犬の白内障について調べると「目薬で治るの?」「進行を止められる?」といった情報を目にすることが多いかもしれません。結論からお伝えすると、白内障を目薬だけで元の状態に戻すことは、基本的に難しいと考えられています。

点眼治療の主な目的は、白内障そのものを治すことではなく、進行をゆるやかにしたり、炎症などの合併症を抑えたりすることです。一方で、白内障の進行度や原因、全身状態によっては、手術を検討するケースもあります。大切なのは「目薬か手術か」を先に決めることではなく、今どの段階にあるのかを正しく知り、その子に合った治療方針を選ぶことです。

今回は、犬の白内障について、症状の見分け方から検査、治療の考え方について詳しく解説します。

 

すぐ受診したいサイン|こんな変化は見逃さないで

白内障はゆっくり進行することも多い一方で、状態によっては短期間で悪化するケースもあります。次のような変化がみられる場合は、早めの受診をおすすめします。

目の中(水晶体)が急に白っぽくなった
物や壁にぶつかる、段差を怖がるようになった
目が充血している、痛そうにしている
目やにが増えた

特に糖尿病を持っている犬では、白内障が急速に進行することがあるため、見た目の変化が少ないように感じても注意が必要です。

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犬の白内障とは|水晶体が濁ることで起こる変化

犬の目は、外側から角膜・水晶体・網膜という構造でできています。このうち水晶体は、カメラのレンズのように光を集め、網膜に像を結ぶ重要な役割を担っています。

白内障とは、この水晶体が濁ってしまう病気です。濁りが進むにつれて光がうまく届かなくなり、視力が低下します。

白内障は進行の程度によって、一般的に以下の段階に分けられます。

・初発白内障
・未熟白内障
・成熟白内障
・過熟白内障

初期の段階では視力低下に気づきにくいこともありますが、進行すると日常生活に支障が出るだけでなく、目の中で炎症(ぶどう膜炎)を起こすリスクも高まります。

核硬化症との違い|「白っぽい=白内障」ではありません

高齢の犬で目が白っぽく見える場合、白内障ではなく「核硬化症」という変化の可能性もあります。

核硬化症は、水晶体が加齢によって硬くなる現象で、見た目は白内障に似ていても、視力への影響はほとんどないとされています。治療が不要なケースも多く、白内障とは対応が異なります。

見た目だけでの判断は難しいため「白く見える=白内障」と決めつけず、必ず検査で見極めることが大切です。

犬の白内障の原因|特に注意が必要なのは糖尿病性

犬の白内障には、さまざまな原因があります。代表的なものとして、次のような要因が挙げられます。

遺伝的要因
加齢
糖尿病
ぶどう膜炎
外傷

なかでも糖尿病性白内障は進行が非常に速いことが知られており、数日〜数週間で急激に悪化するケースもあります。糖尿病を持つ犬では、目の色の変化や見え方の変化に早めに気づき、できるだけ早く受診することが大切です。

また、ヨークシャー・テリアやボストン・テリアなどのテリア種は、遺伝的に白内障を発症しやすい傾向があるとされています。ただし、どの犬種でも白内障を発症する可能性があるため、犬種に関わらず、日頃から目の様子を観察しておくことが重要です。

動物病院での検査・診断の流れ

白内障が疑われる場合、動物病院では目の状態と全身の健康状態をあわせて確認しながら、段階的に検査を進めます。

▼目の状態を詳しく確認
専用の器具を使って、目の表面や内部の様子を観察し、白内障の進行度や炎症の有無を確認します。あわせて眼圧を測定し、緑内障などの合併症が起きていないかもチェックします。

▼必要に応じて全身チェック
糖尿病などの全身疾患が疑われる場合には、血液検査などを行い、体の状態を確認します。目だけでなく全身の情報を把握することで、治療方針をより安全に判断できます。

▼手術を検討する場合の追加評価
手術が選択肢に入る場合は、麻酔の安全性や網膜の状態などを評価し、その子にとって手術が適切かどうかを慎重に判断します。

検査内容は、白内障の進行度や体調によって異なります。気になる変化があれば、まずはお気軽にご相談ください。

治療方法|点眼(目薬)と手術、それぞれでできること・できないこと

犬の白内障治療には、大きく分けて「点眼(目薬)による治療」と「手術」の2つの選択肢があります。ただし、どちらが適しているかは、白内障の進行段階や原因、愛犬の年齢や持病などによって大きく異なります。

ここでは、それぞれの治療で期待できること・注意点を整理してご紹介します。

点眼(目薬)治療でできること・限界

白内障に対する点眼治療の主な目的は、白内障そのものを元に戻すことではなく、進行をゆるやかにしたり、炎症などの合併症を抑えたりすることです。

初期〜比較的早い段階の白内障では、進行抑制が期待できるケースもあります。一方で、すでに濁りが強く進行している場合には、点眼だけでは十分な効果が得られないことも少なくありません。そのため点眼治療は、効果の出方や進行の様子を定期的に確認しながら、治療方針を調整していくことが大切になります。

一般的には、加齢性白内障の進行抑制が期待される成分や、抗酸化作用が報告されている成分などが使用されます。当院でも、こうした考え方を踏まえ、状態に応じてライトクリーンやD-Smileなどの点眼薬を使用することがあります。ただし、いずれの点眼薬も「白内障を治す薬」ではなく、効果には個体差や限界がある点を理解しておくことが大切です。

手術(白内障手術)を検討するケース

白内障手術は、白く濁った水晶体を取り除き、人工レンズを挿入する外科治療です。犬の場合、人の白内障手術のように「視力を大きく回復させる」ことを目的とするのではなく、炎症や緑内障などの合併症を防ぐ意味合いが大きい点が特徴です。

例えば、次のような場合には、手術が選択肢として検討されることがあります。

視力低下が進み、物にぶつかる、怖がって歩かなくなるなど、生活に支障が出ている
白内障に伴う炎症や緑内障のリスクが高い
水晶体脱臼が起こっている、または起こる可能性が高い

一方で、糖尿病性白内障、高齢(おおよそ15〜16歳以上)、重い心臓病などの持病がある場合、両目とも重度に進行している場合などでは、手術が適さないケースもあります。

手術には麻酔リスクや術後のケア、通院管理も必要になるため、必ずメリットとデメリットを比較しながら、慎重に判断していきます。

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ご家庭でできること|日常生活での配慮

白内障が進行すると、これまで当たり前にできていた動きが少しずつ難しくなり、愛犬が不安を感じやすくなります。安心して過ごせるよう、日常生活の工夫や、治療の継続、小さな変化への気づきが大切です。

生活環境の工夫

視力が低下してくると、段差や物の位置が分かりづらくなり、思わぬケガにつながることがあります。次のような工夫を取り入れることで、日常の負担を減らすことにつながります。

家具の配置をできるだけ変えない
床の小物やコードを整理する
段差には滑り止めマットを敷く
夜間は足元灯などで明るさを補う

点眼治療を続ける際の注意点

点眼治療は、自己判断で中止したり回数や種類を変えたりせず、獣医師の指示に沿って続けることが重要です。

また、症状が落ち着いて見えても、目の中では変化が進んでいることもあります。充血や目やにが増える、痛がる様子が見られるなど、いつもと違う変化があれば早めにご相談ください。点眼が難しい場合も、方法や対応を一緒に考えていきましょう。

日々の変化を見逃さない

歩くスピードが遅くなった、段差を怖がる、物を見失うことが増えたなどの変化は、治療方針を見直すサインになることがあります。ご家庭での見守りと定期的なチェックを組み合わせながら、愛犬が安心して過ごせる環境を整えていきましょう。

よくある質問(FAQ)

白内障について、飼い主様から特に多く寄せられるご質問をまとめました。

Q:白内障は目薬だけで治りますか?
白内障を元に戻すことは、目薬だけでは難しいと考えられています。主な目的は進行をゆるやかにすることや、炎症などのトラブルを抑えることです。状態によって効果の出方は異なります。

