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犬の短頭種気道症候群について┃短頭種によく見られる呼吸器の病気

短頭種気道症候群とは、外鼻孔狭窄、気管低形成、軟口蓋過長、喉頭虚脱といった呼吸器の先天的な異常が組み合わさって発生する病気を指します。名前に「短頭種」とつくことからもわかるように、マズルが短い犬種(パグ、シーズー、フレンチ・ブルドッグなど)によくみられることが特徴的です。呼吸がうまくできなくなることで熱中症などを招くリスクも上がるため、早めの対処が肝心です。 今回は、犬の短頭種気道症候群について、基本的な情報とともに気をつけるべき合併症に関してもお伝えします。 ■目次 1.短頭種気道症候群の特徴 2.症状 3.合併症 4.診断 5.治療 6.ご家庭での注意点 7.まとめ   短頭種気道症候群の特徴 短頭種はマズルの長さが短くなっている分、他の犬種と比べて気道が狭いという特徴があります。そのため、以下のような異常が起こりやすくなります。 ・外鼻孔狭窄:外鼻孔(鼻の穴)が狭くなる。 ・気管低形成:気管がつぶれて狭くなる。 ・軟口蓋過長:軟口蓋(口から喉に続くやわらかい天井部分)が相対的に長くなり、気道を塞ぐ。 ・喉頭虚脱:上記の異常に伴って、喉の軟骨が二次的に変性する。 症状 短頭種気道症候群の症状は、進行度合いによって異なります。 〈軽度の場合〉 ・息が荒い ・寝ているときにいびきをかく ・運動を嫌がる ・口を開けて「ガーガー」と息をする ・嘔吐や逆流 〈重度の場合〉 ・呼吸困難 ・チアノーゼ(酸素が足りずに粘膜の色が青白くなる状態) ・失神 合併症 短頭種気道症候群は呼吸がしづらくなることで、次のような合併症を招くリスクがあります。 ・熱中症 犬や猫は肉球の表面でしか汗をかくことができないので、熱がこもりやすい特徴があります。通常はパンティング(舌を出してハアハアと呼吸すること)によって体の熱を逃がしますが、短頭種気道症候群の犬ではうまく呼吸ができないため、熱中症を発症するリスクが高くなります。 熱中症について詳しくはこちらをご覧ください ・二次的な心臓疾患 酸素が不足すると、心臓が補おうと過剰に働き、心臓に負担がかかります。これにより、心臓病のリスクが高まります。 ・睡眠時無呼吸 人間と同じように、いびきが悪化すると寝ているときに数十秒ほど呼吸が止まることがあります。 診断 短頭種気道症候群が疑われる場合、まずは身体検査を行い、呼吸状態や体型を確認します。さらに、X線検査やCT検査を実施して、気道や肺の状態を確認します。また、喉頭鏡検査を用いて、軟口蓋や喉頭の異常を直接確認し、総合的に診断を行います。 当院では、避妊・去勢手術の際に麻酔下で軟口蓋や喉の状態を評価し、異常が確認された場合には早期の治療をご提案するケースもあります。 治療 短頭種気道症候群の治療は、保存的治療と外科的治療に分かれます。 保存的治療には、体重管理や適切な温度管理、ネブライザーを使った呼吸改善などがあります。しかし、根本的な改善を目指すには手術が必要となる場合が多いです。 外科的治療では、軟口蓋過長症には軟口蓋切除術が行われ、外鼻孔狭窄には外鼻孔拡大術が適用されます。さらに重度の症例では、喉頭の軟骨を一部切除する披裂軟骨切除術や気管切開術などが実施されることもあります。 ご家庭での注意点 家庭でのケアでは、まず体重管理が非常に重要です。肥満になると呼吸への負担が増し、症状が悪化する可能性が高くなります。そのため、食事のカロリーや運動量を適切に管理し、過体重にならないように注意しましょう。 また、暑い環境や激しい運動は呼吸困難を引き起こす恐れがあるため、エアコンなどを活用して適切な温度管理を行い、過度な興奮や運動を避けるようにしましょう。 ストレスも症状が悪化する原因になるので、遊びの時間をうまく取り入れたり、ゆっくりと休養を取れるスペースをつくったりする工夫も大切です。 また、1歳未満の子犬の場合、無駄吠えを抑えることが症状の悪化を防ぐポイントになるため、無駄吠えを減らすことができるようにしつけを行いましょう。 まとめ 短頭種気道症候群は、呼吸器の先天的な構造の異常によって呼吸がしづらくなる病気です。そのままにしておくと悪化してしまうため、早期発見と適切な治療・管理が重要になります。短頭種はとても愛らしい見た目で人気ですが、呼吸に影響を受けやすい犬種でもあります。こうした情報を正しく理解したうえで、ご家庭ではより細やかなケアを心がけて過ごしましょう。 ◼️呼吸器疾患に関しては下記の記事でも解説しています 犬の気管虚脱について┃「ガーガー」と呼吸が苦しそう… 当院の診療予約はこちら 当院の診療案内詳細はこちら ペットクリニックを練馬区でお探しならナガワ動物病院 03-3926-9911 <参考文献> Brachycephalic…

