「さっきまであったおもちゃの一部がない」「落ちていたものを口に入れたのを見た」
そんな瞬間は、焦りで頭が真っ白になってしまうかもしれません。

犬や猫の異物誤飲は時間との勝負です。どれだけ早く正しい対応をとれるかが、命を守る大きなポイントになります。

今回は「異物を飲み込んだかもしれない」と気づいたその瞬間から、受診までに飼い主様ができる初動対応を中心にご紹介します。

 

異物誤飲に気づいたら、まず確認すべき3つのこと

まずは深呼吸をして落ち着き、次の3点を確認しましょう。

何を食べたか
素材(木、金属、ゴム、骨など)や形(針状、球状、ひも状など)、大きさをできるだけ正確に把握します。

いつ食べたか(経過時間)
誤飲から時間が経っていない場合は、異物がまだ胃の中にある可能性があります。この段階であれば、催吐処置(吐かせる処置)ができることもあります。

今の様子(症状の有無)
嘔吐や元気消失、腹痛が見られることもありますが、症状がなくても安全とは限りません。

これらの情報は、動物病院で診断や治療方針を決めるうえで非常に重要です。

たとえ「見ていないけれど怪しい」という場合でも、周囲の状況や残骸などから推測できることがあります。まずは慌てずに状況を整理し、すぐに動物病院へ相談できるように準備しましょう。

絶対にしてはいけない自己判断の対処法

目の前で愛犬や愛猫が異物を飲み込んでしまうと「どうにかして助けなければ」と焦ってしまうのは当然のことです。しかし、焦りから取ってしまった行動が、かえって危険を招くこともあります。

たとえば、次のような対処は一見効果がありそうに思えても、実際には命を危険にさらすおそれがあります。

塩を飲ませる
電解質バランスが崩れ、中毒を起こすおそれがあります。

水や牛乳を飲ませる
異物によっては逆効果になり、胃の中で動いてしまうこともあります。

無理に吐かせる
串や針などの鋭いものは消化管を傷つけ、電池などは腐食して穴が開くおそれがあります。

指を口に入れて取り出そうとする
飼い主様がケガをしたり、動物が興奮して暴れてしまう危険があります。

元気そうだから様子を見る
異物誤飲は時間との勝負です。症状がないように見えても、体の中では進行している場合があります。

ネット上の情報や知人の経験談の中には、危険な方法が混ざっていることもあります。まずは動物病院へご連絡ください。病院スタッフが状況をお聞きし、最善の方法をご案内します。

特に注意が必要な3つのケース

異物誤飲は基本的にすぐに動物病院への連絡・受診が必要ですが、次のような場合は、特に緊急性が高くなります。

中毒性のあるもの・尖ったもの・ひも状のものを飲み込んだ
電池や薬、洗剤などの化学物質、串や針、糸や紐などは特に危険です。内部で炎症や損傷を起こし、命に関わることもあります。

呼吸が苦しそう・ぐったりしている
喉や食道に異物が詰まっている、あるいは中毒症状が進行しているおそれがあります。少しの遅れが命取りになることもあります。

嘔吐を繰り返す・お腹を痛がる
異物が胃や腸に詰まっているおそれがあります。時間の経過とともに腸閉塞や壊死に進行することもあります。

このようなサインが見られる場合はもちろん、たとえ症状が出ていなくても誤飲の可能性があれば、すぐにご相談ください。

動物たちは痛みや苦しさを隠してしまうことが多く、外からは判断できない危険が潜んでいます。迷ったときこそ「念のため」が大切です。

動物病院に連絡するとき、伝えるべき情報

異物誤飲が疑われるときは、来院前にお電話などでできるだけ早く病院へ連絡することが大切です。その際、次の情報を整理しておくと、病院側での緊急度の判断や受診準備がスムーズになります。

電話で伝えるポイント

犬または猫の種類
年齢・体重
何を・いつ・どのくらい食べたか
現在の症状(嘔吐、ぐったりしている、呼吸の様子など)
かかりつけかどうか(初診の場合はその旨も)

もしも慌てていてご説明が難しいときも「異物を食べたかもしれない」とだけお伝えいただければ、スタッフが順を追って必要な情報をお伺いしますので、ご安心ください。

また、誤飲した可能性のあるものの写真や、現在の様子を撮影した動画があれば、来院時に見せていただくと診断の助けになります。加えて、誤食した可能性のある物と同じ物が手元にあれば、そちらをお持ちください。

安全性と確実性を重視した対応

異物誤飲の治療は、誤飲したものの種類・大きさ・経過時間によって対応が大きく異なります。そのため、自己判断で吐かせたり、水や食べ物を与えたりするのは避け、まずは獣医師の指示に従ってください。

ナガワ動物病院では、誤飲の種類や位置を慎重に見極めたうえで、安全性と確実性を重視しながら催吐処置を行っています。経験豊富な獣医師が複数の方法を状況に応じて選択し、動物への負担を最小限に抑えた対応を心がけています。

さらに当院では、異物の有無や位置・大きさを正確に把握するために、エコー検査を積極的に活用しています。最新の検査機器高い読影技術により、見落としのない精密な画像診断を行っています。その結果をもとに、催吐処置・内視鏡処置・外科手術など、状態に合わせて最適な治療方針をご提案します。

当院の異物誤飲の症例はこちらから

異物誤飲を繰り返さないために、今日からできる予防習慣

異物誤飲は、一度経験した子ほど繰り返しやすいという傾向があります。好奇心が旺盛だったり、食べることが大好きな性格の子では、ちょっとした油断が再発につながることもあるので注意が必要です。

ご家庭で今日からできる予防ポイント

日常の中で「気づいたときにできる小さな工夫」を積み重ねることが、誤飲事故の防止につながります。

床に物を置かない・使ったものは片づける
床に落ちている小物やティッシュなど、犬や猫にとっては「おもちゃ」に見えることもあります。

おもちゃの劣化を定期的にチェックする
壊れかけたおもちゃの破片を飲み込んでしまうケースも少なくありません。遊んだあとは破損がないか確認してあげましょう。

ゴミ箱には必ずフタをつける
においのするものに惹かれてゴミ箱をあさってしまうことがあります。キッチンやリビングのゴミ箱はフタ付きのものがおすすめです。

留守番時は安心できるスペースで過ごさせる
誤飲事故は飼い主様の目が届かないときに起こりがちです。お留守番の際は、危険なものが届かないサークルや部屋で過ごさせましょう。

日常のちょっとした工夫で「まさか」の事故はぐっと減らせます。

ナガワ動物病院では、誤飲の治療だけでなく、再発防止のための生活アドバイスも行っています。一度でも誤飲の経験がある場合は、どんな場面で注意すべきか、ぜひお気軽にご相談ください。

まとめ

犬や猫の異物誤飲は「気づいた瞬間の行動」がその後の経過を大きく左右する緊急事態です。目立った症状がなくても体の中では進行していることがあるため、すぐにご連絡ください。

自己判断での様子見や、ネット上の民間療法を試すのはとても危険です。まずは動物病院に相談し、専門的な判断を仰ぐことが、愛犬・愛猫を守るいちばんの近道です。

ナガワ動物病院では、催吐処置・内視鏡・外科手術など、異物誤飲への幅広い対応体制を整えています。また、エコー検査などの画像診断を活用し、安全性と確実性を重視した治療を行っています。誤飲の可能性に気づいたら、できるだけ早くご相談ください。

 

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「最近、愛犬や愛猫の目の様子がおかしい」「目を気にしている仕草が増えた」──そのような変化を感じたことはありませんか?

目の病気は決して珍しいものではありませんが「もし見えなくなったら…」と不安になる飼い主様も多いのではないかと思います。犬や猫は、目の痛みや違和感を言葉で伝えることができません。だからこそ、日ごろの小さなサインに気づくことが大切です。

今回は、犬や猫の目の病気と、ナガワ動物病院で行っている検査・手術体制について詳しくご紹介します。

 

こんな症状、見逃していませんか?