Q. 手術はどのタイミングで検討するものですか?
視力低下が生活に影響している場合や、合併症のリスクが高い場合に検討されます。ただし、年齢や持病、目の状態によって適応は変わります。

Q. 片目だけ白内障でも受診したほうがよいですか?
片目だけでも、早めの受診をおすすめします。反対側の目への影響や、別のトラブルが隠れていることもあります。

Q. 糖尿病があると、白内障は進行しやすくなりますか?
糖尿病性白内障は進行が速いことが多く、短期間で悪化するケースもあります。目の変化に気づいたら、早めにご相談ください。

Q. 核硬化症と白内障はどう違うのですか?治療は必要ですか?
核硬化症は加齢による変化で、通常は治療を必要としません。ただし見た目が似ているため、検査での見極めが大切です。

まとめ

犬の白内障は、進行すると視力の低下だけでなく、炎症などの合併症につながることもある病気です。目薬でできることには一定の限界がありますが、初期の段階で状態を正しく把握し、適切な治療を始めることで、進行を緩やかにしたり、トラブルを防いだりできる可能性があります。

「目が白っぽく見える」「歩き方に変化がある」など、少しでも気になる様子があれば、早めに動物病院へご相談ください。ナガワ動物病院では、検査結果や日常生活の状況を踏まえながら、その子にとって無理のない治療方針を一緒に考えていきます。

(最終更新日:2026年1月22日)

 

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大型犬が、食後に突然そわそわし始め、おなかが張ってくる――
そんな様子が見られたとき、一刻の猶予も許されない病気が「胃捻転(GDV)」です。

胃捻転は進行が非常に早く、発症から数時間で命に関わる状態に陥ることもあります。しかし一方で、早期に発見し、適切な外科治療を行うことができれば、回復して元の生活に戻れる可能性がある病気でもあります。

今回は、犬の胃捻転がなぜ一刻を争う緊急性の高い病気なのかをはじめ、飼い主様が気づきやすい初期のサイン、実際に行われる手術の内容や術後の生存率、そして再発を防ぐために重要となる胃固定術について、詳しく解説します。

 

犬の胃捻転(GDV)とは|なぜ「様子見」ができないのか

胃捻転(GDV:胃拡張捻転症候群)は、胃がガスや内容物で膨らみ、ねじれてしまうことで発症します。この病気で特に重要なのは「命に関わること」と「短時間で急激に悪化すること」です。

胃がねじれることで、体の中では次のような深刻な変化が連鎖的に起こります。

血流障害
胃がねじれる際に太い血管も巻き込まれ、全身の血流が低下します。

ショック状態
血流障害によってショックを引き起こし、体温や血圧の低下、呼吸の乱れ、心拍数の増加などがみられます。進行すると命に関わる危険な状態です。

胃壁の壊死・腹膜炎
胃の血流が滞ったままになると胃壁が壊死し、さらに進行すると胃に穴が開いて腹膜炎を引き起こすこともあります。

こうした変化は一気に進行するため、数時間前まで元気だった犬が、短時間で命の危険にさらされることがあります。これが胃捻転の最大の怖さとも言えます。

起こりやすいタイミング・犬の特徴

胃捻転は、次のような条件で起こりやすいことが知られています。

食後・大量の飲水後
一気食い・一気飲みのあとに動き回る習慣がある場合は注意が必要です。

大型犬・胸の深い体型の犬
グレート・デーンなど、胸が深い大型犬種で発症しやすい傾向があります。

「少し休めば落ち着くかも」と様子を見ている間に、全身状態が急激に悪化してしまうことがあります。胃捻転は“経過観察”ができない病気であり、早期発見と迅速な対応が命を左右します。

診断と初期対応|レントゲンと緊急整復手術

飼い主様が気づきやすいサインとして、次のような症状が挙げられます。

急に吐く
吐こうとしているのに吐けない
食欲が急になくなる
おなかが張る・膨れる(特に胃のあたり)

これらの症状が見られた場合、迷わず動物病院を受診することが重要です。

診断と初期対応の流れ

胃捻転が疑われる場合、レントゲン検査で胃の位置やねじれを確認します。診断がついた時点で、すでに緊急対応が必要な状態です。

まず行われるのが、

・食道から管を入れる
・皮膚の上から針を刺す

といった方法による胃内ガスの減圧処置です。

これにより胃の膨張を抑え、ショック症状を一時的に安定させます。同時に輸液治療を行い、血圧低下や循環不全を防ぎます。

胃捻転の手術と生存率|“治る”可能性はある?

胃捻転の根本治療は、ねじれた胃を元の位置に戻す「整復手術」です。

手術ではおなかを開けて、胃を正しい位置に戻しながら、胃壁に壊死がないか、切除が必要な部分がないかを確認します。状態によっては、壊死した胃の一部を切除することもあります。

発症初期で状態が軽く、減圧処置のみでねじれが解除されるケースもまれにありますが、多くの場合は手術が必要になります。

生存率に影響するポイント

「胃捻転=助からない病気」という印象を持たれることもありますが、早期に手術が行えた場合、多くの犬が回復しています。

一方で、以下の条件が重なると予後に影響します。

発症から来院までに時間がかかっている
胃壁に壊死が起きている
重度のショック状態に陥っている

そのため、早期発見・早期治療が何より重要です。

胃固定術とは|再発率を大きく下げる重要な処置

胃捻転の手術では、整復手術とあわせて「胃固定術」を行うことが非常に重要です。

胃固定術の目的

胃固定術とは、胃の一部を腹壁に縫い付け、再びねじれないように固定する処置です。
整復手術のみでは再発リスクが高く、ある報告では次のような大きな差が示されています。

減圧処置+整復手術のみ再発率 75.8%
胃固定術を併用再発率 6.6%

予防的胃固定という選択肢

胃捻転を起こしやすい超大型犬・好発犬種では、発症前に胃固定術を行う「予防的胃固定」も選択肢の一つです。多くの場合、避妊・去勢手術と同時に実施されます。

まとめ|早期判断と胃固定術が、命とその後の生活を守る

胃捻転は、発症すると一刻を争う対応が求められる緊急疾患です。しかし同時に、適切なタイミングで治療が行われれば、助かる可能性のある病気でもあります。

また、ご家庭でのちょっとした工夫が発症リスクを下げる助けになります。食事を1日2回以上に分けることや、一気食いを防ぐこと、食後すぐの激しい運動を控えることは、日常の中で無理なく取り入れやすい予防策です。

「おなかが張っている」「吐きたそうなのに吐けない」といった様子が見られた場合は、胃捻転を疑い、できるだけ早く動物病院に相談することが、愛犬の命とその後の生活を守る大切な一歩になります。

 

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<参考文献>
Andrea Meyer-Lindenberg DVM, Antina Harder DVM, Michael Fehr DVM, Dirk Lüerssen DVM, and Leo Brunnberg DVM, PhD. “Treatment of gastric dilatation-volvulus and a rapid method for prevention of relapse in dogs: 134 cases (1988–1991) in: Journal of the American Veterinary Medical Association Volume 203 Issue 9 (1993)”. AVMA Publications.  https://avmajournals.avma.org/view/journals/javma/203/9/javma.1993.203.09.1303.xml  (参照 2025/12/25)

犬や猫と暮らしていると、肛門腺(肛門嚢)のニオイや汚れが気になった経験がある方は多いのではないかと思います。

実は肛門腺のトラブルは“ニオイ”だけの問題ではなく、炎症・感染・破裂・腫瘍など、放置すると深刻な状態に進行することもあります。早い段階で気づき、適切な治療につなげることで、おしりの不快感や痛みから解放し、より快適に過ごせるようになります。

今回は、肛門腺のトラブルを根本的に改善する治療法として「肛門嚢摘出術」を中心に、当院での考え方をご紹介します。

 

肛門腺の役割と犬・猫で起きやすいトラブル

まずは、肛門腺(肛門嚢)がどんな働きをしているのかを簡単にご説明します。

肛門腺は、強いニオイを持つ分泌物をつくり、それを肛門嚢(肛門の左右4時・8時方向にある袋状の器官)にためる仕組みになっています。健康な状態であれば、この分泌物は便と一緒に自然に排出されるため、特別なケアは必要ありません。

しかし、分泌物がうまく排出できない状態が続くと、次のようなトラブルが起きやすくなります。

肛門嚢炎:肛門嚢が炎症を起こし、腫れや痛みが出る状態
肛門嚢破裂:肛門周辺の皮膚に穴があき、膿や血が出ることもある重度の状態
肛門嚢肥大(とくに猫に多い):肛門嚢が硬く腫れ、触ると嫌がる
肛門嚢の腫瘍:まれに悪性腫瘍が見つかることもあり、早期発見が重要