犬と猫の肥満細胞腫について┃皮膚の赤みや脱毛…もしかしたら悪性腫瘍かも

肥満細胞腫は、犬や猫に発生する悪性腫瘍(がん)の一種です。皮膚にしこりとして現れることが多いですが、内臓に発生する場合もあり、発生部位によって治療方針が異なります。特に悪性度が高い場合、治療が遅れると命に関わる可能性があるため、早期診断・早期治療が大切になります。 今回は、犬と猫の肥満細胞腫について、原因や症状、診断方法、治療方針をお伝えします。 ■目次 1.肥満細胞腫とは 2.症状 3.診断 4.治療 5.予後 6.ご家庭での注意点 7.まとめ   肥満細胞腫とは 肥満細胞腫は、肥満細胞(体内の炎症やアレルギー反応に関与する重要な細胞)が異常増殖してできる悪性腫瘍です。 犬では、レトリバー系やフレンチ・ブルドッグなどの犬種で発生リスクが高く、中高齢犬に多くみられます。発生しやすい部位は、腹部や手足などの皮膚(皮膚型)ですが、稀に内臓にも発生することがあり(内臓型)、特に脾臓で見られます。腫瘍の悪性度は1~3のグレードに分類され、グレードが高いほど転移のリスクが高くなります。 一方猫では、中高齢のシャムに多くみられ、額や耳など顔周辺に発生しやすいです。猫の肥満細胞腫は、犬よりも進行が遅いとされています。 症状 皮膚型の場合、皮膚にしこりができ、赤みや脱毛、出血が見られることがあります。これらの症状は、アトピー性皮膚炎などの皮膚疾患と似ているため、見た目だけで判断することは困難です。 それ以外には、「ダリエ徴候」という変化がみられます。これは、皮膚の物理的な刺激に対して肥満細胞が反応することで、しこり周辺の皮膚が赤みを帯びる現象です。また、消化管潰瘍ができて消化器症状が現れたり、出血が治まりづらくなったりするケースもあります。 診断 肥満細胞腫が疑われる場合、まず細胞診を行います。これは、しこりに細い針を刺して細胞を採取し、腫瘍の性質を確認する検査です。 肥満細胞腫が確認された場合、次にステージング検査を行い、腫瘍が局所的か全身に広がっているかを調べます。特に、腹部超音波検査は重要で、内臓の状態や転移の有無を隅々まで確認します。 その後、しこりを切除して生検や病理組織検査を実施します。検査では、しこりとその周辺の組織の様子をみることで、余白をもって腫瘍を取り切れたか、悪性度(グレード)はどうか、といった情報を得ることができます。 また、肥満細胞腫では、c-KIT遺伝子の変異が発症に関与していることが知られており、遺伝子検査も行います。この変異があるかどうかで治療方法が大きく変わります。 治療 当院では、再発防止や治療の成功率向上のために人間の医療に準じた治療を行います。 皮膚型の場合、ステロイドや分子標的薬(チロシンキナーゼ阻害剤)などの内服で治るケースも多く経験しています。 一方で、進行した場合や複数箇所にしこりがある場合、脾臓にしこりがある場合は、外科的切除を行います。手術が難しい部位や、転移がある場合は、放射線療法や化学療法を併用することも検討します。 なお、全身転移がある場合は、QOL(生活の質)を維持するための支持療法として、皮下点滴や抗ヒスタミン薬、制酸剤の投与を行うこともあります。 予後 予後は、腫瘍のグレード、発生部位、転移の有無、c-KIT遺伝子変異の有無、動物種などによって異なります。 皮膚型でグレードが低く、手術で完全に切除できた場合の予後は非常に良好です。しかし、グレードが高い場合や手術で腫瘍が取り切れなかった場合、再発や転移のリスクが高くなります。また猫の場合、一般的に予後が良く、特に顔周辺に発生する皮膚型の肥満細胞腫は、根治が期待できる場合が多いです。 内臓型の場合は、脾臓や肝臓、リンパ節などに転移するリスクがあり、特に脾臓に発生した場合、出血のリスクがあるため治療中は細心の注意が必要です。 ご家庭での注意点 肥満細胞腫は皮膚に発生することが多いため、ブラッシングやシャンプーの際に皮膚を触ってみて、しこりがないかをチェックしてみましょう。しこりを早期に発見できれば治療の選択肢が広がり、犬や猫の負担を減らすことにもつながります。 また、治療後も再発の可能性があるため、切除した場所や皮膚全体の変化に注意を払い、定期的に動物病院でのチェックを受けるようにしましょう。 まとめ 肥満細胞腫は早期発見・早期治療が重要な病気です。愛犬や愛猫の体にしこりや異常が見つかった場合は、すぐに動物病院を受診し、適切な治療を受けることが必要です。また、治療後も獣医師と綿密に連携しながら健康管理を行うことで、ペットのQOLを維持し、健康な時間を少しでも長くするように心がけましょう。 当院の診療予約はこちら 当院の診療案内詳細はこちら ペットクリニックを練馬区でお探しならナガワ動物病院 03-3926-9911 <参考文献> Diagnosis,…

犬の胸腰部椎間板ヘルニアについて┃症状に気づかず進行すると歩けなくなることも…

胸腰部椎間板ヘルニアは、犬に多い神経の病気です。軽度であれば背中や腰の痛みがみられるだけですが、治療せずに放置すると進行し、排尿障害の発生や深部痛覚の消失が起こり、最終的には後ろ足がまったく動かなくなることもあります。足腰の健康を長く保つためには、早期発見・早期治療がとても大切になります。 今回は、犬の胸腰部椎間板ヘルニアについて、原因や症状、診断方法、治療方針をお伝えします。 ■目次 1.椎間板ヘルニアとは 2.リスク要因と症状 3.診断 4.治療 5.予後と管理 6.ご家庭での注意点 7.まとめ   椎間板ヘルニアとは 犬の首から背中、腰にかけては椎骨という骨が並び、脊椎を形成して脊髄という太い神経を守っています。また、椎骨と椎骨の間には「椎間板」というクッションのような構造があり、中心部分は髄核、周りは線維輪という組織で構成されています。 椎間板ヘルニアとは、髄核や線維輪が変性し、椎間板の形が変わって脊髄を圧迫することにより発症する病気です。 椎間板ヘルニアは、変性する部分によって「ハンセンⅠ型」と「ハンセンⅡ型」に分類されます。 ・ハンセンⅠ型:髄核が変性して線維輪から飛び出し、脊髄を圧迫することで発症します。 ・ハンセンⅡ型:線維輪が変性し、脊髄を圧迫することで発症します。 リスク要因と症状 〈ハンセンⅠ型〉 ミニチュア・ダックスフンドやビーグルなどの軟骨異栄養犬種で多く、遺伝が関与しているといわれています。 〈ハンセンⅡ型〉 加齢が関連しており、高齢になるとどの犬種でも発症する可能性があります。 それ以外に、肥満や激しい運動など椎間板に負担がかかる状況も発症リスクを高めることが知られています。 発症初期は軽度の症状として、背中や腰に痛みを覚え、触られるのを嫌がることもあります。進行に伴い、後ろ足の麻痺が始まり、ふらつきや立てない・歩けないといった様子がみられるようになります。最終的には、後ろ足の痛みを感じなくなる場合もあります。 診断 まずは神経学的検査を実施して、神経症状がどの神経のどの場所によって引き起こされているのかを判断します。ふらつきや麻痺といった症状は、他の神経病(変性性脊髄症や脊髄軟化症など)でも現れるので、慎重に判断する必要があります。 特に脊髄軟化症の場合は予後が悪く、1週間ほどで亡くなることが多いため、早期の診断が重要です。さらに、レントゲンやCT、MRIなどの画像検査を組み合わせて診断します。 治療 椎間板ヘルニアの治療法は、内科的治療と外科的治療に分かれます。症状が軽度であれば内科的治療で大幅に改善する可能性があります。内科的治療には、ステロイドパルス療法やレーザー照射治療などがあり、当院でもこれらの治療で改善した症例が多くあります。 また外科的治療では、背骨の一部を取り除いて脊髄の圧迫を軽減します。具体的には、腹側減圧術、背側椎弓切除術、片側椎弓切除術などの方法があり、これらの治療は、歩行が困難でも力は入る状態のときや、さらに状態が悪化したときに適応されます。 なお、当院では手術を実施する場合、専門医をご紹介しています。 また、術後はリハビリを段階的に開始することで、運動機能の回復に努めます。 予後と管理 内科的治療の場合、椎間板に負担をかけないよう、少なくとも1カ月以上は安静にしていただきながら治療を進めます。ヘルニア自体が完全に治るわけではないため、再発に注意しながら様子をみる必要があります。 外科的治療では、麻痺の重さによっても異なりますが、ほとんどの症例で術前よりも状態が改善します。ただし、外科的治療でも再発の可能性があるので、歩く様子に変化がないかをこまめに確認する必要があります。また、排尿障害が起こる場合は、オムツの着用なども検討します。 また、ご家庭では再発予防に努めることがポイントになります。背中や腰に負担をかけないため、フローリングにマットを敷く、肥満を予防する、激しい運動を避けるなどの​​対策を取りましょう。 ご家庭での注意点 椎間板ヘルニアは早期発見・早期治療が重要な病気です。特に好発犬種を飼っている場合は、背中や腰に痛みがないか、後ろ足に力が入っているかなどを定期的に確認し、異変があれば早めに動物病院を受診しましょう。 また、​​背骨にかかる負担を最小限にするため、抱っこをする際は背中を水平に保ち、下から包み込むように支えましょう。 まとめ 椎間板ヘルニアは犬の運動機能に大きな影響を与える神経の病気です。症状が軽度であれば内科的治療も選択肢の一つになりますので、気になる様子が見られた場合は、早めのご来院をお勧めします。 ◼️整形外科に関しては下記の記事でも解説しています。 犬の橈尺骨骨折について 犬のレッグ・ペルテスについて 犬の前十字靭帯断裂について 当院の診療予約はこちら 当院の診療案内詳細はこちら ペットクリニックを練馬区でお探しならナガワ動物病院 03-3926-9911 <参考文献> Intervertebral…

