シニア犬・猫の健康診断で見つかる病気|7歳からの検査で分かること

シニア期の犬・猫に多い病気は、飼い主様が変化に気づいた時点で、すでに進行していることが少なくありません。

健康診断は「異常がないことを確かめる検査」と受け取られがちですが、当院では症状が出る前に不調を見つけるための手段と位置づけています。

人間でも30歳を過ぎると自治体から定期健診の案内が届きます。犬や猫は人間より速く年を取るため、7歳頃から年に2回、定期健診を受けることをおすすめしています。

検査を嫌がらないか、負担が大きくないかを心配される方もいらっしゃるでしょう。強く抵抗したり、噛もうとしたりする場合には鎮静を使うことはありますが、当院の検査の9割以上は麻酔をかけずに短時間で完了します。

動物病院では、健康診断も体調不良の相談も、基本的には同じかかりつけ医にて行います。これまでの診療記録や検査結果、普段の健康状態を把握しているため、わずかな変化にも気づいてもらいやすく、安心感につながります。
今回は、健康診断で見つかることが多い病気や当院のシニア健康診断の流れについてご紹介します。

 

シニア期は何歳から?健康診断の頻度とは

当院では、7歳を超えたシニア期以降は、年2回の健康診断をご提案しています。
高齢の犬・猫は、数か月で病態が大きく変わったり、新たな病気にかかったりすることがあるためです。

犬のリンパ腫をはじめ、短期間で症状が表れたり、状態が変化したりする病気もあります。
健康診断では大きな異常がみられなかったものの、その数か月後にしこりが見つかったケースがあります。間もなくして「進行の速いがん」と診断された時点では、残された時間が限られていたケースもあります。

このように、直近の健康診断で大きな異常がなくても、その後に新たな病気が表れる可能性があります。そのため、シニア期には定期的に体の状態を確認することが大切です。

犬のリンパ腫についてはこちらをご覧ください

犬や猫は1年で人の4~5歳分ほど年を取るとされるため、実際には3か月に1回ほどの間隔でかかりつけ医に立ち寄り、健康状態を確認できるのが理想的です。
また、犬は体格によっても老化の速さが異なるため、小型犬・中型犬・大型犬でその目安は変わります。
年齢だけで決めるものではなく、その子の経過や状態を見ながら適切な間隔を考えていきましょう。

また、「異常なし」という結果そのものにも意味があります。犬や猫にも「普段から脂質に関する数値がやや高め」といった個体差があります。そのデータが、具合が悪くなったときに「どこがどう変わったのか」を知る基準になるのです。

犬の健康診断で見つかることが多い病気

ここからは、当院の健康診断で見つかることが多い病気を順にご紹介します。飼い主様がご家庭で気づきやすい変化と、健康診断のどの検査が発見のきっかけになるのかもあわせてお伝えします。

<クッシング症候群>

「水を飲む量が増える」「お腹が張ってくる」「背中や体側の毛が左右対称に薄くなる」といった変化が代表的です。

血液検査の変化や副腎の超音波所見が、病気を疑うきっかけになることがあります。当院の健康診断で行う腹部超音波検査では、左右の副腎の大きさや形も基本的な確認項目のひとつとしています。

犬のクッシング症候群についてはこちらをご覧ください

<僧帽弁閉鎖不全症>

心臓の弁がうまく閉じなくなる病気です。進行すると「咳が出る」「散歩を嫌がる」「疲れやすい」といった変化が表れることがあります。

聴診で心雑音の有無を確認し、心臓の超音波検査で病気の進行度を評価します。なお、心雑音がない場合でも、超音波検査で僧帽弁からの逆流が見つかることがあります。

犬の僧帽弁閉鎖不全症についてはこちらをご覧ください

<慢性腎臓病>

飲水量や尿量の変化、体重の減少などがサインです。

血液検査に尿検査を組み合わせると、より早い段階で変化を捉えられる場合があります。

<腫瘍>

体表のしこりはご家庭で気づける場合がありますが、お腹のなかにできたしこりは外見や触って判断しにくいため、超音波検査やレントゲン検査が発見のきっかけになることがあります。

犬・猫のしこりについてはこちらをご覧ください

<膵炎・胆嚢の病気>

膵炎のほか、胆嚢粘液嚢腫をはじめとする胆嚢の病気も当院で多く見つかっています。いずれも、超音波検査によって膵臓や胆嚢の状態を確認します。

犬と猫の膵炎についてはこちらをご覧ください
犬と猫の胆嚢粘液嚢腫についてはこちらをご覧ください

猫の健康診断で見つかることが多い病気

猫には不調を隠す傾向があり、ご家庭での観察だけでは限界があります。

<慢性腎臓病>

当院でも高齢の猫によく見つかる病気のひとつです。飲水量や尿量の増加、体重の減少がご家庭で気づけるサインで、血液検査と尿比重を組み合わせて評価します。

猫の慢性腎臓病についてはこちらをご覧ください

<甲状腺機能亢進症>

食べているのに痩せる、落ち着きがなくなる、よく鳴くようになるといった変化が表れます。加齢による変化と受け取られやすい病気です。

猫の甲状腺機能亢進症についてはこちらをご覧ください

<心筋症>

症状が表れにくく、気づいたときには重い状態になっていることがあります。聴診だけでは分からない場合があるため、超音波検査での確認が必要です。

猫の肥大型心筋症についてはこちらをご覧ください

<好酸球性胃腸炎などの消化器の病気>

好酸球性胃腸炎をはじめとする消化器疾患では、超音波検査によって、血液検査だけでは分からない特徴的な腸壁の変化が見つかることがあります。

このように、犬と猫では、注意したい病気や症状の表れ方が異なります。それぞれの特徴を踏まえて、検査結果を評価することが大切です。

見た目や血液検査だけでは分からないこととは?