目の異常があるとき、犬や猫は次のようなサインを見せることがあります。

目をしょぼしょぼさせる
涙や目やにが増える
目が白く濁っている
充血している
まばたきが多い
明るい場所を避ける
壁や家具にぶつかる

これらは「見えづらさ」や「痛み」を感じているサインです。
こうした変化は「気のせいかな」と見過ごされやすいものですが、実は目の病気の初期症状であることも少なくありません。

目の病気の中には進行が早いものもあり、放置すると視力の低下や失明につながるおそれがあります。早い段階で原因を突き止め、適切な治療を始めることが大切です。「いつもと少し違うかも」と感じたら、どうぞお早めにご相談ください。

目の病気にはどんなものがある?

犬や猫の目の病気にはさまざまな種類があり、原因や症状の出方もそれぞれ異なります。
ここでは、代表的な病気をいくつかご紹介します。

白内障
目の中のレンズ(水晶体)が白く濁り、見えにくくなる病気です。犬では糖尿病が関係していることもあります。

犬の白内障について詳しく知りたい方はこちら

緑内障
眼の中の圧力(眼圧)が高くなり、視神経を圧迫してしまう病気です。強い痛みを伴い、進行すると失明に至ることもあります。

角膜潰瘍
目の表面(角膜)が傷ついたり、深くえぐれてしまったりする病気です。軽い傷から重度の潰瘍までさまざまで、痛みが強く出ることがあります。

犬・猫の角膜潰瘍について詳しく知りたい方はこちら

ぶどう膜炎
目の中の血管が集まる層(ぶどう膜)に炎症が起こる病気です。猫では、猫伝染性腹膜炎(FIP)などが関係することもあります。

猫の猫伝染性腹膜炎(FIP)について詳しく知りたい方はこちら

ドライアイ(乾性角結膜炎)
涙の量や質が低下し、目の表面が乾燥する病気です。乾燥が続くと角膜に傷がつくおそれがあります。

網膜剥離
光を感じ取る膜(網膜)が剥がれてしまう病気です。高血圧などの全身疾患が原因となることもあります。

これらの病気では「見え方」や「痛み」の出方がそれぞれ異なります。

中でも緑内障や角膜潰瘍は進行が非常に早く、緊急性の高い病気です。目の病気は進行してからでは元の状態に戻すことが難しいケースも少なくありません。

「少し気になる」「なんとなく違和感がある」といった段階で受診することが、愛犬・愛猫の目を守る一番の近道です。

なぜ専門的な眼科検査が必要なの?

目の病気は、見た目だけでは正確な判断が難しいことが少なくありません。同じように「目が赤い」症状でも、炎症なのか、圧が高いのか、あるいは傷があるのか、原因によって治療法は大きく変わります。

そのため、専門的な検査機器を使って原因を正確に見極めることがとても大切です。当院では、次のような眼科検査を行っています。

眼圧測定:眼の中の圧力を測定し、緑内障などのリスクを調べます
スリットランプ検査:細い光を当て、角膜や水晶体などの状態を拡大して確認します
フルオレセイン染色:特殊な染色液を使い、角膜に傷がないかをチェックします
シルマー涙検査:試験紙で涙の量を測り、ドライアイの有無を確認します
眼底カメラ:網膜剥離、網膜変性、視神経炎などの診断に用いられます

これらの検査は痛みを伴わず、短時間で実施できるものばかりです。「目に器具を当てるのは怖い…」と心配される飼い主様もいらっしゃいますが、動物たちの負担はごくわずかで、麻酔を必要としないケースがほとんどです。

通常の診察だけでは分からないような小さな異常を早期に見つけられることが、ナガワ動物病院の大きな強みです。気になるサインがあるときは、無理に様子を見ようとせずに、ぜひ一度ご相談ください。

ナガワ動物病院の眼科治療・手術体制

当院では、点眼治療などの内科的なケアから、外科手術まで幅広い眼科診療に対応しています。目の病気は、繊細で専門性が求められる分野です。そのため当院では、設備と技術の両面から安心して治療を受けていただける体制を整えています。

内科治療から外科手術まで幅広く対応

初期段階の白内障や軽度の炎症では、点眼薬や内服薬を用いた内科治療を行います。症状の進行度や原因を見極めながら、専門的な知識に基づいて最適な治療法をご提案しています。

より高度な治療が必要な場合には、以下のような外科手術にも対応しています。

眼球摘出術:重度の緑内障や外傷などで痛みを取り除くための手術
角膜潰瘍手術:深い角膜の傷を修復する手術
水晶体摘出術:白内障などで濁った水晶体を取り除く手術
眼瞼内反手術:まぶたが内側にめくれ、まつげが眼球を刺激する状態を改善する手術
瞬膜フラップ:角膜の修復を助けるために瞬膜を一時的に縫い合わせる処置

これらの手術は、眼科専門の顕微鏡を使って細かな構造をしっかり確認しながら行うため、精密で安全な処置が可能です。眼科診療・手術の経験が豊富な獣医師が、一頭一頭の状態に合わせた丁寧な対応を心がけています。

安心して治療を受けていただくために

治療中は、患部を守るために病院で指定したエリザベスカラーを必ず着用していただくようにお願いしています。

市販の柔らかい素材のものは快適に見える一方で、目をしっかり保護できずに再発や悪化につながることもあります。治療を成功させるためにも、正しいケアの継続がとても大切です。

ナガワ動物病院では、設備・技術・経験のすべてを活かし、飼い主様と一緒に「その子にとって一番良い方法」を考えながら治療を進めていきます。目のトラブルでお困りの際は、どうぞ安心してご相談ください。

まとめ

犬や猫の目の異常は身近にあるトラブルです。「少し赤い」「しょぼしょぼしている」といったわずかな変化の中に、早めに気づけるサインが隠れていることもあります。

当院では、点眼治療から外科手術まで幅広い眼科診療に対応し、眼科専用の顕微鏡をはじめとした設備と、経験豊富な獣医師による丁寧な診療体制を整えています。

目の病気は進行が早いものも多く、早期発見・早期治療がとても大切です。「何かおかしいかも」と感じたときは、どうぞお気軽にご相談ください。

 

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「椎間板ヘルニア」と聞くと「腰が痛くなる病気」というイメージを持つ方が多いかもしれません。ですが実は首にも起こることがあり、これを「頸部椎間板ヘルニア」と呼びます。

首に強い痛みを伴う病気ですが、犬は本能的に痛みを隠そうとすることがあるため、ご家庭では気づきにくいのが特徴です。

今回は、犬の頸部椎間板ヘルニアについて基本的な知識と、当院でご提案できる治療法についてご紹介します。

 

犬の頸部椎間板ヘルニアとは?

背骨は小さな骨(椎骨)が連なってできています。その間にある椎間板はクッションのような役割を持ち、体を動かすときの衝撃を吸収して、背骨の中を通る大切な神経(脊髄)を守っています。

椎間板ヘルニアとは、この椎間板の一部が変性して外に飛び出し、脊髄を圧迫してしまう病気です。これが首で起こった場合を「頸部椎間板ヘルニア」と呼び、強い首の痛みや神経のトラブル(足のふらつきや麻痺など)につながることがあります。

「椎間板ヘルニア=腰の病気」と思われがちですが、首でも起こりうることは意外と知られていません。そのため発見が遅れてしまうケースもあります。早期に気づくためには「首にも起こりうる」ということを知っておくことがとても大切です。

また、この病気はミニチュア・ダックスフンドフレンチ・ブルドッグなどの犬種で遺伝的に発症しやすいことが知られています。比較的若いうちに出ることもあり、一方で大型犬でも加齢によって発症するケースもあります。犬種や年齢にかかわらず注意が必要な病気といえるでしょう。

犬の胸腰部椎間板ヘルニアについて詳しく知りたい方はこちら

見逃しやすい症状

頸部椎間板ヘルニアは、初期の症状が小さく見えるため見過ごされてしまうことがあります。ご家庭で気づける代表的なサインには次のようなものがあります。

頭を下げたまま上目遣いで見てくる
小刻みに震える
首を触ろうとすると嫌がって「ウー」とうなる
首を動かしにくい様子で、食事や水を飲みにくそうにする

こうした行動は首の痛みによるものですが、腰や肩の不調と勘違いされたり、環軸亜脱臼など首の骨の異常や外傷と紛らわしいこともあります。

初めは首の痛みだけでも、病気が進むと足の麻痺や歩行のしづらさにつながることがあります。早い段階で気づいていただくことが、愛犬のつらさを減らし、重症化を防ぐ大切なポイントです。