犬のリンパ腫について┃発生率が高い悪性腫瘍(がん)

動物にはいろいろな悪性腫瘍(がん)が発生しますが、その中でも特に発生率が高いのがリンパ腫です。犬のがんのうち、7~24%を占めるともいわれています。リンパ腫にはいくつかのタイプ(型)があり、それによって治療法も異なるため、正確な診断が重要です。また、リンパ節から他の臓器に転移すると全身に影響を及ぼすので、早期診断と早期治療が必要です。 今回は、犬のリンパ腫に関して、その原因や症状、当院での診断・治療法をお伝えします。 ■目次 1.リンパ腫の種類と原因 2.症状 3.診断 4.ステージング(病期分類) 5.治療 6.ご家庭での注意点 7.まとめ   リンパ腫の種類と原因 リンパ腫は、リンパ球という免疫細胞の一種ががん化することで発症します。腫瘍が発生する場所によって、以下のように分類されます。 ・多中心型:あごの下、脇の下、内股、膝の裏などに発生 ・消化器型:消化管に発生 ・縦隔型:胸腔内の縦隔に発生 ・その他:皮膚、鼻の中、脾臓などに発生 10歳以上の中高齢犬で多いことが知られていますが、生後半年で発症するケースもあり、若い犬でも油断できません。また、レトリーバー種に好発するといわれていますが、どの犬種でも発症する可能性があります。   症状 初期には目立った症状がみられず、なかなか異変に気付かないこともあります。タイプによって、以下のような特徴的な症状が現れます。 ・多中心型 体中のリンパ節が腫れます。特に、あごの下、脇の下、内股、膝の裏などをさわると、固くてゴロゴロとしたものを確認できます。犬のリンパ腫の70~85%ほどを占め、一番多く遭遇します。 ・消化器型 見た目には変わった様子がありませんが、下痢や嘔吐といった消化器症状が現れます。慢性腸症などの消化器の病気だと思って受診した結果、リンパ腫と診断されることもあります。 ・縦隔型 胸水の貯留や呼吸困難が生じることがあります。   診断 動物病院では、身体検査や血液検査、画像検査(レントゲン、超音波、場合によってはCT)などを実施し、総合的に判断します。 また、生検と細胞診(組織や細胞の一部を採取して顕微鏡で観察する検査)を行い、腫瘍の悪性度や細胞のタイプを確認します。   ステージング(病期分類) リンパ腫は進行度合いによって、以下のようなステージに分類されます。 ステージ1:1つのリンパ節または組織に限って存在する(骨髄を除く) ステージ2:所属リンパ節に転移している ステージ3:全身のリンパ節に転移している ステージ4:肝臓や脾臓にまで転移している ステージ5:血液の異変による症状が現れ、他の臓器に転移している また、サブステージとして以下の基準があります。 A:全身症状なし B:全身症状あり ステージが上がるほど予後は悪くなるため、早めの治療が非常に重要です。治療せずにいると、4~6週間ほどで亡くなってしまうことが知られています。また、一般的に、オスよりメス、大型犬より小型犬の方が予後は良いとされています。   治療 リンパ腫は現状の獣医療では根治が不可能です。 治療の目的は良好なQOL(生活の質)を維持することで、少しでも長く元気な状態で生活をしていただくことです。 治療の選択肢には以下のものがあります。 ・化学療法(抗がん剤治療) 治療によく反応しますが、再発することが多いです。人間の場合は骨髄移植などで完治を目指せますが、動物では難しいため、これ以上悪化させないことを目標にして実施します。 ・免疫療法 当院では、フアイア(TPG-1)という免疫力をサポートする成分を含むサプリメントを活用しています。免疫力を高めることで、がんに対して有効に働くことを示す論文も出ています。 ・緩和ケア 痛みやだるさなどの不快感を和らげたり、食事を取りやすくなるようにサポートすることで、QOLを保ちます。 ・食事療法 自力で食事をとれない場合、流動食を管(フィーディングチューブ)から摂取させることで、必要な栄養を補給します。この治療に抵抗がある飼い主様もいらっしゃいますが、おなかがすいても食べられないという状況は、犬にとってとても大きなストレスになります。また、しっかりと栄養補給することで、抗がん剤の副作用を軽減することもできるので、当院では必要があれば実施をお勧めしています。 ・放射線療法 全身麻酔が必要なので、何度も実施するのはあまり現実的ではありません。 ・外科的治療(手術) QOLを著しく低下させる場所に腫瘍ができた場合に検討しますが、根治につながるわけではありません。   ご家庭での注意点 リンパ腫は再発する可能性が高いため、治療中は愛犬の様子をよく観察し、異変があればすぐに動物病院を受診しましょう。 抗がん剤の使用により副作用が現れることもあります。下痢や嘔吐は数日で治まることが多いですが、長く続く場合は獣医師に相談してください。また、排せつ物には抗がん剤の成分が残っている可能性があるため、取り扱いには十分注意しましょう。   まとめ リンパ腫は犬に多いがんの一つです。愛犬と長く健やかに過ごすためには、早期発見・早期治療がカギとなります。そのためには定期的に健康診断を受け、日常生活ではわからない異変も見逃さないようにしましょう。治療は長期にわたることが多いですが、抗がん剤、食事療法、免疫療法などを組み合わせることで、より長くQOLを維持して愛犬との生活を楽しむことができます。   当院の診療予約はこちら 当院の診療案内詳細はこちら ペットクリニックを練馬区でお探しならナガワ動物病院 03-3926-9911   <参考文献> Bite-size…

