「最近なんとなく元気がない」「食欲が落ちてきた気がする」
そんな愛犬の変化を、年齢のせいかなと見過ごしていませんか?

アジソン病(副腎皮質機能低下症)は、犬の内分泌疾患のひとつで、発症頻度は高くありませんが、症状があいまいなために見逃されやすい病気です。しかし、早期に発見して適切な治療を行えば、長期的に安定した生活を送ることも十分可能です。

今回は、アジソン病について、その症状や診断、治療方法をご紹介します。

 

犬のアジソン病とは

アジソン病(副腎皮質機能低下症)は、副腎という小さな臓器のうち「皮質」の働きが低下し、体に必要なホルモンが分泌されなくなる病気です。

副腎は、腎臓のそばにあるごく小さな臓器ですが、体の調子を整えるホルモンを作るというとても重要な役割を担っています。副腎は「皮質」と「髄質」の2つの部分に分かれており、中でも皮質から分泌される以下のホルモンが、アジソン病に深く関わっています。

コルチゾール:ストレスに対応するホルモン
アルドステロン:ナトリウムやカリウムなどのミネラルバランスを調整

これらのホルモンが不足すると、体の調子を保てなくなり、さまざまな不調が現れます

どんな犬が発症しやすい?

アジソン病は、若い成犬から中年齢の犬で発症することがあります。稀ではあるものの、猫も発症することがあります。
似たような病気に、ホルモンが過剰に分泌される「クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)」がありますが、こちらは中高齢の犬でよく見られます。

犬のクッシング症候群の症状について詳しく知りたい方はこちら

アジソン病の主な原因

はっきりとした原因がわからないこともありますが、次のようなケースが知られています。

自己免疫反応により副腎が壊されてしまう
クッシング症候群の治療薬(ミトタン)の作用が強すぎた場合
皮膚病などで長期間ステロイドを使用し、中止した後に起こる離脱症状

どれも体のホルモンバランスに関わることが背景にあり、副腎の機能が影響を受けることでアジソン病を引き起こします。

見逃されやすいアジソン病の症状|こんなサインに要注意

アジソン病は、「なんとなく元気がない」といったあいまいな症状から始まることが多く、老化や軽い体調不良と思われて見過ごされてしまうケースも少なくありません。

慢性型のアジソン病

慢性型では、体調不良がじわじわと進行していきます。特にストレスが発症や悪化の引き金となることもあるため、日常生活の変化にも注意が必要です。

以下のような症状が続く場合は、アジソン病のサインかもしれません。

食欲の低下
なんとなく元気がない
体重が少しずつ減る
ふるえ
脈が遅くなる(徐脈)

この段階では「年齢のせいかな」「季節のせいかな」と見過ごされがちですが、放っておくと症状が進行してしまうこともあるため、早めの対応が大切です。

急性型(アジソンクリーゼ)に注意

慢性的な不調が続いたあと、急激に悪化し命に関わる状態になることがあります。これをアジソンクリーゼと呼び、以下のような症状が突然あらわれます。一刻も早い処置が必要となる危険な状態です。

・脱水や血圧低下によるショック症状
・意識がもうろうとする(意識混濁)
・播種性血管内凝固(DIC):全身に小さな血栓ができて臓器が機能しなくなる危険な合併症

こうした急変を防ぐためにも、日頃から愛犬の様子をよく観察し「いつもと違うかも」と感じたら、ためらわずに動物病院へご相談ください。飼い主様のちょっとした気づきが、早期発見と適切な治療につながります。

アジソン病の診断と検査の流れ

アジソン病の確定には、いくつかの検査が必要です。

血液検査

アジソン病の代表的な特徴として、以下のような電解質異常が見られることがあります。

低ナトリウム血症
高カリウム血症

ただし、症状の軽いタイプ(コルチゾールのみが低下しているタイプ)では、これらの異常が見られない場合もあり、血液検査だけでは診断が難しいこともあります。

ACTH刺激試験

副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)を注射し、体がどれくらい反応してコルチゾールを出せるかを確認する検査です。この検査でコルチゾール値が十分に上がらなければ、アジソン病と診断されます。

アジソン病は、できるだけ早く見つけてあげることで、その後の治療をスムーズに進めやすくなります。だからこそ、異変に気づいた段階での早めの受診がとても大切です。

また、定期的な健康診断も、こうした内分泌疾患の早期発見に役立ちます。気になる症状がなくても、年に1回の健診を受けておくことで、見えにくい異常にも早く気づける可能性があります。

アジソン病の治療と管理|安定した生活を目指して

アジソン病は残念ながら完治が難しい病気ですが、治療によって症状を安定させ、健康的な生活を送ることも十分に可能です。

ホルモン補充療法

アジソン病の基本となる治療法です。体内で不足している副腎ホルモンを、飲み薬や注射で補います。生涯にわたって続ける必要がありますが、正しく管理すれば、発症前とほとんど変わらない生活を送ることもできます。

定期的な通院と検査

体調が急に変化することもあるため、定期的な血液検査でホルモンや電解質のバランスを確認し、状態をチェックしていくことが大切です。

ストレスを減らす生活環境づくり

ストレスが症状を悪化させる要因のひとつと考えられているため、安心できる生活環境を整えてあげましょう。無理のないお散歩や、飼い主様とのふれあいの時間は、愛犬にとって心身の安定につながる大切なケアの一環です。

まとめ

アジソン病は見逃されやすい病気のひとつですが、早めに気づいて治療を始めれば、症状を安定させながら穏やかに過ごすことも十分に可能です。

特に慢性型では「年齢のせいかな」と思われがちなサインが続くこともあるため、日ごろからの観察と小さな変化への気づきがとても大切になります。

ナガワ動物病院では、丁寧な診察と分かりやすい説明を心がけています。「最近ちょっと元気がないかも」「食欲が落ちているかも」と感じたら、どうぞお気軽にご相談ください。

<参考文献>
Diagnosis of canine spontaneous hypoadrenocorticism – PMC
Management of hypoadrenocorticism (Addison’s disease) in dogs – PMC

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犬の甲状腺機能低下症について┃健康診断で定期的にホルモン数値を確認しよう

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「避妊・去勢手術って本当に必要?」「いつ頃受けるのがいいの?」
そのようなお悩みをもつ飼い主様も多いのではないでしょうか。手術には病気の予防や行動の安定などたくさんのメリットがある一方で、麻酔や術後のケアについて不安を感じていらっしゃる方も少なくありません。

ナガワ動物病院では、こうしたお悩みに寄り添いながら、愛犬・愛猫にとって最適な手術のタイミングや方法をご提案しています。

今回は、避妊・去勢手術の基本的な内容から、手術のメリット・デメリット、時期や費用、術後の過ごし方までを、詳しく解説します。

 

避妊・去勢手術とは|犬・猫の体にどんなことをするの?

避妊・去勢手術は、繁殖を望まない犬や猫にとって大切な医療処置のひとつです。ナガワ動物病院では、以下のような方法で行っています。

避妊手術(メス)

子宮と卵巣を取り除く手術です。妊娠を防ぐことができるだけでなく、将来的に発症リスクの高い病気を予防する効果もあります。術後は基本的に一泊入院し、最短で翌日の午前中に退院していただく流れです。

去勢手術(オス)

精巣を摘出する手術で、比較的短時間で終わる処置です。こちらも一泊入院後、翌日の午前中にご帰宅いただけます。

麻酔とリスクへの配慮

どちらの手術も全身麻酔が必要になります。当院では、手術の安全性を高めるため、術前検査(血液検査・レントゲン・心電図など)を強くおすすめしています。また、麻酔時は必ず2名以上の獣医師が立ち会い、安全管理を徹底しています。

手術を受けるメリットとデメリット

避妊・去勢手術には、身体的・行動面でのメリットがある一方で、いくつかの注意点もあります。事前にしっかり理解しておくことが大切です。

メリット

望まない妊娠を防げる
発情期のストレスや鳴き声、マーキング、攻撃的な行動などの軽減
メスは子宮蓄膿症や乳腺腫瘍、オスは前立腺肥大や会陰ヘルニアなどの予防

デメリット・注意点

ホルモンバランスの変化で太りやすくなることがある
全身麻酔に伴うリスクがある
術後、一時的に元気がなくなったり、体調を崩したりすることがある
排尿のトラブルが出ることがある