こんなサインは要注意

次のような様子がみられるときは、肛門嚢の中で炎症や肥大、破裂の前兆などが起きているおそれがあります。

強いニオイがする
お尻を触ると怒る/嫌がる
お尻をしきりに舐める
床にお尻をこすりつける
絞ってもすぐに再発する

これらが続く場合、一度受診を検討していただくのが安心です。

保存療法で改善するケース・改善しないケース

肛門腺のトラブルは、初期であれば負担の少ない保存療法で改善が期待できます。たとえば、次のような治療が一般的です。

肛門腺の圧迫排出(肛門腺絞り):たまった分泌物を外に出して炎症を落ち着かせます
抗生剤・消炎剤の投与:細菌感染や炎症が強い場合に使用します
洗浄:肛門嚢内に汚れや膿が溜まっている際に行います

ただし、保存療法だけでは改善が難しいケースもあります。次のような場合は、炎症が深く進んでいたり、別の病気が隠れているおそれがあります。

何度も再発を繰り返す
肛門嚢が破裂している(出血・膿・穴あき)
肛門の周りがしこりのように固い
絞ると強い痛みを示す
肛門腺を絞ってもニオイが取れない

この段階まで進むと、炎症を消してもまたすぐ同じトラブルが起こりやすく、生活の質が大きく低下してしまいます。お尻を気にして眠れなかったり、触れられるだけで痛がったりと、飼い主様にとっても心配が尽きません。

慢性的な肛門腺トラブルが続く場合、肛門嚢摘出術が根本的な解決策になることがあります。手術によってその後の再発リスクを抑えることができ、長い目で見てその子の負担を減らすことにつながります。

肛門嚢摘出術とは?メリット・リスクについて

慢性的に肛門腺のトラブルを繰り返す場合、肛門嚢そのものが再発の原因になっていることがあります。肛門嚢摘出術は、その肛門嚢を丸ごと取り除くことで、根本からトラブルを解消するための手術です。

手術の流れ

流れのイメージは次のとおりです。

① 肛門嚢の位置と形を丁寧に確認する
肛門嚢から皮膚側へつながる小さな穴(開口部)を探し、正確な位置を把握します。

② 肛門嚢内部を確認し、周囲の組織を傷つけないように分離する
肛門嚢に注射器でシリコンを入れて膨らませ、どこまでが肛門嚢なのかを明確にしながら、周囲の組織から慎重に剝がしていきます。

③ 肛門嚢を摘出する
肛門嚢をつなぐ管ごと取り除き、残った組織をきれいに整えます。

手術のメリット

肛門嚢摘出術には、次のような明確なメリットがあります。

再発しない
痛み・炎症・ニオイのトラブルから解放される
頻繁な肛門腺絞りや投薬から卒業できる

長い目で見たときに、その子の快適な生活につながる大きなメリットがあります。

注意しておきたいリスク

一方で手術にはリスクもあります。肛門嚢摘出術では、とくに次の点に注意が必要です。

排便時の違和感を覚えることがある(術後一時的)
肛門括約筋(便を我慢する筋肉)に影響して便漏れが起こりやすくなることがある

ただし多くの場合、これらの症状は術後の経過とともに軽快します。そのため、術後ケアや経過観察がとても大切です。

術後のケアについて

術後しばらくは、次のようなケアが必要になります。

傷口を舐めないようにエリザベスカラーを着用
排便時の痛みがある場合は鎮痛薬を使用
傷口の赤み・腫れがないか毎日チェック
下痢をしづらい食事に変える

無理をさせず、ゆっくり回復していけるようにサポートすることがポイントです。

当院の治療方針

ナガワ動物病院では「本当にその子にとって手術が最適かどうか」を見きわめ、次のような要素を総合的に判断して、治療方針を丁寧にご提案します。

・痛みの程度
・再発の頻度
・日常生活への影響
・他の病気の有無

「どうしたらいいか迷う」「手術は不安…」という場合も、どうぞお気軽にご相談ください。飼い主様と一緒に、その子のための最適解を考えてまいります。

まとめ

肛門腺の腫れや痛み、強いニオイは比較的よくあるお悩みですが、繰り返す・悪化する・破裂するケースでは、愛犬・愛猫の生活の質に大きな影響が出てしまいます。

当院では、保存療法から肛門嚢摘出術まで幅広く対応し、症状の原因や再発リスクを見きわめながら、その子に合った治療をご提案しています。気になるサインが続くときは、どうぞお早めにご相談ください。

 

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「なんとなく元気がない」「最近、いつもより食欲が落ちている気がする」
愛猫のそんな小さな変化の裏に「腎臓結石」や「尿管閉塞」といった深刻な泌尿器疾患が隠れていることがあります。

猫の上部尿路(腎臓〜尿管)に起こるトラブルは、尿の出口で起きる膀胱炎や尿道閉塞と違い、症状が非常にわかりにくいことが特徴です。気づかないうちに進行し、腎臓が急激にダメージを受けてしまうと、命に関わるケースもあります。

今回は、腎臓結石と尿管閉塞の特徴、注意すべき症状、診断・治療、再発予防について詳しく解説します。

 

腎臓結石・尿管閉塞とは?膀胱結石との違い

尿路のトラブルと聞くと、膀胱炎や膀胱結石を思い浮かべる方が多いかと思います。しかし腎臓結石・尿管閉塞は、それより上流で起こる病気です。

腎臓結石
腎臓の中に石(結石)ができる病気です。
水分摂取量の不足やミネラルバランスの乱れ、体質などが複雑に関わると考えられています。

尿管閉塞
腎臓から膀胱へ尿を運ぶ細い管(尿管)に結石が詰まり、尿が流れなくなる状態です。
猫は尿管が特に細いため、ごく小さな結石でも閉塞を起こしやすいことが知られています。

気づきにくい理由

膀胱炎や尿道閉塞では「トイレに頻繁に行く」「尿が出ない」など分かりやすい変化が出ますが、腎臓結石・尿管閉塞では尿意の変化が少なく、初期はほとんど症状が見られません
そのため、進行してから気付くケースが非常に多いのが問題点です。

また、腎臓は左右で2つあるため、片側の尿管が詰まっても表面上は普通に過ごしてしまうことがあります。しかし、残っている腎臓に負担がかかり続けると、将来的に慢性腎臓病を悪化させるリスクがあります。腎臓を守るうえでは、早期に正確な診断を受けることがとても大切です。

猫の慢性腎臓病について詳しく知りたい方はこちら

見逃せない症状|猫が見せる“危険のサイン”

腎臓結石・尿管閉塞でみられる症状には、次のようなものがあります。

血尿(薄いピンク色程度でも注意が必要)
嘔吐
食欲が落ちる
元気がない
背中やお腹を触られるのを嫌がる
排尿量が減っている

これらは比較的わかりやすいサインですが、実際にはもっと曖昧な変化しか出ないことの方が多い病気です。症状が軽そうに見える場合でも、内部では進行していることがあります。「いつもと違うかも…」という小さな変化は、受診の大切なサインになります。気になる点があれば早めにご相談ください。

また、腎臓や尿路のトラブルは症状が表れにくいこともあるため、定期的な健康診断(血液検査・エコー検査)で状態を確認しておくことが、予防や早期発見に役立ちます。

健康診断について詳しく知りたい方はこちら

こんな症状が出ていたら緊急サイン

以下に当てはまる場合は、体の内部で深刻なトラブルが起きているおそれがあります。
一刻を争う場合もあるため、少しでも当てはまる点があれば、すぐに動物病院にご相談ください。

嘔吐を何度も繰り返す
ぐったりして動かない
尿がほとんど出ていない

気づいたときの早期受診と、症状が出る前からの定期的な健康チェックが、愛猫を守るいちばんの近道です。

診断と治療の考え方|早期判断で腎臓を守る

腎臓結石や尿管閉塞は、進行すると短時間で腎臓に大きな負担をかけてしまう病気です。そのため「どこで」「どの程度」問題が起きているかを正確に見きわめることが、治療の第一歩になります。

ナガワ動物病院では、症状が軽く見える場合でも、腎臓にダメージを残さないために必要な検査を組み合わせて早期判断につなげています。

当院で行う主な検査

原因を立体的に把握するために、次のような検査を組み合わせて実施します。

血液検査:腎臓の働き・電解質のバランスを確認
エコー(超音波)検査:結石の位置や尿管の閉塞状況をリアルタイムで評価
レントゲン検査:結石の大きさ・数・位置を確認
尿検査:尿の状態や結晶(結石のもと)を調べる