犬と猫のアレルギー性皮膚炎について┃その子に合った治療法を選ぶことが大切

アレルギー性皮膚炎とは、犬や猫の免疫機能の異常によって起きる皮膚の病気で、強いかゆみがみられます。その原因は多岐にわたるため、しっかりと検査を行い原因を特定して治療を進めることが大切です。また、その治療は薬によるものが中心となりますが、最近ではいろいろな治療の手法が考案されているため、飼い主様とご相談したうえで、その子に合った治療法を選ぶことが大切です。 今回は犬や猫のアレルギー性皮膚炎について、診断・治療法を中心に詳しく解説します。 ■目次…

犬の気管虚脱について┃「ガーガー」と呼吸が苦しそう…

気管虚脱とは、空気の通り道である気管が押しつぶされて呼吸がしづらくなる病気で、小型犬によくみられます。息苦しさから運動ができなくなるだけでなく、体に酸素が十分に行きわたらないことで失神することもあります。そのため、早めの対処が肝心です。 今回は犬の気管虚脱について、特徴的な症状や当院での治療法を中心にお伝えします。 ■目次…

犬と猫の膵炎について┃犬の場合は急に激しい症状が現れ、猫の場合は軽度の症状が長期間続く

膵炎とは、膵臓というお腹のなかにある臓器に炎症が起こる病気です。膵臓は消化酵素を分泌する役割を担っており、炎症によって様々な消化器症状を引き起こします。猫の場合は、軽度の症状が長期間続くことが多いのに対し、犬の場合は急に激しい症状が現れ、命に関わることもあるため、特に注意が必要です。 今回は犬と猫の膵炎に関して、その原因や症状、当院での診断・治療法をお伝えします。 ■目次…

犬のクッシング症候群について┃様々な病気を併発する

クッシング症候群は副腎皮質機能亢進症とも呼ばれる病気で、副腎からステロイドホルモン(コルチゾール)が過剰に分泌され、体にさまざまな異変が現れます。この病気そのものだけでなく、関連してさまざまな病気の発症につながる危険性があるため、早めに対処することが重要です。 今回は犬のクッシング症候群について、注意すべき症状や当院での治療法を中心にお伝えします。 ■目次…

猫の甲状腺機能亢進症について┃食べても痩せる

甲状腺は喉の近くにある器官で、代謝をコントロールする甲状腺ホルモンを分泌しています。甲状腺機能亢進症は中高齢の猫に多く、甲状腺ホルモンが正常よりもたくさん分泌されることで、痩せているのに食欲がある、攻撃的になるなどの症状が現れます。一見すると元気で健康のように思えますが、病気が悪化すると活動性が過剰になりすぎてしまうため、早期に発見して治療を始める必要があります。 今回は猫の甲状腺機能亢進症について、原因や症状だけでなく、当院での治療法を解説します。 ■目次…

ノミ・マダニ予防の重要性について┃暖かくなると活発化する

外の気温がだんだんと高くなると、ノミ・マダニがたくさん発生してきます。これらは外部寄生虫と呼ばれ、犬や猫の皮膚について、吸血するとかゆみや皮膚の炎症を生じるだけでなく、人獣共通感染症の原因となる病原体を運ぶ危険性もあるため、予防がとても大切です。 今回はノミ・マダニが発生しやすい場所や予防の重要性などについて、詳しくお伝えします。 当院の予防・健康管理についてのページはこちら ■目次…

犬と猫の健康診断について┃1日でも長く愛犬愛猫と暮らすためにも…

健康診断は、犬や猫が健やかに暮らし、少しでも長い時間をともに過ごすために、必要不可欠な検査です。とはいえ、なぜこうした検査が重要なのか、どんな検査をするのか、検査によって何がわかるのか、よくわからずに受診している飼い主様もいらっしゃるかと思います。 今回は納得して健康診断を受けていただくために、重要性についてお伝えするとともに、当院での検査内容をご紹介します。 ■目次…

犬と猫のフィラリア症予防について┃通年で予防しよう

動物の感染症で気をつけなければならないものの1つに、フィラリア症(犬糸状虫症)が挙げられます。フィラリア症とは、フィラリア(犬糸状虫)という寄生虫が感染することで引き起こされ、ひとたび感染・発症してしまうと治療は難しいため、予防がとても重要になります。フィラリア症は犬の病気としてよく知られていますが、猫にも感染して症状を示すことがあるので、注意が必要です。 今回は犬と猫のフィラリア症について、その予防を中心にお伝えします。 ■目次…

犬の肛門周囲瘻について┃肛門部を床や地面にすりつけような様子がみられる

肛門周囲瘻(こうもんしゅういろう)とは、お尻の周りに瘻管(ろうかん)と呼ばれる穴ができる病気です。この病気自体が死に直結することはありませんが、再発を繰り返すことで潰瘍や出血が生じ、生活の質(QOL)が低下する原因になってしまいます。また、お尻の周りにできる腫瘍(肛門周囲腺腫や肛門嚢アポクリン腺癌など)によって症状が現れている可能性もあるため、検査をしてみなければ楽観視はできない病気です。 今回は犬の肛門周囲瘻について、原因やよくみられる症状とともに、当院での治療法をご紹介します。 ■目次…

犬の前十字靭帯断裂について┃大型犬に限らず小型犬でも発症する関節疾患

前十字靭帯は大腿骨(太ももの骨)と脛骨(すねの骨)を結び、歩いたり走ったりするときに膝を安定させる役割を担っています。その靭帯が切れてしまう病気が前十字靭帯断裂で、犬種に限らず発症する可能性があります。膝の関節が安定せずにうまく歩けなくなるため、普段の暮らしに大きな影響を与えてしまいます。 今回は犬の前十字靭帯断裂について、当院での治療法を中心にお伝えします。 ■目次…

猫の肥大型心筋症について┃7歳以上の3割ほどが発症

肥大型心筋症は猫ではとても一般的な心臓の病気で、7歳以上の3割ほどがかかっているともいわれています。発症すると、口を開けて呼吸が苦しそうになる他、突然倒れてぐったりとする場合や、中には突然死してしまうケースもあるため、早期に発見して適切な治療を進めることが重要です。 今回の記事では、猫の肥大型心筋症について、その概要とともに当院での診断・治療法を詳しくご紹介します。 ■目次…

犬のレッグ・ペルテスについて┃骨の一部が壊死してしまう病気

レッグ・カルベ・ペルテス病(ペルテス病やレッグ・ペルテスともいいます)は成長期の小型犬に発生する病気で、その発生機序や発生部位から、大腿骨頭無菌性壊死症あるいは虚血性大腿骨頭壊死とも表現されます。はじめは歩き方に異常がみられる程度ですが、そのままにしていても良くなることはないため、早期発見・早期治療が肝心です。 今回の記事では、犬のレッグ・ペルテスの原因や症状だけでなく、当院での治療方針についてご紹介します。 ■目次…

愛玩動物看護師と動物看護スタッフの違いとは?