診断と治療の選択肢

頸部椎間板ヘルニアは、症状の現れ方が犬によって異なるため、正確に診断するには動物病院での詳しい検査が欠かせません。

診断の流れ

診察は次のような流れで行われます。

問診:普段の生活の様子や症状の出方をうかがいます
身体検査:体を触って、痛みや違和感の有無を確認します
神経学的検査:どの部位に異常があるか、進行度合いを判断します
画像検査:レントゲン検査を行い、必要に応じてCT・MRIなどでさらに詳しく調べます

これらの検査結果を組み合わせて、発症部位や重症度を総合的に見極めます。

治療について

頸部椎間板ヘルニアは、症状の重さに応じて「ステージ」という段階に分けて考えることがあります。これは専門的な評価方法ですが、簡単にいうと「どのくらい症状が進んでいるか」を判断する目安です。

▼ステージ1〜2(軽度)
首の痛みはあるものの歩行は可能な状態です。この段階では、安静に過ごすことと痛みを和らげる投薬が基本になります。少なくとも4週間以上の安静が必要です。

▼ステージ3(重度)
麻痺や歩行困難が見られる段階です。この場合は外科手術を検討します。手術では飛び出した椎間板を取り除き、必要に応じて背骨に小さな穴を開けて脊髄への圧迫を和らげます。

このように、軽度であれば内科的な治療(安静+投薬)が中心、重度や再発例では外科的治療を考えるのが一般的な流れです。

ナガワ動物病院でできること

当院では、愛犬の状態に合わせて最適な治療法をご提案することを大切にしています。病気の進行度や生活の様子をふまえ、飼い主様と一緒に治療の方向性を考えていきます。

内科治療

ステージ2以下の比較的軽度な段階では、安静とお薬による治療を優先します。実際に、近年の研究ではこの段階では外科手術と内科治療の治療成績に大きな差がないと報告されています。まずは体への負担が少ない方法から取り組みます。

外科手術

内科治療で十分な改善が得られない場合や、強い痛み・麻痺がある場合には、提携病院と連携して外科手術をご紹介します。安全性に配慮しながら、適切なタイミングでご案内します。

再生医療(幹細胞治療)

炎症を抑えたり傷ついた組織の修復を助けたりする効果が期待される新しい治療法です。当院では幹細胞療法に対応できる環境を整えており、必要に応じてご提案できるのも強みのひとつです。

このように、当院では内科から外科、さらには再生医療まで幅広い選択肢をご用意しています。飼い主様とじっくり相談しながら、愛犬が少しでも快適に過ごせるように柔軟に治療方針を決めていきます。

まとめ

頸部椎間板ヘルニアは、腰のヘルニアと比べると認知度が低いため、気づかれにくく発見が遅れがちです。しかし進行すると強い痛みや麻痺を引き起こすこともあり、早期の発見と治療がとても大切です。

「最近首を気にしている」「動きがぎこちない」など気になる変化があれば、どうぞお気軽に当院へご相談ください。

 

<参考文献>
European PMC, Comparison of surgical and conservative treatment of hydrated nucleus pulposus extrusion in dogs. (https://europepmc.org/article/MED/30267615、最終閲覧日:2025年9月29日)

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「愛犬が耳をしきりにかいている」「愛猫の耳からにおいがする」といった耳のトラブルは珍しいことではなく、その多くは外耳炎によって起こります。実際に外耳炎は犬に非常に多い病気で、ペット保険の請求ランキングでも常に上位に入るほどです。

外耳炎は一度治っても再発を繰り返しやすく、放っておくと炎症が広がって治りにくくなることもあります。通常は点耳薬や内服薬で治療しますが、慢性化してしまった場合には「全耳道切除術」という手術が選択肢になることがあります。

今回は、外耳炎が繰り返される理由やその影響、そして全耳道切除術について詳しく解説します。

 

外耳炎とは?繰り返しやすい理由

犬や猫の耳は、私たち人間と同じようにいくつかの部位でできています。外から見える耳の部分を「耳介」、その奥に続く耳のトンネルを「外耳道」、さらに奥に鼓膜──という構造になっています。

外耳炎とは、この外耳道に炎症が起きてしまう病気のことです。原因はさまざまで、たとえば次のようなものが挙げられます。

・細菌やマラセチア(酵母菌)などの異常な増殖や感染
・耳ダニの寄生
・アレルギー体質(食物アレルギーや皮膚炎など)
・草の種や異物の侵入

といったものが知られています。犬でよくみられる印象がありますが、スコティッシュフォールドなど猫でも発症することがあるので注意が必要です。

さらに外耳炎には「繰り返しやすい」という特徴があります。

・耳が垂れていて蒸れやすい犬種や猫種では、耳の中が常に湿った状態になりやすい
・炎症が続くことで耳道の皮膚が厚くなり、通り道が狭くなってしまう

こうした要素が重なると「治ったと思ったのにまた再発する」という状況になりがちです。慢性化すると、耳のかゆみや痛みだけでなく、聞こえにくさや日常生活の質の低下にもつながるため、早めの対処が大切です。

犬の外耳炎について詳しく知りたい方はこちら

繰り返す外耳炎がもたらす影響

犬や猫にとっては、外耳炎が続くことで毎日の生活そのものが不快でつらいものになってしまいます。

強いかゆみや痛みで耳をかいたり頭を振ったりする
常に違和感があり、落ち着かなくなる
耳が聞こえにくくなる
重症化すると鼓膜が破れ、中耳炎に進行することもある

また、飼い主様にとっても負担は小さくありません。「治療を続けてもなかなか良くならない」という不安や、繰り返す通院による時間的な負担、長引く治療費による経済的な負担が積み重なっていきます。

このように、繰り返す外耳炎は犬や猫にも飼い主様にも影響を及ぼす大きな問題です。改善が難しい場合には、次の治療選択肢を検討することが大切になります。

どんな時に手術を検討するべき?

外耳炎の多くは点耳薬や内服薬といった内科的な治療で改善が見込めます。ですが、中には薬だけでは治らないケースもあります。そのようなときには、手術という選択肢を検討することがあります。

たとえば…

・炎症が中耳や内耳にまで広がり、ふらつきやめまいなどの神経症状が出ている場合
・繰り返す炎症で耳道が厚くなり、薬が届かなくなってしまった場合
・耳道内に炎症性ポリープや腫瘍ができて、耳の通り道がふさがってしまっている場合

このようなときに「全耳道切除術(TECA)」という外科的な方法が治療の選択肢のひとつになるのです。

手術という選択肢|全耳道切除術(TECA)とは

全耳道切除術(TECA)は、耳道全体を取り除き、炎症や感染の原因そのものをなくしてしまう手術です。

全耳道切除術の流れ

手術の流れを簡単にご紹介します。

1. 耳の付け根の皮膚を切開し、耳道にアプローチできるようにします。
2. 周囲の組織や神経を守りながら、耳道全体を露出させます。
3. 炎症の原因となっている耳道部分を切除し、耳の形(耳介)は残したまま、皮膚ときれいにつなぎ合わせます。

耳の形(耳介)は残るため、見た目が大きく変わることはありません。炎症が中耳に及んでいる場合には、あわせて鼓室の処置を行うこともあります。

メリット

・感染や炎症の原因を根本から取り除ける
・薬では改善しなかったケースでも治療が期待できる
・痛みやかゆみから解放され、快適に過ごせるようになる

リスク

・顔面神経に影響が及び、一時的にまぶたや口元の動きが変化することがある
・被毛が耳の穴をふさいでしまうことがある
・鼓膜の処置を行うため、聴力に影響が出ることがある(ただし重度の外耳炎では、すでに聴力が低下しているケースも少なくありません)

全耳道切除術は「根治を目指せる治療」のひとつです。薬での改善が難しい場合でも、前向きに検討することで愛犬・愛猫に穏やかな毎日を取り戻してあげられる可能性があります。