ただし、こうしたリスクについては、術前検査や術後のケア、日々の体調管理で十分に対応できることがほとんどです。

当院では、このような手術のメリット・デメリットを丁寧にご説明したうえで、飼い主様と一緒に最適な選択ができるように心がけています。

手術の時期はいつがベスト?|犬・猫それぞれの推奨時期と考え方

手術の効果を最大限に活かすためには「いつ手術を受けるか」も重要なポイントになります。

犬の場合

▼去勢手術(オス)
歯の生え変わりが落ち着く生後6〜8か月頃がおすすめです。

▼避妊手術(メス)
初回の生理が終わった約1.5か月後(発情休止期)が理想です。この時期はホルモンバランスが落ち着いており、手術の負担も少なくなります。

猫の場合

去勢・避妊ともに、大人の歯が生えそろい、発情期が始まる前(生後5〜6か月)がベストタイミングです。
発情後の手術は出血量が増えたり、術後の回復が遅れたりすることもあるため、早めのご相談をおすすめします。

手術の流れと費用の目安

当院では、避妊・去勢手術を安心して受けていただくために、事前準備から術後のフォローまでを丁寧に行っています。ここでは、手術の流れと費用の目安についてご紹介します。

手術の流れ

1. 術前検査
血液検査・レントゲン・心電図などを行い、麻酔の安全性を確認します。

2. 前日夜から絶食・当日は絶水
誤嚥(ごえん)などのリスクを避けるため、当日は絶飲食の状態でご来院いただきます。

3. ご来院・術前確認
全身の状態を最終確認し、必要に応じて再検査やご説明を行います。

4. 手術実施
所要時間は30~60分ほどで、麻酔下で慎重に行います。

5. 回復室で経過観察
手術後は落ち着くまでしっかりと経過を見守ります。

6. 一泊入院
基本的に術後は1泊入院とし、翌日午前中に退院となります。(状態によって延長の場合もあります)

7. 退院後のケア
術後の経過に応じて、1週間前後で抜糸を行うこともあります。(傷口の状況により異なります)

費用の目安(税別)

猫の去勢:17,000円〜
猫の避妊:27,000円〜
犬の去勢:20,000〜27,000円(小~中型犬)
犬の避妊:42,000円(小型犬)、57,000円(中型犬以上)
術前検査:8,000円〜20,000円

※お住まいの自治体によっては、1,500〜3,000円程度の助成金制度をご利用いただける場合があります。詳細は当院までお気軽にお問い合わせください。

術前検査について

術前検査は「必須」ではありませんが、当院では強くおすすめしています。
検査を行うことで、外から見えない先天的な疾患や、麻酔に対してリスクの高い体質を事前に把握でき、安全な手術につなげることができるためです。

例えば、心臓・肝臓・腎臓に異常があることに気づかずに麻酔をかけると、重大な事故につながるおそれもあるため、術前検査は「できるだけ安全に、安心して手術を受けていただくための準備」といえます。

一見すると費用がかかるように感じられるかもしれませんが、愛犬・愛猫の命を守る大切な手段として、ぜひご検討ください。

術後のケア|手術後も安心して過ごすために

手術後は、愛犬・愛猫が穏やかに回復できるよう、落ち着いた環境でそっと見守ることが大切です。術後1週間ほどは、以下の点にご注意ください。

安静が基本
激しい運動は避け、静かに過ごせる時間を確保してあげましょう。

傷口の保護
舐めたり引っかいたりしないよう、エリザベスカラーや術後服を着用します。傷が開いてしまうと治りが遅れるため、しっかり守ってあげましょう。

食事のポイント
手術直後は消化の良いごはんを少量からスタートします。食欲や便の様子を見ながら、ゆっくり普段の食事に戻していきましょう。

元気や食欲の変化
術後は一時的に元気がなかったり、食欲が落ちたりすることもあります。多くの場合は徐々に回復していきますので、焦らず見守ってください。

気になる変化があれば、遠慮なくご相談ください。安心して回復を見守れるよう丁寧にサポートいたします。

まとめ

避妊・去勢手術は、将来の病気を予防し、愛犬・愛猫が快適に過ごすための大切な選択肢です。行動面のストレス軽減にもつながるため、より穏やかな日常をサポートします。

ナガワ動物病院では、麻酔や手術のリスクをできる限り抑えるとともに、飼い主様のお気持ちに寄り添いながら、一頭一頭に合ったタイミングや方法をご提案しています。

「うちの子に必要?」「今の時期で大丈夫?」といったご相談にも丁寧にお応えいたしますので、どうぞお気軽にご来院ください。飼い主様と一緒に、その子にとって最善の方法を考えてまいります。

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「腫瘍」と聞くと「もう手の施しようがないのでは…」「これからどうすればいいんだろう…」と不安を感じる飼い主様も多いかもしれません。

しかし、犬や猫にできる腫瘍には良性と悪性があり、実際には良性のものも少なくありません。また、適切な診断と治療によって、健康な生活を取り戻せるケースも多くあります。体表のしこりなど、比較的発見しやすい腫瘍に対する外科的アプローチが中心となりますが、早期発見・早期対応が成功のカギとなることはどのケースでも共通です。

今回は、外科手術による腫瘍摘出に焦点を当て、手術の流れや注意点について詳しくご紹介します。

 

腫瘍とは?|まずは正しく理解しましょう

腫瘍には大きく分けて、良性腫瘍悪性腫瘍(がん)があります。

良性腫瘍
成長が遅く、一定の大きさで増殖が止まるため、動物への影響は比較的限定的です。

悪性腫瘍
成長が速く、周囲の組織に広がったり、遠隔転移を起こしたりするため、命に関わる危険性があります。

特に飼い主様が気づきやすいのは、皮膚のしこりや乳腺腫瘍などの体表にできる腫瘍です。皮膚の異変を見つけたときは、様子を見るのではなく、できるだけ早く動物病院を受診しましょう。

腫瘍発見から診断までの流れ

腫瘍を発見した場合、まずは視診・触診により外見や硬さを確認し、その後、細胞診(針で細胞を採取して観察する検査)を行います。これにより、腫瘍の性質や悪性度の推測が可能になります。

さらに、必要に応じて以下の検査を実施します。

レントゲン検査
超音波検査
血液検査

これらの検査を通じて、腫瘍の種類や進行度を把握し、手術適応かどうかを判断します。良性であってもペットのQOL(生活の質)に悪影響を及ぼすと判断されれば、摘出が必要となる場合もあります。

体表腫瘍の場合にはご家庭でスキンシップをした際に気づくことも多く、初期に発見・治療できるケースもありますが、それ以外の腫瘍では進行してから見つかるケースも少なくありません。定期的な健康診断や画像検査で、できるだけ早い段階で異常を見つけることが非常に重要です。

当院では、N-NOSE(線虫がん検査)によるがんリスク検査も導入しており、早期発見に役立てています。

腫瘍摘出手術当日の流れ

ここでは、手術に向けた具体的な流れをご説明します。

ご自宅での準備

手術前日の夜から絶食を始め、当日の朝からは絶食・絶水をお願いします。
これは、麻酔中に胃の内容物を誤って気道に吸い込んでしまう「誤嚥(ごえん)」を防ぐためにとても重要な対策です。安全な手術のために、必ずご協力をお願いいたします。

動物病院での準備

ご来院後は、まず全身状態をチェックし、麻酔に伴うリスクを「ASA分類」という国際基準に沿って評価します。特に高齢の犬・猫や持病を抱えている場合には、麻酔リスクが高くなるため、より慎重な対応が必要です。

当院では、安全性を最優先に考え、麻酔時には必ず獣医師2名以上で対応する体制を整えています。また、事前にわかりやすくリスクをご説明し、安心して手術に臨んでいただけるように心がけています。

手術時間

手術にかかる時間は、腫瘍の部位や大きさによって異なります。
小さな体表腫瘍であれば、比較的短時間で摘出が可能です。一方で、内臓にできた腫瘍や悪性度の高い腫瘍の場合は、慎重な処置が必要となり、長時間に及ぶこともあります。

術後

術後の回復状況も、手術の内容や個体差によってさまざまです。
元気な場合は翌日に退院できることもありますが、状態によっては、1週間以上の入院が必要になることもあります。