突然ですが、愛玩(あいがん)動物看護師と動物看護スタッフの違いを理解されている飼い主様はいらっしゃいますか? 実は近年、愛玩動物看護師法という法律が制定され、その違いが文書によって明確になりました。愛玩動物看護師はこの法律に基づいた国家資格となり、その他の業務を動物看護スタッフが担当することになりました。今回の記事では、国家資格化の経緯や動物病院での業務の変化についてまとめました。 ■目次…

犬の橈尺骨骨折について┃特に小型犬でみられる

犬で頻繁に発生する骨・関節の病気として、橈尺骨(とうしゃっこつ)骨折が挙げられます。橈尺骨とは前腕部の骨で、肘と手首の間にある2本の骨(橈骨と尺骨)のことです。橈尺骨骨折は、家庭内のちょっとした段差などをジャンプしただけでも骨折するケースもあります。また、その治療には手術が必要ですが、若い犬では骨の成長に影響を及ぼす可能性もあるため、骨折の状態にあわせて適切な術式を選ぶ必要があります。 今回は当院での具体的な手術方法だけでなく、ご家庭での注意点についてもご紹介します。 ■目次…

犬の炎症性ポリープについて┃ミニチュア・ダックスフンドによくみられる

犬の炎症性ポリープは大腸に発生するできもの(腫瘤)のことで、中~高齢のミニチュア・ダックスフンドに好発することが特徴です。下痢や血便など、消化器に関連する症状が現れますが、その症状は異物誤飲や悪性腫瘍(がん)、細菌感染といったさまざまな病気にもみられるので、しっかりと検査を行って原因を特定することがとても重要になります。 今回は犬の炎症性ポリープについて、原因や症状とともに、当院での治療法をご紹介します。 ■目次…

犬と猫のチェリーアイについて┃目頭に赤い腫れがみえる

チェリーアイとは、通常目頭の奥に収まっている第三眼瞼腺(だいさんがんけんせん)が、まぶたの外へと飛び出すことで、目頭がさくらんぼのように赤く腫れる病気のことです。命にかかわるようなことはありませんが、放っておくと目の炎症にもつながってしまうため、早めの治療が肝心です。 今回は犬と猫のチェリーアイについて、なぜ起こるのかを詳しく解説するとともに、典型的な症状や当院での治療法をご紹介します。 ■目次…

犬と猫の重度角膜潰瘍について┃不意なケガでも発症する目の病気

犬や猫に多い病気の1つに、角膜潰瘍(潰瘍性角膜炎とも呼びます)が挙げられます。この病気は角膜に傷がついてしまう病気で、その深さによっていくつかに分類されます。軽症例では点眼薬などの内科的治療で対応できますが、重度角膜潰瘍にまで進行すると視覚に影響し、手術が必要になることもあります。 今回は犬や猫の重度角膜潰瘍について、分類ごとの原因や症状だけでなく、ご自宅でケアする際の点眼のコツなどについてご紹介します。 ■目次…

犬と猫の胆嚢粘液嚢腫について┃初期症状が分かりづらいため定期的な健康診断が重要

犬や猫の体には胆嚢(たんのう)という器官があり、肝臓でつくられた胆汁(たんじゅう)という消化液を蓄えて、消化管に排出する働きをもっています。胆嚢粘液嚢腫は、胆汁がゼリー状に固くなったり、消化管への流出路が詰まったりすることで、胆嚢内に粘液が異常に蓄積してしまうことで起こります。薬や食事管理などの内科療法で治ることもありますが、胆嚢の限界を超えるまで胆汁がたまってしまうと胆嚢が破裂してしまい、命を落とす危険性もあるため注意が必要です。 今回は犬と猫の胆嚢粘液嚢腫について、症状や原因とともに、緊急事態を見逃さないポイントや当院での治療方針をご紹介します。 ■目次…

犬と猫の膀胱結石について|フードの種類が治療のカギに!

膀胱結石とは、様々な理由で膀胱に石がたまってしまう病気で、犬・猫ともによく発生します。特にオスでは、石が膀胱から尿道に移動して尿道が詰まりやすく、閉塞が起こると排尿困難になり食欲低下や嘔吐が見られ、放っておくと急性腎不全を発症し死に至る場合もあります。 犬や猫の膀胱結石は診断と治療が大切となりますので、今回は当院で採用している検査機器や療法食(フード)についてお伝えします。 ■目次…

犬と猫の水頭症について|身体的な特徴や症状による見分け方

水頭症とは、何らかの原因で脳室(脳内の空間)に脳脊髄液(脳と脊髄を循環する液体で、脳室から生成される)がたまってしまうことで、脳を圧迫する病気です。猫では少ないものの犬では比較的多く、主に先天性(生まれつき)の原因で発生します。脳の病気は他にもいくつかありますが、この病気を発症した動物には身体的な特徴や特有の症状があり、見分け方を知っていれば、ご家庭でもある程度推測することが可能です。 今回は犬や猫の水頭症について、病気にいち早く気づき、動物病院を受診するためのポイントを中心に解説します。 ■目次…

犬の白内障について|治療には目薬? 手術?

