引き起こし命を落とすこともあります。

本記事では、犬の僧帽弁閉鎖不全症の症状、診断方法、治療方法について解説していきます。

症状

犬の僧帽弁閉鎖不全症では、以下のような症状が見られます。

・咳

・運動したがらない

・寝ていることが多い

・呼吸数が増える

・食欲が低下する

・皮膚、被毛の乾燥、フケ

・チアノーゼ(舌が青紫色になる)

愛犬にこのような症状が見られた場合には、要注意です。

また、僧帽弁閉鎖不全症が進行し、末期症状である肺水腫を発症すると、常にチアノーゼが見られたり、呼吸数が増えたりします。肺水腫は治療が遅れると命を落とすことも多い病気であるので、飼い主さんは僧帽弁閉鎖不全症の進行を防止しなくてはなりません。

また、本病は症状が徐々に悪化するケースだけでなく、心臓の弁を支えている腱索が断裂することで急速に症状が悪化し、命を落としてしまうケースもあります。そのため、いかに早期に病気を発見し、治療を開始できるかが予後を決めるポイントとなります。

原因

僧帽弁閉鎖不全症は、心臓の左心房と左心室を区切る弁(僧帽弁)に変性が起き、うまく閉鎖しなくなることにより発症します

僧帽弁がうまく閉鎖しないと、全身への血液供給量が減少したり、逆流した血液によって、左心房圧の上昇と肺水腫を引き起こしたりすることもあります。

診断方法

犬の僧帽弁閉鎖不全症の診断方法としては、以下の通りです。

・聴診

・レントゲン検査(胸骨心臓サイズ(VHS)と椎骨左心房サイズ(VLAS)を測定)

・心臓超音波検査(左心房の拡張指標(LA/Ao)と左室拡張末期内径(LVIDDN)を測定)

僧帽弁閉鎖不全症になった犬では、聴診により心雑音を聴取できます。そのため、身体検査や普段の定期検査で聴診を行うと病気の早期発見につながるでしょう。
また、レントゲン検査では心臓の形や大きさを、超音波検査では心臓の血流の状態や(逆流がないかなど)中の構造を調べます。

好発犬種

僧帽弁閉鎖不全症は、中高齢の小型犬に多い心臓病であり、以下のような好発犬種が存在します。

・チワワ

・キャバリア・キングチャールズ・スパニエル

・トイプードル

・シーズー

・ポメラニアン

・マルチーズ

愛犬がこれらの犬種に該当する場合には特に注意が必要なため、定期的に動物病院を受診して聴診をしてもらうようにしましょう。

治療方法

犬の僧帽弁閉鎖不全症の主な治療方法は、「投薬治療」と「外科手術」の2つです。当院では投薬を始めとした内科治療を中心に治療を進めています。
投薬治療では、血液を全身に送り出すために強心薬や血管拡張薬が用いられます。肺水腫になっている場合には、利尿剤を用いたり、酸素吸入を行ったりすることもあります。

僧帽弁閉鎖不全症の治療の目的は進行を遅らせることであり、一生涯治療を続ける必要があります。
飼い主さんの判断で薬の量を増減したり、投薬を止めたりすると、心臓に負担がかかり、急激に状態が悪化することがあります
必ず獣医師から指示された通りに投薬を行いましょう。

外科手術では、麻酔をかけて心臓の僧帽弁がうまく閉鎖するように修復していきます
麻酔が必要であり、術後のさまざまな合併症のリスクもあるため、外科手術を行う際にはしっかりとした術前検査が必要です

僧帽弁閉鎖不全症を発症したあとは、激しい運動を控える塩分量を抑えた食事を与える高温多湿にならないよう、温度や湿度を管理することが症状の緩和につながるため、日常生活で心がけるとよいでしょう。

早期発見・早期治療が重要であると前述しましたが、その理由は早期に病気を発見し、投薬治療を開始することで、寿命を延ばすことができるためです

2016年に発表されたEPIC Studyと呼ばれる論文では、心拡大はあるものの、心不全を発症する前の犬に、ピモベンダンと呼ばれる治療薬を投与することで、心不全を発症し、それが原因で亡くなるまでの期間が約15か月間長くなるという研究結果が出ています

15か月という期間は平均的な犬の寿命の10%にも相当し、人間で例えると7年から8年程度寿命を延ばせることになります。愛犬と少しでも長く一緒に過ごすためにも、定期的な健康診断で早期発見に努めましょう。

EPIC Studyについての詳細はこちらのページをご覧ください

まとめ

犬の僧帽弁閉鎖不全症は、中高齢の小型犬で多く見られる心臓病であり、早期発見・治療が大切な病気です。

進行すると肺水腫を引き起こし命を落とすこともあるのに加え、腱索断裂による突然死の可能性もあるため、飼い主さんは、普段から定期的に動物病院を受診し聴診してもらい僧帽弁閉鎖不全症の早期発見・治療を行うようにしてください。

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