術後の様子やご自宅でのケアについては、獣医師から詳しくご説明いたしますので、ご安心ください。

手術後のケアと経過観察のポイント

ご自宅でのケアでは、特に傷口の保護が重要です。
エリザベスカラーやエリザベスウェアを使用し、傷口を舐めたり引っかいたりするのを防ぎましょう。

投薬管理にも注意が必要です。お薬をうまく飲ませることができない場合は、獣医師にご相談ください。

再診・抜糸は一般的に術後7~10日が目安です。
また、次のような様子が見られた場合には、すぐに動物病院へご連絡ください

ごはんを食べない
排尿・排便がない

知っておきたい腫瘍摘出の注意点と長期的な見通し

腫瘍摘出手術は、愛犬・愛猫の健康を守るために非常に有効な治療法ですが、術後の経過や対応にはいくつか大切なポイントがあります。

腫瘍のタイプによる手術後の注意点

手術によって腫瘍を摘出した場合、良性腫瘍であれば基本的に再発や転移の心配はありません。しかし、悪性腫瘍だった場合は、再発や転移のリスクがあるため、術後も定期的な検診が欠かせません

術後には病理検査を行い、腫瘍が良性か悪性か、また悪性の場合はどの程度の悪性度(グレード)なのかを分類します。このグレード分類に基づき、必要に応じて抗がん剤治療などを検討していきます。

高齢や複数の腫瘍への手術対応

よくいただくご相談に「高齢だから手術は難しいのでは?」というものがありますが、年齢だけで手術の可否を決めることはありません。体力や持病、全身状態などを総合的に評価し、できる限り負担を抑えた方法を選択しています。高齢の犬や猫でも、適切なリスク管理のもとで手術を成功させるケースは数多くありますので、安心してご相談ください。

さらに、複数の腫瘍が見つかった場合も対応は一様ではありません。隣接した臓器同士に腫瘍ができている場合は、まとめて摘出できるケースもあります。一方で、まったく異なる場所に複数の腫瘍がある場合には、QOL(生活の質)を大きく下げるリスクが高い部位のみを優先的に切除する、といった柔軟な判断を行うこともあります。

いずれの場合も、飼い主様としっかり相談しながら、愛犬・愛猫にとって最も負担が少なく、効果的な治療方針を一緒に考えていきます

まとめ|飼い主様ができること

犬や猫の腫瘍は、早期発見と早期治療によって進行を防ぎ、健康な生活を支えることができます。

そのためには、日頃からスキンシップを通じてしこりや異変に気づく習慣を持ち、少しでも気になることがあれば早めに動物病院を受診することが大切です。「様子を見よう」と迷っているうちに病状が進行してしまうこともあるため、異変に気づいた時点でご相談いただくことが、愛犬・愛猫の負担を軽減する近道となります。

また、かかりつけ医との信頼関係を日頃から築いておくことで、いざというときにも安心して治療に臨むことができます。気になることがあれば、どうぞお気軽に当院までご相談ください。大切な愛犬・愛猫の生活の質(QOL)を第一に考えた選択を重ねながら、より良い毎日を一緒に守っていきましょう。

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愛犬や愛猫のおしりから出血していたり、便がうまく出せていなかったりすると、多くの飼い主様は不安を感じるものです。

一方で、高齢の犬や猫では「年齢によるものだろう」と考え、つい見過ごされてしまうケースも少なくありません。しかし、こうした症状の裏には直腸腺がんが隠れていることがあり、早期発見・早期治療によってその後の予後が大きく変わります。

今回は、犬や猫の直腸腺がんについて、特に直腸プルスルー術という外科治療に焦点を当て、詳しく解説します。

 

直腸腺がんとは?|基礎知識を押さえましょう

直腸腺がんは、直腸の粘膜に発生する悪性腫瘍(がん)の一種です。
主に高齢の犬や猫にみられますが、中年齢で発症するケースもあります。

類似した腫瘍に直腸腺腫(良性)もありますが、直腸腺がんは周囲の組織へ浸潤する力が強く、放置すると進行してしまいます。特に腸閉塞を引き起こすと、生命に関わる危険性があるため、早めの診断と治療が重要です。

直腸腺がんの症状|気をつけたいサイン

直腸にしこりができることで、便の排泄に影響が出ます。初期には以下のような症状が見られます。

排便時の出血
排便困難、しぶり(いきんでも便が出ない状態)
便の形の変化

さらに進行すると、以下のような全身症状がみられるようになります。

体重減少
食欲不振
元気消失

高齢になると排便トラブルが起こりやすいため「年齢のせい」と誤解されることもありますが、急に変化があらわれた場合は特に注意が必要です。日頃から便の回数や出血の有無、形状などをチェックし、少しでも異変があれば早めに動物病院を受診しましょう。

直腸腺がんの診断方法

直腸腺がんを正確に診断するためには、いくつかの段階を踏んで検査を進める必要があります。

初診時に行われる検査

まず、便の異常の原因を探るため、以下の検査を実施します。

直腸検査(触診)
獣医師が直腸内に指を入れ、しこりの有無や大きさ、質感を確認します。
小さな腫瘍でも触知できる場合があり、初期段階での異常発見に役立ちます。

直腸鏡検査(内視鏡検査)
肛門からカメラを挿入し、直腸の内壁を直接観察します。
目視で粘膜の状態やしこりの形状を確認できるため、より詳細な評価が可能です。

これらの検査によって、腫瘍の存在が疑われる場合は、次のステップに進みます。

確定診断のための検査

腫瘍の性質を詳しく調べ、直腸腺がんであるかどうかを確定するため、以下の検査を行います。

細胞診
針を使ってしこりから細胞を採取し、顕微鏡で観察します。
比較的簡便に実施でき、悪性の可能性を推測するための第一歩となります。

組織診(生検)
内視鏡下でしこりの一部を切り取り、病理検査で詳しく分析します。
細胞診だけでは確定できない場合に実施し、正確な診断を下すために重要な役割を果たします。

進行度・転移の評価

直腸腺がんは進行すると他の臓器に転移する可能性もあるため、全身状態を把握する検査も欠かせません。超音波検査レントゲン検査CT検査なども併用して、腫瘍の広がり具合や転移状況を把握します。

すべての検査結果を総合して、直腸腺がんのステージング(進行度分類)を行い、その後の治療方針を決めていきます

直腸プルスルー術とは?|手術の基本と流れ

直腸腺がんの治療には、外科手術が中心となります。特に腫瘍が直腸内に限局している場合に選択される手術が、直腸プルスルー術(Pull-through術)です。

この術式は、直腸の腫瘍部分を肛門側から引き出して切除し、腸管を再吻合するという特徴を持っています。身体への負担を抑えながら、腫瘍をできる限り確実に摘出できる方法のひとつです。

直腸プルスルー術が適応となるケース

直腸プルスルー術が選択されるのは、以下のような条件を満たす場合です。

腫瘍が直腸の比較的下部(肛門側)に存在している
腫瘍の大きさが適度で、肛門から直腸を引き出して処置できる範囲である
進行度が比較的低く、周囲組織への広範な浸潤や遠隔転移がない
全身麻酔に耐えうる体力がある

腫瘍が直腸の上部(奥の方)に存在していたり、大きく進行していたりする場合には、別の術式が検討されることもあります。

直腸プルスルー術の流れ

1. 麻酔の実施
まず全身麻酔をかけ、安全を確保します。
麻酔管理は手術中の安定性に直結するため、慎重に行います。

2. 直腸の引き出し(プルスルー)
肛門から慎重に直腸を引き出します。
これにより、直腸内部の腫瘍部分を体外に露出させます。

3. 腫瘍部分の切除
引き出した直腸から、腫瘍を含む病変部位を切除します。
必要に応じて、直腸の全層を切除する場合と、粘膜層のみを切除する場合(粘膜プルスルー法)があります。

4. 再吻合(腸管と肛門のつなぎ直し)
切除後、直腸の健常な部分と肛門を縫合して再建します。
これにより、術後もできる限り自然な排便機能を保てるように整えます。

手術は慎重を要しますが、適応条件が整っている症例では、体への負担を比較的抑えたうえで確実な腫瘍摘出が見込めます。ただし、手術後には狭窄(腸の狭まり)や縫合不全といった合併症リスクもあるため、術後管理が非常に重要となります。

手術後のケアと回復過程

術後は数日間の入院で経過を観察し、問題がなければ退院となります。ご帰宅後は、以下の点に注意してケアを行う必要があります。

排便管理
術後は一時的に排便回数が増える傾向があり、肛門周囲の傷口が便で汚れると細菌感染のリスクが高まります。こまめに便の状態をチェックし、必要に応じて清拭を行いましょう。