犬に多い病気の1つが白内障です。この病気は犬の視力に影響するため、進行すると段差につまずいたり、壁にぶつかったりと、日常生活に支障をきたします。高齢になってからだけでなく、若くても発症しさらには糖尿病が関係する場合もあるので、注意が必要です。 今回は白内障について、原因や症状とともに当院での治療法(目薬の処方や手術)をご紹介します。 ■目次…

高齢の犬や猫で注意すべき床ずれ・褥瘡について|防止策とご家庭でのケア

床ずれは褥瘡(じょくそう)とも呼ばれ、高齢の犬や猫でよく発生します。病気になっていなくても寝ていることが多くなるため、体重がかかる部分は赤くなり、次第に傷になってしまいます。こうした傷はいったん発生すると治療が困難なため、ご家庭でのケアによって防止することがとても大切です。 今回は高齢の犬や猫で注意すべき床ずれ・褥瘡について、その防止策やご家庭でのケアの方法を中心に解説します。 ■目次…

犬と猫の熱中症の症状について│初期症状や対策について解説

暑い日が続いており、飼い主さんだけでなく犬や猫でも熱中症になるケースが多くなります。犬や猫は全身が毛で覆われており、人間のように皮膚から汗をかいて体温を調節できないため、熱中症になりやすい特徴があります。また、症状が重度になると命に関わることもあるため、初期の対応が重要です。 今回はその症状や危険性とともに、対処法や予防法についてもお伝えします。 ■目次…

猫の猫伝染性腹膜炎(FIP)について|治療が難しい病気がお薬で治る可能性も

猫では治療が難しい病気として知られている猫伝染性腹膜炎(FIP)ですが、各国で様々な研究がなされ、最近では薬で治るケースも徐々に増えてきています。今回は猫のFIPに関して、その原因や症状をお伝えするとともに、過去の症例や当院でお勧めしている新たな治療薬についてもご紹介します。 ただし、これらは日本の動物用医薬品として未承認、かつ保険適用外のため、患者さん自身で購入していただくことになる旨、ご注意ください。 ■目次…

犬と猫の子宮蓄膿症について│予防のため2回目発情前の避妊手術をおすすめします

子宮蓄膿症とは、犬や猫の子宮の中に膿がたまってしまう病気で、未避妊の中~高齢の雌で多発することが知られています。重症化してしまった場合には命の危険がある一方で、適切な時期の避妊手術によって発症を予防できることがわかっているため、犬や猫の健康を守るためには予防がとても大切です。 今回は子宮蓄膿症について、原因や症状とともに当院での治療法をご紹介します。 ■目次…

犬の外耳炎について│治療期間を少しでも短縮するため、早めの受診を!

様々な理由によって外耳(耳の入り口から鼓膜まで)に炎症が起こっている状態を外耳炎といいます。犬によくみられる疾患で、主な症状として痒みが生じるため、後ろ足で耳をカリカリと引っかく様子に気づく飼い主さんも多いと思います。 今回は犬の外耳炎について、その原因や症状などに触れたうえで、当院での治療法をご紹介します。 ■目次…

犬と猫の乳腺腫瘍│悪性度が高い場合は手術しても油断せず抗がん剤治療をお勧めします

乳腺腫瘍は、犬・猫ともに最も多発する腫瘍で、いずれも中高齢(10~12歳以降)のメスに多くみられます。腫瘍は、細胞の性質や転移のしやすさから良性と悪性に分かれます。 乳腺腫瘍は、犬では良性と悪性の占める割合がおおよそ半々、猫では80~90%が悪性と言われていて、早期発見・早期治療がとても大切です。 特にメスでは、避妊手術によって発症を予防できることがわかっているため、長く健康に過ごすためにも避妊手術をご検討ください。 ■目次…

犬と猫の歯周病について│予防にはこまめなデイリーケアと年に一度の定期健診が重要!

歯周病は犬や猫で非常によくみられる病気で、3歳以上の犬・猫では約8割が歯周病とも言われています。また歯だけの問題にとどまらず、心臓病や腎臓病の原因になることもあり、悪化すると顎の骨に影響を及ぼす危険性もあります。今回はその概要を解説するとともに、ケアの方法についてもご紹介します。 ■目次…

犬の膝蓋骨脱臼(パテラ)について│片足だけの脱臼でも両足の手術をお勧めします

膝の関節は大腿骨(だいたいこつ)、脛骨(けいこつ)、膝蓋骨(しつがいこつ)という3つの骨で構成されています。膝蓋骨脱臼は膝蓋骨の位置が変わってしまうことで起こる足の病気で、小型犬によくみられます。 脱臼の程度によって症状は様々ですが、たとえ軽度であってもだんだんと症状が悪化する可能性があるため、手術による早期の治療が重要です。今回は、膝蓋骨脱臼の原因や症状といった情報とともに、当院で採用している手術について、詳しく解説します。 原因 膝蓋骨脱臼は大きく分けて内方脱臼と外方脱臼の2種類があります。 内方脱臼は膝蓋骨が犬の足の内側に脱臼するのが特徴で、 若い小型犬(通常は3歳齢以内)によくみられ、発症しやすい犬種としてはトイ・プードル、ポメラニアン、ヨークシャー・テリア、チワワ、フレンチ・ブルドッグなどが挙げられます。 一方外方脱臼は膝蓋骨が犬の足の外側に脱臼するのが特徴で、 グレートデーン、セントバーナード、ロットワイラーなどの大型犬で多くみられます。 日本では小型犬を飼育されている家庭が多いため、必然的に内方脱臼の症例が多くみられます。 いずれの場合も膝蓋骨の溝が浅い、外側の靭帯が弱い、骨がずれているなどが要因となります。 また、根本的な原因は明らかになっていませんが、主に先天性の要因(遺伝)が関わっていると考えられています。 後天的な要因の例としては、膝の関節を傷つけるような事故が原因となることもあります。 症状 膝蓋骨脱臼は、脱臼の程度によって1~4までのグレード分けがされています。症状はグレードによって様々で、軽度(グレード1~2)であれば、一般的に無症状、あるいは足をかばって少しスキップして歩く程度です。ただし重度(グレード3~4)になると、常にびっこをひく、足を持ち上げるようにする、しゃがむように歩くといった症状がみられます。 初期には片足だけの脱臼でも、かばうような歩き方(モンローウォークと呼びます)をして両足に異常がみられてしまうことが多く、重症化すると前十字靭帯断裂という足の病気にもつながってしまうため、早期の治療が大切です。 ■膝蓋骨脱臼のグレード分け グレード 状態 Ⅰ 膝蓋骨を触診で簡単に外すことができるものの、手を離すと元の位置に戻る。 Ⅱ 膝の曲げ伸ばしだけで膝蓋骨が外れる。 Ⅲ 膝蓋骨が常に外れている状態だが、手で押すと元の位置に戻る。 Ⅳ 膝蓋骨が常に外れている状態で、手で押しても元の位置に戻らない。 診断 膝蓋骨脱臼の診断には、整形外科検査が重要です。具体的には、室内での歩行を観察したり、関節を曲げたり伸ばしたりするとともに、膝蓋骨に触って先ほど述べたグレードを判定します。 あわせて、関節のレントゲンを撮影することで骨の位置を確認します。その際には一方向だけでなく、様々な方向から撮影することで詳細な評価が可能になります。 膝蓋骨脱臼で見られる歩き方(歩様)の異常は股関節などに起きる他の整形外科疾患の症状と類似しているケースも多く、同時に併発する疾患も多いことから、正確に診断を下す必要があります。 治療 軽度であれば、抗炎症薬の投与、体重管理、運動制限などによる保存療法で様子をみることもありますが、完治を目指すのであれば手術による治療が必要です。特にモンローウォークがみられる犬では脱臼が進行している可能性があるので、手術をお勧めします。なお当院では、先ほど述べたように、片足だけの脱臼であっても、片足をかばうように歩くことで両足に異常がみられてしまうケースが多いため、両足の手術を推奨しています。 術式は動物病院によって様々ですが、当院では滑車溝造溝術、関節包の縫縮術、膝蓋骨の裏の軟骨トリミング、脛骨粗面の転移術といった4つを組み合わせた手術を採用しています。こうすることで膝蓋骨がうまく元の位置に固定され、膝の痛みを軽減し、犬のQOL(生活の質)を保つことができます。 特に膝蓋骨の裏軟骨トリミングと頸骨粗面の転移術に関しては実施しない病院も多くありますが、 これらの手術を実施することで、治療が成功する可能性が高まります。 術式を含めた膝蓋骨脱臼の治療についてご不明な点がございましたら、当院の獣医師までご相談ください。 ご家庭での注意点 小型犬を飼育されている方は、以下のような日常の行動に気を付けることが重要です。 ・後ろ足だけでジャンプする ・飼い主さんを引っ張りながら散歩する ・滑りやすいフローリングを行き来する ・狭い空間を行き来するボール遊びをする ・家族が帰宅する際のチャイムの音で、玄関までダッシュする これらの行動を防ぐには、ご自宅の環境を変えていただいたり、しつけトレーニングを行ったりする必要があります。 例えば、滑りやすいフローリングを行き来することを防ぐにはゴム性のマットや貼り付けるタイプの滑り止め用マットを敷くことで環境の改善が可能ですし、当院で開催している月に1度のしつけ指導を受けていただくことでしつけトレーニングも可能です。当院のしつけ指導では、お一人お一人の生活環境に合わせた指導を心がけていますので、飼育方法にお悩みをお持ちの方は、お気軽にご相談ください。 もし本記事で解説したような異常がみられるようであればすぐに動物病院を受診してください。重症化する前に治療を施すことで、術後も快適な生活を送ることができるでしょう。 当院の診療案内詳細はこちら <参考文献> Patellar…