ナガワ動物病院での手術以外のケア・選択肢について

「外耳炎=すぐに手術」というわけではありません。多くの場合、まずは点耳薬や内服薬などの内科的な治療で改善を目指していきます。実際、長く続く外耳炎でも、適切な治療を続けることでコントロールできるケースは少なくありません。

さらに必要に応じて、耳道内を詳しく確認できるオトスコープ(耳道内カメラ)を用いた処置を行うため、耳鼻科を専門とする医師をご紹介して治療にあたることもあります。

このように当院では、内科治療から外科手術まで幅広い治療オプションをご用意しています。大切なのは「その子にとってどの方法が一番良いか」を一緒に考えていくことです。状況に合わせた選択肢を丁寧にご提案しますので、安心してご相談ください。

まとめ

「外耳炎が治らない」「何度も繰り返す」というお悩みは決して珍しくありません。

犬や猫にとっても大きな負担となるため、ナガワ動物病院では内科治療から外科手術まで幅広い治療法に対応しています。なかでも、全耳道切除術(TECA)という根治を目指せる選択肢もご提案できるのは当院の強みのひとつです。

症状や状況に合わせて最適な方法を飼い主様と一緒に考え、安心して治療を受けていただけるように努めています。愛犬・愛猫の耳のトラブルでお困りの際は、どうぞお気軽にご相談ください。

 

<参考文献>
Richard G.Harvey, Gert ter Haar. 犬と猫の耳鼻咽喉疾患. 嶋田照雅 監訳. 2020. 緑書房.

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私たち人間と同じように、犬や猫も昔と比べて寿命が延びて長生きするようになりました。

その一方で、加齢に伴う病気も増えており、特に飼い主様を悩ませるもののひとつが「認知症」です。発症してしまうと完治は難しいものの、早い段階で気づき、適切なケアを取り入れることで進行をゆるやかにできる可能性があります。

今回は犬と猫の認知症について、見逃しやすい初期症状やケアの選択肢を詳しく解説します。

 

犬と猫にも認知症はある?

認知症とは、加齢によって脳の機能が低下し、記憶や行動に異常が出る状態を指します。
犬の場合は「認知機能不全症候群(CDS)」とも呼ばれ、特に10歳を超えるシニア犬に多くみられます。また猫も15歳前後から同様の症状が出やすいといわれていますが、発症年齢には個体差があるため、若い年齢でも注意が必要です。

見逃しやすい初期症状とよくある行動

認知症になると、次のような行動や変化がみられることがあります。

昼夜逆転(昼間に眠り、夜に活動的になる)
夜鳴きや無駄吠えが増える
同じ場所をぐるぐると徘徊する
トイレの失敗が増える
飼い主様を認識できなくなる
隅に頭を突っ込んだまま動かない

こうした変化は、飼い主様が「年のせいかな」と見過ごしてしまうことも少なくありません。気になるサインがあれば、セルフチェックで確認するのもひとつの方法です。

▼参考(外部サイト)
DISHAAチェック(犬の認知症セルフチェック)
 
このチェック方法では、犬や猫の行動をいくつかの項目に分けて点数化します。
たとえば、

☑ 方向感覚があるか(同じ場所で迷っていないか)
☑ 飼い主様や周りとの関わり方に変化がないか
☑ 昼と夜の生活リズムが乱れていないか
☑ トイレがうまくできているか
☑ これまで覚えていたことを忘れていないか
☑ 活動量が減っていないか
☑ 不安そうな様子が増えていないか

といった点をチェックしていきます。合計点が高いほど、認知症が疑われます。

ただし、同じような症状がホルモンの病気(たとえばクッシング症候群)などによって起こることもあります。ご家庭で判断するのは難しいため、気になる変化があれば早めに獣医師に相談していただくと安心です。

犬のクッシング症候群について詳しく知りたい方はこちら

治療・ケアの選択肢

犬や猫の認知症は一度発症すると完治が難しい病気ですが、進行をゆるやかにして、できるだけ快適な毎日を送れるようにする方法はいくつかあります。ここでは代表的な選択肢をご紹介します。

治療薬

症状の程度に応じて、抗酸化作用や血流を改善する作用を持つ薬が処方されることがあります。脳の働きをサポートすることで、行動の変化を落ち着かせる効果が期待できます。

サプリメントや療法食

近年は、栄養面から認知症をサポートする方法にも注目が集まっています。

・オメガ3脂肪酸(DHA・EPA):青魚などに含まれる成分で、脳の健康維持を助ける可能性があるといわれています。
・中鎖脂肪酸(MCTオイル):体に吸収されやすく、脳のエネルギー源として利用されることがあります。
・ビタミンE:抗酸化作用を持ち、細胞の老化を防ぐ働きが期待されています。

サプリメントや療法食としては「アンチノール(Vetz Petz社)」 や「 ニューロケア(ピュリナ社)」 なども広く知られています。いずれも脳の健康を支える栄養素を含んでおり、取り入れるケースもあります。

こうした栄養サポートは、脳の老化防止やダメージの軽減につながる可能性があると考えられています。

新しい研究の動向

最近では、脳が「ブドウ糖」ではなく「ケトン体」という物質を使ってエネルギーを得ることで、認知症の進行を抑えられるのではないか、という研究も進んでいます。特にMCTオイルを食事に加えると症状が改善する可能性があると報告されており、将来的には新しい治療の選択肢として期待されています。

生活の工夫

薬や食事に加えて、毎日の暮らしを整えてあげることも大切です。

・安心できる環境を整える段差をなくしたり滑りにくいマットを敷いたりすることで、転倒やケガの予防につながります。
・生活リズムを整える食事や就寝時間をできるだけ一定に保つことで、犬や猫が落ち着いて過ごしやすくなります。
・スキンシップを大切にする声をかけたり優しくなでたりするだけでも安心感につながり、不安を和らげる効果が期待できます。

こうした身近な工夫が、愛犬・愛猫が安心して過ごせる毎日を支えるカギとなります。

進行をゆるやかにするために

認知症は完治が難しい病気ですが、飼い主様の工夫やサポートで、その進行をできるだけゆるやかにすることが期待できます。日々の生活の中で取り入れられるポイントをご紹介します。

日常的な刺激を取り入れる
散歩や遊びの時間は、単なる運動だけでなく、脳の活性化にもつながるといわれています。無理のない範囲で、毎日少しずつ取り入れてあげましょう。

若いころからの習慣づけ
子犬や子猫の時期から社会化や運動の習慣を持たせてあげることは、将来の心と体の健康寿命を延ばす大切な準備にもなります。

定期健診で早めに気づく
定期的な健診は、ちょっとした異変を早めに見つけるための大切な機会です。早期発見・早期対応によって、結果的に愛犬・愛猫がおだやかに過ごせる時間を維持することにつながります。

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このように、毎日の小さな積み重ねと定期的なチェックが、認知症の進行を抑え、愛犬・愛猫と過ごすかけがえのない時間をより豊かにしてくれます。

まとめ

高齢の犬や猫に見られる行動の変化は、飼い主様にとって心配の種になるかもしれません。ですが、認知症は適切なサポートを取り入れることで、愛犬・愛猫の穏やかな日常を守ることにつながります。

「年齢のせいかな」と見過ごしてしまいそうな小さな変化も、実は大切なサインかもしれません。気になることがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。

 

<参考文献>
小澤真希子. 犬と猫の高齢性認知機能不全. 動物臨床医学. 29(3). 101-107. 2020.
Efficacy of a Therapeutic Diet on Dogs With Signs of Cognitive Dysfunction Syndrome (CDS): A Prospective Double Blinded Placebo Controlled Clinical Study – PMC

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愛犬のお腹や後ろ足の付け根に膨らみを見つけると「太ったのかな?」「腫瘍だったらどうしよう…」と不安になる飼い主様も多いのではないでしょうか。

実はその膨らみは「鼠経(そけい)ヘルニア」や「臍(さい)ヘルニア」かもしれません。どちらも先天的に起こることが多い病気で、腸が挟まって炎症を引き起こし、命に関わる状態に至ることもあります。

今回は、犬の鼠経ヘルニアと臍ヘルニアの違いや共通点、放置してはいけない理由、そしてナガワ動物病院で行っている治療方法について詳しく解説します。

 

鼠経ヘルニア・臍ヘルニアとは?