排尿管理
一過性の失禁がみられることもあります。清潔を保つため、ペットシーツを多めに敷いたり、オムツを活用するのも有効です。

傷口のケア
エリザベスカラーを装着して患部を保護し、舐めたり引っかいたりするのを防ぎます。あわせて傷口を常に清潔に保つように心がけましょう。

食事管理
手術後すぐは消化に優しい食事からスタートし、便の様子を見ながら徐々に通常の食事に戻していきます。軟便や下痢が続く場合は、早めに獣医師に相談してください。

直腸プルスルー術後には、まれに腸管の狭窄(きょうさく)や縫合不全が起こることがあります。また、腫瘍が完全に摘出できていなかった場合には、再発のリスクも残ります。

これらのリスクをできるだけ早く察知するために、便の回数や形状、出血の有無など、排便や排尿の様子を日常的に観察し、小さな変化にも注意を払いましょう。もし異常があれば、すぐに動物病院に相談してください。

さらに、定期的な経過観察(診察・検査)も欠かせません。目立った症状がなくても、予定された検診は必ず受診し、再発や合併症の有無を早期にチェックすることが、愛犬・愛猫の回復と健康維持につながります。

まとめ|直腸腺がんと向き合うために

直腸腺がんは、早期に手術できれば良好な予後が期待できる病気です。便の異常や出血、排便困難といった症状を見逃さず、早めに獣医師に相談することが大切です。

また、高齢の犬や猫であっても、体力や状態に応じて手術を選択できる場合もありますので、あきらめずにご相談ください。信頼できるかかりつけ医と連携し、愛犬・愛猫の健康を一緒に守っていきましょう。

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「最近、愛犬が散歩を嫌がるようになった」「愛猫が高いところに登らなくなった」と感じたことはありませんか?もしかすると、それは関節炎のサインかもしれません。

関節炎は犬や猫にとって身近な健康問題であり、足の痛みや違和感が生活の質(QOL)に大きく影響します。特に高齢の犬や猫に多く見られますが、若い犬や猫でも発症することがあり、油断は禁物です。愛犬・愛猫がいつまでも快適に過ごせるようにするためには、早期発見と適切な治療、ご家庭でのケアがカギとなります。

今回は犬や猫に起こる関節炎について、早期発見のポイントや効果的な対処法を詳しく解説します。

 

関節炎とはどのような病気?

関節炎とは、関節を動かすための軟骨や靭帯が損傷・炎症を起こし、関節が正常に機能しなくなる病気を指します。特に加齢によって起こる変形性関節症などの関節炎は、シニア期の犬や猫に多くみられますが、若い犬や猫でも発症する場合もあります。

たとえば、大型犬では「股関節形成不全」小型犬では「膝蓋骨脱臼」などが原因で関節炎が発症するケースもあります。「関節炎=年をとってからの病気」という認識は誤りであり、若い犬や猫でも注意が必要です。

関節炎の主な症状と早期発見のポイント

関節炎の初期には、以下のような症状が現れることがあります。もしこれらの症状がみられた場合には、早めに動物病院を受診することをおすすめします。

朝起きたときに動きが硬く、こわばっている
階段の上り下りをためらう
ジャンプをしなくなった
散歩を嫌がるようになった

さらに関節炎が進行すると、次のような症状が現れることもあります。

足を引きずる
足を地面に着けられない
動かなくなる、ぐったりしている
発熱がみられる

また、これらの症状は、特に犬で顕著に現れます。一方、猫は痛みや不調を悟られないようにするため、飼い主様が症状に気づきにくいことも少なくありません。

猫の痛みを把握するための一つの方法として、猫の画像から痛みの程度を判定するAIツール「Cats me」があります。痛みを「なし」「少し」「強い」の3段階で評価できるため、症状を判断する際の参考になるでしょう。

Cats me公式(外部サイトに遷移します)

犬種・猫種別・年齢別の関節炎リスク

関節炎のリスクは、犬や猫の種類や年齢によって異なります。飼い主様が普段から気をつけてあげることで、早期発見につなげることができます。

犬種

バセット・ハウンドやシェパードなどの大型犬種は、変形性関節症のリスクが高いとされています。体重が関節に負担をかけやすく、関節炎を引き起こしやすいためです。

猫種

メインクーンなどの大型猫種でも、同様に変形性関節症のリスクが指摘されています。猫は痛みを隠す傾向が強いため、普段から動きの変化に気を配っておくと安心です。

年齢

一般的には高齢になるほどリスクが高まりますが、若齢でも発症するケースがあるため注意が必要です。特に成長期に関節に負担がかかると、若くても症状が現れることがあります。

愛犬・愛猫が関節炎のリスクを抱えている場合は、日頃から動きや歩き方に注意を払い、異変を感じたら早めに動物病院で相談しましょう。

動物病院での診断方法

関節炎の診断には、以下のような検査が行われます。

・身体検査
特に整形外科的徒手診断法で、関節の動きを確認します。関節を実際に触ったり、曲げたり伸ばしたりすることで、異常の有無を評価します。

・跛行検査
実際に歩かせて、どの足に痛みが出ているかや歩き方の異常をチェックします。

・画像検査
レントゲンやCT検査が、必要に応じて実施されます。画像検査により、関節の状態をより正確に把握できます。

ご家庭では、診断時の参考として「症状が出始めた時期」や「どのような状況で痛がるか」を記録しておくと、スムーズな診察につながります。

また、早期に診断できれば、治療の選択肢が広がり、症状の悪化を防ぐことが期待できます。愛犬・愛猫の健康を守るためにも、気になる症状があれば早めの受診を心がけましょう。

関節炎の治療法

関節炎の治療は、症状や原因、個々の犬や猫の状態によって異なります。

薬物療法

関節炎の治療としてよく用いられるのが、薬物療法です。
代表的な薬剤として、犬には「リブレラ」猫には「ソレンシア」があります。これらは月1回の注射で効果が持続し、飼い主様の負担が軽減されるというメリットがあります。また、炎症を抑えるためにステロイドを使う場合もありますが、副作用が起こることもあるので、定期的に状態をチェックして、薬の量を調整する必要があります。
薬物療法は、症状をコントロールしながら愛犬・愛猫の痛みを和らげ、快適な生活をサポートする目的で使われます。獣医師と相談しながら、適切な治療プランを選ぶことが大切です。

サプリメント療法

薬物療法を補完する形で、サプリメント療法を取り入れるケースもあります。
例えば、オメガ3脂肪酸やコラーゲンを含む「アンチノール」「フレキサディン」などは、関節の健康をサポートするために利用されます。抗炎症作用が期待でき、日常的なケアとしても取り入れやすい点が特徴です。
ただし、サプリメントだけで治療を完結させるのではなく、薬物療法と組み合わせながら活用することがポイントです。

当院では、診察結果をもとに飼い主様と一緒に治療プランを検討し、最適なケアの提供に努めています。

ご家庭でできる関節炎ケア

関節炎の治療と並行して、ご家庭でのケアも非常に重要です。日常生活での工夫が、愛犬・愛猫の痛みを軽減し、快適な暮らしをサポートします。

・適切な体重管理
体重が増えすぎると関節に大きな負担がかかります。
適正体重を維持するために、フードの量の見直しや、適度な運動を心がけましょう。肥満を防ぐことで、関節への負担を軽減できます。

・関節に優しい運動
無理のない範囲で関節に優しい運動を取り入れることが大切です。
短時間の散歩や、バランスボールを使った軽いエクササイズなどが効果的です。過度な運動はかえって関節を痛めることがあるため、適度な運動量を意識しましょう。

・生活環境の工夫
クッション性の高いベッドや、滑りにくい床材を用いたり、滑り止めマットなどを敷いたりすることで、関節への負担を軽減できます。
また、段差がある場所にはスロープを設置するなど、日常的に移動しやすい環境づくりを心がけましょう。

・サポーターの活用
関節をサポートするために、膝用のサポーターやコルセットを活用するのも有効です。
負担がかかりやすい部位を適度に支え、痛みを和らげる効果が期待できます。

まとめ

関節炎は高齢の犬や猫に多い病気ですが、若くても発症することがあります。そのままにしておくと症状が徐々に悪化し、痛みによって日常生活に支障をきたすことも少なくありません。また、飼い主様が気づかないうちに、実は痛みを抱えているケースも多く見受けられます。