犬や猫の会陰ヘルニアについて│未去勢の高齢犬によくみられる疾患、予防には早期の去勢手術が重要!

会陰ヘルニアとは、様々な原因で会陰部(肛門の横)の筋肉が萎縮し、腸や膀胱といった臓器の一部が皮下に飛び出てしまう(逸脱する)病気を指します。 治療には手術が必要ですが、その術式は多岐にわたっています。 当院では、より再発がなく快適な生活を送ることができるような方法を採用しています。今回は犬や猫の会陰ヘルニアについて、その概要とともに、当院で採用している治療法をご紹介します。 症状・原因 会陰ヘルニアでは、会陰部の大腸や結腸、膀胱、前立腺、大網の一部が、萎縮した筋肉を通過して皮下に逸脱してしまうため、会陰部に柔らかい膨らみがみられます。 逸脱する臓器・器官の種類によっても異なりますが、大腸や結腸の場合は便秘、膀胱や前立腺の場合は排尿困難などの症状が現れます。逸脱した状態が慢性化すると、腸管の壊死や腸閉塞につながる可能性があり、非常に危険です。 会陰ヘルニアは加齢により筋肉が委縮した中~高齢の雄犬によくみられ、特に未去勢の犬に多いことが知られています(猫や雌犬でもまれですが認められます)。 会陰ヘルニアが未去勢の犬に多いのは、この症状の発生にテストステロン(男性ホルモン)が関与しているためです。テストステロンは、雄犬の睾丸から分泌されるホルモンで、筋肉量や体毛など、男性の第二次性徴を発達させる役割を担っていますが、骨盤筋の弱体化にも関与しています。 また、ホルモンの影響や加齢による筋肉の萎縮以外にも、前立腺疾患、慢性的な便秘、本人の性質(よく吠えるなど)も原因になると考えられています。 診断・治療 動物病院では、まず身体検査で会陰部の膨らみを確認するとともに、直腸検査を行います。また、X線検査や超音波検査などの画像診断を実施することで、ヘルニアの内容部が何なのか、どの程度逸脱しているのかを判断します。 治療には基本的に手術が必要で、様々な方法で逸脱した臓器を元の場所に戻し、再発を防止します。手術では、生体組織あるいは人工物を利用して、萎縮した筋肉の隙間を塞ぎます。前者では内閉鎖筋フラップ、浅殿筋フラップ、半腱様筋フラップ、後者では医療用メッシュが用いられます。 当院では、医療用メッシュを縫合し癒着させる術式を採用しています。さらに再発を防ぐための手段として、結腸または膀胱を腹壁に固定する手術を並行して行っています。 また未去勢であれば、ヘルニアの手術とあわせて去勢手術も実施します。 術後の再発率は0~46%などと幅広く報告されていますが、これらの治療を組み合わせることによって、可能な限り再発を防ぐことができます。 もちろん、犬の年齢や健康状態、ヘルニアの程度を考慮したうえで、最適な術式を選択することが重要です。 予防法 先述した通り、会陰ヘルニアの発症には男性ホルモンが関わるとされているので、早期の去勢手術によって発症を予防できる可能性があります。 去勢手術は会陰ヘルニアの予防につながるだけでなく、1歳までに去勢することで、精巣がんや前立腺がんなどの疾患の予防にもつながり、尿マーキング、放浪行動、マウンティング、一部の攻撃行動など飼い主様を困らせる発情期の問題行動の抑制も期待できるため、男の子のわんちゃんを飼育されている方は、ぜひ手術をご検討ください。 まとめ 会陰ヘルニアの治療には様々な手法が用いられていますが、当院ではより再発しにくいものを採用しています。せっかく手術をしても、再発してしまっては生活の質(QOL)が保たれません。 会陰ヘルニアと診断された際には、ぜひ治療法にも着目してみていただき、よりよいものを選択してください。 当院の診療案内詳細はこちら <参考文献> Internal…