まず「ヘルニア」とは、本来であれば臓器を支えている壁に小さな穴(ヘルニア門)ができ、腸や脂肪などの組織が皮膚の下に飛び出してしまう状態をいいます。犬に見られるヘルニアにはいくつか種類がありますが、その中でも代表的なのが「鼠経ヘルニア」と「臍ヘルニア」です。

◆鼠経ヘルニア
後ろ足の付け根(鼠径部)にできるヘルニアです。
生まれつき(先天性)のものは若いオス犬で見られることが多く、加齢や出産などに伴って起こる(後天性)のものはメス犬に多いとされています。

◆臍ヘルニア
おへその部分(臍部)に発生するヘルニアで、いわゆる「でべそ」もその一つです。
先天的にお腹の壁がしっかり閉じきらなかったことが原因で起こるケースが多く、子犬でよく見られます。

鼠経ヘルニアと臍ヘルニアの違い

両者は一見似ているように思えますが、触ったときの感触やリスクに違いがあります。

・触ったときの感触や形状
どちらも柔らかいしこりのように感じられますが、鼠経ヘルニアは臍ヘルニアより深部にあり、膨らみが大きく感じられることがあります。

・リスクの違い
鼠経ヘルニアは、腸閉塞や臓器の壊死など深刻な合併症に発展しやすいといわれています。臍ヘルニアでも腸が入り込むと危険ですが、相対的にはリスクが低めです。

共通する特徴

鼠経ヘルニアと臍ヘルニアには、いくつかの共通点があります。
まず、どちらも皮膚のふくらみや柔らかいしこりとして飼い主様が気づくことが多い病気です。膨らみの大きさはケースによって異なり、小さな粒のように感じられることもあれば、指で押すと戻るような柔らかさを伴う場合もあります。

また、犬では先天的に生まれつき持っているケースが少なくありません。見た目には軽く見えることもありますが、自然に治ることはほとんどなく、専門的な診断が欠かせない点も両者に共通しています。

放置してはいけない理由

鼠経ヘルニアや臍ヘルニアは、見た目が小さな膨らみであっても油断はできません。そのままにしておくと、思わぬトラブルにつながることがあるため注意が必要です。

鼠経ヘルニアで起こり得ること

鼠経部に発生するヘルニアでは、飛び出した腸や脂肪が締めつけられることで血流が悪くなり、腸閉塞や壊死を引き起こす危険があります。特にメス犬では、まれに子宮が飛び出してしまうケースもあり、緊急性が高まることがあります。

臍ヘルニアで起こり得ること

おへその部分にできる臍ヘルニアでも、腸が巻き込まれたり感染を起こしたりするリスクがあります。膨らみが小さい場合でも、経過を見守りながら獣医師に相談しておくことが安心につながります。

膨らみが小さいうちは症状が目立たなくても、突然悪化することがあります。様子を見るのではなく、早めに獣医師へ相談することが大切です。

治療方法とナガワ動物病院の対応

鼠経ヘルニアや臍ヘルニアは、自然に治ることはほとんどありません。根本的な治療には外科手術でヘルニア門を閉鎖することが必要です。手術は全身麻酔のもとで行い、飛び出した組織をお腹に戻し、穴をふさぐことで再発を防ぎます。

・鼠経ヘルニア:オス犬に併発しやすい停留精巣の摘出と合わせて行うこともあります。
・臍ヘルニア:進行によるトラブルを避けるため、避妊手術と同時に整復するケースが多くあります。

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手術のタイミング

「いつ手術をすべきか」は、犬の年齢や体調、ヘルニアの大きさ・状態によって異なります。成長段階にある若い犬では、早めの対応が望ましい場合もあれば、小さい臍ヘルニアや、手術リスクが高い高齢犬では、あえて経過観察を選ぶこともあります。
こうした判断には専門的な視点が欠かせないため、定期的なチェックを続けながら最適なタイミングを見極めていきます。

ナガワ動物病院での取り組み

当院では、外科手術の際に犬への負担をできるだけ減らすことを大切にしています。

術前検査でリスクをしっかり把握し、安全性に配慮した麻酔管理を実施
術後の回復を支えるため、痛み止めを含めた徹底した鎮痛ケア
避妊手術や停留精巣の摘出と同時に行い、麻酔の回数を減らす工夫

手術そのものだけでなく、前後のケアやライフステージに合わせた判断を含めて、安心していただける治療を心がけています。

まとめ

鼠経ヘルニアや臍ヘルニアは、一見すると小さな膨らみに見えることが多い病気です。しかし、放置すると腸閉塞や感染など思わぬトラブルにつながるおそれがあり、自然に治ることはほとんどありません。

根本的な治療には外科手術が必要ですが、そのタイミングや方法は犬の年齢・体調・ヘルニアの状態によって異なります。経過観察を選ぶケースも含めて、一頭ごとに最適な方針を決めていくことが大切です。

「うちの子の膨らみは大丈夫かな?」と少しでも不安に思ったら、どうぞお気軽にご相談ください。

 

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当院からの大切なお知らせ

SFTSが疑われる犬猫は、直接ご来院いただくことができません。
まずは必ずお電話にて当院へご相談ください。
外に出ている猫ちゃんはしばらく外出を控えていただき、症状がある場合も院内には連れて来ず、事前にご連絡をお願いいたします。

近年、ニュースなどでも耳にすることが増えてきた「SFTS(重症熱性血小板減少症候群)」。マダニが媒介するこの感染症は、人だけでなく犬や猫などの動物にも感染・発症することが知られており、注意が必要です。

今回は、SFTSの基礎知識や犬・猫で見られる症状、ご家庭でできる予防対策について、獣医師の視点から詳しく解説します。

 

SFTS(重症熱性血小板減少症候群)とは?

SFTS(Severe Fever with Thrombocytopenia Syndrome)は、SFTSウイルスを保有するマダニに咬まれることで感染する人獣共通感染症です。犬や猫だけでなく、人にも感染し、命に関わる重い症状を引き起こすことがあります。

感染の広がりと国内の発生状況

これまでの発症報告は、主に九州や四国など西日本に集中していましたが、近年では関東や北海道でも感染例が報告されるようになっています。
2025年5月には茨城県で、関東地方では初となる犬と猫のSFTS感染が確認され、感染リスクが全国的に広がりつつある状況です。

犬と猫、それぞれの発症傾向

犬や猫に関するデータはまだ十分ではありませんが、国内の調査から以下のような傾向が見えてきています。

猫の方が圧倒的に発症例が多い(2023年には猫194頭、犬12頭の発症を確認)
猫は不顕性感染(無症状のまま感染)になりにくく、発症・重症化しやすい
犬でも重症化することがある(報告されている致死率は猫で約60%、犬で約25%)

特に猫では、以下のような症状が見られることがあります。

元気や食欲がなくなる
発熱する(39.5度以上)
粘膜が黄色くなる(黄疸)
嘔吐や下痢などの消化器症状

これらの症状は、感染後数日で急激に悪化し、1週間以内に命を落とすケースもあるため、早期の気づきと対応が非常に重要です。

SFTSの怖さは「人にも感染すること」

SFTSウイルスは、感染した犬や猫との濃厚接触を通じて、飼い主様にも感染するおそれがあります。人での致死率も高く、2025年6月時点で国内では91人の感染と複数の死亡例が報告されています。中には、感染した猫を診察した獣医師がSFTSで亡くなった事例もあり、人にとっても非常に危険なウイルスといえます。

「予防薬を使っていれば安心」は間違いです

マダニ予防薬は、感染リスクを下げるための重要な手段ではありますが、100%の予防効果があるわけではありません。予防薬の使用に加えて、日常生活の中でマダニと接触しないための工夫も欠かせません

このように、SFTSは命を落とすこともある恐ろしい病気です。だからこそ、犬や猫がマダニに咬まれた、あるいは様子がおかしいと感じたときには、ためらわずに動物病院にご相談ください。