採血でもさまざまな情報が得られますが、臓器の形や大きさ、内部構造までは分かりません。

つまり、全身の状態を把握するには、血液検査に加えて次のような情報を組み合わせて総合的に判断する必要があります。

・身体検査(体重・体格・聴診・触診・口腔内の状態など)
・レントゲン検査
・超音波検査
・生活背景
・これまでの既往歴、経過

それぞれの検査で分かることが異なるため、健康診断では複数の検査を組み合わせ、多角的に体の状態を確認します。

身体検査では体型や心音、お腹の触り具合など外から分かる変化を、レントゲン検査では臓器のおおまかな大きさや位置、骨や肺の状態を確認します。ただし、どちらも臓器の「内側で起きている変化」まではとらえきれません。

その内側を、体を切開することなく確認できるのが超音波検査です。当院がシニア期の健康診断で超音波検査を重視しているのは、外見や血液検査だけでは分からない部分を、ここで埋められるためです。

<超音波検査で分かること>

超音波検査(エコー検査)は、体を切開せずに、臓器の形や内部構造、動きをリアルタイムで確認できる検査です。胃腸の動きのように、静止画からは読み取れない情報が得られます。

多くの場合は無麻酔で行えるため、シニア期の犬・猫でも検討しやすい画像検査のひとつです。また、外見や血液検査の数値だけでは分からない病気を見つけるうえでも有用です。

エコー検査についてはこちらをご覧ください

<健康診断は「何を知りたいか?」で考えます>

健康診断において「検査の種類を増やせばよい」「安ければよい」というものではなく、何を確かめたいかを考えることが大切です。

さまざまな動物病院が実施している「健康診断」ですが、各検査で何をどこまで見ているかは同じではありません。
例えば超音波検査でも、気になるところだけを確認するのか、毎回幅広く多角的に臓器を確認してくれるのかでは、得られる情報が異なります。

健康診断を受ける際は、検査項目の数だけでなく、「その検査で体のどこを、どのように確認するのか」にもぜひ目を向けてみてください。

健康診断の流れと当日までの準備

当院で健康診断を受ける際は、事前のご予約をお願いしています。

当日は身体検査から始め、ご希望の項目に応じて血液検査・尿検査・レントゲン検査・超音波検査を行います。

超音波検査は、1件ごとに腹部の臓器を幅広く確認していくため時間を要します。1日に実施できる数にも限りがあることから、予約制で承っています。基本的には「午前中にご来院いただき、夕方にお迎え」という流れです。

<当日までにご準備いただきたいこと>

持病がある場合や投薬中の場合は、絶食や投薬について事前にご相談ください。

・食事:前日の夜21時までに済ませ、12時間以上の絶食をお願いします
・飲水:家を出るまで普段どおりで問題ありません
・便・尿:オプション検査としてご希望の方はご持参ください
・メモ:普段気になっていることがあれば、整理して共有してください

結果説明では、検査数値をお伝えするだけでなく、生活環境も踏まえながら愛犬・愛猫の今後について飼い主様と一緒に考えます。そのため、説明には30分程度のお時間をいただいています。別途、診察としてご予約をお取りください。

まとめ|症状が出る前に見つけるシニア期の健康診断

シニア期の健康診断は、症状が表れる前に病気や不調を見つけ、一日でも長く楽しい時間を一緒に過ごすための大切な機会です。

健康診断では、血液検査に超音波検査を組み合わせることで、お腹のなかにある臓器の状態も確認できます。体への負担を抑えながら、外見からは分からない変化を捉えられるため、シニア期の健康チェックにも役立ちます。

そしてもうひとつ大切なのが、同じ場所で、同じ条件の検査を続けることです。毎年同じように検査を受けていれば、その子自身の「いつもの状態」が分かり、そこからの変化を読み取れるようになります。

実際に当院でも、こうしたことがありました。別の施設で撮影したレントゲンで肺に影があると指摘され、心配されて来院された飼い主様がいらっしゃいました。
当院にはその子が1歳の頃からのレントゲン画像が残っており、並べて見比べたところ、同じ位置に同じ影が以前から写っていることが確認できました。肋骨が重なって見えているもので、悪いものであればこの年月のあいだに変化が表れているはずです。
過去の画像があったことで、その場でご安心いただくことができました。

動物は言葉で不調を伝えられません。だからこそ、一度の数値や一枚の画像だけでなく、時間の流れのなかで変化を追えることに大きな意味があります。かかりつけ医のもとにこうしたデータが積み重なっていれば、専門的な治療のために他施設へご紹介する場合も、これまでの経過をそのまま引き継いだうえで診ていただくことができます。

気になる変化がある場合も、どの検査を受ければよいか迷う場合も、まずはお気軽にご相談ください。

【監修】ナガワ動物病院副院長 名川真ノ介(獣医師)
(最終更新日:2026年9月30日)

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