なかでもエコー検査は最も重要といっても良い検査です。猫の尿管は非常に細いため、数ミリの変化を正確に読み取る高度な観察技術が必要になります。

当院では高性能エコー機器経験豊富な獣医師による読影技術により、早期発見・早期判断につながる精度の高い診断を行っています。

エコー検査について詳しく知りたい方はこちら

治療の基本方針

腎臓結石・尿管閉塞は「時間との勝負」という点が最大の特徴です。状態に応じて、次のような治療法から最適なものを選択します。

▼内科治療
結石が小さい、尿の通り道がまだ残っている、といった場合に実施します。

・点滴によるサポート
・痛みを抑える処置
・利尿剤で尿の流れを助ける

内科治療で改善する子もいますが、結石の位置・大きさ・閉塞の強さによっては、改善が難しい場合もあります。

なお、当院では人間の尿管結石の治療に用いる薬を用いて、治療を行っています。

▼外科治療(SUBシステム)
完全閉塞や重度の閉塞では緊急性が高く、外科的な処置が必要になる場合があります。

当院では腎臓と膀胱を細いチューブでつなぎ、尿管を迂回させて尿を流す 「SUBシステム(サブシステム)」 を採用することもあります。

・再閉塞しにくい
・腎臓の働きを守りやすい
・猫の尿管閉塞治療として近年広く用いられている

といった特徴があり、状態に応じて適切に選択する術式です。

ご家庭でできる再発予防|“今日から始められる”ケア

腎臓結石や尿管閉塞は、一度良くなっても再発しやすい病気として知られています。だからこそ、ご家庭でのちょっとした工夫が大きな助けになります。

水分摂取の工夫

猫はもともと水をあまり飲まない動物のため、水分量を確保することが非常に重要です。

家の中に複数の水飲み場をつくる
流れる水が好きな子には、循環式給水器を活用
ウェットフードを取り入れて自然に水分アップ

「飲みそうな場所に置く」「器を素材違いで試す」など、小さな工夫でも違いが出ることがあります。

泌尿器ケア用フードの活用

泌尿器に配慮したフードには、結石の種類に応じてミネラルバランスを整える工夫がされています。ただし、結石の種類によって適したフードは異なるため、選ぶ際は獣医師に相談していただくのが安心です。

ストレス管理(環境・多頭飼育の工夫)

ストレスは飲水量や排尿習慣に影響し、再発リスクを高めることがあります。

一人で落ち着けるスペースを用意
トイレや寝床はいつも清潔に保つ
多頭飼育の場合は、生活スペースを区切って安心できる環境づくり

「その子が無理なく過ごせる環境かどうか」を見直すだけでも、負担を軽くできることがあります。

肥満防止も大切なポイント

特にシュウ酸カルシウム結石が原因だった場合は、肥満が再発の引き金になることがあります。体型に合った食事量を保ったり、キャットタワーやおもちゃで自然に運動できる工夫をするなど、無理のない範囲で少しずつ生活に取り入れてみましょう。

定期健診でのフォローアップ

腎臓は「静かに悪化する臓器」といわれ、見た目や行動の変化が出にくいため「変化が出る前の受診」がとても重要です。エコー検査や血液検査で定期的に状態を確認することで、再発の早期発見や、将来的な腎臓病の予防にもつながります。

まとめ

猫の腎臓結石や尿管閉塞は症状がわかりにくく、気づいたときには進行していることも少なくありません。小さな違和感でも、腎臓では深刻なトラブルが進んでいることがあります。

ナガワ動物病院では、高性能エコーによる精密検査から、SUBシステムを含む外科治療、再発予防まで幅広く対応しています。気になることがあれば、どうぞお早めにご相談ください。

 

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「さっきまであったおもちゃの一部がない」「落ちていたものを口に入れたのを見た」
そんな瞬間は、焦りで頭が真っ白になってしまうかもしれません。

犬や猫の異物誤飲は時間との勝負です。どれだけ早く正しい対応をとれるかが、命を守る大きなポイントになります。

今回は「異物を飲み込んだかもしれない」と気づいたその瞬間から、受診までに飼い主様ができる初動対応を中心にご紹介します。

 

異物誤飲に気づいたら、まず確認すべき3つのこと

まずは深呼吸をして落ち着き、次の3点を確認しましょう。

何を食べたか
素材(木、金属、ゴム、骨など)や形(針状、球状、ひも状など)、大きさをできるだけ正確に把握します。

いつ食べたか(経過時間)
誤飲から時間が経っていない場合は、異物がまだ胃の中にある可能性があります。この段階であれば、催吐処置(吐かせる処置)ができることもあります。

今の様子(症状の有無)
嘔吐や元気消失、腹痛が見られることもありますが、症状がなくても安全とは限りません。

これらの情報は、動物病院で診断や治療方針を決めるうえで非常に重要です。

たとえ「見ていないけれど怪しい」という場合でも、周囲の状況や残骸などから推測できることがあります。まずは慌てずに状況を整理し、すぐに動物病院へ相談できるように準備しましょう。

絶対にしてはいけない自己判断の対処法

目の前で愛犬や愛猫が異物を飲み込んでしまうと「どうにかして助けなければ」と焦ってしまうのは当然のことです。しかし、焦りから取ってしまった行動が、かえって危険を招くこともあります。

たとえば、次のような対処は一見効果がありそうに思えても、実際には命を危険にさらすおそれがあります。

塩を飲ませる
電解質バランスが崩れ、中毒を起こすおそれがあります。

水や牛乳を飲ませる
異物によっては逆効果になり、胃の中で動いてしまうこともあります。

無理に吐かせる
串や針などの鋭いものは消化管を傷つけ、電池などは腐食して穴が開くおそれがあります。

指を口に入れて取り出そうとする
飼い主様がケガをしたり、動物が興奮して暴れてしまう危険があります。

元気そうだから様子を見る
異物誤飲は時間との勝負です。症状がないように見えても、体の中では進行している場合があります。

ネット上の情報や知人の経験談の中には、危険な方法が混ざっていることもあります。まずは動物病院へご連絡ください。病院スタッフが状況をお聞きし、最善の方法をご案内します。

特に注意が必要な3つのケース

異物誤飲は基本的にすぐに動物病院への連絡・受診が必要ですが、次のような場合は、特に緊急性が高くなります。

中毒性のあるもの・尖ったもの・ひも状のものを飲み込んだ
電池や薬、洗剤などの化学物質、串や針、糸や紐などは特に危険です。内部で炎症や損傷を起こし、命に関わることもあります。

呼吸が苦しそう・ぐったりしている
喉や食道に異物が詰まっている、あるいは中毒症状が進行しているおそれがあります。少しの遅れが命取りになることもあります。

嘔吐を繰り返す・お腹を痛がる
異物が胃や腸に詰まっているおそれがあります。時間の経過とともに腸閉塞や壊死に進行することもあります。

このようなサインが見られる場合はもちろん、たとえ症状が出ていなくても誤飲の可能性があれば、すぐにご相談ください。

動物たちは痛みや苦しさを隠してしまうことが多く、外からは判断できない危険が潜んでいます。迷ったときこそ「念のため」が大切です。

動物病院に連絡するとき、伝えるべき情報

異物誤飲が疑われるときは、来院前にお電話などでできるだけ早く病院へ連絡することが大切です。その際、次の情報を整理しておくと、病院側での緊急度の判断や受診準備がスムーズになります。

電話で伝えるポイント

犬または猫の種類
年齢・体重
何を・いつ・どのくらい食べたか
現在の症状(嘔吐、ぐったりしている、呼吸の様子など)
かかりつけかどうか(初診の場合はその旨も)

もしも慌てていてご説明が難しいときも「異物を食べたかもしれない」とだけお伝えいただければ、スタッフが順を追って必要な情報をお伺いしますので、ご安心ください。

また、誤飲した可能性のあるものの写真や、現在の様子を撮影した動画があれば、来院時に見せていただくと診断の助けになります。加えて、誤食した可能性のある物と同じ物が手元にあれば、そちらをお持ちください。