SFTSが疑われる場合のご来院についてはこちらをご確認ください

マダニはどこにいる?身近に潜むリスク

SFTSウイルスを媒介するマダニは、草むらや森林、河川敷、畑、林道など、自然の多い場所に広く生息しています。活動が活発になるのは春から秋にかけてですが、冬でも完全にリスクがなくなるわけではないため、1年を通じた注意が必要です。

ご家庭に潜む2つのリスク

SFTSが特に警戒されている理由のひとつは、人と動物の両方に感染するおそれがある点です。飼い主様が「外に出していないから安心」と思っていても、思わぬ経路で感染のリスクが入り込むことがあります。

1.感染した動物から人へ
SFTSを発症した犬や猫との濃厚接触を通じて、飼い主様に感染が広がるケースがあります。体液や唾液、排泄物を介して感染することもあるため、特に症状がある動物との接触には注意が必要です。

2.飼い主様からの持ち込み
犬や猫が外出しない場合でも、飼い主様が外出先で衣服や靴にマダニを付けたまま帰宅し、知らずに室内へ持ち込んでしまうことがあります。実際に、屋内飼育の猫がこのルートで感染した例も報告されています。

まずは、こうしたリスクが身近にあることを正しく理解することが、動物たちを含めたご家族の健康を守る第一歩です。

マダニ感染を防ぐには?ご家庭でできる予防対策

SFTSから愛犬・愛猫、そして飼い主様を守るためには、日常的な予防の積み重ねが何よりも重要です。以下のような対策を意識しながら、できることから始めてみましょう。

・ノミ・マダニ予防薬を定期的に使う
犬も猫も、通年での予防薬の使用をおすすめします。マダニは気温が下がっても生息していることがあり、春夏だけの対策では不十分な場合もあります。特に外に出る猫では感染リスクがさらに高まるため、より注意が必要です。

ノミ・マダニ予防について詳しく知りたい方はこちら

・散歩コースや屋外での過ごし方に配慮する
マダニは、草むらや河川敷、林のふちなど、自然が多い場所に多く潜んでいます。散歩の際は、できるだけ草が生い茂った場所への立ち入りを避けるように意識し、帰宅後のマダニチェックも習慣づけましょう。

・家の中や周囲の環境を整える
庭の草刈りをこまめに行う風通しをよくするペット用寝具を清潔に保つなど、ご家庭の環境づくりも感染予防には重要です。小さな積み重ねが、大きなリスクの軽減につながります。

・飼い主様の外出時の服装や対策にもひと工夫
マダニを家の中へ持ち込まないための対策も忘れてはいけません。外出時には肌の露出を控え、長袖・長ズボン・帽子の着用防虫スプレーの活用などを意識しましょう。帰宅後は、衣類や身体にマダニがついていないかを確認する習慣をつけることも大切です。

また、SFTSは動物の体液や血液を介して人へ感染することがあるとされています。もし外でぐったりとした犬や猫を見かけた際は、決して直接触れず、動物病院に連絡するようにしましょう。もし仮に直接触れてしまうと、その時点でSFTSの感染リスクが発生することを忘れず、適切に対応することが重要です。

ご来院について

・SFTS疑いの動物は院内での入院対応はできません(東京都獣医師会ガイドラインに準拠)
・ご自宅での対応時には、手袋・ゴーグル・マスク・長袖の捨てても良い衣類を着用してください
・接触後は衣類を廃棄し、次亜塩素酸で手や環境を消毒してください
・発症動物の体液や唾液からも人に感染するため、安易に触れないようご注意ください

まとめ

SFTS(重症熱性血小板減少症候群)は、マダニを介して人にも犬・猫にも感染する、命に関わるおそれのある感染症です。

猫での発症例が多く、症状が急激に進行することもあるため「うちの子は室内飼いだから大丈夫」と油断せず、犬・猫ともに一年を通じた予防対策が大切です。まずは正しい情報を知り、日常の中でできることから予防を始めましょう。

もし心配なことや予防に関するご相談があれば、どうぞお気軽に当院までご相談ください。

<参考文献>
Seroprevalence of severe fever with thrombocytopenia syndrome virus in animals in Kagoshima Prefecture, Japan, and development of Gaussia luciferase immunoprecipitation system to detect specific IgG antibodies – ScienceDirect
https://id-info.jihs.go.jp/surveillance/iasr/12668-sfts-ra-0801.html(最終閲覧日:2025/07/22)

 

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いよいよ暑い夏がやってきました。湿気や気温の上昇によって皮膚の環境が悪化しやすくなるこの季節、犬や猫にとって皮膚病は特に注意が必要です。脱毛やかゆみなどのトラブルは、生活の質を下げるだけでなく、強いストレスの原因にもなります。

今回は、夏に増える皮膚病の原因や症状、ご家庭でできるケア方法に加え、ナガワ動物病院での対応について詳しくご紹介します。

 

暑い時期に多い犬と猫の皮膚トラブル|主な原因とは?

夏は気温と湿度の上昇により、犬や猫の皮膚トラブルが起きやすい季節です。以下のような原因がよく見られます。

ノミ・ダニによる皮膚炎

ノミやダニなどの外部寄生虫は、夏の高温多湿な環境で繁殖しやすくなります。寄生されることで強いかゆみや皮膚炎を引き起こし、なかにはアレルギー反応を起こすケースも。
外出する犬だけでなく、室内で過ごす猫でも感染することがあるため、年間を通じた予防が大切です。

皮膚バリア機能の低下

健康な皮膚はバリア機能によって外部の刺激から体を守っています。しかし、夏の蒸し暑さによってその機能が弱まり、通常なら発症しないような皮膚病にかかりやすくなります。
また、近年の研究では、腸内環境とアレルギー性皮膚炎の関係性も注目されています。当院では、乳酸菌製剤を含むサプリメントによる「腸活」もご提案しています。

雑菌の繁殖や皮脂の分泌異常

暑さや湿気によって皮脂の分泌が増えると、皮膚に常在する菌(マラセチアやブドウ球菌など)が過剰に増殖し、皮膚炎を引き起こすことがあります。
蒸れやすい部分(脇の下、足の付け根、耳の中など)は特に注意が必要です。

紫外線による皮膚へのダメージ

白毛や短毛の犬種(ブルテリアなど)では、紫外線の影響を受けやすい傾向があります。長時間日光を浴びることで、皮膚が赤くなるだけでなく、まれに扁平上皮癌などの重大な疾患につながることもあります。

夏に見られる皮膚の不調の裏にはこうした背景があることを知っておくと、早めの対応にもつながります。

皮膚糸状菌症(真菌感染症)の多発

近年、夏の高温多湿な環境で真菌による皮膚病(皮膚糸状菌症)が多発しています。
この病気はかゆみや脱毛、赤みを引き起こすだけでなく、ステロイド薬を使用すると症状が悪化するため、一般的な皮膚炎とは異なる注意が必要です。
特に2025年夏は例年に比べて発生が目立っており、早期の診断と適切な治療が重要です。

また、当院では皮膚糸状菌症のような真菌感染症が疑われる場合、診察時から待合室・診察室でのカビ拡散防止を徹底しています。
また、毎日院内の清掃・消毒を行い、安心して通院いただける環境を整えていますので、お気軽にご相談ください。

こんなときは受診を|ご家庭でのケアと病院受診の境界線

皮膚病の予防には、日々のちょっとしたケアの積み重ねがとても大切です。特に夏場は、以下のようなポイントを意識することで、皮膚トラブルのリスクを減らすことができます。

・適切な頻度でのシャンプー
皮膚の汚れや余分な皮脂を落とすことで、雑菌の繁殖を防ぎます。ただし、洗いすぎは逆効果になることもあるため、シャンプーの頻度や使用する製品は、愛犬・愛猫の皮膚の状態に合わせて選びましょう。

・室内の温度・湿度の管理
高温多湿の環境は、皮膚病を引き起こす大きな要因です。室温は25℃前後、湿度は50〜60%を目安に、エアコンや除湿器を活用しながら快適な環境を整えてあげましょう。風通しを良くする工夫や、クールマットの設置もおすすめです。