犬の僧帽弁閉鎖不全症について│犬に最もよく見られる心臓病、早期発見・早期治療が重要

犬の僧帽弁閉鎖不全症は、中〜高齢の小型犬によく見られる心臓病です。 進行すると肺水腫と呼ばれる疾患を引き起こし命を落とすこともあります。 本記事では、犬の僧帽弁閉鎖不全症の症状、診断方法、治療方法について解説していきます。 症状 犬の僧帽弁閉鎖不全症では、以下のような症状が見られます。 ・咳 ・運動したがらない ・寝ていることが多い ・呼吸数が増える ・食欲が低下する ・皮膚、被毛の乾燥、フケ ・チアノーゼ(舌が青紫色になる) 愛犬にこのような症状が見られた場合には、要注意です。 また、僧帽弁閉鎖不全症が進行し、末期症状である肺水腫を発症すると、常にチアノーゼが見られたり、呼吸数が増えたりします。肺水腫は治療が遅れると命を落とすことも多い病気であるので、飼い主さんは僧帽弁閉鎖不全症の進行を防止しなくてはなりません。 また、本病は症状が徐々に悪化するケースだけでなく、心臓の弁を支えている腱索が断裂することで急速に症状が悪化し、命を落としてしまうケースもあります。そのため、いかに早期に病気を発見し、治療を開始できるかが予後を決めるポイントとなります。 原因 僧帽弁閉鎖不全症は、心臓の左心房と左心室を区切る弁(僧帽弁)に変性が起き、うまく閉鎖しなくなることにより発症します。 僧帽弁がうまく閉鎖しないと、全身への血液供給量が減少したり、逆流した血液によって、左心房圧の上昇と肺水腫を引き起こしたりすることもあります。 診断方法 犬の僧帽弁閉鎖不全症の診断方法としては、以下の通りです。 ・聴診 ・レントゲン検査(胸骨心臓サイズ(VHS)と椎骨左心房サイズ(VLAS)を測定) ・心臓超音波検査(左心房の拡張指標(LA/Ao)と左室拡張末期内径(LVIDDN)を測定) 僧帽弁閉鎖不全症になった犬では、聴診により心雑音を聴取できます。そのため、身体検査や普段の定期検査で聴診を行うと病気の早期発見につながるでしょう。 また、レントゲン検査では心臓の形や大きさを、超音波検査では心臓の血流の状態や(逆流がないかなど)中の構造を調べます。 好発犬種 僧帽弁閉鎖不全症は、中高齢の小型犬に多い心臓病であり、以下のような好発犬種が存在します。 ・チワワ ・キャバリア・キングチャールズ・スパニエル ・トイプードル ・シーズー ・ポメラニアン ・マルチーズ 愛犬がこれらの犬種に該当する場合には特に注意が必要なため、定期的に動物病院を受診して聴診をしてもらうようにしましょう。 治療方法 犬の僧帽弁閉鎖不全症の主な治療方法は、「投薬治療」と「外科手術」の2つです。当院では投薬を始めとした内科治療を中心に治療を進めています。 投薬治療では、血液を全身に送り出すために強心薬や血管拡張薬が用いられます。肺水腫になっている場合には、利尿剤を用いたり、酸素吸入を行ったりすることもあります。 僧帽弁閉鎖不全症の治療の目的は進行を遅らせることであり、一生涯治療を続ける必要があります。 飼い主さんの判断で薬の量を増減したり、投薬を止めたりすると、心臓に負担がかかり、急激に状態が悪化することがあります。 必ず獣医師から指示された通りに投薬を行いましょう。 外科手術では、麻酔をかけて心臓の僧帽弁がうまく閉鎖するように修復していきます。 麻酔が必要であり、術後のさまざまな合併症のリスクもあるため、外科手術を行う際にはしっかりとした術前検査が必要です。 僧帽弁閉鎖不全症を発症したあとは、激しい運動を控える、塩分量を抑えた食事を与える、高温多湿にならないよう、温度や湿度を管理することが症状の緩和につながるため、日常生活で心がけるとよいでしょう。 早期発見・早期治療が重要であると前述しましたが、その理由は早期に病気を発見し、投薬治療を開始することで、寿命を延ばすことができるためです。 2016年に発表されたEPIC…

肉球アイコン 最新情報

6/10再び、静岡県中部地区で男性(60歳代)がSFTSに感染したとの報道がありました。この男性は、日常的に動物と接することの多い職業とのことです。

今までは、暖かい地域での分布でしたが、東京都とほとんど同じ緯度の静岡県でのヒト患者さんの発症例になります。

SFTS感染の多くはヒトがダニ刺されて成立しますが、感染した犬や猫からの飛沫感染も報告されており、特に猫からの感染が多く報告されています。

飼い主様には、

①なるべく室内飼育にすること

②ノミ・ダニの駆除剤投与

をお勧めいたします。

また、飼い主様自身も本人も健康不良の際にはお早目の受診をお勧めいたします。

肉球アイコン よくある質問

ワンちゃんの気持ち

ワンちゃんの気持ち

ワンちゃんネコちゃんの気持ちが理解できればと思ったことはありませんか。遊んで欲しい、おなかが空いたといったように大切なペット達の気持ちを理解してあげられると、よ…
ネコちゃんの気持ち

ネコちゃんの気持ち

ネコちゃんはボディランゲージによって信頼関係を確認できる動物です。ネコちゃんは気ままな動物ですので、しつけは大変だとは思いますが、しぐさや気持ちを理解してあげる…
ペットに薬を与える方法

ペットに薬を与える方法

日頃ワンちゃんやネコちゃんの健康維持のため、バランスのとれた食事、健康診断や予防接種を定期的に受けるなど心がけていても、病気になり、お薬を処方してもらうこと…
ワクチンについて

ワクチンについて

任意のワクチンですが、死亡率の高い病気や後遺症の残る病気や飼い主様に感染を広げてしまうリスクのある病気を予防する目的がありますので、1年に1回の追加接種が望ましいです。…
寄生虫の怖さ

寄生虫の怖さ

寄生虫と聞くと気持ち悪い、怖いといった暗いイメージを思い浮かべるのではないでしょうか。動物というのはお互いに直接的、間接的に関係をもって生きています。寄生虫…
老犬のためにできること

老犬のためにできること

犬や猫と一緒に暮らしはじめると、安らぎや喜びをたくさんもらいます。年々歳をとると、飼いはじめた頃より動きが鈍くなり、あまり散歩にも行きたがらなくなります。健…

丁寧でわかりやすい説明

動物たちの診療は、ご家族のご理解とご協力があって、はじめて成り立ちます。ご家族のご理解を得るため、丁寧に、そしてわかりやすいご説明を心がけています。

質の良い幅広い獣医療を目指して

診療を進めるためには必要に応じ、血液検査、超音波画像診断装置、デジタルX線画像診断システム、心電図検査、内視鏡システムなどを用いて診断にあたっています。

トレーナーによる犬の飼育指導

当院では、月に1回、トレーナーによる犬の飼育指導を行っております。お一人お一人の生活環境に合わせた指導を心がけていますので、飼育方法にお悩みをお持ちの方は、お気軽にご相談ください。また、グルーミング、トリミングも承っております。

患者様が諦めることがないよう、私たちにできること

高度な診断機器による診断や治療が必要な場合には、連携している各大学病院、動物救急センター、また専門診療が可能な動物病院など最適な方法・施設をご紹介することをいといません。

駐車場

一方通行にご注意ください