安全性と確実性を重視した対応

異物誤飲の治療は、誤飲したものの種類・大きさ・経過時間によって対応が大きく異なります。そのため、自己判断で吐かせたり、水や食べ物を与えたりするのは避け、まずは獣医師の指示に従ってください。

ナガワ動物病院では、誤飲の種類や位置を慎重に見極めたうえで、安全性と確実性を重視しながら催吐処置を行っています。経験豊富な獣医師が複数の方法を状況に応じて選択し、動物への負担を最小限に抑えた対応を心がけています。

さらに当院では、異物の有無や位置・大きさを正確に把握するために、エコー検査を積極的に活用しています。最新の検査機器高い読影技術により、見落としのない精密な画像診断を行っています。その結果をもとに、催吐処置・内視鏡処置・外科手術など、状態に合わせて最適な治療方針をご提案します。

当院の異物誤飲の症例はこちらから

異物誤飲を繰り返さないために、今日からできる予防習慣

異物誤飲は、一度経験した子ほど繰り返しやすいという傾向があります。好奇心が旺盛だったり、食べることが大好きな性格の子では、ちょっとした油断が再発につながることもあるので注意が必要です。

ご家庭で今日からできる予防ポイント

日常の中で「気づいたときにできる小さな工夫」を積み重ねることが、誤飲事故の防止につながります。

床に物を置かない・使ったものは片づける
床に落ちている小物やティッシュなど、犬や猫にとっては「おもちゃ」に見えることもあります。

おもちゃの劣化を定期的にチェックする
壊れかけたおもちゃの破片を飲み込んでしまうケースも少なくありません。遊んだあとは破損がないか確認してあげましょう。

ゴミ箱には必ずフタをつける
においのするものに惹かれてゴミ箱をあさってしまうことがあります。キッチンやリビングのゴミ箱はフタ付きのものがおすすめです。

留守番時は安心できるスペースで過ごさせる
誤飲事故は飼い主様の目が届かないときに起こりがちです。お留守番の際は、危険なものが届かないサークルや部屋で過ごさせましょう。

日常のちょっとした工夫で「まさか」の事故はぐっと減らせます。

ナガワ動物病院では、誤飲の治療だけでなく、再発防止のための生活アドバイスも行っています。一度でも誤飲の経験がある場合は、どんな場面で注意すべきか、ぜひお気軽にご相談ください。

まとめ

犬や猫の異物誤飲は「気づいた瞬間の行動」がその後の経過を大きく左右する緊急事態です。目立った症状がなくても体の中では進行していることがあるため、すぐにご連絡ください。

自己判断での様子見や、ネット上の民間療法を試すのはとても危険です。まずは動物病院に相談し、専門的な判断を仰ぐことが、愛犬・愛猫を守るいちばんの近道です。

ナガワ動物病院では、催吐処置・内視鏡・外科手術など、異物誤飲への幅広い対応体制を整えています。また、エコー検査などの画像診断を活用し、安全性と確実性を重視した治療を行っています。誤飲の可能性に気づいたら、できるだけ早くご相談ください。

 

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「最近、愛犬や愛猫の目の様子がおかしい」「目を気にしている仕草が増えた」──そのような変化を感じたことはありませんか?

目の病気は決して珍しいものではありませんが「もし見えなくなったら…」と不安になる飼い主様も多いのではないかと思います。犬や猫は、目の痛みや違和感を言葉で伝えることができません。だからこそ、日ごろの小さなサインに気づくことが大切です。

今回は、犬や猫の目の病気と、ナガワ動物病院で行っている検査・手術体制について詳しくご紹介します。

 

こんな症状、見逃していませんか?

目の異常があるとき、犬や猫は次のようなサインを見せることがあります。

目をしょぼしょぼさせる
涙や目やにが増える
目が白く濁っている
充血している
まばたきが多い
明るい場所を避ける
壁や家具にぶつかる

これらは「見えづらさ」や「痛み」を感じているサインです。
こうした変化は「気のせいかな」と見過ごされやすいものですが、実は目の病気の初期症状であることも少なくありません。

目の病気の中には進行が早いものもあり、放置すると視力の低下や失明につながるおそれがあります。早い段階で原因を突き止め、適切な治療を始めることが大切です。「いつもと少し違うかも」と感じたら、どうぞお早めにご相談ください。

目の病気にはどんなものがある?

犬や猫の目の病気にはさまざまな種類があり、原因や症状の出方もそれぞれ異なります。
ここでは、代表的な病気をいくつかご紹介します。

白内障
目の中のレンズ(水晶体)が白く濁り、見えにくくなる病気です。犬では糖尿病が関係していることもあります。

犬の白内障について詳しく知りたい方はこちら

緑内障
眼の中の圧力(眼圧)が高くなり、視神経を圧迫してしまう病気です。強い痛みを伴い、進行すると失明に至ることもあります。

角膜潰瘍
目の表面(角膜)が傷ついたり、深くえぐれてしまったりする病気です。軽い傷から重度の潰瘍までさまざまで、痛みが強く出ることがあります。

犬・猫の角膜潰瘍について詳しく知りたい方はこちら

ぶどう膜炎
目の中の血管が集まる層(ぶどう膜)に炎症が起こる病気です。猫では、猫伝染性腹膜炎(FIP)などが関係することもあります。

猫の猫伝染性腹膜炎(FIP)について詳しく知りたい方はこちら

ドライアイ(乾性角結膜炎)
涙の量や質が低下し、目の表面が乾燥する病気です。乾燥が続くと角膜に傷がつくおそれがあります。

網膜剥離
光を感じ取る膜(網膜)が剥がれてしまう病気です。高血圧などの全身疾患が原因となることもあります。

これらの病気では「見え方」や「痛み」の出方がそれぞれ異なります。

中でも緑内障や角膜潰瘍は進行が非常に早く、緊急性の高い病気です。目の病気は進行してからでは元の状態に戻すことが難しいケースも少なくありません。

「少し気になる」「なんとなく違和感がある」といった段階で受診することが、愛犬・愛猫の目を守る一番の近道です。

なぜ専門的な眼科検査が必要なの?

目の病気は、見た目だけでは正確な判断が難しいことが少なくありません。同じように「目が赤い」症状でも、炎症なのか、圧が高いのか、あるいは傷があるのか、原因によって治療法は大きく変わります。

そのため、専門的な検査機器を使って原因を正確に見極めることがとても大切です。当院では、次のような眼科検査を行っています。

眼圧測定:眼の中の圧力を測定し、緑内障などのリスクを調べます
スリットランプ検査:細い光を当て、角膜や水晶体などの状態を拡大して確認します
フルオレセイン染色:特殊な染色液を使い、角膜に傷がないかをチェックします
シルマー涙検査:試験紙で涙の量を測り、ドライアイの有無を確認します
眼底カメラ:網膜剥離、網膜変性、視神経炎などの診断に用いられます

これらの検査は痛みを伴わず、短時間で実施できるものばかりです。「目に器具を当てるのは怖い…」と心配される飼い主様もいらっしゃいますが、動物たちの負担はごくわずかで、麻酔を必要としないケースがほとんどです。

通常の診察だけでは分からないような小さな異常を早期に見つけられることが、ナガワ動物病院の大きな強みです。気になるサインがあるときは、無理に様子を見ようとせずに、ぜひ一度ご相談ください。

ナガワ動物病院の眼科治療・手術体制

当院では、点眼治療などの内科的なケアから、外科手術まで幅広い眼科診療に対応しています。目の病気は、繊細で専門性が求められる分野です。そのため当院では、設備と技術の両面から安心して治療を受けていただける体制を整えています。

内科治療から外科手術まで幅広く対応

初期段階の白内障や軽度の炎症では、点眼薬や内服薬を用いた内科治療を行います。症状の進行度や原因を見極めながら、専門的な知識に基づいて最適な治療法をご提案しています。

より高度な治療が必要な場合には、以下のような外科手術にも対応しています。

眼球摘出術:重度の緑内障や外傷などで痛みを取り除くための手術
角膜潰瘍手術:深い角膜の傷を修復する手術
水晶体摘出術:白内障などで濁った水晶体を取り除く手術
眼瞼内反手術:まぶたが内側にめくれ、まつげが眼球を刺激する状態を改善する手術
瞬膜フラップ:角膜の修復を助けるために瞬膜を一時的に縫い合わせる処置