・ノミ・ダニの予防
ノミやマダニは、かゆみや皮膚炎の原因になるだけでなく、重篤な感染症を媒介することもあります。草むらに入らなくても寄生することがあるため、室内飼育の犬や猫でも油断はできません。予防薬を定期的に使って、しっかり対策してあげましょう。

ノミ・マダニ予防について詳しく知りたい方はこちら

・毎日のブラッシング
被毛を整えることに加えて、皮膚の異変に早く気づくきっかけにもなります。抜け毛やフケ、赤み、湿った部分などを日々の中でチェックすることで、トラブルを未然に防げることもあります。特に脇の下や足の付け根、首まわりなどは蒸れやすいため、意識的にケアしてあげましょう。

こんな症状が見られたら早めのご相談を

どれだけ丁寧にケアをしていても、皮膚病が進行してしまうことはあります。以下のような症状が見られる場合は、悪化を防ぐためにも早めの受診をおすすめします。

食事中や散歩中、睡眠中にかゆがる様子がある
脱毛やフケ、皮膚の赤みや黒ずみといった変化が見られる
においが強くなる(皮膚が蒸れたような不快なにおいなど)
皮膚にかさぶたや出血がある
元気や食欲がなくなる、体重が落ちるなどの全身症状を伴う

こうした変化は、皮膚の炎症や感染が進んでいるサインかもしれません。初めは軽く見えても、放っておくことで炎症が広がり、かゆみが強くなったり、治療に時間がかかってしまうこともあります。

また、皮膚病の中には「イッチ・スクラッチ・サイクル」と呼ばれる悪循環が知られています。これは「かゆみ → 掻く → 炎症 → さらにかゆくなる」という連鎖のことで、愛犬・愛猫にとって大きなストレスになります。こうした状態を断ち切るために、アポキルやゼンレリアといったかゆみ止めのお薬を使うこともあります。

違和感に気づいた時点でご相談いただくことが、症状の進行を防ぎ、愛犬・愛猫の負担を最小限に抑えることにつながります。

病院での治療とトリミングの役割|ナガワ動物病院の対応

ナガワ動物病院では、皮膚病の診療において「原因の特定」と「状態に応じた適切な治療」を重視しています。診察ではまず飼い主様からご家庭での様子を詳しくうかがい、皮膚の状態を確認する検査(視診・皮膚検査・掻爬検査など)を行ったうえで、治療方針を決定します。

治療の選択肢は幅広く、以下のような方法を症状や体質に応じて組み合わせています。

・抗菌薬・抗真菌薬
・抗炎症薬・かゆみ止め
・保湿・抗炎症作用のある薬用シャンプー
・サプリメントや食事療法

また、皮膚病の治療では、トリミングも大きな役割を果たします。
当院では犬専用のトリミングサービスを併設しており、皮膚の状態を整えるためのスキンケアを獣医師と連携してご提案しています。

医療と連携したトリミングケア

皮膚の状態や体質に合わせ、以下のようなスキンケアをご提案しています。

・薬浴、ウルトラファインバブル、炭酸泉などの専門的な皮膚ケア
・セラミドやプロテオグリカンを含んだ保湿性の高いシャンプーを使用
・低刺激のオイルクレンジングで皮脂汚れやにおいのケアも可能

シャンプーには、肛門腺しぼり・爪切り・足裏バリカン・耳洗浄などの基本的な処置も含まれており、皮膚の健康をトータルにサポートします。

また、施術中もトリマーが皮膚の状態を細かく観察しており、異変に気づいた際はすぐに獣医師に相談できる体制を整えています。

持病のある子やシニアの子にも安心の体制

持病のある子やシニアの子も、トリミング前には必ず獣医師が健康状態を確認したうえで、できる限り対応しています。寝たきりの子でも施術できる専用の設備もあり、ご安心いただける環境です。

暮らしに寄り添うカウンセリング

施術前のカウンセリングでは、スタイルブックやタブレットを活用してカットの仕上がりをすり合わせています。「食事のときに顔まわりが汚れる」「足が拭きにくい」といった日常のお困りごともお気軽にご相談ください。愛犬にも飼い主様にもやさしいスタイルをご提案しています。

実際に、トリミングやシャンプーのみで皮膚の状態が改善するケースも多く、適切なスキンケアが治療の一環として効果を発揮することもあります。

当院のトリミング・シャンプーについて詳しく知りたい方はこちらから

まとめ

犬や猫にとって、日本の蒸し暑い夏は皮膚病が起こりやすい季節です。ノミ・ダニ、雑菌の繁殖、蒸れ、紫外線など、さまざまな要因が皮膚に負担をかけます。

特に真菌感染症は、見た目が一般的な皮膚炎と似ているため、自己判断での市販薬やステロイド使用は危険です。
当院でも今年は皮膚糸状菌症の症例が例年より多く、症状が気になる場合は早めの受診をおすすめします。

大切なのは、日常のスキンケアと環境管理、そして気になる症状があるときには早めに動物病院を受診することです。さらに、トリミングを上手に取り入れることで、皮膚の健康を保ちやすくなります。

皮膚の赤みやかゆみなど、気になる症状があれば、どうぞお気軽にナガワ動物病院までご相談ください。

 

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脾臓(ひぞう)は、犬のお腹の中にある臓器のひとつで、高齢になると腫瘍が見つかることが珍しくありません。

特に脾臓は血液を多く含む臓器のため、腫瘍が破裂すると大量出血を起こし、命に関わるケースも少なくありません。そのため、状況によっては早めの摘出手術が必要になります。

今回は、脾臓の役割や腫瘍の特徴、摘出手術の流れや術後のケアについてご紹介します。

 

犬の脾臓とは?腫瘍のリスクと手術の必要性

脾臓(ひぞう)は、胃の近くにある細長い臓器で、免疫や血液に関わる重要な働きを担っています。具体的には、古くなった赤血球の回収や、必要に応じた血液の貯蔵・放出、そして免疫機能の一部も担っています。

この脾臓に腫瘍(しこり)ができることがあり、特に高齢の犬では発見される頻度が高くなります。腫瘍には以下のような種類があります。

・良性腫瘍
ゆっくりと成長し、他の臓器に広がることはありません。ただし、大きくなると破裂するリスクはあります。

・悪性腫瘍(がん)
代表的なものに「血管肉腫」があり、非常に進行が早く、破裂による大量出血や、全身への転移が起こるおそれがあります。

どちらの腫瘍であっても、脾臓が破裂すれば命に関わる緊急事態になるため、腫瘍が見つかった段階で早めの判断が求められます。

なぜ脾臓摘出がすすめられるのか

脾臓腫瘍は、ちょっとした衝撃や運動がきっかけで破裂することがあります。悪性の疑いが強い場合はもちろん、良性であっても破裂リスクがある場合には、脾臓摘出手術が選択肢になります。

当院では、腫瘍の種類にかかわらず「破裂リスクが高い」と判断される場合には、早期の摘出手術をおすすめしています。命を守るために、早めの決断が重要になるケースも多いためです。

脾臓腫瘍の診断と摘出手術の流れ

脾臓腫瘍は、早期に見つかれば命を救える可能性が高い病気です。しかし、進行するまで症状が出にくいため、定期的な検査による早期発見がとても大切になります。

診断の流れ

脾臓腫瘍の診断には、以下のような検査が行われます。

・超音波検査(エコー)
脾臓の大きさや腫瘍の有無、腹水の有無を確認します。腫瘍の早期発見に有効です。

・レントゲン検査や血液検査
他の臓器への影響や全身状態を把握します。

・必要に応じたCT検査や細胞診
腫瘍の広がり具合や、ほかの病変の確認に役立ちます。

なお、血液検査だけでは腫瘍の有無を判断することは難しいため、エコー検査などの画像診断が特に重要になります。

手術の流れ

腫瘍が確認された場合、破裂によるリスクを回避するために、脾臓摘出手術(脾臓全摘)を行います。

1. 術前検査と準備
まずは血液検査や画像検査(エコー・レントゲンなど)を行い、全身の健康状態や腫瘍の位置・大きさを確認します。必要に応じて、事前に輸血の準備を整えることもあります。