しかし、関節炎は早期に発見し、適切な治療やケアを行うことで、症状の進行を遅らせたり、愛犬・愛猫が穏やかな日常を取り戻すことが期待できます。普段と違う様子が見られたときには、早めに動物病院へ相談することをおすすめします。

当院では、正確な診断と適切な治療を通じて、愛犬・愛猫の健康をサポートしています。気になる症状がある場合には、ぜひお気軽にご相談ください。

 

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慢性腎臓病は特にシニア猫に多く見られる病気で、腎臓の機能が徐々に低下していく進行性の疾患です。早期発見が難しく、症状が現れたときには病気がかなり進行していることが多いという特徴があります。しかし、適切な食事管理や在宅ケアを早くから始めることで、病気の進行を遅らせ、愛猫の生活の質(QOL)を維持することができます。

慢性腎臓病は根治が難しいため、診断を受けた飼い主様はショックを感じるかもしれません。しかし、まずはできることから始め、愛猫との生活を少しでも長く楽しむために、一緒に向き合っていきましょう。

今回は、猫の慢性腎臓病について、病気の基礎知識や症状、診断方法、在宅ケアのポイントなどを詳しく解説します。

 

猫の慢性腎臓病とは?基本的な理解

腎臓は、体内の老廃物を排出し、水分やミネラルのバランスを調整する重要な臓器です。慢性腎臓病ではこれらの機能が徐々に低下し、以下のような問題が発生します。

老廃物排出が困難になる
脱水やミネラル異常、血圧の上昇が起こる
心臓に負担がかかり、肥大型心筋症を併発することがある

猫の肥大型心筋症について詳しくはこちらをご覧ください

慢性腎臓病は中高齢の猫で特に多く、5~6歳以降に発症リスクが高まります。多くの場合は加齢による腎機能の低下が原因ですが、尿石症などの泌尿器の病気が原因となることもあります。また、まれに先天的な腎臓の奇形によって発症するケースがあります。

愛猫の慢性腎臓病に早く気づくためのサイン

慢性腎臓病の初期には目立った症状がほとんどありませんが、腎臓の機能が低下すると次のようなサインが現れ始めます。

多飲多尿:水をたくさん飲み、おしっこの量が増える
食欲低下:食事を残す、興味を示さなくなる
体重減少:体格がほっそりし、あばらが浮き出る
被毛の艶の低下:毛並みがぼさぼさになり、艶が失われる

慢性腎臓病が進行すると、さらに重篤な症状が現れることがあります。

口臭:アンモニア臭がする
高血圧:目が赤くなる、心臓のリズムに異常が出る
神経症状:けいれんや神経過敏

これらの症状は他の病気でも見られることがあるため、自己判断は危険です。確実な診断のもとで治療を進めていくためにも、異変を感じたら、まずは動物病院で適切な検査を受けましょう

慢性腎臓病の診断とステージ分類

慢性腎臓病を正確に診断するためには、以下の検査が必要です。

血液検査:BUN、クレアチニン、SDMAなど腎機能を示す数値を確認
尿検査:尿比重や尿たんぱくなどを測定
血圧測定:腎臓への負担を評価
エコー検査:腎臓の状態を画像で確認

これらの検査結果を総合的に判断し、慢性腎臓病の進行度を評価します。
進行度は「国際腎臓病学会(IRIS)」によってステージ1〜4に分類されており、ステージごとに治療方針が異なります。そのため、定期的に検査を実施し、愛猫がどのステージにあるのかを把握することが大切です。

慢性腎臓病のステージ分類

ステージ1:腎障害はあるものの、一般的に無症状。腎機能は33%以上。
ステージ2:無症状もしくは軽い症状が現れる。腎機能は25~33%。
ステージ3:さまざまな症状が出現。腎機能は10~25%。
ステージ4:重度の症状が現れる。腎機能は5~10%。

治療方針と定期検査の重要性

慢性腎臓病の治療では、病気の進行をできるだけ遅らせ、愛猫が快適に過ごせるようにサポートすることが目標です。特に重要なのが、ステージ2以下の状態をいかにキープするかという点です。

飼い主様の中には、「ステージ2だからまだ大丈夫」と安心される方もいらっしゃいますが、実際にはステージ2の時点で腎機能の7割が失われているため、決して油断できない状況です。腎臓の機能は一度低下すると回復が難しく、放置すると急速に悪化するリスクがあるため、ステージの初期段階で治療を始めることが非常に重要です。

当院では、慢性腎臓病が発症した際には、できる限りステージ2以下の状態を維持できるように治療プランを策定しています。定期検査を通じて進行具合を把握し、状況に応じた対策を講じることで、愛猫の健康をサポートいたします。

ステージ別の在宅ケアや食事管理の重要性

慢性腎臓病は進行性の病気であるため、ステージに応じた適切なケアが欠かせません。

特に食事療法は、慢性腎臓病の管理において最も重要な要素の一つです。腎臓への負担を減らすためには、たんぱく質、リン、ナトリウムの量を調整することが求められますが、筋肉量が減少するとかえって病状が悪化するリスクもあるため、バランスの取れた管理が必要です。当院では、腎臓の数値を上げないように工夫しながら、適度なたんぱく質も補えるような食事指導を行っています

さらに、近年注目されているAIMたんぱく質の摂取が腎臓病の進行抑制につながる可能性が指摘されており、今後の治療選択肢として期待されています。

ステージ別ケアのポイント

慢性腎臓病の管理では、病気の進行を遅らせるための予防的ケアから、症状を和らげるためのサポート、終末期のQOL維持まで、各ステージに応じたアプローチが求められます。

▼初期(ステージ1~2):予防的ケアと食事管理
この段階では予防的ケアを中心に考えます。たんぱく質やリン、ナトリウムの含有量を抑えた腎臓病用療法食を取り入れることで、腎臓への負担を減らす効果が期待できます。

また、食事だけでなく水分補給を意識することが重要です。特に猫はもともと水をあまり飲まないため、ウエットフードやふやかしたドライフードを与えるなどして、水分摂取量を増やす工夫をしましょう。

▼中期(ステージ3):症状緩和を目的としたケア
ステージ3になると、症状が顕著になりやすいため、症状緩和を重視したケアが求められます。特に貧血や消化器症状が現れることがあり、食欲が低下しやすいため、嗜好性の高い療法食や、フードを温めて香りを引き立たせる工夫が効果的です。

また、水分摂取をより意識し、スープタイプのフードや水分を多く含むウエットフードを活用することで、脱水を防ぎ腎機能をサポートします。栄養が偏らないように、獣医師の指導のもとでサプリメントを適切に使いながらケアを進めましょう。

▼末期(ステージ4):QOL維持を目指すケア
末期段階では、愛猫ができるだけ快適に過ごせる環境を整えることが最優先です。
この時期には、食欲が極端に低下することが多く、必要に応じて栄養チューブの使用を検討します。無理に食べさせるのではなく、少量でも摂取できる工夫が重要です。

また、体調の変化が激しい時期ですので、こまめな体調チェック痛みや不快感の管理を徹底しましょう。獣医師と連携しながら、適切な治療プランを調整していくことが大切です。

まとめ

慢性腎臓病は進行性の病気ですが、早期発見と適切な管理を行うことで、病気の進行を遅らせ、愛猫が穏やかに過ごせる時間を延ばすことが期待できます。

特に食事管理や在宅ケアは、慢性腎臓病の管理において最も重要な要素です。ご家庭でのケアを怠ってしまうと、病気が進行してしまい、愛猫が非常に苦しい最期を迎えてしまうケースも少なくありません。当院でも、症状が進んでからご相談に来られ「もっと早くケアを始めていれば」と後悔される飼い主様を何度も見てきました。この記事をご覧の飼い主様には、同じ後悔をしてほしくないと心から願っています。

愛猫の健康を守るためには、少しでも気になる変化があれば早めに動物病院を受診し、一日でも早く適切なケアを始めることが大切です。気になる症状がある際には、ぜひ当院にもお気軽にご相談ください。丁寧な診断とサポートを通じて、愛猫と飼い主様が少しでも長く快適に過ごせるようお手伝いさせていただきます。

<参考文献>
原田佳代子. 6.慢性腎臓病. In: 犬と猫の腎臓病診療ハンドブック. 上地正実 監修. 2021 : pp.104-123. 緑書房.