これらの手術は、眼科専門の顕微鏡を使って細かな構造をしっかり確認しながら行うため、精密で安全な処置が可能です。眼科診療・手術の経験が豊富な獣医師が、一頭一頭の状態に合わせた丁寧な対応を心がけています。

安心して治療を受けていただくために

治療中は、患部を守るために病院で指定したエリザベスカラーを必ず着用していただくようにお願いしています。

市販の柔らかい素材のものは快適に見える一方で、目をしっかり保護できずに再発や悪化につながることもあります。治療を成功させるためにも、正しいケアの継続がとても大切です。

ナガワ動物病院では、設備・技術・経験のすべてを活かし、飼い主様と一緒に「その子にとって一番良い方法」を考えながら治療を進めていきます。目のトラブルでお困りの際は、どうぞ安心してご相談ください。

まとめ

犬や猫の目の異常は身近にあるトラブルです。「少し赤い」「しょぼしょぼしている」といったわずかな変化の中に、早めに気づけるサインが隠れていることもあります。

当院では、点眼治療から外科手術まで幅広い眼科診療に対応し、眼科専用の顕微鏡をはじめとした設備と、経験豊富な獣医師による丁寧な診療体制を整えています。

目の病気は進行が早いものも多く、早期発見・早期治療がとても大切です。「何かおかしいかも」と感じたときは、どうぞお気軽にご相談ください。

 

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「椎間板ヘルニア」と聞くと「腰が痛くなる病気」というイメージを持つ方が多いかもしれません。ですが実は首にも起こることがあり、これを「頸部椎間板ヘルニア」と呼びます。

首に強い痛みを伴う病気ですが、犬は本能的に痛みを隠そうとすることがあるため、ご家庭では気づきにくいのが特徴です。

今回は、犬の頸部椎間板ヘルニアについて基本的な知識と、当院でご提案できる治療法についてご紹介します。

 

犬の頸部椎間板ヘルニアとは?

背骨は小さな骨(椎骨)が連なってできています。その間にある椎間板はクッションのような役割を持ち、体を動かすときの衝撃を吸収して、背骨の中を通る大切な神経(脊髄)を守っています。

椎間板ヘルニアとは、この椎間板の一部が変性して外に飛び出し、脊髄を圧迫してしまう病気です。これが首で起こった場合を「頸部椎間板ヘルニア」と呼び、強い首の痛みや神経のトラブル(足のふらつきや麻痺など)につながることがあります。

「椎間板ヘルニア=腰の病気」と思われがちですが、首でも起こりうることは意外と知られていません。そのため発見が遅れてしまうケースもあります。早期に気づくためには「首にも起こりうる」ということを知っておくことがとても大切です。

また、この病気はミニチュア・ダックスフンドフレンチ・ブルドッグなどの犬種で遺伝的に発症しやすいことが知られています。比較的若いうちに出ることもあり、一方で大型犬でも加齢によって発症するケースもあります。犬種や年齢にかかわらず注意が必要な病気といえるでしょう。

犬の胸腰部椎間板ヘルニアについて詳しく知りたい方はこちら

見逃しやすい症状

頸部椎間板ヘルニアは、初期の症状が小さく見えるため見過ごされてしまうことがあります。ご家庭で気づける代表的なサインには次のようなものがあります。

頭を下げたまま上目遣いで見てくる
小刻みに震える
首を触ろうとすると嫌がって「ウー」とうなる
首を動かしにくい様子で、食事や水を飲みにくそうにする

こうした行動は首の痛みによるものですが、腰や肩の不調と勘違いされたり、環軸亜脱臼など首の骨の異常や外傷と紛らわしいこともあります。

初めは首の痛みだけでも、病気が進むと足の麻痺や歩行のしづらさにつながることがあります。早い段階で気づいていただくことが、愛犬のつらさを減らし、重症化を防ぐ大切なポイントです。

診断と治療の選択肢

頸部椎間板ヘルニアは、症状の現れ方が犬によって異なるため、正確に診断するには動物病院での詳しい検査が欠かせません。

診断の流れ

診察は次のような流れで行われます。

問診:普段の生活の様子や症状の出方をうかがいます
身体検査:体を触って、痛みや違和感の有無を確認します
神経学的検査:どの部位に異常があるか、進行度合いを判断します
画像検査:レントゲン検査を行い、必要に応じてCT・MRIなどでさらに詳しく調べます

これらの検査結果を組み合わせて、発症部位や重症度を総合的に見極めます。

治療について

頸部椎間板ヘルニアは、症状の重さに応じて「ステージ」という段階に分けて考えることがあります。これは専門的な評価方法ですが、簡単にいうと「どのくらい症状が進んでいるか」を判断する目安です。

▼ステージ1〜2(軽度)
首の痛みはあるものの歩行は可能な状態です。この段階では、安静に過ごすことと痛みを和らげる投薬が基本になります。少なくとも4週間以上の安静が必要です。

▼ステージ3(重度)
麻痺や歩行困難が見られる段階です。この場合は外科手術を検討します。手術では飛び出した椎間板を取り除き、必要に応じて背骨に小さな穴を開けて脊髄への圧迫を和らげます。

このように、軽度であれば内科的な治療(安静+投薬)が中心、重度や再発例では外科的治療を考えるのが一般的な流れです。

ナガワ動物病院でできること

当院では、愛犬の状態に合わせて最適な治療法をご提案することを大切にしています。病気の進行度や生活の様子をふまえ、飼い主様と一緒に治療の方向性を考えていきます。

内科治療

ステージ2以下の比較的軽度な段階では、安静とお薬による治療を優先します。実際に、近年の研究ではこの段階では外科手術と内科治療の治療成績に大きな差がないと報告されています。まずは体への負担が少ない方法から取り組みます。

外科手術

内科治療で十分な改善が得られない場合や、強い痛み・麻痺がある場合には、提携病院と連携して外科手術をご紹介します。安全性に配慮しながら、適切なタイミングでご案内します。

再生医療(幹細胞治療)

炎症を抑えたり傷ついた組織の修復を助けたりする効果が期待される新しい治療法です。当院では幹細胞療法に対応できる環境を整えており、必要に応じてご提案できるのも強みのひとつです。

このように、当院では内科から外科、さらには再生医療まで幅広い選択肢をご用意しています。飼い主様とじっくり相談しながら、愛犬が少しでも快適に過ごせるように柔軟に治療方針を決めていきます。

まとめ

頸部椎間板ヘルニアは、腰のヘルニアと比べると認知度が低いため、気づかれにくく発見が遅れがちです。しかし進行すると強い痛みや麻痺を引き起こすこともあり、早期の発見と治療がとても大切です。

「最近首を気にしている」「動きがぎこちない」など気になる変化があれば、どうぞお気軽に当院へご相談ください。

 

<参考文献>
European PMC, Comparison of surgical and conservative treatment of hydrated nucleus pulposus extrusion in dogs. (https://europepmc.org/article/MED/30267615、最終閲覧日:2025年9月29日)

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「愛犬が耳をしきりにかいている」「愛猫の耳からにおいがする」といった耳のトラブルは珍しいことではなく、その多くは外耳炎によって起こります。実際に外耳炎は犬に非常に多い病気で、ペット保険の請求ランキングでも常に上位に入るほどです。

外耳炎は一度治っても再発を繰り返しやすく、放っておくと炎症が広がって治りにくくなることもあります。通常は点耳薬や内服薬で治療しますが、慢性化してしまった場合には「全耳道切除術」という手術が選択肢になることがあります。

今回は、外耳炎が繰り返される理由やその影響、そして全耳道切除術について詳しく解説します。

 

外耳炎とは?繰り返しやすい理由

犬や猫の耳は、私たち人間と同じようにいくつかの部位でできています。外から見える耳の部分を「耳介」、その奥に続く耳のトンネルを「外耳道」、さらに奥に鼓膜──という構造になっています。

外耳炎とは、この外耳道に炎症が起きてしまう病気のことです。原因はさまざまで、たとえば次のようなものが挙げられます。

・細菌やマラセチア(酵母菌)などの異常な増殖や感染
・耳ダニの寄生
・アレルギー体質(食物アレルギーや皮膚炎など)
・草の種や異物の侵入

といったものが知られています。犬でよくみられる印象がありますが、スコティッシュフォールドなど猫でも発症することがあるので注意が必要です。

さらに外耳炎には「繰り返しやすい」という特徴があります。

・耳が垂れていて蒸れやすい犬種や猫種では、耳の中が常に湿った状態になりやすい
・炎症が続くことで耳道の皮膚が厚くなり、通り道が狭くなってしまう

こうした要素が重なると「治ったと思ったのにまた再発する」という状況になりがちです。慢性化すると、耳のかゆみや痛みだけでなく、聞こえにくさや日常生活の質の低下にもつながるため、早めの対処が大切です。