2. 全身麻酔と開腹手術
全身麻酔をかけたうえでお腹を切開し、脾臓を外に取り出します。その後、脾臓につながる血管を一つずつ丁寧に処理したうえで切断し、脾臓を摘出します。

3. 出血確認と縫合
摘出後は出血の有無を慎重に確認し、切開部を縫合します。

4. 摘出組織の病理検査
取り出した脾臓は病理検査に提出し、腫瘍の種類(良性か悪性か)やがん細胞の広がりなどを詳しく調べます。

悪性腫瘍だった場合は、術後も継続的な治療や検査が必要になります。特に「血管肉腫」は血管を通じて他の臓器に転移しやすいため、慎重なモニタリングと治療が求められます。

手術後の過ごし方と継続的なケアの大切さ

脾臓の摘出手術を終えた後は、ご家庭でのケアと病院でのフォローが大切になります。ここでは、術後のポイントをご紹介します。

ご家庭でのケア

体力の回復と感染予防のために、次のような点に気をつけてあげましょう。

・安静に過ごす
術後しばらくは激しい運動を控え、ゆったりと過ごさせてあげましょう。お散歩も短めにし、様子を見ながら少しずつ元の生活に戻していきます。

・食事管理
消化のよいフードを選び、無理のない範囲でしっかり栄養をとらせましょう。術後の回復をサポートするため、栄養バランスにも気を配ることが大切です。

・傷口のケア
傷口は清潔に保ち、舐めたり引っかいたりしないように注意が必要です。必要に応じてエリザベスカラーなどを使用しましょう。

病院でのフォローアップ

特に悪性腫瘍(血管肉腫など)と診断された場合は、摘出後も体内の他の部位への転移に注意が必要です。継続的な検査や抗がん剤治療(化学療法)を行うことで、腫瘍の進行を抑え、愛犬ができるだけ快適に過ごせるようにサポートしていきます。

定期的な通院とモニタリングを通じて、愛犬の体調の変化を早期に発見できるように心がけましょう。

まとめ

脾臓腫瘍は高齢の犬に多く、進行に気づきにくいこともあります。特に腫瘍が破裂すると、大量出血により命に関わる危険があるため、良性・悪性を問わず、早期の摘出手術が勧められるケースもあります。

術後は安静や食事管理に加え、定期的な検査で再発や転移の有無を確認していくことが大切です。愛犬の体調に気になる変化があれば、早めにご相談ください。飼い主様と一緒に、最善の方法を考えていきます。

 

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犬・猫の定期的なエコー検査が必要な理由|獣医師が解説する重要性と頻度

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犬の尿路結石や排尿のトラブルは、内科的な治療(食事療法や投薬)で管理できることが多いものの、なかには再発を繰り返してしまうケースもあります。そうしたときに検討される外科的治療が「会陰尿道瘻(えいんにょうどうろう)」です。

聞き慣れない手術名かもしれませんが、排尿障害の根本的な改善を目的として行われる手術であり、再発による苦痛を防ぐ手段として選択されることもあります。

今回は、会陰尿道瘻の役割や手術の流れ、術後の注意点について、飼い主様に知っておいていただきたいポイントを解説します。

 

犬の会陰尿道瘻とは?

会陰尿道瘻は、尿道の閉塞を繰り返す犬に対して行われる外科手術です。尿道を短くして会陰(肛門の近く)に尿の出口を新たにつくることで、尿の通り道を広げ、スムーズな排尿を助けます。

尿道が詰まって尿が出なくなると、まず腎臓にダメージが蓄積されます。おしっこが出せなくなることで膀胱がオーバーフローしますが、出口がないため、腎臓で作られた尿が膀胱に運べずに腎臓に負担がかかります。その結果、腎臓機能が低下し、最終的に体に毒素がたまり「尿毒症」という命に関わる状態に陥ることがあります。

通常は、以下のような内科的な治療が優先されます。

・尿道カテーテルでの閉塞解除
・食事療法や内服薬による結石の予防・溶解

これらの治療で改善が見られない場合に、会陰尿道瘻の適応が検討されます。具体的には、次のようなケースです。

結石による尿道閉塞を何度も繰り返している
カテーテルでの処置がうまくいかない
今後も結石の再発が強く疑われる

他院で手術を提案された場合でも、一度当院でのカテーテルでの閉塞解除をお試しいただくことも可能です。会陰尿道瘻は、こうした“繰り返す排尿トラブル”から犬の身体を守るための最終手段です。ただし、体にかかる負担や術後の管理もあるため、手術を検討する際には、事前に獣医師としっかり相談することが大切です。

手術の流れと術後のケア

会陰尿道瘻の手術では、尿の出口を肛門の近くにつくり直すことで、尿道の通り道を広げます。以下のような手順で行われます。

手術の流れ

1. 術前検査
麻酔や手術に耐えられる状態かどうかを確認します。血液検査や画像検査などを行い、全身状態を把握します。

2. 全身麻酔下での手術
陰茎とその中を通る尿道の一部を切除し、短くなった尿道の先端を会陰部(肛門の近く)に開口させます。そこが新たな排尿口となります。

3. カテーテルの挿入と縫合
術後すぐに尿が流れるよう、尿道にカテーテル(細いチューブ)を入れて固定します。そのうえで切開部を丁寧に縫合します。

術後のケアと注意点

術後は数日間の入院が必要です。排尿の状態や感染の有無を確認し、安定してきたら退院となります。ご自宅でのケアでは、以下の点に注意してください。

・エリザベスカラーの着用
患部を舐めてしまうと傷の治りが悪くなったり、感染の原因になったりします。傷がしっかり治るまでは、カラーの着用が必要です。

・生活環境を清潔に保つ
特に下痢をしている場合は、軟便が患部に付着して細菌感染を引き起こすリスクがあります。排泄エリアや寝床は清潔に保ち、排泄後に患部が汚れていないかこまめに確認してあげましょう。

カテーテルは通常、手術後1週間ほどで外すことができ、抜糸も2週間前後で完了します。術後の管理はやや手間がかかりますが、術後合併症を防ぐためにも大切なポイントです。

手術を検討する前に|知っておきたいメリットとデメリット

会陰尿道瘻は、命に関わるような排尿トラブルを防ぐうえで非常に有効な手段ですが「手術すればすべて安心」というわけではありません。手術を受ける前に、次のようなメリットとデメリットをしっかり理解しておくことが大切です。

メリット

尿道閉塞の再発予防
尿道が広くなることで、結石や炎症による詰まりが起こりにくくなります。

トラブル時の管理がしやすくなる
トラブルが起きたときにも、尿道カテーテルなどの処置が行いやすくなります。

デメリット

排尿や見た目の変化
この手術では陰茎の切除が必要になるため、見た目の変化が生じます。また、尿が広がりやすくなって外陰部が汚れやすくなったり、排尿コントロールが難しくなってトイレの失敗が増えることもあります。

感染のリスク
新たにできた排尿口から細菌が入りやすくなるため、感染には注意が必要です。特に、下痢の際などに便が患部につくと、細菌感染の原因になることがあります。日々のケアで清潔を保つことが大切です。

術後の合併症
手術で作った排尿口(瘻孔)が時間の経過とともに閉じてしまうことがあり、その場合には再手術が必要になるケースもあります。

このように、会陰尿道瘻には良い面と注意すべき点の両方があります。手術を受けるかどうかは、愛犬の状態や生活スタイルを踏まえたうえで、獣医師とよく相談しながら判断していきましょう。

まとめ|“最善の一手”を一緒に考えるために

会陰尿道瘻は、繰り返す尿道閉塞や重度の排尿トラブルに対して行われる選択肢の一つです。適切に行えば、愛犬にとって大きな負担を減らすことができる一方で、術後のケアや長期的な管理も欠かせません。

「この手術、本当に必要なの?」「もっと他に方法はないの?」そんな不安や疑問を感じるのは当然かと思います。だからこそ、まずは獣医師にご相談ください。当院では、一頭一頭の状態に合わせて治療の選択肢を丁寧にご提案し、ご家族と一緒に最善の方法を考えていきます。

 

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