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犬や猫に影響を及ぼす寄生虫の中でも、特に厄介なのがノミです。ノミが寄生すると強いかゆみを引き起こし、ひどくなると皮膚炎や貧血などの健康トラブルにつながります。さらに、ノミは感染症の原因となる病原体を運ぶこともあり、放置すると健康リスクが高まるため早期発見と予防がとても重要です。

しかし、成虫のノミは動きが素早く、毛の中に隠れてしまうため見つけにくいものです。そのため、感染初期のサインとしてノミのフンをチェックすることが早期発見につながります。

そこで今回は、愛犬・愛猫の健康を守るために知っておきたい、ノミのフンの特徴や発見方法、予防策について解説します。

 

ノミのフンとは?特徴と見つけ方

ノミそのものを見つけることは難しいかもしれませんが、ノミのフンには特徴があるため、ご家庭でも簡単に確認することができます。

ノミのフンの特徴

黒く細かい粒状(ゴミやホコリと間違えやすい)
水に濡らすと茶色や赤茶色に変わる(血液が含まれているため)

ノミのフンの見つけ方

1. 毛の中をチェック
お腹周りや首元、背中などをかき分けて、黒い粒状のものがないか確認します。

2. ティッシュの上でテスト
黒い粒をティッシュや白いペーパーの上に置き、水で湿らせてこすります。
赤茶色に滲んだ場合は、ノミのフンの可能性が高いです。

3. 寝床や毛布を調べる
犬や猫がよく過ごす場所(クッション・毛布・ベッド)にもノミのフンが落ちていたり、ノミそのものが生息していることがあります。

ノミのフンが確認できたら、すでにノミが寄生している疑いがあるため、早急な対処が必要となります。

ノミのフンを見つけたら?正しい対処法

ノミのフンを見つけた場合は、以下の手順で適切に対処しましょう。

1. シャンプーで応急処置
まず、ノミが体に付着しているおそれがあるためシャンプーでしっかり洗い流します。

▼ポイント
ノミ駆除効果のあるシャンプーを使用する(市販品は、使用前に獣医師に相談すると安心です)
シャンプー後は毛をしっかり乾かし、再度ブラッシングしてチェック

2. 生活環境の清掃と除去
ノミは、犬猫の体だけでなく、寝床やカーペット、ソファなどにも卵や幼虫を残しています。

▼ポイント
ベッドや毛布を洗濯(60℃以上の熱湯で洗うと効果的)
掃除機をこまめにかける(卵や幼虫を取り除く)
床やカーペットにスチームクリーナーを使用(熱でノミを駆除)

3. 動物病院で処方されたノミ駆除薬を使用
最も確実な方法は、動物病院で処方されるノミ駆除薬を使用することです。

▼ポイント
・市販のノミ取りグッズは効果が限定的なため、獣医師に相談して適切な薬を選ぶ
・シャンプーで成虫を洗い流しても、卵や幼虫が残っているおそれがあるため、駆除薬でしっかり対応する

なぜノミに注意が必要なの?健康への影響

ノミが寄生すると、愛犬・愛猫の健康にさまざまな悪影響を及ぼします。

ノミアレルギー性皮膚炎

ノミの唾液に対してアレルギー反応を起こし、皮膚が赤くなったり、かゆみが強くなったりすることがあります。

貧血

ノミは吸血するため、大量に寄生すると貧血のリスクが高まります。特に子犬・子猫やシニアの犬猫では、貧血が命に関わるケースもあるため注意が必要です。

瓜実条虫(サナダムシ)の感染

ノミを介して、瓜実条虫(サナダムシ)に感染することがあります。感染すると下痢や食欲低下、体重減少がみられることがあり、駆虫が必要になります。

また、これらの影響は犬や猫だけでなく、人間に及ぶこともあります。ノミにはさまざまな種類がありますが、イヌノミやネコノミなどが人に感染するケースも少なくありません

効果的な予防対策と日常のケア方法

 

ノミ駆除薬の定期使用

ノミの感染を防ぐためには、定期的な駆除薬の使用が効果的です。ノミは一度寄生すると増殖が早く、体表だけでなく環境にも卵や幼虫を残すため、予防的な投与が重要になります。駆除薬には以下のようなタイプがあり、それぞれ特徴が異なります。愛犬・愛猫の体質や生活スタイルに合ったものを選び、月に1回または3カ月に1回の定期的な投与を行いましょう。

スポットオンタイプ:皮膚に薬液を垂らして使用するタイプ。飲み薬を嫌がる犬や猫でも使いやすく、ノミの成虫や幼虫を効果的に駆除します。
チュアブルタイプ:おやつのように食べるタイプで、嗜好性が高く与えやすいのが特徴。特に犬にはおすすめです。

近年ではノミが年間を通して活動することが増えているため、継続的な予防が欠かせません。当院では、犬猫問わず3カ月に1度の駆除薬を通年で投与することを推奨しています。

こまめな被毛ケア

ノミを早期に発見するためには、日頃のグルーミングブラッシングが欠かせません。ノミは毛の奥に潜んでいるため、こまめな被毛ケアを行いながら、皮膚の状態をチェックしましょう。
特に春から夏にかけてはノミが活発になる時期のため、普段よりも頻繁にケアを行うことが大切です。皮膚をよく確認し、背中や首周り、腹部などノミがつきやすい部位に注意しましょう。

生活環境の清掃・管理

ノミは、犬や猫の体だけでなく、寝床やカーペット、ソファなどにも卵や幼虫を残します。ノミのライフサイクルを断ち切るためには、室内外の衛生管理を徹底することが大切です。
犬や猫がよく過ごす場所(ベッド・クッション・毛布など)は、定期的に洗濯・掃除をし、カーペットやソファ、家具の隙間など、ノミの幼虫が潜みやすい場所はこまめに掃除機をかけるようにしましょう。屋外飼育の場合は、雑草や落ち葉の管理も重要です。

また、ノミ用の殺虫剤や駆除スプレーを使用する際は、犬猫への影響を考慮し、事前に獣医師に相談することをおすすめします。適切な予防策を講じることで、ノミの繁殖を防ぎ、愛犬・愛猫が快適に過ごせる環境を整えましょう。

まとめ

ノミの感染を防ぐためには、日々のケアと定期的な予防が欠かせません。ノミは小さく動きが素早いため、目視で発見するのは難しいですが、ノミのフンをチェックすることで早期発見につなげることができます。定期的な被毛ケアと生活環境の管理を行い、ノミが寄生しにくい環境を整えましょう。

また、ノミは単なるかゆみの原因にとどまらず、皮膚炎や貧血、寄生虫感染などの健康リスクを引き起こすおそれがあるため、早めの対処が重要です。駆除薬を定期的に使用することで、愛犬・愛猫の健康を守り、安心して過ごせる環境を維持できます。

当院では、大切な家族の一員である動物たちが健康に暮らせるよう、知識と技術の向上に努め、飼い主様と共に最善のケアを考える診療を大切にしています。「最近かゆがっている」「黒い粒のようなものが毛についている」など、気になる症状があれば、ぜひお気軽にご相談ください。愛犬・愛猫にとって最適な予防と治療をご提案し、健康な生活をサポートいたします。

 

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愛犬・愛猫が健康で長生きするために、病気を未然に防ぐ「予防医療」が注目されています。私たち人間と同じように、犬や猫も定期的な健康チェックを受けることで、早期発見・早期治療が可能になります。

動物病院では、血液検査やレントゲンなどさまざまな検査を行いますが、中でもエコー検査(超音波検査)は体に負担をかけずに多くの情報を得られる優れた検査方法のひとつです。

今回は、エコー検査に焦点を当てて、基本情報やメリット、どのような病気の早期発見につながるのか、そして当院で取り扱っている検査器具についてご紹介します。

 

エコー検査とは?動物病院での検査の流れ

エコー検査(超音波検査)とは、高い周波数の音波(超音波)を体に当て、その反射を画像として映し出す検査です。レントゲンのように放射線を使わず、安全に体の内部を観察できるのが大きな特徴です。

検査の流れ

検査では、専用のプローブ(超音波を出す装置)を首・胸・お腹などに当て、臓器の状態などを確認します。より鮮明な画像を得るために、ゼリーやアルコールで皮膚や毛を濡らしたり、必要に応じて毛の一部を刈ることがありますが、検査自体に痛みはありません

