犬の炎症性ポリープは大腸に発生するできもの(腫瘤)のことで、中~高齢のミニチュア・ダックスフンドに好発することが特徴です。下痢や血便など、消化器に関連する症状が現れますが、その症状は異物誤飲や悪性腫瘍(がん)、細菌感染といったさまざまな病気にもみられるので、しっかりと検査を行って原因を特定することがとても重要になります。
今回は犬の炎症性ポリープについて、原因や症状とともに、当院での治療法をご紹介します。
原因
炎症性ポリープが発生する原因はよくわかっていませんが、国内のミニチュア・ダックスフンドによくみられることから、遺伝による免疫機能の異常が関わっていると考えられています。
また、ポリープが癌化することも知られています。
症状
大腸(結腸と直腸)に大小さまざまなポリープ(ボコボコとしたできもの)ができるため、下痢や軟便、血便といった消化器症状が現れます。
診断
炎症性ポリープに限らず、便の異常を訴えて来院された場合、多くは直腸内診(直腸に指を入れて消化管壁を触る検査)を実施します。
加えて、血液検査やX線検査、エコーなどで全身の状態も確認します。実際に触り凸凹の感触があった場合には、消化管内視鏡で中の様子を観察することもあります。ただし、大腸にボコボコとしたできものが発見できたとしても、炎症性ポリープと診断することはできません。というのも、大腸では炎症性ポリープの他にも腺腫などの良性腫瘍や、腺癌あるいはリンパ腫といった悪性腫瘍が発生することもあり、これらは見た目が非常に似ているからです。そのため、正確に診断するには消化管内視鏡を介してできものの一部を採取し、外部機関に病理検査を依頼する必要があります。
治療
治療の選択肢は、内科療法と外科療法(手術)の2つに分けられます。
炎症性ポリープは免疫機能の異常によって発生すると考えられているため、ステロイドや免疫抑制剤を利用しますが、再発してしまうことが多いため、当院では手術による治療をお勧めしています。術式はさまざまありますが、当院では基本的に直腸プルスルー術というものを採用しており、これは肛門から直腸の粘膜ごと引き抜く術式です。
また手術後の管理がとても大切で、再発しないようにステロイドや免疫抑制剤を継続的に投与する必要があります。
ご家庭での注意点や予防法
発症には遺伝が関わっているといわれているため、確実な予防手段はありません。好発犬種を飼育していて、慢性的に下痢や軟便などがみられる場合には、早めに動物病院を受診しましょう。
まとめ
下痢などの消化器症状は、単にお腹の調子が悪いときだけでなく、炎症性ポリープやその他の腫瘍などの重大な病気でも現れます。ご家庭で判断することは難しいので、症状が続く場合は炎症性ポリープなども疑って動物病院を受診することをお勧めします。
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<参考文献>
Histopathologic Features of Colorectal Adenoma and Adenocarcinoma Developing Within Inflammatory Polyps in Miniature Dachshunds – Tsubasa Saito, James K. Chambers, Ko Nakashima, Eri Uchida, Koichi Ohno, Hajime Tsujimoto, Kazuyuki Uchida, Hiroyuki Nakayama, 2018 (sagepub.com)
Comparison of the efficacy of cyclosporine and leflunomide in treating inflammatory colorectal polyps in miniature dachshunds – PMC (nih.gov)