犬と猫の排尿障害について┃命に関わる危険な状態になることも
排尿障害とは、何らかの理由で尿に異常が見られる状態を指します。犬や猫では膀胱結石が原因になることが多いですが、それ以外の病気でも引き起こされることがあります。排尿障害は症状が進行すると、痛みや不快感を伴い、さらには命に関わる場合もあるため、原因を見極めて適切に対処することが重要です。
今回は、犬と猫の排尿障害について、正常な排尿のメカニズムや原因、症状、診断方法、治療方針をお伝えします。
正常な排尿のメカニズム
尿は腎臓でつくられ、ろ過された後、尿管を通って膀胱に蓄えられます。そして、尿道を通じて体外に排出されます。
膀胱に尿がたまると大脳で尿意を感じ、排尿反射という脳幹の神経を介した反応で、膀胱の筋肉が収縮し、尿道の筋肉が緩むことで排尿が行われます。
排尿障害の種類
排尿障害には以下のような種類があります。
・頻尿:排尿する回数が通常より多い状態
・排尿困難:尿がほとんど、あるいはまったく出ない状態
・尿失禁:自分の意思に関係なく尿が出てしまう状態
・血尿:尿に血が混じる状態
・多尿・乏尿:尿の量が通常より多い(多尿)または少ない(乏尿)状態
排尿障害の主な原因
排尿障害は以下のような病気が原因で起こることがあります。
・感染症:膀胱炎や尿道炎など
・結石:膀胱結石や尿路結石など
・腫瘍:膀胱の腫瘍(移行上皮癌など)
・神経学的疾患:排尿をつかさどる神経の障害(椎間板ヘルニアなど)
・先天性異常:膀胱膣ろうや膀胱子宮ろうなど、膀胱と他の臓器がつながってしまう状態
・ホルモン異常:メスのエストロゲン濃度の低下やクッシング症候群など
・代謝性疾患:糖尿病や慢性腎臓病など
・会陰ヘルニア
・過度の踏ん張りによる膀胱位置の変化
<犬特有の排尿障害>
・前立腺疾患(前立腺肥大など):未去勢のオス犬でよくみられる
・尿道狭窄:腫瘍や尿路感染症に伴ってみられます
<猫特有の排尿障害>
・特発性膀胱炎:原因が特定できず、再発することが多い
・尿道閉塞:結石などが尿道に詰まり、尿がまったく出なくなる状態
診断
尿に異常がみられたら、問診や身体検査に加え、尿検査、血液検査、画像診断(X線、超音波、CTなど)、膀胱鏡検査を組み合わせて診断します。
治療
排尿障害はさまざまな原因によって起こるため、その原因に応じて異なります。
例えば、感染症の場合は抗生物質を投与し、尿路結石が原因の場合は、食事療法によって溶解させます。
その他にも、対症療法や手術(膀胱の腹壁固定や尿道のステント設置など)を検討する場合もあります。
予防と管理
感染症や結石による排尿障害を防ぐためには、水分を十分に摂取させることが大切です。水を飲んで排尿することで、尿路内に病原体や結石がたまりにくくなります。
(排尿困難の動物の場合、水分の与えすぎは逆効果になるため要注意)
水分摂取を促すための工夫として、ウェットフードを与えたり、飲み水の場所を増やしたりすることが有効です。
また、定期的な健康診断を受けることで、見逃しがちな異常を早期に発見し、症状が軽いうちに治療を始められます。
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ご家庭での注意点
ご家庭では愛犬・愛猫の排尿パターンをよく観察していただき、少しでも異変を感じたらすぐに獣医師に相談しましょう。
また、特に猫ではストレスが特発性膀胱炎の発症に関わるといわれているため、トイレをきれいにする、好みのトイレを用意する、新鮮な水を常に準備しておくなど基本的な環境の整備も不可欠です。
まとめ
原因は多岐にわたるため、自己判断せずに動物病院を受診し、しっかりと検査を行って原因を特定することが重要です。排尿障害は、尿の量や色、頻度などの変化でわかることが多いため、少しでも気になる点があれば、早めに当院までご相談ください。
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