エコー検査は、体を傷つけることなく臓器の状態をリアルタイムで確認できるため、愛犬・愛猫への負担が少ない検査方法のひとつです。

犬や猫にエコー検査が必要な理由

エコー検査は、血液検査やレントゲンでは分かりにくい臓器の構造や動き、血液の流れなどを詳しく観察できます。特に、心臓や内臓の状態をリアルタイムで把握できるのが大きな利点です。

例えば、心臓のエコー検査では、血液の流れや弁の動き、心臓の収縮の様子を詳細に確認できます。高齢の犬では、「僧帽弁閉鎖不全症」という心臓病がよく見つかりますが、この病気は初期段階では症状が目立ちにくく、症状に気づかず進行しているケースが少なくありません。エコー検査では初期の弁の異常も発見できるので、より早期から治療を始められ、犬への負担を軽減してQOL(生活の質)を高めることにもつながるため、定期的なエコー検査が重要な役割を果たします。

また、胆嚢や脾臓の異常、腫瘍なども、エコー検査で早期に発見できることがあります。症状が出る前の段階で病気を見つけられれば、治療の選択肢が広がり、愛犬・愛猫の負担を減らせる可能性が高まります。

どれくらいの頻度で検査すべき?年齢別の推奨頻度

エコー検査をどれくらいの頻度で受けるべきか悩まれる飼い主様も多いかと思います。当院では、以下の頻度での定期検査をおすすめしています。

健康な成犬・成猫(7歳未満)年1回
または7歳以上のシニア年2回

中でも重要なのが、シニア期に入ってからの検査です。シニア期に入ると、心臓病や腫瘍などの病気のリスクが高まります。健康なうちから定期検査を受けることで、病気の進行を防ぎ、治療の選択肢を広げることができます。また、症状が軽い(あるいはほとんどない)段階から早めに治療を開始することで、結果的に治療費の負担を抑えられることもあります。
※持病がある犬・猫の場合はこの限りではなく、状態に合わせてご提案します。

エコー検査でわかる主な病気と症状

エコー検査では、以下のような病気を発見できることがあります。

頚部(首) :甲状腺機能亢進症、甲状腺の腫瘍など

猫の甲状腺機能亢進症について詳しくはこちらをご覧ください

胸部(胸) :僧帽弁閉鎖不全症、肥大型心筋症、拡張型心筋症、犬糸状虫症(フィラリア症)など

犬の僧帽弁閉鎖不全症について詳しくはこちらをご覧ください
猫の肥大型心筋症について詳しくはこちらをご覧ください

腹部(お腹) :胆嚢粘液嚢腫、消化管閉塞、膀胱結石、脾臓の腫瘍など

犬と猫の胆嚢粘液嚢腫について詳しくはこちらをご覧ください

特に「僧帽弁閉鎖不全症」「胆嚢粘液嚢腫」「脾臓の腫瘍」などは、症状が現れにくいため、エコー検査での早期発見が重要です。エコー検査で早めに異常を見つけ、治療を始めることが健康寿命を延ばすカギになります。

当院で導入しているエコー機器のご紹介

エコー検査の精度は、使用する機器の性能によって大きく左右されます。当院では、動物用のエコー機器「Aplio me V」 を導入し、より鮮明な画像で臓器の異常を見つけやすい環境を整えています。

このエコー機器は、超音波の信号を細かく解析し、より鮮明な画像を得られるのが特徴です。例えば、従来のエコー機器では見えづらかった微細な異常や臓器の質感の違いも、よりクリアに映し出せるため、診断の精度が向上します。また、画像の処理時に生じる「ゆがみ」を最小限に抑える技術が搭載されており、より正確な診断につなげることが可能です。

エコー検査は、その精度が高まることで、診断の正確性が向上し、より早期に異常を発見できるようになります。高性能なエコー機器を活用することで、病気の見落としを防ぎ、より適切な治療へとつなげることができるため、愛犬・愛猫の健やかな毎日を守るうえで大きなメリットとなります。

まとめ

エコー検査は、体への負担が少なく、多くの情報を得られる有用な検査です。特に、心臓や内臓の異常を早期に発見し、適切な治療を行うことで、愛犬・愛猫の健康寿命を延ばすことにつながります。

定期検査の頻度は、愛犬・愛猫の年齢や健康状態によって異なりますが、定期的なエコー検査を取り入れることで、より安心して日々を過ごすことができます。「うちの子は検査を受けたほうがいいのかな?」と迷われた際は、ぜひ一度、かかりつけの動物病院へご相談ください。また、妊娠検査などにもエコー検査は有効ですのでぜひご検討ください。

当院では、病気の早期発見・早期治療に力を入れており、レントゲンや血液検査と組み合わせた健康診断も積極的に実施しています。少しでも不安なことがあれば、どんな些細なことでも構いませんので、お気軽にご相談ください。愛犬・愛猫が一日でも長く健やかに過ごせるように全力でサポートいたします。

 

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愛犬の皮膚がうろこ状になっているのを見つけて「何が起こっているんだろう…」「自分に何かできることはないかな…」と不安を抱く飼い主様も多いのではないでしょうか。
犬の皮膚は健康状態を映し出すバロメーターです。皮膚や被毛の異常が、時には内臓の病気を示唆することもあるため、早期に動物病院で検査を受け、適切な治療を進めることが愛犬の健康を守る鍵となります。

今回は、犬の皮膚がうろこ状になる主な原因や、ご家庭でのケア方法、動物病院を受診する目安について詳しく解説します。

 

健康な犬の皮膚とは?正常な状態を知ろう

健康な犬の皮膚は、以下のような特徴があります。

触り心地:つるつるしていて滑らか。
:薄いピンク色。
弾力:指で押すとしっかりとはね返る。

普段から愛犬の皮膚の状態を確認し、正常な状態を把握しておくことが、異常に早く気づくための第一歩です。

皮膚がうろこ状になる主な原因

犬の皮膚がうろこ状になる理由として、以下のようなものが挙げられます。

乾燥

わたしたち人間も、乾燥すると手がカサカサして、うろこのように見えることがありますよね。犬も同じで、冬の乾燥した季節や、湿度の低い室内環境では、皮膚が乾燥してうろこ状に見えることがあります。これはいわゆるフケの一歩手前で、皮膚の表面を覆う細胞が角化(潤いがなくなること)し、ひび割れのような状態です。ここで注意が必要なのは、フケとカサブタとの違いです。フケは皮膚の表面を覆う細胞が新しく生まれ変わる過程でできる古い細胞ですが、カサブタは皮膚からの出血が固まってできたものです。

皮膚の炎症やアレルギー

アレルギー反応や皮膚の炎症が起こると、皮膚のバリア機能が破壊され、外部刺激に対して敏感になります。その結果、皮膚がうろこ状に見える場合があります。特にアレルギー性皮膚炎はかゆみを伴うことが多く、犬が頻繁に体を掻くようになるのが特徴です。また、炎症が長引くと細菌や真菌の二次感染を引き起こし、症状が悪化することもあります。

栄養状態の不良

栄養が不足していると、皮膚の細胞の新陳代謝が正常に行われず、うろこ状に見えることがあります。特に、タンパク質や脂肪酸、ビタミン類が不足すると、皮膚の健康が損なわれやすくなります。例えば、オメガ3脂肪酸は炎症を抑え、皮膚を保護する効果がありますが、これが不足すると皮膚の乾燥や荒れを招くことがあります。

加齢

高齢犬は、皮膚に潤いを閉じ込める保湿成分が減少しやすく、表面が乾燥してうろこ状になることがあります。また、代謝が低下することで、新しい皮膚細胞の生成が遅れ、古い細胞が皮膚表面に残りやすくなることも原因の一つです。高齢期に入った愛犬には、皮膚の保湿を意識したスキンケアとともに、定期的な健康診断で全身の健康状態をチェックすることが大切です。

注意が必要な疾患

皮膚がうろこ状になる原因が乾燥や栄養不足であれば、ご家庭でのケアで改善する場合があります。しかし、以下のような疾患が隠れていることもあるため、注意が必要です。

アレルギー性皮膚炎

食物アレルギーやハウスダスト、ノミ・ダニなどが原因となることが多く、強いかゆみを伴う場合があります。皮膚の赤みや炎症、脱毛などの症状が現れることが特徴です。早期に原因を特定し、適切な治療を行うことが大切です。