犬の外耳炎について詳しく知りたい方はこちら

繰り返す外耳炎がもたらす影響

犬や猫にとっては、外耳炎が続くことで毎日の生活そのものが不快でつらいものになってしまいます。

強いかゆみや痛みで耳をかいたり頭を振ったりする
常に違和感があり、落ち着かなくなる
耳が聞こえにくくなる
重症化すると鼓膜が破れ、中耳炎に進行することもある

また、飼い主様にとっても負担は小さくありません。「治療を続けてもなかなか良くならない」という不安や、繰り返す通院による時間的な負担、長引く治療費による経済的な負担が積み重なっていきます。

このように、繰り返す外耳炎は犬や猫にも飼い主様にも影響を及ぼす大きな問題です。改善が難しい場合には、次の治療選択肢を検討することが大切になります。

どんな時に手術を検討するべき?

外耳炎の多くは点耳薬や内服薬といった内科的な治療で改善が見込めます。ですが、中には薬だけでは治らないケースもあります。そのようなときには、手術という選択肢を検討することがあります。

たとえば…

・炎症が中耳や内耳にまで広がり、ふらつきやめまいなどの神経症状が出ている場合
・繰り返す炎症で耳道が厚くなり、薬が届かなくなってしまった場合
・耳道内に炎症性ポリープや腫瘍ができて、耳の通り道がふさがってしまっている場合

このようなときに「全耳道切除術(TECA)」という外科的な方法が治療の選択肢のひとつになるのです。

手術という選択肢|全耳道切除術(TECA)とは

全耳道切除術(TECA)は、耳道全体を取り除き、炎症や感染の原因そのものをなくしてしまう手術です。

全耳道切除術の流れ

手術の流れを簡単にご紹介します。

1. 耳の付け根の皮膚を切開し、耳道にアプローチできるようにします。
2. 周囲の組織や神経を守りながら、耳道全体を露出させます。
3. 炎症の原因となっている耳道部分を切除し、耳の形(耳介)は残したまま、皮膚ときれいにつなぎ合わせます。

耳の形(耳介)は残るため、見た目が大きく変わることはありません。炎症が中耳に及んでいる場合には、あわせて鼓室の処置を行うこともあります。

メリット

・感染や炎症の原因を根本から取り除ける
・薬では改善しなかったケースでも治療が期待できる
・痛みやかゆみから解放され、快適に過ごせるようになる

リスク

・顔面神経に影響が及び、一時的にまぶたや口元の動きが変化することがある
・被毛が耳の穴をふさいでしまうことがある
・鼓膜の処置を行うため、聴力に影響が出ることがある(ただし重度の外耳炎では、すでに聴力が低下しているケースも少なくありません)

全耳道切除術は「根治を目指せる治療」のひとつです。薬での改善が難しい場合でも、前向きに検討することで愛犬・愛猫に穏やかな毎日を取り戻してあげられる可能性があります。

ナガワ動物病院での手術以外のケア・選択肢について

「外耳炎=すぐに手術」というわけではありません。多くの場合、まずは点耳薬や内服薬などの内科的な治療で改善を目指していきます。実際、長く続く外耳炎でも、適切な治療を続けることでコントロールできるケースは少なくありません。

さらに必要に応じて、耳道内を詳しく確認できるオトスコープ(耳道内カメラ)を用いた処置を行うため、耳鼻科を専門とする医師をご紹介して治療にあたることもあります。

このように当院では、内科治療から外科手術まで幅広い治療オプションをご用意しています。大切なのは「その子にとってどの方法が一番良いか」を一緒に考えていくことです。状況に合わせた選択肢を丁寧にご提案しますので、安心してご相談ください。

まとめ

「外耳炎が治らない」「何度も繰り返す」というお悩みは決して珍しくありません。

犬や猫にとっても大きな負担となるため、ナガワ動物病院では内科治療から外科手術まで幅広い治療法に対応しています。なかでも、全耳道切除術(TECA)という根治を目指せる選択肢もご提案できるのは当院の強みのひとつです。

症状や状況に合わせて最適な方法を飼い主様と一緒に考え、安心して治療を受けていただけるように努めています。愛犬・愛猫の耳のトラブルでお困りの際は、どうぞお気軽にご相談ください。

 

<参考文献>
Richard G.Harvey, Gert ter Haar. 犬と猫の耳鼻咽喉疾患. 嶋田照雅 監訳. 2020. 緑書房.

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私たち人間と同じように、犬や猫も昔と比べて寿命が延びて長生きするようになりました。

その一方で、加齢に伴う病気も増えており、特に飼い主様を悩ませるもののひとつが「認知症」です。発症してしまうと完治は難しいものの、早い段階で気づき、適切なケアを取り入れることで進行をゆるやかにできる可能性があります。

今回は犬と猫の認知症について、見逃しやすい初期症状やケアの選択肢を詳しく解説します。

 

犬と猫にも認知症はある?

認知症とは、加齢によって脳の機能が低下し、記憶や行動に異常が出る状態を指します。
犬の場合は「認知機能不全症候群(CDS)」とも呼ばれ、特に10歳を超えるシニア犬に多くみられます。また猫も15歳前後から同様の症状が出やすいといわれていますが、発症年齢には個体差があるため、若い年齢でも注意が必要です。

見逃しやすい初期症状とよくある行動

認知症になると、次のような行動や変化がみられることがあります。

昼夜逆転(昼間に眠り、夜に活動的になる)
夜鳴きや無駄吠えが増える
同じ場所をぐるぐると徘徊する
トイレの失敗が増える
飼い主様を認識できなくなる
隅に頭を突っ込んだまま動かない

こうした変化は、飼い主様が「年のせいかな」と見過ごしてしまうことも少なくありません。気になるサインがあれば、セルフチェックで確認するのもひとつの方法です。

▼参考(外部サイト)
DISHAAチェック(犬の認知症セルフチェック)
 
このチェック方法では、犬や猫の行動をいくつかの項目に分けて点数化します。
たとえば、

☑ 方向感覚があるか(同じ場所で迷っていないか)
☑ 飼い主様や周りとの関わり方に変化がないか
☑ 昼と夜の生活リズムが乱れていないか
☑ トイレがうまくできているか
☑ これまで覚えていたことを忘れていないか
☑ 活動量が減っていないか
☑ 不安そうな様子が増えていないか

といった点をチェックしていきます。合計点が高いほど、認知症が疑われます。

ただし、同じような症状がホルモンの病気(たとえばクッシング症候群)などによって起こることもあります。ご家庭で判断するのは難しいため、気になる変化があれば早めに獣医師に相談していただくと安心です。

犬のクッシング症候群について詳しく知りたい方はこちら

治療・ケアの選択肢

犬や猫の認知症は一度発症すると完治が難しい病気ですが、進行をゆるやかにして、できるだけ快適な毎日を送れるようにする方法はいくつかあります。ここでは代表的な選択肢をご紹介します。

治療薬

症状の程度に応じて、抗酸化作用や血流を改善する作用を持つ薬が処方されることがあります。脳の働きをサポートすることで、行動の変化を落ち着かせる効果が期待できます。

サプリメントや療法食

近年は、栄養面から認知症をサポートする方法にも注目が集まっています。

・オメガ3脂肪酸(DHA・EPA):青魚などに含まれる成分で、脳の健康維持を助ける可能性があるといわれています。
・中鎖脂肪酸(MCTオイル):体に吸収されやすく、脳のエネルギー源として利用されることがあります。
・ビタミンE:抗酸化作用を持ち、細胞の老化を防ぐ働きが期待されています。

サプリメントや療法食としては「アンチノール(Vetz Petz社)」 や「 ニューロケア(ピュリナ社)」 なども広く知られています。いずれも脳の健康を支える栄養素を含んでおり、取り入れるケースもあります。