アレルギー性皮膚炎について詳しくはこちらをご覧ください

皮膚感染症

細菌や真菌(カビ)による感染が一般的です。特に湿気が多い季節や皮膚に傷がある場合に発症しやすいです。感染が進行すると皮膚が赤く腫れたり膿が出ることもあります。適切な診断と抗菌薬・抗真菌薬を用いた治療が必要です。

ホルモンバランスの乱れ

クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)甲状腺機能低下症などのホルモン異常が原因の場合もあります。これらの疾患では、かゆみを伴わないのが特徴的です。血液検査やホルモン検査による診断が必要です。

クッシング症候群について詳しくはこちらをご覧ください
甲状腺機能低下症について詳しくはこちらをご覧ください

自己免疫性疾患

他の病気と比べると発症は稀ですが、免疫系が自身の皮膚組織を攻撃してしまうことで起こります。症状が他の皮膚疾患と似ているため、除外診断を重ねる必要があります。診断には時間がかかることが多い、診断が難しい疾患です。

治療について

犬の皮膚がうろこ状になっている場合、原因に応じた治療を進めます。治療の流れとしては以下の通りです。

1. 乾燥や皮膚の炎症を疑う検査
まずは、乾燥や炎症が原因かどうかを確認します。

2. 感染症や寄生虫の有無を確認
細菌や真菌、ノミ・ダニなどの寄生虫が関与していないかを確認します。

3. ホルモンバランスや自己免疫性疾患の確認
これらの病気は診断に時間がかかることが多く、除外診断を通じて絞り込みます。

治療には時間を要することもありますが、原因を特定し、根気強く治療を進めることが重要です。
特にアレルギー性皮膚炎の場合、かゆみがQOL(生活の質)を大きく低下させるため、当院では分子標的薬(アポキルやゼンレリア)を用いて治療しています。この薬は、ステロイドよりも副作用が少なく、かつかゆみをしっかり抑えてくれるという特徴があります。

ご家庭でできるケアと予防法

愛犬の皮膚の健康を保つため、日常的なケアを取り入れましょう。

シャンプー

頻度は犬種や季節によってさまざまですが、少なくとも1カ月に1回は行いましょう。皮膚に優しい専用のシャンプーを使用し、余分な皮脂や汚れをしっかり洗い流すことで清潔さを保つことができます。

保湿ケア

乾燥を防ぐため、クリームなどの保湿ケア用品を活用しましょう。特にシャンプー後は皮膚が乾燥しやすいため、保湿ケアをセットで行うと効果的です。また、セラミドを補給することで皮膚のバリア機能をサポートし、アレルゲンの侵入を防ぐ効果が期待できます。使用する製品は犬専用のものを選んでください。

栄養バランスの取れた食事

十分な栄養を含むフードを与え、栄養が偏らないようにすることも健康な皮膚を維持するための大切な要素です。必要に応じて、皮膚の健康をサポートするサプリメントも取り入れましょう。また、犬の体質や年齢に合わせた食事管理を心がけることも重要です。

室内環境の整備

適切な温度・湿度を保つことで、皮膚表面の乾燥を防ぐことにつながります。特に冬場は乾燥しやすいので、加湿器を活用して50〜60%程度の湿度を維持することをお勧めします。

動物病院への相談・受診のタイミング

以下の場合は、早めの受診を検討してください。

元気や食欲がない
体重が減っている
強いかゆみを伴う
出血がある
不快なニオイがある
ご家庭でのスキンケアで改善しない

皮膚の病気は血液検査などですぐに原因がわかるわけではなく、その多くは診断・治療に長い時間が必要になります。そのため、早期発見・早期治療がとても重要です。症状が軽いうちに原因を突き止め、根気強く治療を進めていきましょう。

まとめ

犬の皮膚がうろこ状になる原因は、乾燥や栄養不足からホルモンバランスの乱れなど多岐にわたります。ご家庭でできるケアを行い、症状の改善が見られない場合や悪化が見られる場合は、早めに動物病院を受診してください。適切な治療と予防で、愛犬の健康な皮膚を維持し、快適な生活をサポートしていきましょう。

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目やには健康な犬にも見られるものですが、色や量、状態に変化がある場合、何らかの病気が隠れていることがあります。正常な目やにと異常な目やにを見分けるのは難しいため、不安を感じる飼い主様も少なくないでしょう。しかし、目やには愛犬の健康状態を知るバロメーターです。目やにについての理解を深めることで、早期に異常を発見することで、愛犬の健康を守ることにもつながります。

今回は、正常な目やにの特徴や異常のサイン、病院を受診すべきタイミングについて詳しく解説します。

 

健康な犬の目やにとは?正常な目やにの特徴

目やには、涙が目の表面の老廃物などをからめとり、目の外に排出することで現れます。健康な犬の目やには以下のような特徴があります。

:少し濁った白色。乾燥すると茶色っぽくなることが多い。
:目立たず、少量が目頭についている程度。
性状:やや粘り気があるが、簡単に拭き取れる。

通常は1日1~2回拭き取れば気にならない程度です。

要注意!異常な目やにのサイン

それでは、どのような目やにの場合に異常が疑われるのでしょうか。
以下のようなサインが見られたら、感染症や目の病気が関係している場合があります。

緑色黄色赤みを帯びた色。感染症が原因の場合があります。
急に量が増えた場合。さまざまな目の病気が原因として考えられます。
性状粘り気が強くなったり、硬くなったりする。目の病気や加齢が関係している可能性があります。

その他にも、目や目の周りの充血腫れが見られたり、涙の量が多い場合は、アレルギーや炎症が疑われます。また、片目だけ目やにが目立つ場合も、傷や異物、傷や異物による刺激が関係していることがあります。

目やにが増える原因と考えられる病気

さきほどご紹介したサインの中で、特に複雑なのが量の増加です。目やにが増える原因は多岐にわたり、動物病院で詳しく検査をしなければ分かりません。目やにが増える原因となる病気は、例えば以下のようなものがあります。

ドライアイ:涙の分泌が不足し、目の表面が乾燥する。
アレルギー性結膜炎:アレルゲンによる炎症。
涙管閉塞:涙が目からうまく流れ出ない状態。
角膜潰瘍:角膜に傷がつき炎症を起こす。
マイボーム腺の異常:マイボーム腺(水分の蒸発を防ぐための皮脂腺)の炎症や腫瘍化。
逆さまつげ:まつげが目を刺激し、炎症を引き起こす。

この中で特に注意すべきなのがドライアイです。当院では、目やにが増えている場合は必ずドライアイを疑うようにしています。ドライアイは気づきにくいため、目やにの増加が見られた場合は早めの受診をお勧めします。

角膜潰瘍について詳しくはこちらをご覧ください

治療について

涙管閉塞や逆さまつげといった例外もありますが、基本的にはどの病気でも目薬の処方によって治療を進めていきます。目は血液眼関門と呼ばれるバリア機能の影響で内服薬の効果が届きづらく、特に角膜には血管がないため、角膜の病気(角膜潰瘍など)をはじめとして、目薬は直接的に薬効を届けるための最適な方法です。

治療中は、目を引っかいて悪化することを防ぐため、エリザベスカラーの着用が一般的です。治療効果を最大限にするためにも、獣医師の許可が下りるまでエリザベスカラーを外さないようにしてください。また、さまざまなタイプのエリザベスカラーがありますが、目の病気に対してはソフトタイプではなく、ハードタイプが推奨されます。柔らかいと十分に目を保護できず、再発してしまうリスクがあります。

動物病院を受診する目安とタイミング

飼い主様が気になるのは、どのような症状が現れたらすぐに受診すべきか、あるいは様子見できるのか、といったことかと思います。あくまで一例ですが、以下の基準を目安としてお考えください。

すぐに受診が必要な場合

視覚に影響が出ている(目が開けにくい、見えていない様子)
全身の症状(元気・食欲の低下、体重の減少など)が現れている
症状が1週間以上続いている
目やにの色が変化している

ご家庭で様子見が可能な場合

・視覚に影響がない
・症状が目だけに限定されている
・2~3日ほどで症状が治まる

まとめ

目の病気は、早期発見・早期治療がとても重要です。症状が軽くても、かゆみや目の違和感はQOL(生活の質)の低下にもつながります。日々の観察を通じて、もし異常が見られた際は早めに動物病院を受診することが大切です。些細な症状でも気になることがあれば、当院までお気軽にご相談ください。

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