こうした栄養サポートは、脳の老化防止やダメージの軽減につながる可能性があると考えられています。

新しい研究の動向

最近では、脳が「ブドウ糖」ではなく「ケトン体」という物質を使ってエネルギーを得ることで、認知症の進行を抑えられるのではないか、という研究も進んでいます。特にMCTオイルを食事に加えると症状が改善する可能性があると報告されており、将来的には新しい治療の選択肢として期待されています。

生活の工夫

薬や食事に加えて、毎日の暮らしを整えてあげることも大切です。

・安心できる環境を整える段差をなくしたり滑りにくいマットを敷いたりすることで、転倒やケガの予防につながります。
・生活リズムを整える食事や就寝時間をできるだけ一定に保つことで、犬や猫が落ち着いて過ごしやすくなります。
・スキンシップを大切にする声をかけたり優しくなでたりするだけでも安心感につながり、不安を和らげる効果が期待できます。

こうした身近な工夫が、愛犬・愛猫が安心して過ごせる毎日を支えるカギとなります。

進行をゆるやかにするために

認知症は完治が難しい病気ですが、飼い主様の工夫やサポートで、その進行をできるだけゆるやかにすることが期待できます。日々の生活の中で取り入れられるポイントをご紹介します。

日常的な刺激を取り入れる
散歩や遊びの時間は、単なる運動だけでなく、脳の活性化にもつながるといわれています。無理のない範囲で、毎日少しずつ取り入れてあげましょう。

若いころからの習慣づけ
子犬や子猫の時期から社会化や運動の習慣を持たせてあげることは、将来の心と体の健康寿命を延ばす大切な準備にもなります。

定期健診で早めに気づく
定期的な健診は、ちょっとした異変を早めに見つけるための大切な機会です。早期発見・早期対応によって、結果的に愛犬・愛猫がおだやかに過ごせる時間を維持することにつながります。

犬と猫の健康診断について詳しく知りたい方はこちら

このように、毎日の小さな積み重ねと定期的なチェックが、認知症の進行を抑え、愛犬・愛猫と過ごすかけがえのない時間をより豊かにしてくれます。

まとめ

高齢の犬や猫に見られる行動の変化は、飼い主様にとって心配の種になるかもしれません。ですが、認知症は適切なサポートを取り入れることで、愛犬・愛猫の穏やかな日常を守ることにつながります。

「年齢のせいかな」と見過ごしてしまいそうな小さな変化も、実は大切なサインかもしれません。気になることがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。

 

<参考文献>
小澤真希子. 犬と猫の高齢性認知機能不全. 動物臨床医学. 29(3). 101-107. 2020.
Efficacy of a Therapeutic Diet on Dogs With Signs of Cognitive Dysfunction Syndrome (CDS): A Prospective Double Blinded Placebo Controlled Clinical Study – PMC

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愛犬のお腹や後ろ足の付け根に膨らみを見つけると「太ったのかな?」「腫瘍だったらどうしよう…」と不安になる飼い主様も多いのではないでしょうか。

実はその膨らみは「鼠経(そけい)ヘルニア」や「臍(さい)ヘルニア」かもしれません。どちらも先天的に起こることが多い病気で、腸が挟まって炎症を引き起こし、命に関わる状態に至ることもあります。

今回は、犬の鼠経ヘルニアと臍ヘルニアの違いや共通点、放置してはいけない理由、そしてナガワ動物病院で行っている治療方法について詳しく解説します。

 

鼠経ヘルニア・臍ヘルニアとは?

まず「ヘルニア」とは、本来であれば臓器を支えている壁に小さな穴(ヘルニア門)ができ、腸や脂肪などの組織が皮膚の下に飛び出してしまう状態をいいます。犬に見られるヘルニアにはいくつか種類がありますが、その中でも代表的なのが「鼠経ヘルニア」と「臍ヘルニア」です。

◆鼠経ヘルニア
後ろ足の付け根(鼠径部)にできるヘルニアです。
生まれつき(先天性)のものは若いオス犬で見られることが多く、加齢や出産などに伴って起こる(後天性)のものはメス犬に多いとされています。

◆臍ヘルニア
おへその部分(臍部)に発生するヘルニアで、いわゆる「でべそ」もその一つです。
先天的にお腹の壁がしっかり閉じきらなかったことが原因で起こるケースが多く、子犬でよく見られます。

鼠経ヘルニアと臍ヘルニアの違い

両者は一見似ているように思えますが、触ったときの感触やリスクに違いがあります。

・触ったときの感触や形状
どちらも柔らかいしこりのように感じられますが、鼠経ヘルニアは臍ヘルニアより深部にあり、膨らみが大きく感じられることがあります。

・リスクの違い
鼠経ヘルニアは、腸閉塞や臓器の壊死など深刻な合併症に発展しやすいといわれています。臍ヘルニアでも腸が入り込むと危険ですが、相対的にはリスクが低めです。

共通する特徴

鼠経ヘルニアと臍ヘルニアには、いくつかの共通点があります。
まず、どちらも皮膚のふくらみや柔らかいしこりとして飼い主様が気づくことが多い病気です。膨らみの大きさはケースによって異なり、小さな粒のように感じられることもあれば、指で押すと戻るような柔らかさを伴う場合もあります。

また、犬では先天的に生まれつき持っているケースが少なくありません。見た目には軽く見えることもありますが、自然に治ることはほとんどなく、専門的な診断が欠かせない点も両者に共通しています。

放置してはいけない理由

鼠経ヘルニアや臍ヘルニアは、見た目が小さな膨らみであっても油断はできません。そのままにしておくと、思わぬトラブルにつながることがあるため注意が必要です。

鼠経ヘルニアで起こり得ること

鼠経部に発生するヘルニアでは、飛び出した腸や脂肪が締めつけられることで血流が悪くなり、腸閉塞や壊死を引き起こす危険があります。特にメス犬では、まれに子宮が飛び出してしまうケースもあり、緊急性が高まることがあります。

臍ヘルニアで起こり得ること

おへその部分にできる臍ヘルニアでも、腸が巻き込まれたり感染を起こしたりするリスクがあります。膨らみが小さい場合でも、経過を見守りながら獣医師に相談しておくことが安心につながります。

膨らみが小さいうちは症状が目立たなくても、突然悪化することがあります。様子を見るのではなく、早めに獣医師へ相談することが大切です。

治療方法とナガワ動物病院の対応

鼠経ヘルニアや臍ヘルニアは、自然に治ることはほとんどありません。根本的な治療には外科手術でヘルニア門を閉鎖することが必要です。手術は全身麻酔のもとで行い、飛び出した組織をお腹に戻し、穴をふさぐことで再発を防ぎます。

・鼠経ヘルニア:オス犬に併発しやすい停留精巣の摘出と合わせて行うこともあります。
・臍ヘルニア:進行によるトラブルを避けるため、避妊手術と同時に整復するケースが多くあります。

犬と猫の避妊・去勢手術について詳しく知りたい方はこちら

手術のタイミング

「いつ手術をすべきか」は、犬の年齢や体調、ヘルニアの大きさ・状態によって異なります。成長段階にある若い犬では、早めの対応が望ましい場合もあれば、小さい臍ヘルニアや、手術リスクが高い高齢犬では、あえて経過観察を選ぶこともあります。
こうした判断には専門的な視点が欠かせないため、定期的なチェックを続けながら最適なタイミングを見極めていきます。

ナガワ動物病院での取り組み

当院では、外科手術の際に犬への負担をできるだけ減らすことを大切にしています。

術前検査でリスクをしっかり把握し、安全性に配慮した麻酔管理を実施
術後の回復を支えるため、痛み止めを含めた徹底した鎮痛ケア
避妊手術や停留精巣の摘出と同時に行い、麻酔の回数を減らす工夫

手術そのものだけでなく、前後のケアやライフステージに合わせた判断を含めて、安心していただける治療を心がけています。

まとめ

鼠経ヘルニアや臍ヘルニアは、一見すると小さな膨らみに見えることが多い病気です。しかし、放置すると腸閉塞や感染など思わぬトラブルにつながるおそれがあり、自然に治ることはほとんどありません。

根本的な治療には外科手術が必要ですが、そのタイミングや方法は犬の年齢・体調・ヘルニアの状態によって異なります。経過観察を選ぶケースも含めて、一頭ごとに最適な方針を決めていくことが大切です。

「うちの子の膨らみは大丈夫かな?」と少しでも不安に思ったら、どうぞお気軽にご相談ください。

 

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